ビッケブランカのゴールデンイヤーはここから始まる!?ーードラマを彩るダークでエモーショナルな「ミラージュ」を語る

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玉木宏×高橋一生出演のカンテレ・フジテレビ系火9ドラマ『竜の道 二つの顔の復讐者』(毎週火曜・午後9:00~)のオープニング曲として、数奇な運命に導かれた復讐劇を彩るダークでエモーショナルなバラード「ミラージュ」を書き下ろしたかと思えば、矢作穂香×伊藤健太郎W主演のドラマ『ピーナッツバターサンドウィッチ』のオープニング主題歌には、今や自らのディスコグラフィの一翼を担うマッドでダンサブルなアンセム「Shekebon!」が抜擢。ドラマとシンクロする巧みなソングライティングとオリジナリティで、その勢力を拡大し続けるビッケブランカから、通算4枚目となるシングル「ミラージュ」が届いた。前述の2曲に加え、ライブ鉄板「ウララ」のハイクオリティなスタジオライブ音源等を収録した今作は、音楽の存在価値が試されるかのようなコロナ禍の現状においても、決して陰ることのない日々のきらめきとなって鳴り響いている。「今は前よりも健やかな人生を送っていくための時間」と語るビッケブランカが問う、人生に本当に必要なものとは――。


ビッケブランカ
ビッケブランカ

●拍手をもらうのってこれだけ気持ちがいいのかと、改めて感じました●

――先日、大阪城ホールで行われた『THE BONDS 2020』で約半年ぶりに人前でライブをしてどうでした?
当日はもちろん楽しかったんですけど、例えばこの1回があって迎える半年後と、ライブを全くやらずに迎える半年後って、全然違う感覚だろうなと思って。本当にやってよかったですね。

――ライブからもらうものというか、感じることがすごく多かったと。

「ミラージュ」も初披露できたし、「そうだ、ライブってこういう感じだった。懐かしいー! でも、照明ってこんなに眩しかったっけ?」みたいな(笑)。日常的にライブをやってると分からなくなるけど、結構特殊な環境だったんだなと。非日常ってこういう感じなのか、拍手をもらうのってこれだけ気持ちがいいのかと、改めて感じましたね。

――ただ、相変わらず微塵も緊張してる様子もなく、リラックスしてる感じだったから、もはや「この人はどういう場面なら緊張するんだろう?」と思いながら(笑)。

ハハハ!(笑) でも、最近分かりましたよ。自分でも「俺はどんなときに緊張するんだろう?」と思ってたら、初めてやること=1回目は緊張する。この間、オンラインフェス(=『LIVE HUMAN 2020』)に出たとき、DJセットで初めてライブをやってみたんです。「Little Summer」の披露も兼ねて曲をつないだりして……知らない世界はやっぱり緊張しますよね。

――そう考えたら、飽きっぽいビッケブランカは常に新しいことやっていかないと(笑)。

そうなんです(笑)。それであの緊張感と達成感にちょっと味を占めて、この前のFM802のスペシャルプログラム『802 LIVE GARDEN』でも、初めて人前でアコギを弾くという。

――コロナ禍の自粛期間に忘れかけていた非日常を垣間見たり、新しい体験が自分に刺激を与えることを再確認したり。自分にとって必要/不必要なものも改めて分かったみたいね。

これは勘違いしてほしくないんですけど、生意気な話とかではなく、必要のない人間関係みたいなものも分かってきて(笑)。

(一同爆笑)
ビッケブランカ
ビッケブランカ

――人の断捨離(笑)。でもまぁ、知らず知らずに積み重なった「しがらみ」みたいなものは、どんな人にもあるよね。

日常が続いてるとなかなかキッカケがないですけど、じっくり考える時間があると、そういう人間関係についても頭の中で整理ができて。もちろん物の断捨離もやったし(笑)、レコーディングスタジオにも入れないから、自分1人でアレンジを完成させなきゃいけなくなったことで、曲作りの新しい方法を手に入れたり。後から生楽器に差し替えなくてもいいクオリティで録るためにも、いろんなテクニックを勉強しましたね。「Little Summer」なんかはマスタリングまで自分でやったので、最後まで完全に家で作ってそのまま配信みたいな感じでしたし。本当はこういうときこそ、オランダで本場のダンスミュージックを学んだりもしたいんですけど、今は海外にも行けないから。

――逆に、改めて自分の人生に必要だと思ったものってある?

