オーディション番組が乱立する韓国、モデルは日本の『ASAYAN』だった

日刊SPA!

2020/7/31 15:50

◆90年代後半の日本の番組を参考に

『Nizi Project(通称:虹プロ)』(Hulu/日本テレビ系)や『PRODUCE48』(Mnet)といった韓国発のオーディション番組が話題になっている。日本の番組にはないシリアスなトーンやドラマチックな展開が幅広い層から支持されているのだ。実際、韓国のテレビはオーディション番組で溢れかえっている。しかし、「最初からこんな状況だったわけではない」とコンテンツ供給会社/芸能プロダクション・JAKE社長のピョ・ジェシク氏は語る。

「そもそもオーディション番組自体は、韓国よりも日本のほうが昔からあったはずです。韓国の番組は90年代後半に日本で流行っていた『ASAYAN』(テレビ東京系)とかを2000年代に入ってからパクった……というか影響を受けた部分は大きいんじゃないでしょうか。

当時、私は日本に留学していたんですけど、大学時代の先輩がMBCでプロデューサーをやっていた。それで『面白い日本のテレビ番組があったら、録画して送ってくれないか?』とよく頼まれていたんです。あの頃、韓国テレビ局の現場で働いていたスタッフは、日本だけじゃなく、いろんな国のテレビ番組を参考にしていたと思うんですよね。

そうやって日本やアメリカで流行った番組のフォーマットを参考にしつつも、韓国の視聴者が喜ぶように味付けもして番組を作ったわけですけど、そんな中にオーディション系サバイバル番組もあった。『虹プロ』で日本でも注目されるようになったJYPエンターテインメントやパク・ジニョン(J.Y. Park)は、2001年に子供向けオーディション番組『99% の挑戦』(SBS)という企画も始めているんですね。ちなみに2AMのリーダー、チョ・グォンはこの番組出身。

その後もJYPやパク・ジニョンは『Kポップスター』シリーズ(SBS)にも審査員としてしっかり入っているし、なにも『虹プロ』でいきなりオーディション番組を始めたわけじゃない。むしろ『なんで今さら日本でパク・ジニョンが騒がれているの?』というのが韓国人の率直な反応です」(ピョ・ジェシク氏)

◆スーパースターKで流れが変わった

自分の事務所からグループをデビューさせるとき、スタッフはどんなメンバーを選ぶか? 結局、それは自分のところで鍛えた練習生ということになる。では、才能がある若者をどのようにして見つけ、自分の事務所の練習生にするのか? もちろん各事務所はオーディションやスカウトを頻繁にやっているが、決して効率的とは言えないのが実情である。そこでテレビ局が仕掛ける番組とタッグを組んでおけば、人材が見つけやすくなるのは事実だろう。

「ただ、正直言って『99%の挑戦』は番組としてはさほど話題にならなかったんですよね。その後も似たようなオーディション番組が作られたんだけど、視聴率的には大したことなく終わっていますし。この流れを変えたのが2009年から始まった『スーパースターK(通称:シュスケ)』というわけです。シュスケの人気は本当に半端じゃなかった。影響力もすごくて、ここで韓国におけるテレビ番組作りが大きく変わっていきました。

ひとつポイントとなるのは、『スーパースターK』がMnetで作られたということ。Mnetはケーブルテレビです。それなのに多くの人が観ていたというのは、韓国人にとっても大変な驚きがあった。これには韓国のテレビ局事情を説明する必要があるかもしれませんね……」(同)

◆韓国の地上波3局に共通した焦り…

韓国には地上波が3局ある。KBS、MBC、SBSだ。厳密に言えば教育テレビのEBSも存在するが、ここでは割愛させていただこう。この3局は営利目的で運営される日本の地上波とは若干意を異にしている。まずKBSはNHKのような完全なる国営放送局。MBCも国が費用の大半を持つようなかたちで設立され、80年代の全斗煥政権下では準国営化されたという経緯がある。3局の中で最後に作られたSBSは民営企業ではあるのだが、SBSのSはソウルの略であって地方に系列局を持っていない。つまりキー局と言い切れない部分があるのだ。

一方、韓国にもケーブルテレビは存在する。ケーブルテレビは専門性が高いチャンネルが多く、放送内容も映画チャンネルだったら過去の映画作品を流したり、音楽チャンネルだったらMVを流したり新曲のタイミングでアーティストにインタビューすることが多い。「このへんは日本とあまり変わらないんじゃないですかね。スペースシャワーTVや東映チャンネルみたいなイメージです」とはピョ・ジェシク氏の弁。

「ところが2011年12月に新しい放送局が4つ新設されることになりました。これらは『総合編成チャンネル』と呼ばれるもの。メディア法という法律が国会を通過し、それまでは3つの地上波と専門性が高いケーブルテレビしかなかった韓国のテレビ業界に、まったく新しい風が入ることになったんです。そして総合編成チャンネルには中央日報や朝鮮日報などの新聞社がバックについていた。

ケーブルのテレビ局も、本音ではなれるものなら地上波になりたかったんです。たとえばMnet。あそこは親会社が超大手財閥のCJグループだし、そのCJグループはサムソンとも兄弟みたいな関係。なにせサムソングループ創業者の長男がCJグループの名誉会長でしたから。そういうこともあって、資金は潤沢なんです。だけど、韓国の法律では財閥企業は放送局を持てないことになっているんですよ。メディアを使って自社グループの商品を宣伝するとなれば、影響力が大きくなりすぎますしね。実はそれまで新聞社も民放局は持てなかったんだけど、これができるようになったのがメディア法だった」(同)

◆カネの力にモノを言わせたCJグループ

総合編成チャンネルの設立は韓国メディアに業界地図を塗り替えるような“事件”だった。なぜか? 韓国の地上波放送は番組の途中でCMを挟み込むことができない。番組の前後にしかCMを入れられない。しかし、総合編成チャンネルでは日本のように途中でガンガンCMを入れることができるという話だった。そうなると当然、広告収入は既存の地上波3局とはケタ違いになると見られていた。実際に放送が始まってみると、期待されたほどの効果は挙げられなかったのだが……。

「いずれにせよ、ケーブルのテレビ局からすると総合編成チャンネル4社が作られることは大いなる脅威だった。そこで自分たちもオリジナルの番組を作らなくてはいけないと考えるようになったんですね。実際に総合編成チャンネルができたのは2011年末でしたが、メディア法が国会に提出されたのは2008年。その焦りが『スーパースターK』を生んだという言い方もできると思います。

それでCJグループが具体的にどうやってオリジナル番組を作ったかというと、カネの力にモノを言わせて地上波から有能なスタッフやプロデューサーを引き抜いた。韓国では実力のあるプロデューサーは『スター』と呼ばれているんですけど、たとえスターであってもKBSやMBCでは給料制。CJグループに来れば完全成果制だし、給料のベースももちろん上げていく……このように口説いたんですね。もうなりふり構っていられなかった」(同)

再編の波が吹き荒れる当時の韓国メディア界にあって、『スーパースターK』の人気沸騰はさらなる混乱を呼ぶ劇薬となった。次回、あまりにも生々しいその舞台裏に肉薄する。

―[韓流オーディションの光と影]―

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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