「「つらぬいて憂鬱」はすべてが“闇落ち”していながらも、アニメのテーマも言い当てている」“陰キャのカリスマ”ニノミヤユイ インタビュー

SPICE


アーティストのニノミヤユイが1stシングル『つらぬいて憂鬱』を8月19日にリリースする。

2020年1月、「陰キャのカリスマ」としてのパーソナリティを余すところなく表現したアルバム『愛とか感情』を豪華クリエイター陣とともに作り上げたニノミヤ。そんな彼女の初めてのシングル表題曲は、自身も声優・二ノ宮ゆいとして出演するテレビアニメ『ピーター・グリルと賢者の時間』のオープニングテーマに採用されている。

その作曲を手がけたのはTom-H@ck。今回彼はこれまでのニノミヤ楽曲とは明らかに肌合いが違うものの、確かに彼女にしか歌えない、クレイジーながらもどこかシニカル、そしてエレクトリックなファンクナンバーを作り上げている。

今回SPICEではニノミヤを直撃。彼女曰く「天才」Tom-H@ckとのコラボレーションの裏側についてはもちろん、新型コロナ禍の過ごし方、7月の配信ライブについてなど、幅広い話を聞いた。

――今年の春、まさに自粛期間の最中に高校をご卒業なさったんですよね?

なので、卒業式も形の上でなんとか実施できたという感じでした。卒業生と先生は当然出席したんですけど、保護者の方と在校生は列席できなかったので。

――うわあ、それは大変でしたねえ。そしてその後、新社会人となったニノミヤユイさんはこの新型コロナ禍、どんな生活を送っていたんでしょう?

あんまり“社会人み”がないというか、そのまま春休みの延長のような期間を送ってました(笑)。自粛期間はやっぱり寂しかったので高校の友だちとグループ通話をしてみたり……あとなにしてただろう。 お料理とか、家でできることばっかりやっていた気がします。

――その“社会人み”のない暮らし、つまり歌えない、お芝居ができない状況が続いたことに対する不安や焦りってありました?

お仕事がいつからちゃんと再開できるのか、まったくわからない状況だったので不安ではあったんですけど、私はこういうときに後ろ向きになると本当にダメになるタイプなので……。

――さすが、キャッチコピーは「陰キャのカリスマ」(笑)。

あはははは(笑)。なのでなんとか気持ちを前向きにするために発声練習を1日も欠かさずやっていましたね。住んでいるところがわりと田舎のほうの一軒家なので(笑)。

――けっこう大きな声で歌っても隣近所に迷惑はかけない、と。

だから意図的に毎日歌ったり、大きな声を出すようにはしていました。

――役者さん、そしてボーカリストさんにとって声を出さない期間が続くとやっぱりお芝居や歌声に影響がある?

私の場合は、ちょっと声を出さなかっただけでクオリティがガンガン落ちちゃいますね。お芝居のときの滑舌も悪くなりますし、歌についてもそれまで出せていたキーが出なくなるし、声の持久力自体も目に見えて下がりますから。実際、7月に配信で1stライブ(7月17日の『愛とか死、或いは名もない感情からの逃避』)を開催したんですけど、その最初のリハーサルのときは本当に声が出なかったですし。そこからどうにか巻き返して本番に間に合わせた、みたいなところはありました。
撮影:大塚正明
撮影:大塚正明

配信ライブは映像であることを利用して世界観を作り上げた

――その配信ライブも急きょのものでしたよね。本来であれば3月に東京と大阪のライブハウスで開く予定だった1stワンマンライブツアーの振替公演だったわけですし。

誰のせいでもない、しかたのないことではあるんですけど「お客さんを入れてのライブが中止になりました」ってあらためて聞かされたときはすごく悲しかったですね。今年1月に『愛とか感情』というデビューアルバムをリリースして、3月のワンマンライブでその曲をみなさんの前で披露することで『愛とか感情』で作り上げたかった世界観を完成させるつもりだったので、その区切りがあいまいになってしまったのはやっぱりショックでした。

――ところがその振替公演である配信ライブでは「映像である」ということを武器に、普通のステージにはない手法・演出でニノミヤユイの世界、『愛とか感情』の世界を画面上に浮かび上がらせていた。あの映像にはニノミヤユイチームのクリエイティヴィティと強さを感じました。

