8月の「TAKARAZUKA SKY STAGE」お勧め3作品の見どころ紹介/ホーム・シアトリカル・ホーム~自宅カンゲキ1-2-3 [vol.35] <宝塚編>

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おうちをシアトリカルなエンタメ空間に! いま、自宅で鑑賞できる演劇・ミュージカル・ダンス・クラシック音楽の映像作品の中から、演劇関係者が激オシする「My Favorite 舞台映像」の3選をお届けします。(SPICE編集部)

ホーム・シアトリカル・ホーム~自宅カンゲキ1-2-3[vol.35]<宝塚編>
8月の「TAKARAZUKA SKY STAGE」​お勧め3作品の見どころ紹介​ by 藤本真由
【1】『出島小宇宙戦争』('20年月組・ドラマシティ)
【2】『カサブランカ』(’10年宙組・東京・千秋楽)
【3】『ルパン三世-王妃の首飾りを追え!-』『ファンシー・ガイ!』('15年雪組・宝塚)


宝塚歌劇専門チャンネル「TAKARAZUKA SKY STAGE」の8月放送のラインアップより、見逃せない3作品の見どころをご紹介!

【1】『出島小宇宙戦争』('20年月組・ドラマシティ)

『出島小宇宙戦争』('20年月組・ドラマシティ)  (C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ
『出島小宇宙戦争』('20年月組・ドラマシティ)  (C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ

今年2月に上演された月組公演『出島小宇宙戦争』は、2016年に演出家デビューした新鋭・谷貴矢にとっても、主演を務めた鳳月杏にとっても、初めての東上(東京で上演される)作品。ポップなポスター、<デジタル・マジカル・ミュージカル>なる角書、荒唐無稽なあらすじ、……いったいどんな作品!? と、すべてが人々の興味をかきたててやまなかった。なんせ、江戸時代の出島に、外国人にまぎれて宇宙人が忍び込んでいるという設定なのだから。そして実際の舞台はといえば、不可思議ながらもせつなくポップな、きっちり作られた宝塚作品。角書からして“デジ・マ”をかけており、「出島、マジで」なんて言葉遊びのセリフも散見されるあたりに、演出家のクリエイションのルーツを見る思い。鳳月杏も舞台の真ん中が実に似合う。

作中、キーワードとなるのが「地図」なのだが、その「地図」をめぐっての謎解きに、子供のころ読んだ『仮面舞踏会』というイギリスの絵本を思い出した。絵本の作者は実際に「金のうさぎの首飾り」をとある場所に隠しており、作品を読んで謎解きをするとそのありかにたどり着けるという宝探しの趣向が凝らされていた。その宝探しをめぐって後にスキャンダラスな騒動も起きたりするのだが、それはさておき、絵本も舞台も含め、芸術にふれるとは、作品に秘められた大切な何か――それはときに創り手自身も気づいていないものかもしれない――の宝探しのように思えるときがある。そして、『出島小宇宙戦争』から筆者が発見した“宝”はといえば。…ピポパピ…と宇宙から何やら信号が降ってきて、それを人間の言葉へと解読してみたならば、つまるところそれは「L・O・V・E」? ……な~んて、月を見上げて物思いにふけりたくなるようなときめき。スカイ・ステージでご覧になる方もきっとそれぞれの宝物を探し当てられるであろう作品。宝塚歌劇の未来が楽しみになる若手演出家の登場である。
★放送:17日(14:00)、27日(9:00)

【2】『カサブランカ』(’10年宙組・東京・千秋楽)

『カサブランカ』(’10年宙組・東京・千秋楽)  CASABLANCA and all related characters and elements are  trademarks of and  (c)Turner Entertainment Co. (s10)  (C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ
『カサブランカ』(’10年宙組・東京・千秋楽)  CASABLANCA and all related characters and elements are trademarks of and (c)Turner Entertainment Co. (s10) (C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ

