TUBEのオリジナル作で最高売上の『Bravo!』で“やっぱりこの人たちはすげぇ!”と素直に脱帽

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いきなり私事で恐縮だが、筆者はこれまで自発的にTUBEを聴いたことがない完全なる“TUBE弱者”なのだけれども、7月8日にTUBEの新作『日本の夏からこんにちは』がリリースされるとあって、彼らの過去作品を紹介しようと企てた。弱者の定番行動として最初にTUBEのディスコグラフィーを調べてみたのだが、何と彼らはデビューした1985年から2012年までアルバムのリリースを欠かしていない。実に多作なバンドなのである。弱者らしく、まずその辺りからTUBEのことを探ってみることにしたのだが──。

■歴代でもトップクラスの多作ぶり

TUBEがこれまで発表したオリジナルアルバムは、最新作『日本の夏からこんにちは』を含めて、実に34作品。これは同時期にデビューしたアーティストの中では群を抜いて多い数字である。同じ1985年デビューの米米CLUBが16作品なので、TUBEはその倍以上である。米米は一度解散しているのでそれも止むなしとして、渡辺美里の20作品に比べても大分多い。聖飢魔IIの大教典は第三十三まで発表されているが、これには極悪集大成盤や歴代小教典大全、実況録音盤が含まれているので実質は17作品と、ちょうどTUBEの半分である。ちなみにTUBEはミニアルバム3作品、ベストアルバム3作品、バラードベスト2作品、オールタイムベスト1作品が出ているので、聖飢魔II的にカウントすると、43作品を世に出していることになる。さらにちなみに言うと、このTUBEのオリジナルアルバム34作品というのは、谷村新司の31作品より多く、矢沢永吉と同数。松任谷由実が38作品、さだまさしが42作品、中島みゆきが43作品と大御所たちが鎮座ましますし、途中で名義が変わっているものの、T-SQUAREの今年6月にリリースした新作が通算47作品だったというから、上には上がいるけれども、現在もメジャーで活躍しているバンドやグループの中で、TUBEはズバ抜けてオリジナルアルバムの制作数が多いアーティストと言っていいだろう。

そんなわけだから、当コラムとしてはどの作品をチョイスしていいか激しく迷う。“TUBE弱者”の筆者としては、TUBEと言えば夏、夏と言えばTUBEなのだろうから、まず“夏”を冠した作品が代表作に相応しいだろうと考えた。ところが…である。『N・A・T・S・U』(1990年)、『浪漫の夏』(1993年)、『終わらない夏に』(1994年)、『ゆずれない夏』(1995年)、『夏景色』(2003年)と、最新作『日本の夏からこんにちは』(2020年)を置いておいたとしても、5作品もある。“SUMMER”にしても、『HEART OF SUMMER』(1985年)、『SUMMER DREAM』(1987年)、『SUMMER CITY』(1989年)、『Only Good Summer』(1996年)、『SUMMER ADDICTION』(2011年)と、これも5作品。さすがにタイトルだけでは、どれが代表作か判別が付かない。それならば…と当コラムの通例としてメジャーデビュー作をチョイスする方法もあるが、TUBEは俗に言うインディーズ時代の音源がない(あるのかもしれないけど、それにしても入手超困難だろう)。メジャーデビュー作が1stである。となれば、チャートで初のベスト10入り作品とか、それこそ初1位奪取作とかに白羽の矢を立ててみよう。前者が『THE SEASON IN THE SUN』(1986年)で、後者が『納涼』(1992年)である。“TUBE弱者”としてはどちらでもいいのかなと思ったが、何とも選別が難しかったので、“それでは…”とセールス的にはどちらが良かったのかを調べてみた。

オリコン調べによると、『納涼』はTUBEのアルバムでは第20位で相対的に見れば案外低め(これ、結構ややこしいことになっていて、1992年版が第20位で、2003年の再発版が第11位。合算すれば上位にランクされるのかもしれない)。『THE SEASON IN THE SUN』はオリコン調べの対象が1988年以降にリリースされたCDとなっているので、この調査ではランキングが不明だ。さて、困ったと。そのランキング上位を見ていると、アルバム売上のトップ3は全てベスト盤が占めているのだが、それ以下にオリジナルアルバムが顔を出している。4位『Bravo!』(1997年)。5位『終わらない夏に』。6位『浪漫の夏』。7位がまたベスト盤で、8位『Only Good Summer』。9位『ゆずれない夏』。そして、10位『HEAT WAVER』という結果である。“やはり、“夏”や“SUMMER”がタイトルに着いた作品が上位なんだなぁ”と感心しつつも、そうではない、『Bravo!』なるアルバムがオリジナルでは(少なくともオリコン調べでは)最上位ということに興味を惹かれた。