ありがとうございます。いろいろ配慮と考慮をしながらスタッフさんが配信でライブをやろうと提案してくださって実現したことなので無事にできてうれしかったなーってただただ安心した感じだったんですけどね(笑)。

――それは謙遜が過ぎるというか、ステージ上のニノミヤさんの周囲に歌詞をリアルタイムで表示させたり、ステージに楽曲をイメージした映像を表示させたりする演出はカッコよかったし、ニノミヤさん自身、プランを聞いたときには少なからず驚きがあった気もするんですけど……。

でも大枠としては3月のライブのために考えていたもののままでした。セットリストも途中でMCの代わりにポエトリーリーディングを挟むという構成も東京・大阪のライブでやるつもりだったものだし、ポエムの内容も当時にはすでに考えていましたから。セットリストは「ここは自己紹介パートで、次は失恋ソングパート」というように、セクションごとにメッセージやテイストが似た曲を固めて、そのあいだに次のセクションを紹介するようなポエムを書かせていただいていました。

――では、もともと物語性のあるライブにすることは決まっていて、いざ「配信ライブだ!」ってなったから、そこに映像演出を加えていった?

そうですね。スタッフさんが「せっかく映像を使えるんだから、配信であることを逆手にとって、それを存分に活かそう」ということで本当にたくさんのアイデアを練った上で実現してくださって。もともと私がライブでやりたかったニノミヤユイの世界観や『愛とか感情』の世界観をより深く表現できたなと思っていますし、すごく満足のいくライブでした。

――ただ、いわゆるライブの生中継と違って、ニノミヤさんが歌っている姿にいろんな映像をリアルタイムでミックスしていたわけだから、本番中、果たして自分がどう映っているのかはわかってなかったわけですよね?

確かに実際どういう映像を中継できているのかはわかっていなかったですし、無観客ライブだったので、本番中は自分の世界に籠もるというか、歌詞や曲の中に描かれている自分の内面にひとりで向き合っている感じでしたね。盛り上がる曲ではカメラに手を振ったりもしましたけど、基本的には「今、私はひとりでステージに立っているんだ」という気持ちで歌っていました。

――本番が終わったあと、配信のアーカイブ映像をご覧になったりは?

観ました。歌っている私もライブだし、その私の姿に別の映像を混ぜる作業もライブなんだけど、いわゆるライブ映像とはまた別のコンテンツに生まれ変わっていていいな、と思いましたし、これはこれで全然アリ。ひとつの表現のしかただな、と思いました。

――で、そのライブで1stシングルの表題曲「つらぬいて憂鬱」を初披露していましたけど、セットリストのすごく面白いところに置きましたよね?

あはははは(笑)。そうかもしれないです。

――せっかくの新曲なんだから、本編ラストとかに置いて「最後の曲は8月19日にリリースされるシングル曲で、アニメ『ピーター・グリルと賢者の時間』のオープニングテーマです」みたいな煽りMCを入れてもよさそうなのに……。

煽りもなく7曲目に歌っちゃいました(笑)。でもまさにおっしゃることの逆をやりたかったというか、煽ったり、露骨に目立たせたりせずにセットリストに組み込みたかったんです。ライブのテーマはやっぱり「ニノミヤユイの世界観をステージで表現すること」だったので、説明ゼリフみたいなものを入れてしまうと、その瞬間、イメージが崩れそうな気がしたので。曲を知ってもらうことよりも、『愛とか感情』の収録曲と「つらぬいて憂鬱」を含めた、ニノミヤユイの楽曲の世界に浸っていただくことを優先したかったので。
撮影:大塚正明
撮影:大塚正明

楽曲作家陣にまた新たな天才が

――実際、『愛とか感情』の収録曲と衝突することなく「ニノミヤユイのディスコグラフィ」にキレイに収まる1曲だと思うんですけど、作家陣を見比べてみると実はちょっと異質ですよね。

自分のことながら面白いな、と思っています。

――『愛とか感情』でもバグベアさん、新羅慎二さん(湘南乃風:若旦那)、氏原ワタルさん(DOES)、佐藤純一さん(fhána)と、まあ豪華な作家陣と共作なさっていましたけど、「つらぬいて憂鬱」ではTom-H@ckさんという……。

また新たな天才の方に参加していただきました(笑)。

――ただ、ニノミヤさんは欅坂46の楽曲のようなシリアスでちょっと硬質なポップスがお好きだと公言していて、だからアルバムには「サイレントマジョリティー」や「不協和音」の作家であるバグベアさんを招いたとおしゃっていた。

はい。

——そういう音楽リスナー的に、Tom-H@ckさんという、ゼロ年代以降のアニメソングの設計図を書いた作家さんってお馴染みはあったんですか?

