「大工の源さん」の出玉スピードは世界の時間を歪めた。そして僕はバクチの罠に…

日刊SPA!

―[負け犬の遠吠え]―

ギャンブル狂で無職。なのに、借金総額は500万円以上。

それでも働きたくない。働かずに得たカネで、借金を全部返したい……。

「マニラのカジノで破滅」したnoteで有名になったTwitter上の有名人「犬」が、夢が終わった後も続いてしまう人生のなかで、力なく吠え続ける当連載。

2020年8月で無職になって1年。今回は貧乏生活のきっかけとなった、フィリピンでの話です。

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◆田舎者だから関東圏を色でイメージしている

大工の源さんというパチンコを見たのは6月の頭で、初めて降りた千葉の駅前にあるパチンコ屋さんの中だった。スケジュールの9割以上をインターネットに依存している僕は、その日の昼にネットを通して出会った人に昼食を奢ってもらうために東京から総武線に乗って山手線の外側に飛び出した。

上京してきた田舎者にとって、関東圏のイメージはJRの路線図に支配されている。東京は緑で、埼玉は水色、神奈川はオレンジ。そして、千葉は黄色。秋葉原から乗り換えなしで20分、google mapで見ると不思議なくらい遠い場所にいた。東京の電車は緩急がすごい。そもそも40分で八王子まで行けるのもすごい。地元は電車がない田舎で友達の家に遊びに行くだけで20分かかるのに、東京はどこからでも15分で他県に行くことができる。いまだに実際の現象と体感が一致しない。

ネットで出会った人にはタコライスを奢ってもらった。Netflixで「タコスのすべて」というドキュメンタリーを見たばかりで引っ張られてしまった。南米の街中にあるタコス屋さんを次々に取材するだけで吹き替えもなく、英語ですらない言語でずっとタコスの宣伝をしていて、脳を一切使わないで「タコス、いいな~」と思える最高の番組だ。最近ハマっている。

無職の人間は家で友達のアカウントを使ってNetflixを見まくっているので、もう吹き替えのある番組はほとんど見た。まだ見てないのは吹き替えのない、動物とか、飯とか、そういうのばかりだから、少しずつ海外のものに憧れを持つようになる。僕こそがNetflixに余暇を支配された人間の成れの果てなのだろう。今行きたい場所は南アフリカとサバンナ。会いたいのはコカインの売人とシマウマだ。

カジノの話やネットの話で一通り盛り上がり、相手の用事があるので早めに解散した。人生の先輩は金がない僕に小遣いとして5,000円もくれた。大人は最高だ。僕は30を目前にしてそんな器量はかけらも持ち合わせていない。子供の頃に恐れていた「大人子供」になりつつある。

昼盛りに見知らぬ土地で暇を持て余した僕がする行動は大抵限られている。まずその土地のパチンコ屋に挨拶をし、その後に街を観光するのだ。この習慣は僕がまだ京都に住んでいた頃の名残で、当時は御朱印帳を持って寺や神社を周り、挨拶をし、その周囲を散歩していた。

東京にきて、寺や神社がパチンコ屋に変わった。御朱印をもらう代わりにパチンコを打つ。トイレに行ったついでに打つ行為にも似ているが、八百万の神が存在していると言われるこの日本では、博打の地主神も存在しているはずで、もちろん博打でもって挨拶に行くべきだろう。

◆脳汁がこぼれる大工の源さん

千葉のパチンコ屋さんは店内に余裕があった。通路幅も広く、人もまばら。無駄に豪華なトイレと喫煙スペース、そして至る所に設置してある自動販売機。

「これこれ!」

都外のパチンコ屋さんはまさに「ゆっくり遊んでくださいね」と言わんばかりに居心地のいい空間だ。缶コーヒーを買って喫煙スペースで一服。最高の暇つぶしのための大事なルーティンだ。こんなに好き勝手やっても誰にも怒られない。こういう小さな自由に「子供を卒業した」実感を得る。だからと言って大人にもなってはいないが。

店内を練り歩く。無数にある海物語のゾーンを抜けると北斗無双と花の慶次、さらに奥に行くと新台コーナーがあった。

この頃は金欠も限度を迎えていて、日雇いの金でまず滞納した家賃を用意しなければならず、二週間ほどパチンコを打てていなかったので、5,000円をもらって久しぶりに浮ついていた。久しぶりのパチンコ、初めての店、初めての土地…一つも根拠はないが、なんとなく勝てそうなオカルトの条件は揃っていた。

