ゆにばーす川瀬が明かす「なぜ芸人にばかり面白いことが起きるのか」【ゆにばーす川瀬名人の認定戯言#6】


ケータイよしもとで連載していた人気コラム、『ゆにばーす川瀬名人の認定戯言』がラフマガで復活しました。
川瀬名人の「戯言」にお付き合いください。

出典: ケータイよしもと

タイトル『自覚なきトッピングエピソード論』


ココイチの話でも二郎系ラーメンの話でもない。
「話」の話である。

この一連のコロナ騒動でコロナ情報はありとあらゆるメディアで飛び交った。
皆、どこで仕入れたかもわからぬあっているかも間違っているかも判らぬ知識を、会う人会う人に話したり書き込んだり。

無論、これは致し方ないことであり人の噂話に戸は立てられぬ世の中なので責める気もない。

ただ、問題は、聞いた話をそのまま人に伝えているか否かということである。

ライブ後にエゴサをしてもまぁ文脈を削ったり言い方を変えたりと原型をほぼ留めてない書き込みを見ることも多々ある。聞いた話を人に伝えようとする時、面白く、わかりやすく、より誇張して、無意識化のサービス精神をプラスして人に伝える。芸人でなくてもこの有様だ。

芸人でなくてもこの有様なのだから、サービス精神と自己顕示欲の塊である芸人がこう言った話を人に伝える時、その話のトッピング量は一般人がココイチに生卵とほうれん草くらいとするなら、芸人はもうルーが見えなくなるくらいの量になる。

これをお笑い用語で「盛る」という。

一般の人の話は盛るとは少し違う。
一般の人は自分をよく見せたり、わかりやすくしたり、盛る目的と意図が多々あるからだ。

しかしながら芸人は違う。
ただ「ウケる」ためだけに盛る。
極めて純粋な気持ちである。

自粛明けくらいに髪を切りに行きつけの美容院に行って、自粛中に溜まっていたエピソードをしこたま喋った。ウケた。その後にこう聞かれた。

「この間、すべらない話も見ていて思ったんですけど芸人さんってなんでそんな面白い事ばっかり起きるんですか?嘘じゃないんですか?」

つまりこの美容師さんは、嘘だ~と心の中では疑いつつ笑ってしまっているわけである。

その時は返事を濁したが、はっきり言おう。

嘘です。

いや嘘は言いすぎた。
完全な嘘ではない。

盛ってるだけなのである。
完全な嘘ではないが嘘が混ぜてある。

つまり0を100にしてないが
20くらいなら平気で100にしてる。
20を30にしてるのではない。
20を100にくらいなら余裕でする。

ほぼ創作落語の勢いである。
無論、全部が全部ではない。
ただただ本当の話もある。
だが大半はそうだと言って差し支えない。

いや、川瀬、そんなこと言っちゃっていいの?
企業秘密みたいなもんじゃないの?そうご心配の人もいるかもしれない。

全然平気。
なぜなら前述した美容師さんも含め、聞き手は皆心の中でどこか嘘だと思ってるにも関わらず笑っているのだから。

ただし、恐ろしい話はここからである。
エピソード話をしている側、つまり芸人側はこれを
嘘だと思ってない
のである。

もう、ウケたい気持ちが前のめりすぎて嘘とか思いをめぐらす余裕がない。
全部本当にあったことだと思って喋っている。

デビューしてすぐに「人志松本の〇〇な話」や「さんま御殿」で踊るヒット賞を総なめにした先輩のタモンズ大波さん曰く
「何遍も人にホンマにあったこととして喋ってるうちに自分でもどこまでが嘘でどこまでがホンマかわからんくなるまでいったらええねん」

もうこれは自己催眠である。
正直、川瀬も実家の借金10億3200万円は盛っているが盛ってるうちに正確な額が分からなくなってしまっている。今更実家に問い合わすことはとてもじゃないが勇気がない。

ただこの自己催眠法により芸人のエピソードは
本人が嘘の気持ちが微塵もない状態で話すことで本当のように聞こえる
という怖すぎる理論で成立してる。
聞き手より本来嘘をついている話し手の方が自分の話に疑いがない。

しかし、この理論を実践するのは並大抵のものではない。
何故なら、この理論は自分を騙すくらい、
色んな人に同じエピソードを手を替え品を替え話し続けなければいけないのである。

