「withコロナ」時代の海外旅行、旅の達人たちの見解は…

日刊SPA!

2020/7/29 15:50

 例年であれば、この時期は“旅行シーズン”だった。世界中を襲った新型コロナウイルス。世間では「旅行なんて不謹慎」という空気も漂うなか、観光業界は冷え込んだ。

そんななか政府主導で始まった国内旅行の需要喚起策「Go To トラベル」キャンペーン。いま再び感染者数が増加するなか方針は二転三転、泥沼化しながらも7月22日よりスタートした。長期休暇を利用して旅行したい気持ちはあれど、目まぐるしく変化する状況において不安はぬぐいきれない。“withコロナ”における旅行は判断が非常に難しい。

国内に限らず、8月は通常であれば海外に出かけていたという人も多いはずだが、海外旅行については実際どうなのか。

東京都・高円寺のライブハウス「高円寺パンディット」にて、『モンスター・トラベラー 海外ブラックロード大放談』(イースト・プレス)発売記念トークイベントに登場した旅行作家・ジャーナリストの嵐よういち氏、丸山ゴンザレス氏、和田虫象氏の三人に話を聞いた。

◆コロナ禍での海外旅行は「覚悟が必要」

これまで定期的に海外まで取材に赴いていたゴンザレス氏でさえ、現在はタイミングを計りかねている様子。

「コロナ禍での動きは、つねに厳しい目を向けられるので、自分の気持ちだけでは動けないですし、そもそも自分や周辺への感染リスクもつきまといます。これまでに自分の安全というリスクを気にしないで取材してきたのとは、種類が違う感じですよね。

だから、いまはできること、特にこれまでにできなかった情報収集を中心に時間を過ごしています」(ゴンザレス氏)

虫象氏も「旅行はまだ先になりそう」と話す。

「すでにトルコやギリシャなど観光国が隔離不要で渡航解禁していますが、帰国後の自主隔離が必要だったり感染者も少なくなく、以前のように気軽に旅できる状況とは程遠い。

旅先でも状況の変化が早く、いきなり閉鎖や休業する施設も多いので、もう少し多くの国で自由に海外旅行できる状況になれば、最新情報を収集しつつ渡航したいと思います。以前だと高かった日程変更可能なオープンチケットが格安で売られるなど、航空会社もコロナ禍に対応した販売方法を模索しているので、それらを活用していきたいですね」(虫象氏)

嵐氏は毎年、世界各国を旅してきたが、それでも「今年の海外旅行は諦めている」という。

「情報が流動的でトラブルも増えてくる。それでも……という人は常にアンテナを張って、ある程度の覚悟を持って旅してくれ。自分は来年5月ぐらいに行ければラッキーかなと考えている」(嵐氏)

そして最後に「こんななかで旅するなんて、ベテラン以外はヤメたほうがいい」と釘を刺した。

旅の達人である彼らでさえコロナ禍ではどうしようもない状態なのだ。たまに旅行する程度の一般人が海外を訪れることは、よっぽどの事情でもなければ、いささか現実的ではないのかもしれない。それでも海外気分を味わいたい場合は……。

「いまは『Googleストリートビュー』で海外気分を堪能してお茶を濁しています」(虫象氏)

虫象氏のように、『Googleストリートビュー』を活用するのも手だろう。

◆旅行作家集団「ブラックロード・ファミリー」とは何者か?

この日(7月19日)、東京都・高円寺のライブハウス「高円寺パンディット」で『モンスター・トラベラー 海外ブラックロード大放談』(イースト・プレス)発売記念トークイベントが開催されていた。新型コロナウイルス対策のため、アルコール消毒や来場時の検温はもちろん、観客は人数限定となり、その様子をライブ配信するという試みだった。

ステージには、著者であるゴンザレス氏、虫象氏が登壇。嵐氏は自宅からのリモート参加となった。

さて、海外旅行本が好きならば、一度は耳にしたことがあるであろう彼らの名前。旅系の界隈では「ブラックロード・ファミリー」などと呼ばれているが、そもそも何者たちなのか。

