あいみょん、ドラマ主題歌にCMと絶好調。“驚きがない歌”の力とは

女子SPA!

2020/7/30 15:46

 現在、多部未華子(31)主演のドラマ『私の家政夫ナギサさん』(TBS)の主題歌「裸の心」がヒットしている、シンガーソングライターのあいみょん(25)。同じコンビで淡麗グリーンラベルのCMにも出演するなど、音楽ファン以外にも名前が浸透してきました。9月9日には3枚目のアルバム「おいしいパスタがあると聞いて」のリリースも控えており、ますます人気に拍車がかかりそうです。

◆驚きがない、安心安全な、あいみょんの音楽

「君はロックを聴かない」(2017)のスマッシュヒットに始まり、「マリーゴールド」(2018)で地位を確立したあいみょん。その後も映画『クレヨンしんちゃん』の主題歌「ハルノヒ」(2019)や、『news zero』のテーマ曲「さよならの今日に」(2020)など、活躍の場を広げています。

いまや、ソロミュージシャンとしては米津玄師(29)と並んで一人勝ち状態ですが、改めて楽曲を聴くと、実にシンプル。フォークやニューミュージックに親しんだ中高年なら、懐かしさすらおぼえるはずです。

ギター教則本に載っているような王道のコード進行に、みんなで声を合わせて歌いたくなるピュアなメロディ。言葉の乗せ方はリズム的にちょっぴりチャレンジングで、現代風にアップデートされていますが、歌メロの基本線は予想から大きく外れることはない。10年ほど前のテイラー・スウィフト(30)みたいに、おじいちゃんおばあちゃんが安心して孫に聞かせられる、すこぶる良質な音楽なのです。

◆おおらかな凡庸さが魅力

だから、あいみょんの音楽に驚くことはまずありません。かといって、つまらないわけでもない。安心で安全な構造に守られながら、心の琴線に最大公約数的に触れてくる。とても効率的な音楽なのだと思います。

このおおらかな凡庸さこそが、あいみょんの魅力なのではないでしょうか。

かつて一斉を風靡してきたソングライターたちと比較してみましょう。

◆aikoや宇多田ヒカルのような鮮烈さはない

たとえば、aiko(44)なら、一曲の中で“そこでこうくるか”とうならせるフレーズが必ずあります。象徴的なのが「くちびる」(2012)でしょう。まさにサビに入る、そのフレーズで、突然ブルースが響き出すのです。何の予告もなしに、それまでのストレートな音階から半分、もしくは4分の1ほどズラした音が使われ、楽曲全体のトーンをガラリと変えてしまう。黒人音楽の鮮烈な解釈として、忘れがたい一曲です。

そして、宇多田ヒカル(37)の奇跡的なタイム感も忘れることはできません。「Be My Last」(2006)のサビで繰り返されるフェイクには驚かされました。ひとつのリズムの定められた横幅の中で、自由自在に時間を操る運動神経は群を抜いています。

一方、あいみょんを聴いていても、このような発見はありません。誤解を恐れずに言えば、そんなに一生懸命にならなくても楽しめるのです。しかし、細部のきらめき以上に、彼女には大きなアドバンテージがあるように思います。

◆音楽を熱心に聞かない層にもうける

それは、ギターを抱えた立ち姿のシルエットがカッコいいこと。そして、歌以前の発声そのものに、慎ましやかな知性も感じます。女性ファッション誌『Vogue』にもたびたび登場しているように、ファッションアイコンでもある。

こうしたトータルなキャラクターを押し出すパーツの一つとして、おおらかで凡庸な音楽がうまいこと機能していると思います。そのおかげで、熱心に音楽を聞かない層にも受け入れられる間口の広さが生まれているのではないでしょうか。

特に、全編ワンカットであいみょんのアップで構成されている「さよならの今日に」のMVは説得力十分でした。彼女が映っているだけで、なんとなく見てしまう。着こなしや仕草、表情など、全人格的な懐の広さが伝わるから、気になってしまうのですね。ファン以外にもアピールする上で、欠かせない資質でしょう。もしかしたら、作曲の技術以上に大切なことかもしれません。

なかなか音楽が売れない時代に、したたかに売れ続けるあいみょん。天才や奇才などと呼ぶ必要を感じさせないところに、非凡さがうかがえるのです。

<文/音楽批評・石黒隆之>

【石黒隆之】

音楽批評。カラオケの十八番は『誰より好きなのに』(古内東子)

当記事は女子SPA!の提供記事です。

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