夏のボーナス、手放しで喜べない人たち。大手の平均額(92万円)以上もらえても…

日刊SPA!

2020/7/9 08:53

「今年は家と車の“ボーナス払い”に追われ、人並みの生活ができるかどうかも怪しい。子どもは再来年が中学受験で、私立に行かせようと塾にもやっていたのですが、やめてもらうしかないのかな……」

沈痛な面持ちでこう話すのは、都内の旅行代理店勤務・須崎洋平さん(仮名・40代)。妻も同じ旅行代理店に勤務する共働きの一家で、世帯年収は約1100万円ほど。

日本経済団体連合会(経団連)の発表した「2020年夏ボーナスの妥結状況(第1次集計)」によれば、今夏のボーナス平均額は「前年比6%減の約92万5000円余り」。この数字を見て愕然とした人も少なくないはずだ。ただしこれは、経団連の調査に回答した「大手企業」のボーナス平均額であって、大部分の中小企業では、ボーナスすら出ないところも多い。

須崎さんはいわば“勝ち組”だった。東京郊外のタワーマンション住まい、自家用車はディーラーで中古購入したレクサスの高級SUV……だが、そんな生活がコロナの影響で一変、危機に直面している。

◆「ボーナスのありがたみがわかった」

「毎年夫婦で120万円ほどあったボーナスはゼロ。すでに冬の分も出ないことが決定しており、給与も残業代他がなくなり30%減。コロナ明けといっても、客が元通りになるのは2年後、3年後とも言われていて、給与がさらに減る可能性もある」(須崎さん、以下同)

夫妻は4月の中旬から「リモートワーク」に移ったが、仕事はほぼなく、上司から言われた「金になる事業計画を」という無茶な目標をボーっと眺めて過ごすのみ。

将来のことで妻と口論になることも増え、もはや生活自体を見直さなければいけない状況に陥っている。

「去年までは、ボーナスがもらえない非正規社員、ボーナスが雀の涙ほど、という人たちのことをバカにしていた部分もあります。欲しいなら社員になればいいじゃん、努力でどうにもなるじゃんって。しかし今年は大手企業のボーナスが6%減と聞き、初めてボーナスのありがたみがわかったんです」

経団連から公開されている現在の数字は、コロナの影響があまりなかった春頃に企業から回答されたものだ。追って発表される第二次集計では、厳しい数字になることは明白である。

◆「夏は出ても冬はおそらく出ない」

埼玉県在住、東京都内に本社を置く有名外食チェーン店勤務・北島勇治さん(仮名・50代)は今夏、自身最高額のボーナスを手にしたが、表情は暗い。

「夏のボーナスは110万円ほど。決して大企業ではありませんが、私の場合、業績給の上乗せがあったので、他の社員よりはかなり高めで妻も小躍りしていました。ただ、冬はおそらく出ません。地方店舗の撤退も続々決まっていて、夏のボーナスをもらえたからといって、先行きは全く見えない。こんなことは初めてです」(北島さん、以下同)

今年2月まで北島さんの会社は絶好調で、3月の決算が待ち遠しかったと話す。夏のボーナスどころか、給与の大幅アップも見込まれ、大学卒業以来30年間、会社に尽くしてきてよかったと喜びを噛み締めていた。

ところが、降って湧いたかのようなコロナ禍で、会社の業績は急転直下の赤字に。

「2月までのことが夢のようで、恥ずかしながら酒を飲むと泣いてしまうくらいショックを受けています。靴底をすり減らしながら地方をまわり、オーナーになってくれる人と人間関係を築いて出店を拡大してきた。いわば、自分で生み出した店を今後、殺して回る仕事が待っています。夏以降、給与も数十%カットされるようですが、会社の組合も何も言えない。もう手詰まりです」

◆“ボーナスをもらえるのが当たり前”ではなくなる

前出の2人はまだ生活ができているだけマシなのかもしれない。

一応は「ボーナス」をもらっているものの、ボーナスありきでなんとか生活をしてきた人たちは、命の危険すら覚えている。千葉県在住の小売店チェーン本部勤務・坂本正明さん(仮名・30代)がうったえる。

「うちの会社は、月の基本給が12万円ほど。これは年齢を重ねようが昇進しようが変わりません。世間的にはグレーなやり方なのですが、こうすることで会社が払う各種保険料が安くなるのです。そのぶん、手当や年4回のボーナスがあり、我々はやっと人並みのお金がもらえていました。ところが、コロナの影響で春のボーナスは半減の30万円、夏4分の1の15万円、秋は小遣い程度で冬は出ない可能性が高い」(坂本さん、以下同)

ボーナスとは、あくまでも会社の業績に応じて支払われるものだが、受け取っている側は「毎年もらえるもの」と錯覚してしまう傾向がある。坂本さんの場合も同じだった。6月には住宅ローンのボーナス払いが控えていたが、ローン会社には事情を伝え、数か月先まで支払いの先送りをお願いしたという。

「皆さんにとってのボーナスと、私のボーナスは意味合いが違います。ボーナスを、臨時のご褒美的なものとして喜べる人たちが心底羨ましい」

夏のボーナスが200万円近くだという大手IT企業社員たちからも「冬は怪しい」との声が聞こえ始めた昨今。これも「当たり前のことが当たり前でなくなる」というウィズコロナの「新しい生活様式」の一面だとしたら……。

いつの間にか「ボーナス」も本当に一部の特権階級しかもらえないものになっているのかもしれない。<取材・文/森原ドンタコス>

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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