いや、これはでも……音楽ですね。

――またまた~(笑)。

これはマジ! 絶対に笑うと思ったけど(笑)。例えば、時間があるから釣りに行こうとか絵を描こうとはならなくて、やっぱり音楽をもっと作ろうって自然となったので、それは自分でも驚きというか。曲の作り方は多少変わりましたけど、それをきっかけに自分が好きだったダンスミュージックとかエレクトロな部分のパラメーターを伸ばせたし、「ミラージュ」はそことも合致する部分があったので、何だってやれば繋がるんだなと思いましたね。

●俺も含めて人はいろんなことから逃げてる●

ビッケブランカ
ビッケブランカ

――これまでもドラマのタイアップはビッケブランカの存在を世に知らしめてくれたけど、以前の「まっしろ」とかとはドラマのテイストが違うように、今回の「ミラージュ」は雰囲気もダークで。

毎回タイアップは本当に楽しいし、自分が得意とするチャレンジでもあって、直しを受けずに一発で決められると最高に気持ちがいいし、今回も漏れずとそうなって。ドラマのあらすじとしては復讐劇なんですけど、元々自分が曲を作り始めた頃は、悲しい曲ばっかり書いてたんですよ。そこからいろんな人と出会っていくなかで、ラテンな外国人とたまたま話したときに、「音楽は踊れなきゃダメだよ、踊れない曲なら誰でも書ける」みたいなことを言われて(笑)。最近までちょっと明るめで踊れる曲をずっと書いてきたから、ここまでシリアスな雰囲気の曲は久しぶりなんですよね。物悲しさが常にあって、マイナー調で攻めていく重めの曲なので。

――バラードとかミドルテンポの曲になると、ビッケブランカのダークネスが浮かび上がってくる。そのテンポとかメロディが喪失感を呼び起こすのか。

そう、出ちゃうんですよね。言葉の使い方とかも、変なタイミングで体言止めをしたり、分かるようで分からない感じになってるのは自分でも思うんですよ。そういういろんな要素が重なって、今回みたいな曲調になってるのかなと。

――ビッケって、「この曲は結婚式に合うよね~!」みたいなハッピーオーラ全開のバラードは、意外とないもんね。

ですよね。本当は俺も愛を込めて花束を渡したいところなんですけど(笑)。

――ハハハ!(笑)「CAN YOU CELEBRATE?」したいのに、こんなに悲しい歌で(笑)。

でも、いずれそういうハッピーなバラードが書けたとき、これまでのいろんなことが集約されそうで楽しみですけどね。

――「ミラージュ」では、<幻想なんだよそんなもの>というフレーズが制作の初期に出てきて、キーワードになったと。

ドラマのテーマとしてもそうだし、日常的にも思うことだし。人に対して、見えないものを目指し過ぎだし、見えないものを恐れ過ぎという感覚がずっとあるんですよ。

――確かに。なおさら今はそうだね。

それに対してどう振る舞っていくのかを考えていた自分が、この復讐劇の台本を読んで、もし自分が復讐するなら誰にどうやって復讐するかをめっちゃ考えて(笑)。「俺はここまではできないな」、「そこまでする価値はあるのか?」とか……そういう復讐脳になったとき、自分が普段思ってることと合わさって歌詞ができたという。

――そして、コロナ禍の前に書かれた曲なのに、ちゃんと時代にもフィットして。あと、Bメロ後半の<なにが悪いんだって言うんだ 君が悪いんだって言う 気味が悪いんだって>と繰り返される一連のメロディの運びに、ビッケ節がすごく出てるなと。その辺は自覚している?

