『半沢直樹』1話 顔筋を激しく動かし続ける堺雅人・市川猿之助 視聴率22% みんな半沢直樹が大好きだ

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新シリーズは出向後の物語。今回は伊佐山が半沢を地獄の果てまで追い詰める7年ぶりに帰ってきた日曜劇場(毎週日曜 よる9時~ TBS系)の初回視聴率は22%(ビデオリサーチ調べ 関東地区)。みんなまだまだが大好きだ。

池井戸潤の金融小説を原作に銀行のリアリティーを描いて大人気だった企業ドラマ『半沢直樹』の前作は、町工場を営む父が融資をストップされて自殺し、主人公・半沢直樹(堺雅人)は、そのきっかけを作った血も涙もない人物・東京中央銀行の大和田(香川照之)に「やられたらやり返す。倍返しだ」と復讐をはかった。前作の最終回ではみごとに悲願を果たすが、頭取(北大路欣也)にやり過ぎをとがめられ、子会社・東京セントラル証券に出向になってしまう。

新シリーズは出向後の物語。今度は、逆に、大和田を慕っていた伊佐山(市川猿之助)が半沢を地獄の果てまで追い詰めると復讐心に燃えるところからはじまる。

あれから7年後の話かと思ったら、あの時の遺恨がいまだに根深いところを見ると7年前からさほど時間は経っていないようでもあり、でも妻の花(上戸彩)からは「おじさん」になったと自覚を促されるし、若手社員・森山(賀来賢人)を飲みに誘っても応じてもらえず、時代の移り変わりを味わう場面もあって、いまひとつ時代設定がよくわからない(明確に時代設定が出てこない。わかる方教えてください)。

堺雅人の明晰な芝居は健在。そして「顔芝居」も子会社で小口の仕事ばかりしてきた半沢だが、IT企業・電脳雑技集団が、同じく新鋭のIT企業スパイラル(お正月にやっていたスペシャルドラマ「半沢直樹スピンオフ企画 『狙われた半沢直樹のパスワード』」にも出てきた会社)を買収したいという大口案件に携わり、久々に熱くなっていたところ、伊佐山の暗躍によって中央銀行が卑怯な手を使って契約をかっさらう。そのうえ、伊佐山は半沢をさらなる地方へ左遷させようと画策していた。仁義に欠けた行為に半沢は「やられたらやり返す。倍返しだ」と怒りを燃やす。

前作は勧善懲悪の水戸黄門の現代版と言われていた『半沢直樹』だったが、新シリーズは血で血を洗う復讐劇という印象。画面も韓国ノワールみたいに黒っぽさが増した気がする。そして、出てくる人物、出てくる人物、相変わらず濃くて、顔筋を激しく動かし続ける。

7年前、半沢直樹が巨悪に挑んでいくバトルを俳優たちの演技合戦で見せ、ドラマにおける「顔芝居」旋風を巻き起こし、顔芝居ブームはいまだにドラマ界で続いている。ブームの火付け役として今回、どう出るかと思っていたら、今回も、堺雅人の明晰な芝居は健在だった。

そして香川照之のパートは従兄弟の市川猿之助がみごとに引き継いでいる(さすが歌舞伎俳優、芸を引き継ぐのが得意)。さらに、歌舞伎界から尾上松也が参戦。ダイナミックな存在感でIT界のカリスマを演じてみせた。

また、堺雅人の出身である早稲田大学演劇研究会の先輩・池田成志が出向組のひとり諸田祥一として参加。いかにもあやしい表情をしていたら、本当に裏切り者だった(期待を裏切らないところが素敵です)。伊佐山と出向組の三木(角田晃広/東京03)と諸田が裏で繋がっていて、セントラルの情報を中央銀行に流していたのだ。

これが会社のメールでやっていて、タイトルもすごくわかりやすくてこんな杜撰でいいのかとびっくりしたのだが、まあそれはいいとしようか。ついでに言えば、社外秘を親会社に漏らしていた裏切り者を責める半沢も、中央銀行に残っている同期の渡真利(及川光博)から逐一情報を得ている。世の中、情報戦なのである。



令和の『半沢直樹』は、ただただやられたらやり返す仁義なき復讐戦半沢は伊佐山のやり口に「これではまるでヤクザの手口だ」と憤るが、昭和のヤクザは筋を通すものだったと思うのだけれど、時代は変わったということなのだろうか。ただただやられたらやり返す仁義なき復讐戦、それが令和の『半沢直樹』なのであった。

電脳雑技集団の平山副社長役の南野陽子も関西弁で東映のヤクザ映画みたいな雰囲気を漂わしていた。突然色っぽいシーンまであった。その一方で「なにかあれば人事、人事と小学生みたい」(by 半沢)という出世か左遷か、そればかりにこだわっている勤め人の悲哀も描く。いったいどこに向かっているのか。

濃過ぎる人たちばかりでも疲れちゃうからか、中央銀行の副頭取・三笠を演じる古田新太は、あえての脱力戦法を選んでいるように見えた。ひょこひょこと歩き、顔はあまり動かさない。ただチクチクチクとシャーペンをノックしている。「人を刺すときは準備は念入りに」「仕留めるのは一瞬で」が口癖らしい切れ者感。

シャーペンは瀬名(尾上松也)の万年筆(父が万年筆工場を経営していたが潰れてしまったという半沢の境遇と似ている)との対比か。いつかシャーペンで瞬時に仕留めるときが来るのだろうか。気になる。スピンオフ企画の主役だったスパイラルのプログラマー高坂(吉沢亮)が登場しないのが残念。

『狙われた半沢直樹のパスワード』 に出ていたセントラルの若手社員・浜村瞳(今田美桜)は出てきて、ほかに、「相棒」を思わせる日本料理屋の女将・智美(井川遥)、瀬名の元・同僚でたもとを分かつ加納(ミュージカル界から井上芳雄)、清田(早稲田劇研と並ぶもうひとつの演劇サークル・演劇倶楽部出身の加藤啓)などキャラがいっぱい出てくるが、皆、わかりやすい属性で、覚えやすい。

ドラマの最初、平山社長(劇団MONOの土田英生)が半沢に「あなたのビジネスのモットーはなんですか?」と聞く。彼はビル・ゲイツが言う「スピード」が自分のモットーだと考えている。中盤になると、大和田が自分の窮地に温情をくれた頭取に「施されたら施し返す。恩返しです」と名言を吐く。

そしてラストになると、ようやく半沢が「やられたらやり返す。倍返しだ」「それが私のモットーなんでね」と言う。「モットー」を使って、半沢のキメ台詞の登場を彩るという努力によって、『半沢直樹』は華々しく復活したのである。
(木俣冬)

番組情報日曜劇場『半沢直樹』
毎週日曜よる9:00~9:54

番組サイト:https://www.tbs.co.jp/hanzawa_naoki/

当記事はエキレビ!の提供記事です。

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