もともと声優・二ノ宮ゆいとしてデビューしていることもあってアニメやアニソンは大好きですし、Tom-H@ckさんの楽曲ももちろん聴いていました。ただ、レーベルのスタッフさんから「1stシングルの表題曲はTom-H@ckさんに作曲と編曲をしてもらおうと思っているんだ」って聞かされたときは、一瞬「すごいっ!」と思ったんですけど、次の瞬間「私のやっていることとTom-H@ckさん……?」ってすごく不思議な気持ちにはなりましたね(笑)。

――代表作に一連の『けいおん!』ナンバーを持つ作家と「陰キャのカリスマ」の共演ですもんね(笑)。

ただ、『愛とか感情』の発売直後くらいに直接Tom-H@ckさんと打ち合わせをさせていただいて。そのときに「自分はどんな人物で、どういうことを考えていて、どういう音楽をやりたくて、今回は『ピーター・グリル~』というアニメのオープニングを歌わせていただく」というお話をさせていただいたら、一瞬、その場の全員が、ニノミヤユイのキャラクターとTom-H@ckさんの楽曲と『ピーター・グリル~』の世界観の出合う場所について「うーん……」ってなったものの、次の瞬間、Tom-H@ckさんがいきなり「わかった! 闇落ち版『もってけ!セーラーふく』だ!」っておっしゃったんです。

――確かにそうとしか形容しようのない曲ですね(笑)。

私自身、その言葉を聞いたときは「どんな曲になるんだろう?」と想像ができなかったんですけど、後日デモを聴いたら「あっ、闇落ち版『もってけ!セーラーふく』以外のなにものでもない」と思いました。まず「闇落ち版『もってけ!セーラーふく』」というキャッチコピーを考える才能もそうだし、その自分の考えていることを音で表現してしまえる技術もそうなんですけど、天才って本当にすごいなあ、と感じました(笑)。

――しかも「もってけ!セーラーふく」の安易なオマージュ・パロディではない。確かに派手なスラップベースという共通点はあるけど、あの音で塗り込めた壁みたいな音像の作り方は紛れもなくTom-H@ckサウンドですからね。

だから本当にビックリしました。あと、作詞はTom-H@ckさんの音楽プロダクション(TaWaRa)にいらっしゃるhotaruさんにしていただいたんですけど、これにも驚いて。hotaruさんとは直接会うことはなかったんですけど、『愛とか感情』を聴いて、アルバム収録曲の歌詞も全部読み込んだ上で「ニノミヤユイとはこういう人間なんだろうな」という想像のもと今回の歌詞を書いてくださったらしいんです。その歌詞に、「なんでこんなに見透かされているんだろう?」「hotaruさんって私の友だちだったっけ?」と思うくらいに私の気持ちを言い当てられていて。曲と歌詞が届いたときには「なんだ、この天才たちの集いは?」って感動しました。
撮影:大塚正明
撮影:大塚正明

――ただこの曲は『ピーター・グリルと賢者の時間』のオープニングテーマでもある。そしてあのアニメって際どい下ネタ上等のカラッと明るくバカバカしいコメディじゃないですか。だから「新曲は『ピーター・グリル~』のテーマソングになります」というニュースを見たとき、あのアニメの曲をニノミヤさんなの? ってけっこうビックリしたんですけど……。

でも「つらぬいて憂鬱」って歌詞もメロディもアレンジも“闇落ち”していながらも、アニメのテーマも言い当てているんですよね。

――地上最強の戦士であるピーター・グリルは、ニノミヤさん演じるヒロインのルヴェリア(サンクトゥス)と将来を誓い合っているから浮気はしたくないんだけど、毎回毎回、地上最強の子種がほしい女性キャラクターの誘惑に負けちゃうというお話ですよね。

それって〈完全聖人になんてなれやしない〉〈何遍失敗して直りもしない〉っていうことじゃないですか。やっぱりちゃんと歌詞がアニメにリンクしているんです。

――そしてニノミヤさんも聖人にはなれやしないし、同じ失敗を何遍も繰り返している?

