誰にも代えがたい三浦春馬のショウ・マスト・ゴー・オンが止まってしまったことを惜しむ

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水を得た魚のごとく暴れまわった劇団☆新感線の舞台7月18日(土)、映画『コンフィデンスマンJP ロマンス編』が地上波初放送された。三浦春馬は主人公ダー子(長澤まさみ)と過去ワケありだった信用詐欺師ジェシー役で出演、物語をかき回した。

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ダ−子をスマートにエスコートするシーンから逃げ足の速さまで、自由自在。極上の笑顔からちょっと物騒な表情まで鮮やかに演じて、映画に華を添えていた。どんな作品でも三浦春馬が出ると画面が艶やかになる。

地球ゴージャスの舞台『星の大地に降る涙』(09年)に出た三浦春馬は凄かった。動きのキレが抜群によくて、長い手足を空を斬るように素早く動かす姿は、演劇の魔物が取り憑いているかのようだった。

そんな彼を演劇界がほおっておくはずがない。『星の大地に降る涙』のあと、地球ゴージャス作品『海盗セブン』(12年)に再び出て、さらに力を発揮したあと、活劇に定評のある劇団☆新感線が彼を起用したことは必然であったと思う。『ZIPANG PUNK~五右衛門ロックIII』(12年)では水を得た魚のごとく暴れまわった。

小栗旬に対する次世代の脅威としてふさわしい存在に三浦春馬、最強。二十代前半の三浦春馬は若さという特権を余すことなく使って、映画『クローズZERO II』(09年)では、小栗旬が演じる主人公の最強のライバルとして登場。俳優としては当時てっぺんにいた小栗旬に対する次世代の脅威としてふさわしい存在だった。

熱くコツコツ叩き上げていくところに素朴な雰囲気のある小栗に対して、三浦は最高のエンジンとボディを整備したレーシングカーのような威力がある。とにかくキレ者という印象で、それは最近の『銀魂2 掟は破るためにこそある』(18年)でも健在であった。

三浦の持つその強風のような速度は危うさでもあり、基本、笑顔がやさしく少年の心を失わない好青年という印象もある彼が、役によっては時々ものすごく獰猛な瞳をしていた。そのちょっと飢えたような瞳が色気に転じて女性を魅了する。

『ラスト・シンデレラ』(13年 フジテレビ系)では、年上のヒロイン(篠原涼子)を狙う若者役で出演。上半身ハダカで瞳をぎらつかせてベッドの上でにじりよるインパクトのあるシーンもあって、それでも決して脂ぎらない清新な野性味には誰もがドキリとしたことだろう。ヒロインには気のおけない仕事の同期(藤木直人)がいて、気楽な同期と刺激的な年下との間で揺れるというドラマに三浦はじつにいい対抗馬として存在していた。

主役として活躍する才能もあるうえ、前述の『クローズZERO II』のような好敵手みたいな存在が光る。よくある噛ませ犬ではない(『やまとなでしこ』における東十条さんのような絶対負けそうな役割ではない)、なんなら勝ってしまいそうな圧倒的なライバル役が良い。

『キンキーブーツ』での大胆な身体表現大河ドラマ『おんな城主 直虎』(18年 NHK)の柴咲コウ演じる直虎をはさんで高橋一生とふたりで作り上げる微妙な三角関係なども見事だった。その時は、爽やかで誠実そうに見えていつの間にか他所で子供を作っていたという「スケコマシ」キャラ設定。ストイックな属性も似合うし、意外な微笑ましい属性も難なく演じた。

『オトナ高校』(18年 テレビ朝日系)ではエリートながら女性経験のないことがコンプレックスの主人公をキレッキレのハイテンションで演じ、コメディーの素養も感じさせた。

大胆な身体表現はドラァグクイーンを演じ読売演劇大賞優秀男優賞、杉村春子賞を獲った『キンキーブーツ』(16年、19年)の経験が生かされたのだろう。この舞台では徹底的に体作りをして挑んだ結果、つま先から指先まで筋肉がこれ以上ないほどベストな動きをしていた。

もともと、とにかくひとつひとつの動作が決まるのである。動きは速いけれど止めるとこはしっかり止める。動作が決して流れない。それができる恵まれた身体性のみならず、自分を律する確かな精神性があったからこそだと思う。その身体から出る歌声も澄んで美しかった。

インタビューで明かしたショウ・マスト・ゴー・オンの思い出『地獄のオルフェウス』(15年)や『罪と罰』(19年)などの人間の心を深く掘り下げていく翻訳劇でも力を発揮した。スタニスラフスキーのメソッドを学び役作りに取り入れることもやっていると、以前、インタビューした時、楽しそうに語っていた。すごく真面目に芝居に取り組んでいる人だと感じた。

私が好きだった作品は、自らが企画したテレビドラマ『僕のいた時間』(14年 フジテレビ系)。ALSにかかって徐々に体の自由がきかなくなりながらも懸命に生きようとする青年を演じた。どの場面も真摯な表情をしていた。

以前、インタビューして印象的だったのは、無邪気に笑ったり、時々面白いことを言ったりするところ。子役からやっているので芸歴20年以上でこの世界に慣れているにもかかわらず、どっぷり浸かっているふうにあまり見えなかった。芝居は器用なのだが、他者への対応を決められた感じでこなすのではなく、ちゃんと向き合おうとしてくれる人だと感じた。

ショウ・マスト・ゴー・オン(どんなときでも芝居を続ける)の思い出を聞いたら、劇団☆新感線に出た際、闘いの途中でうっかり刀を落としてしまい、とっさに受け身をとりながら、刀の転がった方向へ跳んで拾って芝居を続けたエピソードを楽しそうに話してくれた。私はそれを実際に見ていないが、その時きっと突風が吹き抜けただろう。

いつだって、誰かを、なにかを想って一直線の強さが大きく伝わってくる俳優であった。理由はわからないが、誰にも代えがたい三浦春馬のショウ・マスト・ゴー・オンが止まってしまったことを惜しむ。

Writer
木俣冬

取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami

当記事はエキレビ!の提供記事です。

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