その過程が如何に苦難の道か垣間見たことがある。

もうやめてしまったが同期でメルボルン松本という男がいた。
兵庫県の赤穂の出身で、関東の人が関西人に持つイメージをそのまま煮詰めたような
ザ・関西な男である。

彼の簡単な説明書としてこういうエピソードがある。

昔、川瀬は彼に飯に誘われた。
ここからは人となりを伝えるため敢えて会話のみで表現させてもらう。

「川瀬、うどん食いに行かへん?」
「え?うどん?東京そんな美味いうどんないで」
「ええやん、うどん食いたなってん、あ、着いた!ここやここ」
「いや、松本、ここソバ屋やんけ」
「ええやん、急にソバ食いたなってん!」
ガラガラ
「おばちゃん、カツ丼ちょうだーい」
「ずっとなんやねんおまえ!!」
「いやそんなことよりここの水マッズ!!!!」

これだけは断じて盛ってないことをお約束しよう。
とにかくこれがメルボルン松本である。

その彼が一度、帰り道にこんな話をしてきた。

「いや、こないだな、ダンビラムーチョの大原と飲んでたんやけど、俺がもうガンガンエピソード喋っててん、んでもうオチよ、オチの手前で、いきなりドスン!!ってデッカいネズミ落ちてきてん!!んで俺と目あってコラ!言うたらサーって逃げてってん!」

へー、という感じで聞いていたが
1ヶ月後、ライブのエンディングで彼はまたその話しをしていた。

「いや、こないだね、同期のダンビラムーチョの大原と飲んでたんですけど、俺がもうガンガンエピソード喋ってて、んでもうオチよ、オチの手前で、いきなりドスン!!って、何これってみたら、もう猫くらいでかいネズミ落ちてきてん!!これマジなんすよ!んで俺と目あってコラ!言うたらチュー!!って威嚇してきて大原がコラって言うたらサーって逃げてってたんすよ!俺ネズミにめっちゃ舐められたんすよ!」

かなりトッピングが増えていた。
ダンビラムーチョを同期と丁寧に説明するところ
オチをネズミに舐められたことにするため大原に怒られたらネズミは逃げて松本には歯向かってきたことにしたこと
極め付けはネズミが猫くらいの大きさに進化したこと
結果的にココイチカレーにジャンボメンチカツ、ほうれん草束ごと、生卵8個は盛ってる。

さらにそこから1ヶ月、同期ライブの打ち上げにて。

「いや、俺結構なめられやすいねんけどさ、
こないだもあってん。ダンビラムーチョの大原と飲んでたんやけど、大原がガンガンエピソードしかけてくるから俺ももうガンガンエピソード喋っててん、グァーって喋ってんでもうオチよ、オチの手前で、いきなりドスン!!って!!こーーーんくらいのネズミ落ちてきてん!!んで俺と目あってコラ!言うたら、ヂュゥーーーー!!いうて飛びかかってきて!大原がそれ見て、コラ!!っていうたらチューって逃げてってん!俺、ネズミにすら舐められてんのよ!ヤバない!?」

色々と改良の跡がうかがえる。
オチが舐められてるやから前フリに舐められてる話というテーマをふっておくこと
緩急がついて、ジュニアさんが開発した擬音グァー!!も使っていること
そして、極め付けがこーんくらいといって所作でカピバラくらいのデカさを提示して何かで例えるより所作と熱量で持っていこうとしたこと
結果、ココイチカレーにカピバラのヒレカツ、キャベツ1玉、ダチョウの卵3個のトッピングとなった。

何か感動すら覚えた。
もはや原型がわからない。
松本ももう覚えていないやろう、
ネズミがただちょっとデカかった頃の話は。

「んでな、その後な」

え?続きあんの???
ここからルー足すの?米足すの?
まじかよ!松本!

「店出てさ、最悪やったなぁ、て大原と言うてて今何時やろと思ってiPhoneみたら木曜日でチュー!ズデーやってん。」

松本。それは火曜日や。

最後にかけたソースが腐ってた。
盛ってもいいが盛り方は間違ってはいけない。

ただ今回のこの話を盛ってるかどうかは
みなさんでご判断ください。

とにかく川瀬は今日もエピソードを盛って
コロナ関連のニュースは盛って伝えないようにしたいと思います。

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