もちろんです!

――そこで胸を張らないでください(笑)。ところで「闇落ち版『もってけ!セーラーふく』」のレコーディングっていかがでした? あそこまでやたらなファンクってニノミヤさんのディスコグラフィの中でも珍しい気がするんですけど……。

今回レコーディングのときに新しいニノミヤユイを作ってもらった気がしています。Tom-H@ckさんがボーカルのディレクションをしてくださったんですけど、その最中にBメロからメロディがなくなっちゃったんですよ。

――「メロディがなくなっちゃった」?

当初いただいていたデモではBメロにもちゃんと歌メロがあったんですけど、レコーディング中にTom-H@ckさんが「ここ、ラップみたいにしてみようか」って提案してくださって、それを試してみたんです。

――むしろそれまで体に叩き込んでいただろうBメロの旋律を捨てて、いきなりラップにチャレンジするニノミヤさんのフットワークの軽さよ、という気もするんですけど……。

曲をいただいたときから「Bメロの歌詞ってすごく共感できるなあ」と思っていたので、「気持ちを込めて叫ぶようにラップして」って言われて、それを実際にやってみたらすごく楽しかったんですよね。

――ちょっと憂鬱げに〈塞ぎ込んで嘘をついて傷ついたって泣いて〉ってラップをキックして、最後に〈独りきりで首絞め合い〉ってシャウトするBメロが?

すごく気持ちよかったです(笑)。たぶんTom-H@ckさんは当初のBメロを歌っている私を見て「この子、ここで感情任せに言葉を畳みかけさせたほうが面白くなるな」って判断してくださったんだと思いますし、ほかのフレーズについても細かくニュアンスの付け方のアドバイスをいただけたので、私の長所みたいなところは残しつつ、でもこれまでにはない新しいボーカルを作ることができたな、と思っています。発見や勉強になるところがたくさんあるレコーディングでした。

――あとこの曲については、7月の配信ライブ終演直後に公開されたMVも話題になりました。あの映像の監督は女優の佐津川愛美さん。ホリプロの先輩ですよね?



はい。ただMVの企画が持ち上がるまで面識はなくて。事務所のスタッフさんから「お芝居ができる上に映像を撮れる女優さんがいるんだけど、その人にMVの監督をお願いしてみない?」とご紹介をいただいて、今回ご一緒させてもらいました。

――いかがでした? 佐津川監督は。

映像の中で私の心情を本当に汲んでくださった上に、本当に優しくて。最初の打ち合わせのときに「ニノミヤさんの嫌がることは絶対にやらないから」っておっしゃってくれたのがうれしかったです。

――なにかNG項目がありました?

「できればあんまり顔を見せたくないです」ってお願いしました。

――ニノミヤユイの楽曲のMVなんだから、ファンはニノミヤさんの姿を観たいと思うんだけどなあ……。

でも、私は顔を見せたくないですって(笑)。

――それはなぜ?

ライブやステージイベントでみなさんに会うのはすごく楽しいんですけど、写真や映像として自分の姿が半永久的に残るのが……。それこそ、この春に高校からもらった卒業アルバムとかも正直ちょっと苦手ですし。あと、声優の仕事を始めたきっかけは「次世代声優☆ミラクルオーディション」というオーディションに受かったからなんですけど、2017年に合格した瞬間、いろんなメディアの方から撮影アリの取材をされて。もちろんそれ自体はありがたかったんですけど「あれっ、声優さんってこんなに写真を撮られるのか」ってビックリしました(笑)。

――その結果、今回は真っ赤なワンピースを着て体育座りをしているニノミヤさんを4人のダンサーが取り囲むMVができあがった?