この時に出会った新台が「大工の源さん 超韋駄天」だ。

僕がパチンコを打ち始めたのは7年前で、大工の源さんシリーズについての知見はほとんどなかったが、新台にも関わらず誰も座っていないからゆっくり打てるという理由で座った。どんな仕様でどんな演出で、何がアツいのかもわからない。「わけがわからないけど、なぜか勝てた」が好きな僕は、よくこうして無防備に知らない台を打つ。

知らないキャラが知らない敵と戦っている。1,000円、2,000円と減っていったが、降って湧いた金なので焦りもなかった。ただ射幸心を煽る光を目に浴びながらボケッと4円玉がのたうちまわるのを眺める。なんか当たらないかな。

4,000円使ったところで当たった。どんな演出で当たったのかも覚えていない。ただのまぐれなのに「やっぱりな」と思ったことだけは覚えている。

さて、当たり中はどれだけ面白いかな? と美術品を見る中尾彬のようになっていた僕は、数分後に目を覚ます。

通常、パチンコで当たると、玉が減らないまま100回転近い一定回数の抽選をし、次の当たりを引く。当たれば1,000発近い玉が出て、また玉の減らない抽選期間に突入する。この繰り返しをどれだけ続けられるかが連チャンの鍵で、当たりは一回一回やってくる。

ところがこの「大工の源さん 超韋駄天」はたった3秒以内で次の当たりの抽選を終えてしまうため、まるで延々と玉がで続けているかのような錯覚に囚われるのだ。

3秒。当たりを消化し終わって余韻に浸るのも束の間、ふと画面に目をやると次の当たりが始まっている。普通のパチンコがライスおかわりし放題システムだとすると、大工の源さんのおかわりスピードは、わんこそばのそれに近い。碗を平らげて3秒以内に次のそばが手元に来る。その間に「美味しかったね」という時間は無い。当たりの興奮が落ち着く間もなく次の当たりがやってくる。僕の頭蓋骨は脳汁で溢れ、こぼれた。

◆負けない日が続くときもある

僕は大工の源さんで2万円勝った。初めての体験だった。パチンコのくせに、カジノに迫るほどの興奮を覚えた僕は時計を見る。どれだけ時間が経ったのかも覚えていない。

驚くべきことに、店内に入ってから出るまで、20分しか経っていなかったのだ。普通の台なら4,000円負けてから2万円勝つまで40分はかかる。

人が光よりも速い速度で動く時、時間の流れは変わるという。「大工の源さん 超韋駄天」は、その早すぎる出玉スピードによって世界の時間を歪めてしまった。この現象を特殊相対性理論と呼ぶらしい。

その日、僕は寝る直前まで大工の源さんのことばかり考え、この2万円の使い道を決めた。

翌日から僕は3日間源さんを打ち続けた。当たった時のことしか考えていなかったので当たるまで画面も見ずに打ち続けた。幸い、大工の源さんのヤバさに気づいている人が少なかったせいか、どの店に行っても空いていた。

1日目、2日目、両日ともに4万円勝った。所要時間はどちらも1時間以内。大工の源さんに座り、時空の狭間で4万円をもぎ取り、太陽の傾きが変わらないまま店を後にする。もうこれだけ打っていれば生活できるのではないかという錯覚に駆られ、翌週のアルバイトを全てキャンセルした。

3日目、この日も2万円勝った。1時間以内に店を出る。さながら仕事人だ。4日間で合計12万円勝った僕はその日のうちに滞納していた家賃を払う。このペースで続ければ月収は100万円を超える。引越しも考えようかな。

だが、ふとした気の緩みはギャンブルの天敵だ。その夜何をとち狂ったか競艇で5万円負けた。突然だしプロセスを全て省略しているように見えるが、本当に突然賭けて、突然負けた。4号艇が最初に飛び出してレースを引っ掻き回していたのだけは覚えている。

ギャンブル依存症は、たとえ何かで勝っていようとも突然穴に落ちてしまう。

「種銭さえあれば…」

屈辱を飲み込んで電話で謝り倒し、アルバイトのキャンセルをキャンセルした僕は、翌週その種銭を1台目の源さんに飲み込まれて再び「日雇い円環の理」から出られなくなってしまった。

家賃が払えて良かった。金額的には勝ってるので「大工の源さん 超韋駄天」は良台だと思う。競艇のアプリは消した。

―[負け犬の遠吠え]―

【犬】

フィリピンのカジノで1万円が700万円になった経験からカジノにドはまり。その後仕事を辞めて、全財産をかけてカジノに乗り込んだが、そこで大負け。全財産を失い借金まみれに。その後は職を転々としつつ、総額500万円にもなる借金を返す日々。Twitter、noteでカジノですべてを失った経験や、日々のギャンブル遊びについて情報を発信している。

Twitter→@slave_of_girls

note→ギャンブル依存症

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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