2010年、宝塚歌劇団宙組は、ハンフリー・ボガート&イングリッド・バーグマンの共演で名高い、映画史上に輝く名作を世界で初めてミュージカル化した。作・演出は小池修一郎。宙組トップコンビ、大空祐飛&野々すみ花にとってはこれがトップお披露目作。宝塚歌劇の男役の美学にふさわしい究極の男のやせ我慢を描いて、見事ホームランをかっ飛ばす快作となった。映画でもストーリー上、重要な役割を果たす名曲「As Time Goes By」はそのままに、さまざまなジャンルを縦横無尽に行き交う太田健のサウンドが心地よく、最初から最後まで名曲がずらり。男の哀愁たっぷりの「カサブランカの風」。大空リックと野々イルザがデュエットする「過去は聞かない」の、「♪過去は聞かない/聞く意味がない」の歌詞ににじむ、男のせつない意地。重大決断を迫られた大空リックが銀橋で絶唱する「本当の俺」の、「♪本当の俺はどこにいる/本当の俺はどう生きる」は、自分自身も何か決断を迫られたときに思わず絶唱したくなる楽曲である――そして、その前段にある歌詞、「♪人の笑顔を見ていたい」のかわいらしさには、思わず笑顔がほころんでしまう。他にも、バザールの喧騒を描いた「バザール」、イルザの夫である抵抗運動の指導者ラズロが人々と不屈の闘志を歌い上げる「我々は生きている」、ナチスドイツのシュトラッサー少佐が歌う「栄光のドイツ」等々、歌で物語を綴っていくミュージカルの醍醐味を味わえる。そんな名ナンバーがフィナーレのショー部分で再び登場するのもまた、宝塚ならではの楽しみ。

それにしても、宝塚の男役には、やせ我慢がよく似合う――。愛をあきらめ、一人去っていく男。トレンチコートの背中に、哀愁がにじむ。そのような表現ができてこそ、一人前の男役。さまざまな男性のやせ我慢を描いてきた宝塚歌劇の作品群の中でも、ひときわその魅力きらめく作品をお見逃しなく。
★放送:8月22日(9:00)

【3】『ルパン三世-王妃の首飾りを追え!-』『ファンシー・ガイ!』('15年雪組・宝塚)

『ルパン三世-王妃の首飾りを追え!-』('15年雪組・宝塚) 原作/モンキー・パンチ (C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ
『ルパン三世-王妃の首飾りを追え!-』('15年雪組・宝塚) 原作/モンキー・パンチ (C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ

2015年に上演された雪組公演『ルパン三世-王妃の首飾りを追え!-』(三木章雄作・演出のファンタスティック・ショー『ファンシー・ガイ!』との二本立てで上演)は、モンキー・パンチ原作の人気漫画『ルパン三世』を題材にした宝塚オリジナル作品。今年夏~秋にかけて宝塚大劇場、東京宝塚劇場で上演の花組『はいからさんが通る』も担当している小柳奈穂子が作・演出を手がけている。「首飾り事件」で有名な<マリー・アントワネットの首飾り>を盗み出そうとベルサイユ宮殿に忍び込んだルパン三世(早霧せいな)がタイムスリップ! 革命前夜のフランスへと迷い込み、マリー・アントワネット(咲妃みゆ)と運命的な出逢いを果たす。ほのかな慕情を抱くルパン。彼女の運命は? そしてルパンは現代に戻れるのか? わくわくどきどきの物語を、名作『ベルサイユのばら』やその流れに連なる『THE SCARLET PIMPERNEL(スカーレット ピンパーネル)』等の楽しいパロディを盛り込みつつ描く冒険活劇である。

そして、『ルパン三世』の大きな魅力の一つである、「ルパン三世のテーマ」をはじめとする大野雄二が手がけた楽曲の数々も聞くことができるのがうれしい。宝塚版では青木朝子が作曲・編曲を担当しているが、大野氏いわく、使用楽曲のリストを見たとき、……楽曲を実によく研究している! と思ったとのこと。とりわけ筆者が唸ったのが、ルパン同様タイムスリップしてしまった銭形警部(夢乃聖夏)が、フランス革命前夜から最中の激動の8年間を生き抜く様を、名曲「銭形マーチ」に乗せて送るシークエンス。音楽とダンスでつづられる、一瞬たりとも見逃したくない抱腹絶倒である。ルパンがマリーへの想いを歌う宝塚オリジナルの「My Dear Queen’s Diamond」もしっとりせつない名曲。舞台を観た故モンキー・パンチ先生が、「この話をアニメ映画版でもやればいいのに」とうれしそうにおっしゃっていた姿が忘れられない。
★放送:8月25日(9:00)
文=藤本真由(舞台評論家)

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