猫はなぜ仕事の邪魔をしてくる? 子供っぽい性格の猫が増えている

日刊SPA!

2020/7/28 15:54

 スマホカメラやSNSの普及により広がった、空前の猫ブーム。一般社団法人ペットフード協会が毎年行っている「全国犬猫飼育実態調査」によると、令和元年時点での犬の飼育頭数は約880万頭。それに対し、猫の飼育頭数は約980万頭と差がある。犬と違ってしつけや散歩の負担が少ないため、家族住まいや単身者にペットとして人気な猫。

しかしペット化が進むにつれ、猫の性質は徐々に変化。最新の研究では猫の寿命が延びるかもしれない大発見もされている。

◆飼い主に依存する現代の猫たち

猫を飼っている人ならば、机で作業をしている時に猫に邪魔される……なんて経験が一度はあるだろう。普段はそっけないのに、机に書類を広げたりパソコン作業をしようとしたりすると、その上に乗ってくる。その理由について、獣医師であるにゃんとすさん(Twitter:@nyantostos)は「現代の飼い猫が子猫の性質を残したまま成猫になっているのがいちばんの理由」と語る。

「専門的な用語で『ネオテニー(幼形成熟)』といいますが、子供っぽいまま大人になってしまうのが、飼い主の邪魔をしてくる原因と考えられています。子猫は好奇心旺盛で、母猫の気を引きたい・かまってほしいという欲求を持っているんです。そういった欲求に似た感情を、飼い主にも抱いているんですね。飼い主に対して、かまってほしい・こっちを見てほしいと邪魔してくるんだと思います」

猫の『ネオテニー(幼形成熟)』には、猫と人との関係性の変化が大きく影響している。にゃんとすさんによると、今の飼い猫は自立心や独立心が薄れ、飼い主に対する依存度が上がっているそうだ。

「猫は本来、犬と違って群れを作らずにひとりで狩りをして生きていた、自立した動物だったんです。でも一万年前ほど前から、人と生活を共にするようになりました。現代の飼い猫は基本的にずっと飼い主さんと一緒にいるので、狩りをする必要がなくなってきていますよね。ご飯は勝手に出てくるし、人間が世話をしてくれる。その結果自立心が無くなり、子供っぽいまま大人になる現象が起きているのではないかと考えられています」

イエネコの歴史は紀元前の古代エジプト文明までさかのぼる。ヨーロッパヤマネコの亜種・リビアヤマネコを家畜化したものが、現代のイエネコのルーツだ。日本にも古代から野生の猫は棲息していたが、西洋のイエネコが輸入されたのは奈良時代に入ってから。以来、猫と人とは密接な関係を築いてきた。

猫の飼育方法も、昭和の時代は半ノラや外飼いが当たり前だった。だが今では完全室内飼いが進んでいる。この10年~20年で人と猫との距離は以前よりも縮まっており、猫がもっと人に依存するのではと言われている。

「『分離不安』といって、犬は飼い主と離れると吠えたり、体調を崩したりといった症状が出ます。最近になって、猫にも『分離不安』があると分かってきました。飼い主と離れた際の猫の行動をモニタリングすると、モノを壊したり、過剰に鳴いたり、トイレ以外の場所でおしっこをしたりといった行動が観察されたそうです。また別の研究では、飼い主が外出している時間が長い方が、より長く喉をゴロゴロ鳴らして寂しがったそうです。そういう行動が研究で見られるようになってきて、飼い主と猫の関係は昔に比べてどんどん密接になっている印象があります」

ネズミや小鳥などを狩り生きてきた猫だが、イエネコ化が進むにつれて味覚も贅沢になりつつある。

「基本的に猫はグルメなので、食べ物の好き嫌いがあります。現代の飼い猫は、子猫の時に食べたもので好みが決まってきますね。例えば、ウェットフードだけ与えられている子は、大人になってドライフードを食べないこともありますね。ペットフードのブランドによって味も違いますし、猫は味や匂いの違いに敏感なので犬よりグルメといえます」

自立心や独立心が薄れてきたとはいえ、猫は自分のペースを大事にする生き物だ。自分の気が向いた時だけかまってほしいとじゃれてくる姿や、きまぐれな生態が多くの人間の心を掴んでいる。しかし、猫の生態や行動の研究はあまり進んでいない。

◆犬より遅れている猫の研究……これからは猫の時代?

獣医師であり研究員でもあるにゃんとすさんのTwitterには、猫を飼っている人から日々質問が寄せられている。猫の生態に関して、行動学的に解明されているものはあれど、実際はまだ多くが謎に包まれている。

「猫の研究は人に比べてももちろん遅れているし、犬と比べても遅れています。研究の内容にもよるんですが、どういうトイレが好きかなど行動学的な研究はそこそこされていますね。それでも研究例は少ないです」

その中でも、猫の病気や治療にまつわる研究はより一層遅れているという。

「今は飼育頭数が逆転しているんですが、今でも動物病院にくる患畜のメインは犬です。猫って犬に比べると、病院に連れてくるハードルが高いんですね。未だに来院するのは犬のほうが多くて、だから犬の研究は進んでいます。猫ブームもあって皆さん猫に注目しはじめていますが、それでもかなり遅れている。最近やっと猫の研究が増えてきた感じです」

猫研究が徐々に進む中、東京大学医学部が猫の腎臓病について新たな発見を発表した。猫は腎臓病になりやすく、腎不全などで死亡する事例も多いが、なぜ腎臓病になりやすいのかは長年不明とされていた。同大学はAIMと呼ばれる「体内のゴミを掃除する」タンパク質を発見。ヒトやマウスでは正常に機能するAIMは、猫では発動しないことも明らかにした。

「正常なAIMを腎臓病の猫に投与する治験も始まっています。もし効果があると証明されれば、猫の寿命が大きく伸びるかもしれません」

完全室内飼いの場合、猫の平均寿命は10年から15年。もし猫の寿命が今よりも伸びた場合、人間と暮らす時間も増える。そのとき猫の野生心は果たして残っているのだろうか。<取材・文/倉本菜生>

【倉本菜生】

福岡県出身。フリーライター。龍谷大学大学院在籍中。キャバ嬢・ホステスとして11年勤務。コスプレやポールダンスなど、サブカル・アングラ文化にも精通。Twitter:@0ElectricSheep0

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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