まず、佐津川さんに「コンテンポラリーダンスを取り入れたい」というお話をうかがって、そのあと絵コンテと企画書を見せていただいたら、それがすごく素敵だったので。ロープでつながったりしているダンサーさんは私のいろいろな感情の象徴で、真ん中にいる私を誘惑してくるんだけど、私自身は感情たちに苛まれることに鬱々としていて……ということを表現しているんですけど、その内容にすごく納得したし、共感もできた上に、役者の先輩でもある佐津川さんがディレクションしてくださったので、撮影はすごく楽しかったです。

――あとこの曲について伺いたいのが、ニノミヤさんは今回『ピーター・グリル~』のテーマソングを歌う一方で、声優も担当しているじゃないですか。

はい。

――アニメの役作りがボーカルに影響を与えたり、逆に「つらぬいて憂鬱」でのボーカルアプローチが役作りに影響を与えたりするものなんですか?

うーん……。私は音楽活動のときは「ニノミヤユイ」、役者のときは「二ノ宮ゆい」を名乗っているので、むしろカタカナ名義と漢字ひらがな名義のバランスを取ることに気を配っていた気がします。「アニメの中の人としてルヴェリアを演じつつ、ニノミヤユイとして私自身の歌を歌う」という2つの課題をいかにクリアするかということに、力を入れたというか。

――ルヴェリアの声で「つらぬいて憂鬱」を歌うのはちょっと違いますもんね。

ニノミヤユイの歌じゃなくなるし、ルヴェリアはあのアニメの中で唯一の乙女ですから。ある意味、物語の流れからひとり取り残されている子なので。

――「つらぬいて憂鬱」のヒロインのような悪い子じゃない(笑)。

でも、弱い自分から変われないという歌詞がアニメ全体のテーマとも通じているし、地上最強のはずなのになぜか女の子の誘惑には負け続けるピーターにはちょっと同情もできますし(笑)。そういう自分とアニメの共通点を見つけてからは、楽曲もすごく歌いやすくなりました。キャラソンではなく、ニノミヤユイの楽曲を持って自分の出演しているアニメに関わらせてもらうのは今回が初めてなんですけど、「カタカナ名義と漢字ひらがな名義の世界線が交錯すると、こんな発見もあるのか」ってうれしくなった半面、不思議な気持ちにもなりましたね(笑)。
撮影:大塚正明
撮影:大塚正明

――そしてニノミヤさんには役者、ボーカリストのほかに、作詞家としての顔もある。カップリング曲はニノミヤさん作詞で、タナカ零さん作編曲の「re:flection」です。

まずTom-H@ckさんのときと同じように「カップリング曲はタナカさんに書いてもらうつもりです」という話を聞かされたんですけど、私、タナカさんがオープニングテーマ(本田華子(CV:木野日菜)、オリヴィア(CV:長江里加)、野村香純(CV:小原好美)「スリピス」)を手がけていた『あそびあそばせ』というアニメがすごく好きだったので「あっ『あそびあそばせ』の人だ」って、うれしくなりました。

――その話からもニノミヤさんの性格が伺えますよね。タナカさんって売れっ子ソングライターなんだけど、ベタな売れ線の曲を作る人かというと……。

聴いているとちょっと情緒不安定になりそうな曲を書かれますよね(笑)。

――はい(笑)。もはやポストロックとも呼びがたい、抜群にカッコいいんだけどストレンジな曲を作る方です。

でも私も情緒不安定なので(笑)、タナカさんの曲って好きなんです。リード曲も私の好きなTom-H@ckさんらしさがあふれてはいるんだけど、きちんとアニソンの空気感を持ってもいる曲だったので「カップリングはワールド全開でいくんだな」「だからタナカさんなんだな」ってすごく納得できました。

――この曲はどうやって作っていったんですか?

Tom-H@ckさんのときと同じように、まずタナカさんと打ち合わせをさせていただいて、その場で「カップリングは恋愛ソングにしよう」という話になったんですけど、届いたデモがどう聴いても失恋ソングそのものでした(笑)。

――打ち合わせの段階ではハッピーなラブソングが届くものだと思っていた?