2010年、『海外ブラックロード』(彩図社)シリーズの著者である嵐氏、ゴンザレス氏、虫象氏が旅のよもやま話をする「海外ブラックロード」ポッドキャスト(ネットラジオ)をスタートさせた。嵐氏が旅にまつわる人たちをゲストで招くようになり、気に入った人たちのことを「ブラックロード・ファミリー」と呼ぶようになったという。

そのメンバーには作家の草下シンヤ氏、さくら剛氏、石田ゆうすけ氏、さらにはお笑い評論家のラリー遠田氏なども名を連ねるという。ただし、それは「嵐さんが勝手にファミリーと呼んでいるだけで、本人の許可は取っていない」(ゴンザレス氏)とか。

◆ポッドキャスト(ネットラジオ)が10周年

スラム、夜遊び、メシ……。その後イベントでは、それぞれが持ち寄った旅の思い出写真のスライドを中心に、ディープなトークが展開される。虫象氏による“海外のトイレ事情”など、絶対に雑誌やガイドブックには載せられない内容も(笑)。

そんな今年で10周年を迎えた「海外ブラックロード」ポッドキャスト。『モンスター・トラベラー』は、その傑作エピソードを中心にまとめたものだ。

「10年前に“丸ゴン”(※テレビ出演の影響で「ゴンザレス」の呼び名が一般的になったが、古い付き合いの人間は“丸ゴン”と呼ぶ)と収録した第一回放送など、過去音源が文字起こしされている」(嵐氏)

「ガイドブックには書いていない下品な旅のテクニックとか、世界の1000円以下の風俗店についてなど、とにかく下品な情報満載です」(虫象氏)

「自分で作った居場所であり原点です。そのぶんよそ行きではない本音が出過ぎてとにかく下世話でくだらない話ばっかり。ただ、それが旅人のリアルなんだろうとも思う」(ゴンザレス氏)

今でこそ、テレビ番組『クレイジージャーニー』(TBS系)への出演で“危険地帯ジャーナリスト”として知られるようになったゴンザレス氏だが、ポッドキャストで番組を立ち上げた当時は、先行きが見えない状態だったと話す。

「出版社を退職してフリーランスになったばかりで。たんに自分を売り出すメディアがほしかったんですが、“ポッドキャスト”というものが今後伸びるかもしれないと思って。のちにポッドキャスト自体が下火になってしまうんですけどね(汗)。

まあ、自分の原点でもある旅をテーマにしようと考えたとき、まっさきに嵐さんが浮かんだ。もはや旅したことがない場所なんてないんじゃないかってぐらい、いろんな場所に行ってましたから」(同)

そこに嵐氏が「気に入った」という節約旅の達人・虫象氏を加え、三人体制で配信が続けられた。

「以前はポッドキャストの番組ランキングがあったんですが、それで1位になって。そのときは、大手の番組なんかをどんどん追い抜いていく感覚がきもちよかった」(同)

こうしてコアな旅人の間では人気の番組となったが、嵐氏によれば、続行の危機もあったという。

「だんだん丸ゴンがテレビの仕事で忙しくなって。じつは、もうヤメようかって話も出ていた。虫象をはじめ、いろんな人の協力があってなんとか続けることができた」(嵐氏)

旅のスタイルはさまざまだが、番組は一癖も二癖もある旅人との対談を中心に配信され、ときには海外旅行中に現地で収録されることもあった。今回、「ブラックロード」ポッドキャストは大きな節目を迎えたが、今後も続いていくのかどうか。嵐氏は協力者たちへの感謝を述べつつも「やっぱり状況は変わっていくから何年後どうなっているのかはわからない」と話す。

ゴンザレス氏と虫象氏は「すべては嵐さんの気分次第」とも言うが、どこかを旅すれば、つのる話もあるだろう。旅を続けるうちは、きっと番組も続いていく……はず。<取材・文・撮影/藤山ムツキ>

【藤山ムツキ】

ライター・編集者。著書に『海外アングラ旅行』『実録!いかがわしい経験をしまくってみました』(共に彩図社)など。執筆協力に『旅の賢人たちがつくった海外旅行最強ナビ【最新版】』(辰巳出版)がある。Twitter:@gold_gogogo

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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