「MIU404」3話 綾野剛走る、星野源が追いかけ岡田健史も走る、そしてまさかの菅田将暉

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「走りたいから走りたいんだよ。それだけだ」(伊吹)

綾野剛と星野源がMOBILE INVESTIGATIVE UNIT (機動捜査隊)のバディを組む「MIU404」(TBS系 毎週金曜よる10時~)の第3回「分岐点」(7月10日放送)は1時間、走って走って一気に見せた。この疾走感は快感。
(以下、ネタバレも含みます)

夜の東京の街を走る走る西武蔵野署管内で起きた「いたずら通報事件」を追う4機捜のメンバーたち。いたずら通報して警官をからかい追いかけさせて逃げ切るゲームを楽しんでいる者がいるらしい。足を使った勝負なら負ける気がしないと意気込む伊吹(綾野剛)だったが、いざ、勝負となると巻かれてしまう。

どうやら相手は複数いてリレー形式で逃げているらしい。捜査によって、彼らはバシリカ高校の元陸上部メンバーらしいとわかる。とある理由で廃部になり持て余した心とカラダのエネルギーの行き場を求めていたのだ。

元マネージャーの真木カホリ(山田杏奈)が110番して警察をおびき出し、陸上部の4人が逃げるという連携が行われていたのだが、その遊びと、実際のストーカー事件とが重なってカホリの身に危険が及ぶが、今度は本当の通報をしても、オオカミ少年の童話のごとく、いたずら通報と思われてしまう。

第3話はこの絡み合う複数の者たちがリレーしながら延々、夜の東京の街を走る中継動画のような画に見応えがあった。綾野剛が走る、いたずら通報犯である高校生4人組が走る、星野源は自転車で走る。岡田健史も走る。漲る速さと若さと熱さが清々しい。コンビニの前をフードコート化してたむろい、「くそったれクズ高校!」と円陣を組む高校生たちの姿はザッツ青春で瑞々しかった。

リレー形式で逃げる高校生4人、伊吹・志摩・九重。ピタゴラ装置のごとくここ数ヶ月コロナ禍でステイホームしている身に、俳優たちの躍動はまぶしかった。新井順子プロデューサーの話だと、コロナ禍止まっていた撮影がこの3話から再開したそうだ。全部が全部、自粛明けではないかもしれないし、走りのシーンは自粛前の撮影だったかもしれないが、エネルギーを発散している姿は、人間の本能全開で、伊吹のセリフ「走りたいから走りたいんだよ。それだけだ」そのものだった。

私達はこの数ヶ月、そういう欲求を抑制させられていた。自粛要請はなくなったとはいえ、感染者は日に日に増加して、明日のことはわからない不安に苛まれている。思いきり動き回れる日は来るのだろうか。そんな気持ちと、廃部に追い込まれた陸上部の部員たちの気持ちが重なって見えた。瑞々しさと切なさの隣り合わせ。

重なって見えるといえば、志摩(星野源)が語る、ピタゴラ装置こと「ルーブ・ゴールドバーグ・マシン」。連鎖運動するマシーンである。頭脳派の志摩はそれと犯罪を重ねて語る。

「障害物をよけたりしながら なにかのスイッチで犯罪を犯してしまう」
「ひとによって障害物の数は違う。正しい道に戻れる人もいれば取り返しがつかなくなる人もいる」
「誰と出会うか出会わないか。この人の行く先を変えるスイッチはなにか。そのときが来るまで誰にもわからない」

これは、面倒くさい伊吹とバディを組み続けるのかと疑問視する九重(岡田健史)に対して言ったことでもある。志摩が、第4機捜の分駐所のキッチンカウンターにありあわせの道具でピタゴラ装置をつくって、銀色の小さい球を走らせると、テーブルからこぼれ落ち、それをその下で寝ていた伊吹が掴む。この画はたくさんの想像力を喚起させる。志摩は伊吹のスイッチになるのか、はたまた伊吹が志摩のスイッチになるのか。もしくは、高校生を走って追いかける伊吹が彼らのスイッチになるのか。