いや、「私はこういう人間で、こういうことを考えている」というお話をさせていただいた上で「恋愛ソングを歌いたい」と話していたので「ああ、私には『ラブラブで楽しい毎日!』みたいなイメージはないんだな」って納得できました(笑)。で、今回のシングルは結局新型コロナの影響で8月発売になったんですけど、もともと7月にはリリースするつもりだったので、夏の記憶みたいなイメージで歌詞を書けたらいいな、ということで詞を書き始めたんですけど、本当に難しくて……。

――だって当たり前のようにAメロ、Bメロ、Cメロでリズムパターンも拍子も変わるし、楽器隊も最初シンセの白玉だけ鳴っていたかと思ったら、突然バスドラだけが鳴り始め、そのあと普通のギターロックのような編成になり……。

しかもメロディだけが書かれた楽譜をいただいて、私も一応楽譜は読めるつもりではいるんですけど、初めて「メロ譜を読んでいるはずなのにメロがわからない」という事態に陥りまして(笑)。当たり前のようにオクターブ単位で音が飛ぶ、ヘ音記号とト音記号が入り交じったメロ譜を初めて見たので「どんな言葉を付ければ、この素晴らしいメロディが引き立つんだろう?」ってとにかくバランスを考えていました。

――バランス?

歌詞が乗っていないメロディ単体の状態ですでに“強い”印象があって。だから歌詞もガンガン主張するものにするとそれはそれでうるさくなっちゃうし、とはいえ印象の薄い言葉を並べるとメロディに負けちゃうし。そのバランスを取りつつ、あの変拍子にどうやって乗っかるかを考えるのがすごく難しくて、レコーディングの前日まで歌詞を書いていました。

――そしてちゃんとメロディやアレンジを引き立てつつも、あまりハッピーではない夏の恋の記憶がフラッシュバックしてくる様子を独自の言葉で切り取って見せた、と。

ありがとうございます。

――で、そのリリックを歌うこと、つまりレコーディングってスムーズでした?

いえ、今までで一番苦戦したかもしれません。プリプロのとき、レコーディングディレクターさんにも「この曲、確かにカッコいいけど、ホントに歌うの?」「大変だよ」って心配されましたし(笑)。

――でも音源を聴くに、ちゃんとカッコいい女性ボーカルもののポストロックに仕上がっていますよ。

ありがとうございます。私自身、タナカさんの、不思議なんだけどカッコいい曲を歌うという課題をクリアできたという自信はあるし、7月の配信ライブでは歌っていないので、早くライブでも披露したいですね。

――あとタイトルはなんで「reflection」の「re」と「flection」を「:」で区切ったんでしょう?

「reflection」という単語自体にも「反射」という意味があるんですけど、最初の「re」にも「もう一度」みたいな意味があって……。

――返信メールの件名の頭に「re」って付くように「返信」や「再」という意味がありますよね。

そうなんです。そして「flection」は「屈曲」っていう意味になるので、「過去の記憶の残像がちょっと曲がった感じで自分の心に反射してくる、蘇ってくる」という意味で「:」で区切ってみました。あと、失恋って苦い記憶ではあるんだけど、恋をしていた瞬間の記憶はきっと幸せなものだったはずで。そういう記憶すべてをもう一度繰り返したい、という気持ちも込めています。まあ、一種の破滅願望のような気もするし、精神衛生上よくない気がするので、実際に思い出そうとするのはオススメできないんですけど(笑)。

撮影:大塚正明
撮影:大塚正明

――せめて歌の中だけででも振り返ってみたら? と(笑)。最後に2020年の下半期にやってみたいことってありますか?

やってみたいこととはちょっと違うんですけど、私、この取材のようにいろんな方とお話しさせていただくと、きまって「マジメですね」って言われるんです。

――実際、どんな質問にも深く考えた上で明快に答えてくれるし、絶対に敬語が転ばないし、そういう印象を受けました。

でもマジメって良し悪しだなとも思っているので、秋以降はそのイメージを払拭する意味でも不良になりたくて……。

――あはははは(笑)。ニノミヤさんの考える「不良」って? タバコを吸ったり、お酒を飲んだりします?

まだ18歳なのでそれは本当にダメなので、まずは服装のイメージから変えていこうかな、と思ってます。

――どんな格好をしましょう?

バンドマンの彼女みたいな格好ですね。

――辞書的な意味での「不良」じゃないけど、それは確かにダメな女のにおいがしますねえ(笑)。

友だちに話すと「いや、全然“バンドマンみ”も“バンドマンの彼女み”もないじゃん」って言われるんですけど、だからこそ、なんかちょっとああいう危うい感じの女の子になりたいんです。

――ではSPICEも、ニノミヤさんが立派なバンドマンの彼女になれるよう陰ながら応援していますっ!

がんばりますっ!

取材・文:成松哲 撮影:大塚正明

当記事はSPICEの提供記事です。

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