『Bravo!』が発表された1997年はCD生産枚数が国内過去最高だった年でもあるから、それも少なからず関係しているのであろう。また、『Bravo!』は発表された当時、全11曲に全てタイアップ付きであったというから、それもまたセールスに影響したと思われる。売れた作品が即ち良作でないことは、“売れているものが良いものなら世界一うまいラーメンはカップラーメンだ”という甲本ヒロトの名言を出すまでもなく、自明の理ではあろうが、日本でCDが最も売れた時期=フィジカル・メディアに最大の需要があった時期に、そこに収録された楽曲が全てCM曲やテレビ番組のテーマに使われたというのは、まさしくそこにTUBEの音楽(“大衆”音楽)の役割、そのエッセンスが詰まっているとは考えられる。筆者は“TUBE弱者”なので、正直言ってこの選択は正しいかどうかは分からないけれど、このバンドのある側面は導き出すことはできるだろうと、TUBEの名盤は『Bravo!』であるという賭けに出て見た。以下、その考察である。

■メロディーとヴォーカルの強度、 半端なし!

これは実によくできたアルバムだ。収録曲はどれもこれもJ-ROCKとして申し分のない出来栄えと言っていいだろう。ラテン、HR/HM、ソウルと多彩な要素が入っており、しかもそれらはその雰囲気を湛えただけのような“なんちゃって”ではなく、いずれもかなり本格的である。それでいてまったく衒学的でもないし、スノッブな空気感は欠片もない。南国感であったり、洋楽的なダイナミズムをおおよそ違和感なく自らのサウンドに取り込んでいる。案外見落としがちなところだが、それは素晴らしいと思う。では、どうしてそういうことができるのか? 結論めいたものを先に言ってしまうと、これはメロディーとそれを司るヴォーカリゼーションの強度によるものであろう。簡単に言うと、春畑道哉(Gu)の作る旋律と前田亘輝(Vo)の歌が、何がどうあってもまみれないというか、隠れないというか、ものすごくぶっとい幹として楽曲の中心に存在しているのである。

テンポがミドルより緩やかなものを例に挙げると、それが分かりやすいと思う。具体的には、M2「Purity」、M4「もどり道でも…」、M10「君へのバラード」、M11「そんなもんさ」辺りだが、とにかく親しみやすい。サビは2度も聴けば頭にインプットされるほどに大衆性があると思われ、初めてその楽曲を聴いたとしてもオーラスのサビは口ずさめてしまうほどでなかろうか。俗に言うJ-POPの王道と呼んでいい抑揚であり、仮にこれらの楽曲がTUBEのものでなくともヒットしていたのではないか──そう思わずにいられないメロディーだ。そのヒットポテンシャル十二分のメロディーを、もし民謡を歌ったとしても童謡を歌ったとしても、どんな歌でもそれが完全に自分のものにしてしまう、押しの強~いヴォーカリストが歌うのである。インパクトが弱いことがあろうはずもない。大事なことなのでもう一度書くが、このJ-POPのど真ん中を何も臆することなく堂々と闊歩している歌──『Bravo!』を聴いた限りでも、これがTUBEの最大のポイントであり、最強の武器であると断言してもいいと思う。

M1「Bravo!」はサンバである。アルバムオープニングからいきなりのラテンフレイバー。しかも、先ほども述べた通り、これがなかなかの本格派だ。ちゃんとしている。ブラスも入るし、パーカッシブなリズムが全体を支えているし、コーラスも何かいっぱい人がいる感じで賑やかだ。しかしながら、そこでの中南米の匂いは薄い。例えるなら、夏の日本の海辺というよりもアトラクション施設のプールといった感じだ(失礼な物言いに聞こえたら謝ります)。シングルナンバーでもあったM5「情熱」もそう。こちらはスパニッシュギターが全編に入っていてヨーロッパ系ラテンフレイバーではあって、スチールドラム、ハンズクラップ、ホイッスルなどもあしらわれており、これもなかなかカッコ良いサウンドだ。だが、ラテン音楽にありがちなパッションがグイグイと迫って来るのかと言ったら、案外そうでもない。それはテンションが低いとかいう意味ではなくて、アウトロのスキャットがその象徴だと思うが、いい意味でどこか楽天的な雰囲気。マニアックになりすぎないていないのだ。