のちにリレー形式で逃げる高校生4人を、伊吹と志摩と九重が各々追いかけるシーンはロケ地の工場や路地裏なども組み合わされて、ピタゴラ装置のようにも見えた。そういえば、1話のカーチェイスもそんなふうに見えなくもないし、2話の犯人と巻き込まれた夫婦の関わりは、「誰と出会うか出会わないか。この人の行く先を変えるスイッチはなにか」という言葉と相通じるものを感じる。「MIU404」は一話完結のように見えて、巨大なピタゴラ装置のなかでうごめく人々の行き着く先を描くのかなと想像した。

そのなかで、ピンチの伊吹に手を差し伸べる志摩の瞬間、米津玄師の「感電」のイントロで、ビビビ感がニクい。

正しい道に戻った者と、弾かれてしまった者……。真木を助けるため、伊吹とのラリーを放棄する勝俣(前田旺志郎)に対して、そのまま逃げてしまった成川岳(鈴鹿央士)。成川を逃してしまった九重。各々のこの選択がサブタイトルの「分岐点」だと感じる。そしてそれにはなんともいえない苦味が伴う。



菅田将暉というこの上ないサプライズこうして「いたずら通報事件」は一旦解決したが、陸上部廃部に関係するドーナツEPという違法ドラッグの問題は未解決である。ひとり逃げてみつからない成川に陽気に忍び寄った関西弁の人物は……なんと菅田将暉。それまでちらちら、意味ありげに大きな太陽を背景に手とかカラダの一部が映っていたその人が、ラストで雨のなか、階段をあがってくると菅田将暉というサプライズにSNSは湧いた。

行き着く間もなく一気に物語を見せて、ラストで驚かせるリズム感は、野木亜紀子の脚本と塚原あゆ子の演出と新井順子プロデューサーの天性のものだろうか。あと編集スタッフ(編集・板部浩章、本編集・森本大輔)も優秀だと思う。

事件を俯瞰する桔梗(麻生久美子)の言葉は重い。

「ネットに広まったおかげで、本来受ける以上の社会的制裁を受けている。罪を裁くのは司法の仕事。世間が好き勝手に私的制裁を加えていい理由にはならない」

成川たちは成川たちで、ネットでぶちまけたいが、関係ないのに同じ学校というだけで巻き込まれないように気遣っていたことが描かれていて、だからこそ胸が痛い。

桔梗のセリフはほかにも「日本語の表現はやわらかかくて美しい。だけど重大な問題までオブラートでつつみ隠してしまいます」や「(未成年が少年法を逆手にとって好き放題していること)私はそれを彼らが教育を受ける機会を損失した結果だと考えてる」など現代社会を鋭く見据えている。

ところが真面目なセリフのあとに、「俺隊長のこと好きだわ」「おれのなかの少年が隊長にビビビビビっと」などと伊吹が混ぜっ返す。軽快なのは走りだけでなく、言葉のやりとりも。志摩と伊吹の会話は軽快に転がっていく。2話は「キュルッとした」、3話は「ウフフってる」と伊吹の独特のワードも楽しいので今後にも期待したい。

菅田将暉のみならず、岡崎体育の怪演や、新井、塚原、野木チームによる傑作ドラマ「アンナチュラル」(18年)の毛利刑事(大倉孝二)と向島刑事(吉田ウーロン太)のゲスト出演などにぎやかな回。事前にネットニュースになって気になっていた“黒川智花が謎の女役でレギュラー出演”は、かなり思わせぶりの登場で、彼女のこれからも気になる。ここからドラマはますます加速していきそうだ。スクリューボールコメディというジャンルがあるが、「MIU404」はピタゴラ装置ミステリーとでもいう新たなジャンルを切り開くか。
(木俣冬)

番組情報
TBS 金曜ドラマ『MIU404』
毎週金曜よる10:00~10:54

番組サイト:https://www.tbs.co.jp/MIU404_TBS/

当記事はエキレビ!の提供記事です。

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