聴いてて一番気持ちがいいようにいつも作ってるんですけど、何となく俺も自覚し始めたというか。同じようなメロディで、ちょっと言葉を変えて遊ぶのがやっぱり好きなんだなと。

――歌詞で気になったのは、<本気で走れば いつも逃げ切れてしまうよ>というくだりで、ビッケもお気に入りのフレーズみたいだけど、ここはドラマのストーリー云々だけの話じゃない気がして。

常々思ってることですね。俺も含めて人はいろんなことから逃げてるじゃないですか。そこから目を背けて走れば逃げ切れちゃうから、そういう人生になっちゃうんだよなぁというのを、歌詞に落とし込んで書いてみて。

――それを誰もがどこかで分かってるからこそ、時に人は踏ん張ってそれを超えていこうともするし。

そうなんですよ。この短いバースで、その勇気にちゃんと繋げられたんですよね。

●歌詞でもメロディでもコード感でも全力で心をぶっ刺したかった●

ビッケブランカ
ビッケブランカ

――そして、『THE BONDS 2020』のサポートキーボードも担当していたヨッキ(=横山裕章)は、最近では「白熊」のストリングスアレンジとか、「Heal Me」のアレンジなんかもしてくれてたけど、「ミラージュ」ではピアノを弾いてくれて。

ヨッキさんはめっちゃ昔からの知り合いで、出会った最初の頃はもう大っ嫌いだったんですよ(笑)。俺もガキでイキッてたし向こうも若かったので。ヨッキさんはそんな時代から面倒を見てくれてる人だし、才能があるのも分かってたので、「もし俺がアレンジャーの道に進んでたら、ヨッキさんみたいになってると思う」と本人にもよく言うんです。俺は曲を作る側に回ったけど、俺と同じような感性を持ってるアレンジャーがいてくれるのはありがたいです。

――関係者の紹介で出会った10年来の知り合いも、今では超売れっ子だもんね。ただ、今までは何だかんだ言ってピアノはビッケが自分で弾いてたのに、そこをヨッキに預けたのはちょっと珍しいなと思って。

俺は基本的なコードの鳴らし方しかできないし、普通なら綺麗な流れにいくところで訳の分からない音を混ぜちゃったり……それが特徴にもなるからよかったんですけど、「ミラージュ」ではもうガチガチに、歌詞でもメロディでもコード感でも全力で心をぶっ刺したかったので、自分のピアノだけだとちょっと弱いなと思って。もっと豊潤な曲にしたかったので、ヨッキさんに任せました。でも、「ピアノソロだけは渡さんぞ」みたいな(笑)。

――前回のアルバム『Devil』のインタビューでは、今後はEDMとかのダンスミュージック方面と、従来のポップス方面の2つの路線を伸ばしていく、みたいなことも言ってたけど、「ミラージュ」ではそれがうまく共存できてるね。

バンドサウンドとエレクトロなシンセが混ざった音が好きで、音圧で他との差をつけたり、フレージングの妙で見せたり、今回のアレンジはパワフルに作れましたね。この無秩序な感じも好きだし(笑)。

――サビ終わりのキラキラ感というかビロビロ感というか(笑)。

そうそう(笑)。あの音を作るのにめっちゃ時間もかけてこだわって。1本かと思いきや同時に4本シンセを鳴らしてますからね。

●状況が変わったからこそ気付けたことが絶対にある●

ビッケブランカ
ビッケブランカ

――カップリングの「Shekebon!」は、まずは配信でリリースされて、その後『Devil』に入って、ドラマのタイアップが付いたことで今回のシングルにも収録と、めちゃくちゃ息の長い曲になって。そもそも「Ca Va?」のカウンターとして書かれた曲だったのに。

確かに! いろんな評判とかも含めて今や「Ca Va?」を超えつつあるので、もう1回改めて聴いてみてよという。

――MVの再生回数も「Shekebon!」の方が200万回ぐらい多いし、「Ca Va?」みたいにアクの強いキラーチューンを、それよりアクの強い曲で超えていくってすごいなと(笑)。

あれだけアクの強い「Ca Va?」をずっとほったらかしにしちゃうと、二度と超えられなくなる気がしたんですよ。「Ca Va?」の存在感がどんどん大きくなり過ぎちゃうから、早めに潰しといた方がいいなと(笑)。でも、そういう曲が2曲あるとだいぶ印象が違うんですよね。今後この2曲とタメを張る曲を、また改めて作ったりもできるだろうし。

――あと、もう1曲のカップリングの「ウララ」は、『Devil』のリリース当日に実施予定だったフリーライブが中止になって、代わりに行われた配信ライブの音源ということですけど、ボーカルのエアー感を感じるぐらいで、ライブテイクとは思えない精度ですね。

