コロナ禍でも完売。大人の鉄道スタンプラリー「鉄印帳」でローカル線巡り

日刊SPA!

―[シリーズ・駅]―

近年ブームとなっている寺社の御朱印。参拝者向けに押印する印章や印影のことで、寺社名や参拝日、御祭神・御本尊などを墨書きで記す。いわば大人向けのスタンプラリーのようなものだ。

その御朱印の鉄道バージョンとも言える『鉄印』(300~500円)のほか、専用台帳の『鉄印帳』(2200円)を全国各地の第三セクター鉄道が7月10日から発売開始。厳しい経営を強いられる地方ローカル線に鉄道ファンを呼ぶツールとして期待が寄せられている。

◆鉄印を集めるには「鉄印帳」が必要

これは第三セクター鉄道等協議会と加盟する全国40社の鉄道会社、関連会社による共同事業。初版5000部の鉄印帳は、発売早々に各社で売り切れが続出しており、すでに増刷されている。

この鉄印帳や鉄印が購入できるのは、参加した各鉄道会社でも一部の駅の窓口のみ。第三セクター鉄道の集客や利用促進が目的のひとつになっているため、鉄印を購入するには現地に行かなければならない。もちろん、当該鉄道会社の乗車券、もしくは乗車証明書が必要だ(※7月の豪雨で全区間不通のくま川鉄道は『くま鉄オンラインショップ Yahoo!店』からの購入が可能)。

筆者は販売開始当日、たまたま別件の取材で岩手県に滞在。そこで盛岡駅~目時駅(青森県)を結ぶ、IRGいわて銀河鉄道の販売窓口、青山駅に足を延ばし、鉄印帳と鉄印を購入した。はがき大の用紙には《いわて銀河鉄道 青山駅》との筆書きに加え、同鉄道のマスコット、ぎんがくんときらりちゃんのスタンプが押されている。

鉄道会社名と駅名は、事前に元書道部の同社社員が書いたものだそうで、窓口では日付を記入。いずれも筆書きなので、まるで寺社の御朱印のような見栄えだ。個人的には昔ながらの駅スタンプも嫌いじゃないが、もっと高尚なものに思えてくるから不思議だ。

その後、数日かけて同じ岩手の三陸鉄道、秋田の由利高原鉄道、北海道の道南いさりび鉄道を巡り、合わせて4つの鉄印をゲット。特に由利高原鉄道の矢島駅では、目の前で筆書きをしてくれ、同社社員(300円)、または30年以上前から駅構内の売店を営む名物女将の佐藤まつ子さん(500円)のいずれかを選ぶことができる(※不在時は由利鉄社員書き置きの鉄印を駅窓口で販売)。

彼女はテレビにもたびたび取り上げられる地元の有名人ということもあり、鉄印を求めるほかの鉄道ファンがすでに並んでいた。そのため、筆者は社員の方に書いてもらったが、まつ子さんが達筆だと聞いてちょっと後悔。

この日の筆者もそうだったが、駅到着後は列車などの撮影をする人が多い。ゆえに同駅に限らず、鉄印目当ての場合は真っ先に記帳場所の窓口に向かったほうがいいかもしれない。鉄印に参加する第三セクター鉄道の多くは、日付だけその場で記入するやり方だが、それでも1人数分はかかるからだ。

特に地方ローカル線は列車の本数も少なく、並んでいる間に1本逃してしまうとその日の予定そのものが崩れてしまう可能性もある。筆者個人が乗り遅れるほど混んでいた場面に遭遇したことはないが、それでも鉄印販売駅での滞在時間には余裕を持ってスケジュールを組んだ方がいいだろう。

◆平日しか入手できないレア鉄印も

一方、筆者は8月上旬には取材で九州を訪れ、そのついでに長崎・佐賀の両県にまたがる松浦鉄道、基山駅(佐賀県)~甘木駅(福岡県)を結ぶ甘木鉄道、かつて炭鉱で栄えた福岡県の筑豊地方を走る平成筑豊鉄道の鉄印3つをそれぞれ入手。

このうち平成筑豊鉄道は、鉄印を扱う金田駅の受付窓口が平日のみの営業だと知らずに二度訪問。おかげで全区間乗車できたのはよかったが、土日祝しか休めない多くの鉄道ファンには少々ハードルが高いかもしれない。実際、入手困難の鉄印のひとつに挙げられているという(※後で気づいたが、筆者が訪れた甘木鉄道の鉄印受付も日祝は休みだった)。

だが、逆にそれが収集欲をかき立ててくれる。寺社の御朱印だって必ずしも毎日受け付けているわけではなく、祭事の際には記帳してもらえない場合も多い。

鉄印も取り扱い駅の窓口の営業時間は各鉄道会社に委ねられているが、始発~終電までの全時間帯で扱っているわけではない。早朝や夜間は窓口が閉まっていることも多いため、事前に確認しておいたほうがよさそうだ。

コロナ禍の影響で鉄道各社の運賃収入は軒並みダウン。感染再拡大で夏場に入ってからも旅行客は例年に比べると少ないが、鉄印帳は完売するほどの人気ぶり。苦境に立たされる地方の第三セクター鉄道にとっては数少ない明るい話題だ。

今はまだ残念ながら気軽に鉄印巡りの旅ができる段階ではない。それでも鉄印を通じて地方の第三セクター路線を利用する鉄道ファンは間違いなく増えるだろう。今後、新たな鉄道旅行の楽しみ方のひとつになっていくことを期待したい。<TEXT/高島昌俊>

―[シリーズ・駅]―

【高島昌俊】

フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。世界一周(3周目)から帰国後も仕事やプライベートで国内外を飛び回っている。

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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