ミスチル桜井、長渕剛クラスの歌手がバトルに負ける…ガチすぎる韓国リアリティショー

日刊SPA!

2020/8/11 06:52

◆『私は歌手だ』の衝撃

とにかく視聴者の度肝を抜くような構成が多い韓国のサバイバル系オーディション番組。その中でも「おそらく日本では絶対に作れないはず」とピョ・ジェシク氏(コンテンツ供給会社/芸能プロダクション・JAKE社長)が太鼓判を押すのが『私は歌手だ』(MBC)という番組だ。

「これは観ていてヒリヒリしますよ。プロ同士のバトル番組なんですけど、日本で言えばMr.Childrenとか長渕剛クラスの大物が対決して次々と負けていくんです。そんなの事務所のメンツ的にありえないじゃないですか。

実際、第1回の放送ではキム・ゴンモというB’zクラスのアーティストが登場して、予選であっさり脱落しましたから。さすがに視聴者は唖然としますよね」(ピョ・ジェシク氏)

この『私は歌手だ』を仕掛けたキム・ヨンヒというプロデューサーは、韓国業界内ではかなりの重鎮。「この人の言うことだったら仕方ないか」とアーティストたちも納得するだけのキャリアを積んでいる人物なのだという。また対決する相手の音楽ジャンルが違う場合は、負けてもさほどイメージ的に傷つかないという面はある。

たとえばトロット(韓国演歌)とロックバンドの対決、ヒップホップとバラード歌手の対決だったら「これは実力の問題ではなく、視聴者の印象論だから」と言い訳も可能になる。さすがにそのへんはスタッフも気を遣ったということだろう。

「『ミステリー音楽ショー 覆面歌王』(MBC)はルックスを度外視した完全実力主義の番組。どれくらい度外視するかというと、登場してくる人たちが覆面を被っているんです。手の形もわからないように手袋までしていますしね。ただし、出てくるのは全員が有名人。本職の歌手、お笑い芸人、俳優、スポーツ選手、モデル……などです」(同)

一方、『本物は誰だ!~HIDDEN SINGER~』(JTBC)の場合は覆面ではなく、曇りガラス越しに姿が断定できないように出演者が登場する。5人出てくるとしたら、4人はモノマネが上手な人なんですけど1人は張本人なんですね。

たとえばですが課題曲がサザンオールスターズの曲だとしたら、みんな桑田節で一生懸命モノマネしていて、何小節かずつ歌う中で桑田佳祐本人が混じっているという構図。それで『一番ダメな人は誰?』ということで審査員はニセモノを落としていくんですけど、たまに本人が落とされちゃったりするわけです」(ピョ・ジェシク氏)

◆素人の参加者にも高いクオリティを求める

日本と韓国のオーディション番組は、どの点が違うのか? ピョ・ジェシク氏によると一番の差は、韓国の視聴者が出演者にプロフェッショナリズムを求めるところにあるという。「実力がない奴は出てくるな!」という考えが厳然と存在し、日本のように「成長過程を見守る」という文化が根付いていないのだ。これはアイドルで特に顕著といえるだろう。

「僕は『PRODUCE101』シリーズ(Mnet)のプロデューサーだった人と個人的に知り合いなんですよ。今、彼はテレビとはまったく別の仕事をしているんだけど、日本の芸能界とかテレビのことも詳しい人なんですよね。それこそ『ASAYAN』とかモーニング娘。結成の経緯とかも理解していましたから。

だから日本式のオーディション番組をMnetでやりたいという話は前からしていたんです。『まだタマゴみたいな状態の若者を番組で追っていきたいんだ』とね。ところが社内の上層部からは、すさまじい反対に遭った。『クオリティが低いものを出すのは視聴者に対して失礼だろ!』というわけです」(同)

なるほど。言われてみれば、たしかに『PRODUCE101』はどこか日本に近いテイストがあったようにも思う。セミプロのような出演者が多かったものの、番組内では初々しい雰囲気を漂わせていた。

「初期はまだよかったんですよ。出演者が素人とはいえ、練習はきちんとこなしていましたし。ところが、そのあとで始まった『PRODUCE48』ではAKB48グループを取り上げましたよね。AKB48はモーニング娘。なんて比べ物にならないくらい素人感丸出しなわけですよ。

もちろんパフォーマンスのクオリティが高くないこともAKB48の魅力なんだけど、そんなこと韓国の人たちが理解できるはずないじゃないですか。『なんですでにデビューしているAKB48のメンバーが、歌やダンスでは韓国人の練習生よりはるかに下なの?』ということが単純にわからない。

ただ、あの番組で最終的に証明したのは、AKB48だってきちんとした先生のもとでちゃんとレッスンすれば素晴らしいクオリティになるということ。そこにはシステムの違いがあっただけで、彼女たちのポテンシャル自体は非常に高いと個人的には感じました。

それと韓国の視聴者もここに来てようやく“成長する過程を観て楽しむ”ということができるようになったのは大きかったですね。ある意味、韓国人がAKB48によって教えられたというか……」(同)

審査員を視聴者にしたことも『PRODUCE101』シリーズの大きな功績だった。番組内では視聴者のことを「国民プロデューサー」と呼んだが、AKB48グループの選抜総選挙が定着している日本と違い、専門家以外が合否を決めること自体がエポックメイキングだったのだ。

しかし、この新システムは「やらせ問題」「不法投票」というパンドラの箱を開けることに繋がった。その後、『PRODUCE101』が韓国テレビ界を震撼させるような一大疑獄事件へと発展したのはご存知の通りである。次回は「なぜオーディション番組で過剰演出が蔓延するのか?」「なぜリアリティーショーは完全なリアルになりえないのか?」という疑問点に踏み込んでいきたい。

―[韓流オーディションの光と影]―

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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