当日も半ばレコーディングのつもりで、いつものメンバー、いつものPAで綺麗に音も録ったし、遮音も完璧にして。ミックスまでちゃんとしてもらったし、これはいいテイクですよね。

――今となっては「ウララ」も、ライブの頭でも最後でもやれる頼もしい曲になって。

また、歌詞に<去年のことは忘れませんか>みたいな言葉があったりもするんで、来年はさらに意味を持ちそうな曲ですよね。

――リリースから年月を経て意味が深まったり、響きが変わってきたりするのは、音楽の面白いところだよね。

その時々で一生懸命曲を書いてきてよかったなと今、思いました。元来ミュージシャンなんてものは、必死に音楽だけ作っていればいいみたいな感覚があるんですよ。自分がやれることなんて、めっちゃいい曲を作って、めっちゃいいライブをするしかないんです。だからこそ、ライブができないフラストレーションは多少あるにしろ、自分がやるべきことは変わらない。幸い俺の周りには、この状況下でもどうやってビッケブランカの曲をもっと伝えていくか、楽しんでもらうかを、俺が日々曲を作るのと同じように頭を使って考えてくれる人がたくさんいるので。その人たちが持ってきてくれた企画にちゃんと応える曲を書き続けることが、今やるべきことなのかなと思いますね。

――全部自分でやっちゃいたいアーティストもいるけど、ビッケはよりクリエイター気質というか、ものづくりの人だね。

いろいろと自分で考えたり、なまじできないとも思わないから全部自分でやってみようか、みたいな時期もありましたけど、それ専門に生きてきた人は俺なんかより絶対に長けてるはずだし、任せた方がいいなと思って。その分、自分は自分の畑をもっともっと耕していかなきゃと。

ビッケブランカ
ビッケブランカ

――しかもソングライティングというところで言えば、ビッケが自分の中で最も勝算があると思える土俵なわけだもんね。あと俺、男は32歳からだと思ってるから(笑)。

俺、ジャストじゃないですか!(笑) でも、何で30歳じゃないんですか? 2年で何が違うの?

――30歳は、20代のうちに何者かになりたい邪念と、成し遂げられなかった諦めが同時にあるんだけど、そこから2年ぐらい経ったとき、「もう俺、自分の得意なことをやるしかないわ」って開き直るの(笑)。

なるほど、その2年間で(笑)。

――いかんともしがたいモヤモヤが終了して、最も勝算がありそうな道をとりあえず選ぶ(笑)。

確かにそうかも。30歳になったときって、20代に戻りたかったんですよ。今は戻りたくないですもん。「32が最高!」ってなってる(笑)。20歳の頃は20歳の頃で「30代が一番楽しいよ」と聞いて、「そんなわけない、20代が一番いいに決まってる!」と思ってたんで。でも、実際その通りになって……奥さん(=筆者)がまたそんなこと言うわけでしょ!? これ、絶対にそうなるわ!

――ビッケブランカのゴールデンイヤーがここから始まると思ったら、ちょっと楽しみだね。

マジか~! 今からなのか俺!?(笑)

――めちゃめちゃ勇気付けられてる(笑)。いろんな巡り合わせがあって、20代から積み重ねてきたことに気付いてくれる人がようやく出てくるというかね。

本当に31と32でも大違いで、32になってからガラッと変わった。そのタイミングで今回の「ミラージュ」みたいに、しっかり作り込んだ曲をリリースできてるというのもありますよね。

――みんなコロナ禍の状況で悶々としてる中で、ビッケの1本のライブだったりこういう1曲のリリースが、絶対に日々の潤いになってると思うよ。

今だからできること……しかも捉え方によっては、状況が変わったからこそ気付けたことが絶対にあるはずなんですよ。俺もそうだし。当たり前に繰り返してたことでもそれは違うと、自分のやりたいことをやろうと気付いた人もきっといただろうし。今は前よりも健やかな人生を送っていくための時間と考えれば、きっと超えていけると思うんですよね。



取材・文=奥“ボウイ”昌史 撮影=渡邉一生(SLOT PHOTOGRAPHIC)

当記事はSPICEの提供記事です。

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