いわゆるロックチューンも同様。というか、こちらのほうはもともとJ-ROCK、J-POPと相性のいいジャンルなので、よりすんなり歌が乗っている感じだ。ノイジーなギターリフと重いリズムのM3「Born in Japan~extended surf mix~」。Bruce Springsteen由来の系譜と言っていいM6「壊れかけのMy soul」。若干北欧メタルなテイストが感じられなくもない(ていうか、ストレートに言えばEUROPEっぽい)M9「Make your motion」などがそれで、いずれもサウンドはそれっぽいが、もともとレンジも広くて声量がある前田のヴォーカリゼーションはそこに合わないはずはない。彼のハイトーンのシャウトは本職のHR/HMを凌駕せん勢いである。TUBE楽曲内でぶっとい幹であることはもちろんのこと、どこへ出してもまったく見劣りのしない存在感なのである。30秒間、あるいは15秒間でどれだけのインパクトを与えることができるかが重要なCM業界、TV業界において、そんな前田&春畑の制作する楽曲が放っておかれるわけもない。『Bravo!』収録曲はその全てタイアップが付いたと前述したが、“そりゃあそうだよなぁ”と納得、いや脱帽せざるを得ない内容なのである。

■前向きさを通り越した歌詞も強し!

再三申し上げている通り、筆者は“TUBE弱者”であるので、これまでTUBEの歌詞をちゃんと見てこなかった。TUBEと言えば夏、夏と言えばTUBE…くらいのイメージで、実際に確認もしないで、享楽的なラブソング──誤解を恐れずに言えば、盛りの付いたというか、発情期の男女を描いたものが多いような気がしていたのだが、当然それは大間違いで、事実誤認も甚だしいとしても(ここははっきりと謝っておきます。すみません)、この『Bravo!』においては、恋愛ものと思しき歌詞が多いものの、男女の機微というよりも“これはほぼ人生訓ではないか!?”という内容がほとんどであることが意外だった。享楽的なのはM1のタイトルチューンくらいで、それにしても発情期の感じではない。ラップ的な言葉遊びがユニークで、この辺にもポップセンスを感じるところではある。で、人生訓的歌詞で気になったものを以下に記す。

《壊れかけのMy soul/まるで棘なくしたバラだね/痛みも危険もなくて/たとえ辛くても どんなに遠くてもいつか/この手で開けなきゃ/チャンスの扉》《忘れかけのYour soul/まるで牙なくした獣さ/飢えも渇きもなくて/たとえ傷付いても どんなに強くてもいつか/その手で倒さなきゃ/今の自分を》(M6「壊れかけのMy soul」)。

《眩しい空 見上げれば 瞳の汗も/乾き出すよ Let's try to dream again/傷付いても 泣かないで Open your everything/きっと晴れる その日のために》《戻れない想い出 辿ってみても/むなしいだけ このままじゃ/本当の自由と本音の自分に着替えて/探しに行こう》(M8「Open your everything」)。

《元気出せよ こっち向けよ/イジける毎日 体にもよくないぜ/涙を拭いて/どん底の下はない/這いあがるだけさ 今度はあせらず気楽に/ぼちぼちでいこうぜ》《傷付いても 落ち込んでも/腹がへる 人間/こんなもんさ》《夢見ろよ 何度でも/心も体も ボロボロになって当たり前/人生は そんなもんさ》(M11「そんなもんさ」)。

M8辺りは思わず“傷付いたら泣くよ、普通…”と突っ込みたくなるけれども、M11で《心も体も ボロボロになって当たり前》と追い打ちをかけてくる。こうなると前向きさを通り越して、人によっては無茶振りと感じるかもしれない内容だ。だが、件の親しみやすいメロディーと、とりわけ楽曲におけるぶっとい幹であるところのヴォーカリゼーションであれば、このくらいじゃないとそこに乗らないとも思う。仮に冷めた歌詞が乗ったら歌の熱さを損ないかねないのである。それにしても、ここまで言い切るのは並大抵の覚悟ではないであろう。それこそ“なんちゃって”では済まされるものではない。好き嫌いは別にしても、このこの熱量は大したものだと思う。まさしく “Bravo!”ではある。

TEXT:帆苅智之

アルバム『Bravo!』

1997年発表作品

\n<収録曲>
1.Bravo!
2.Purity
3.Born in Japan~extended surf mix~
4.もどり道でも…
5.情熱
6.壊れかけのMy soul
7.青春白書~After the summer~
8.Open your everything
9.Make your motion
10.君へのバラード
11.そんなもんさ

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当記事はOKMusicの提供記事です。

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