秘伝のレシピを燃やして生まれた定番バーボンの秘密とこだわり

日刊SPA!

2020/7/31 15:54

―[30代が知らないと恥ずかしい! 今さら聞けないお酒のキホン]―

「メーカーズマーク」というお酒をご存じでしょうか? 四角い大ぶりのボトルに、赤い封蝋(ふうろう)が垂れている特徴的な外見なので、目を引きます。アメリカで作られているウイスキーで、「バーボン」に分類されます。今回は、メーカーズマークの歴史と蒸留所の中をご紹介しましょう。

◆秘伝のレシピを燃やしたのは6代目当主

バーボンはスコットランドから移住してきた移民が作り始めました。アメリカ合衆国は1776年に建国されましたが、同時に税金も徴収し始め、ウイスキーを作っている人たちは税の手が届かない南部に移動しました。これが、ケンタッキー州周辺にバーボンの作り手が集中している理由です。

スコッチ・アイリッシュ系移民である、ロバート・サミュエルズも1780年にペンシルベニアからケンタッキーに移住しました。農業をする傍ら、自家用のウイスキーを作っていたのです。

1840年、ロバートの孫である3代目テーラー・ウィリアム・サミュエルズは、蒸溜所を作って本格的にバーボンウイスキーの製造を開始します。

1920年に禁酒法が施行され、そこから1933年まで操業を停止しなければならなくなりました。禁酒法が撤廃された後、5代目テーラー・ウィリアム・サミュエルズ・シニアはバーボン作りを再開します。しかし、昔ながらの製法を守っているのに、あまり売れませんでした。

ちなみに、禁酒法が制定されてもアメリカ人がウイスキーを飲むのをやめるわけがありません。その間、お隣カナダでウイスキー作りが発展することになります。これが5大ウイスキーにカナダが入っている理由です。

1951年、6代目ビル・サミュエルズ・シニアが大きな改革を成し遂げます。ケンタッキー州ロレットの谷にあったスターヒルファームを、ボロボロの蒸留所と一緒に買い取ったのです。そのバークス・スプリングス蒸留所を修繕しつつ、なんとビルは170年間一家に受け継がれてきた秘伝のレシピを燃やしてしまいます。

世界最高のプレミアムバーボンを生み出すために、一からウイスキー作りに着手したのです。ライ麦の代わりに冬小麦を使い、試行錯誤を繰り返します。蒸留所の敷地内にあるスプリング・フェド湖から取れる良質な湧き水を使い、試行錯誤を繰り返します。

◆父からのアドバイスは一言「Don’t screw up the whisky.」

1953年に蒸留所の改修が終わり、1954年2月に最初の蒸留と樽詰めが行われました。このときは19樽が生産されたそうです。1958年、ビルの妻であるマージョリーは「メーカーズマーク」というブランド名や封蝋のアイディアを思いつきます。トレードマークの星と「S」「Ⅳ」は、農場の名前とサミュエルズ家のSとビルが4代目という意味で付けられました。前述のとおりビルは6代目で、マークが作られた数年後に息子のビル・ジュニアが気がつくのですが、今でもそのまま使われています。

そこから5年、6回の夏を越え、メーカーズマークが生まれました。1975年、ビル・サミュエルズ・シニアからビル・ジュニアに引き継ぎます。この時のアドバイスは「Don’t screw up the whisky.(ウイスキーを台なしにするな)」の一言だけだったそうです。

2011年、ビル・ジュニアが引退して、息子のロブ・サミュエルズが8代目となっています。さらっと書きましたが、初代が1780年に作り始めてから240年が経ち、8代目になったのです。実際に蒸留所に行ったことがあるのですが、その歴史を感じることができました。

◆メーカーズマークの封蝋は今でも手作業

その際は、メーカーズマークのマスターディスティラーであるグレッグ・デイビスさんに蒸留所の隅々まで紹介してもらいました。マスターディスティラーとは、ウイスキーの味を決めるブレンダーのトップポジッションといったところ。

メーカーズマーク蒸留所にはとにかく働いている人が多かったです。「機械まかせにせず、できる限り人の手でつくる」との信念を守っているためだそうです。最近の大型蒸留所は機械化が進んでいるので、メーカーズマーク蒸留所は温かい感じを受けました。

メーカーズマークの封蝋は人の手で融けた蝋の中にウイスキーの瓶を入れて付けています。実際に工場の中に入ったことがあるのですが、お姉様達がものすごいスピードで付けていました。ほとんどミスなく、数本の垂れが出て機械のようでした。とは言え、もしミスが発生して付けすぎたり垂れすぎたりしてもそのまま出荷するとのことでした。我々呑兵衛からすれば、そのミスの1本は当たりかもしれません(笑)。

メーカーズマークはストレートでも最高に美味しいバーボンですが、ロックでもハイボールでもマッチします。メーカーズマーク蒸留所近くのレストランで食事をしたときには、メーカーズマークのミントジュレップが出てきて、とても美味しかったです。カップにミントと砂糖を入れてよく混ぜ、メーカーズマークを30ml注いでクラッシュアイスを入れて完成。夏に最高のカクテルです。

メーカーズマークには通常モデルのほかに、「メーカーズマーク 46」という製品もあります。熟成させる樽の中に、焦がしたフレンチオークの板を入れて、より原酒が木材と触れる面積を増やしたものです。ウッディな味わいが魅力のワンランク上のメーカーズマークです。

メーカーズマークはほとんどのバーで扱っていると思います。今日のバーで赤い封蝋を見かけたら、メーカーズマークを頼んでみてはいかがでしょうか。

―[30代が知らないと恥ずかしい! 今さら聞けないお酒のキホン]―

【柳谷智宣】

お酒を毎晩飲むため、20年前にIT・ビジネスライターとしてデビュー。酒好きが高じて、2011年に原価BARをオープン。原価BARクラウドファンディング募集中。ご支援お願いします!

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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