劇団赤鬼・川浪ナミヲと老舗ライブハウス・チキンジョージの児島勝が神戸エンタメの歴史や配信公演を語るーー「人同士の”血の通い”を大切にしたい」

SPICE

2020/7/8 13:00

1995年に神戸で結成し、今年25周年を迎えた劇団赤鬼が7月10日(金)~7月12日(日)に無観客配信公演『EDIH CU AHINO」 (エディ チュ アヒーノ)』を行う。劇団赤鬼にとって初めてとなるオンライン公演。それは会場となるライブハウス・チキンジョージにとっても初めてのことだ。神戸・チキンジョージは1980年のオープンから数度の建て替えを経て、2020年で40周年を迎える。どちらも神戸をホームグラウンドに、エンタメを長年発信し続けてきた。そんな両者が手を組み配信する、まさに「これぞ神戸のエンタメ」ともいえる今回のオンライン公演で、演出の川浪ナミヲが大切にするのは、神戸らしさとも言える「血の通い」だという。SPICEでは、今公演の演出を手掛ける、劇団赤鬼・川浪ナミヲとチキンジョージの専務取締役・児島勝との対談を実施。川浪の思い出も詰まったチキンジョージの歴史を振り返りつつ、現状のライブハウスについて、そしてオンライン公演にかける想いや、さらにはそれぞれの目線で見た神戸のエンタメ界隈について語ってもらった。


児島勝、川浪ナミヲ
児島勝、川浪ナミヲ

ーーまずお二人のご関係からお伺いしてもよろしいでしょうか。

川浪:お話をさせていただける様になったのは、今回の公演も関わってくれているプロデューサー(梅澤正人)を介して知り合ったのがキッカケですね。

児島:そうやね、梅ちゃんとは長い付き合いやし、その流れで紹介してもらってね。

川浪:僕はかなり昔から一方的に知っていましたよ。勝さんはこの界隈のスターですからね。だから勝さんと同じ写真に収まってるのはめちゃくちゃ光栄です。

児島:スターと言っても小さいコミュニティやけどね(笑)

川浪:何をおっしゃいますか! 僕、昔ベーシストの天野SHOさんのライブを手伝いにチキンジョージへ来たことがあって。SHOさんって当時から物凄いベーシストだったじゃないですか。勝さんは、そのSHOさんと仲良さそうにお酒飲んではって。この人はめっちゃ凄い人なんやろうなと、端っこの方で思ってました。

児島:SHOさんはそれこそ40年くらいの付き合いやしね。その端っこに居た頃から、今回チキンで演劇をやる事になったというね。

川浪:本当に光栄ですよ。僕が奈良の学校で陸上部やってたときから、神戸といえばチキンジョージだというイメージはありました。

ーーそこまでチキンジョージの名前が知れ渡ったきっかけは、なんだったのでしょうか?

児島:チキンが出来て数年後にWOWOW、スペースシャワーができて、それを手伝ったりしているなかで、電波に乗って名前が広まったのが大きいと思います。

川浪:ライブのラインナップとか見ても、いわゆる音楽好きが好むミュージシャンが、よくライブをしていたという強烈な印象が残っているのも一つだと思いますよ。石田長生さんとかCharさんとか。

児島:ほんま色んな人にコラボしてもらってた。演劇も赤鬼さんにもやってもらえるしね。

川浪:本当に光栄ですよ。でも勝さん、僕のこと「赤鬼さん」と呼んでるので名前覚えてもらうところから始めないとあかんなと思ってます。改めて川浪ナミヲです!

児島:ハハハ!(笑) 川浪くんね、もう覚えた。
児島勝
児島勝

ーーチキンジョージで演劇の公演というのは、今までどれくらいの回数行われているのでしょうか?

児島:小さい規模の公演含めても本当に僅かしかやってないんちゃうかな。

川浪:そうですよね。あんまりやってはるイメージないですよね。

ーーそんななかで、劇団赤鬼がチキンジョージで、しかもオンラインという形で公演を行うと聞いた時は、どのように思われましたか?

児島:普通には再開出来ないご時世やし、どんどん新しいことをしていくタイミングで、赤鬼さんの新しい試みを行う公演が重なったのは面白いなと。オンラインでやることで楽しみ方の広がりが出て良い部分もあるし。

川浪:オンラインで観るライブや演劇は、生で観るライブや演劇とはまた別の面白さがありますよね。

児島:そうやね。どちらにしても観た人の心に残るものという意味では変わらないしね。

川浪:でも、元々は通常の演劇をここでするというお話をしていたんですよ。チキンジョージの40年の歴史と引っ掛けた音楽ものの芝居をしようと。だから「チキンの歴史教えてください!」と言っても、勝さんは「何でもええから」と全然取材受けてくれなかったですけど(笑)。

児島:そうやったか?(笑) まあ言ってる間にコロナの波が来てしまったけど。

ーー今回のオンライン公演は、そのチキンジョージ40年の歴史的な要素は絡めているのですか?

川浪:内容としては大きく反映はさせていないですが「舞台の上で起こることは全部面白い。チキンジョージはそれを40年もやってきてるねんで!」というのは、ムードとして伝えていきたいと考えています。

児島:舞台の使い方は違っても、伝えられるものは演劇もライブも共通してるしね。そういうふうに色んな形で魅力が広がっていけば良いなと思います。
川浪ナミヲ
川浪ナミヲ

ーー児島さんは音楽で40年間、川浪さんは演劇で25年間、それぞれの目線で神戸のエンタメを見て来られたと思いますが、今の神戸エンタメについてどのような印象をお持ちですか?

児島:あっという間の40年でしたが、京都は学生が多いからいろんな文化が入ってくるのに対して、神戸はこじんまりとしたコミュニティの中で成長していったなとは思いますね。

川浪:確かに、近くの飲み屋行ったら知り合いに絶対会いますもんね(笑)。

児島:この界隈の人はみんな知ってるというか、すぐ仲良くなる。チーム感があるよね。コロナで一層強くなった感じがする。

川浪:あと、僕の勝手なイメージなんですけど、神戸で芸事とされている諸先輩方は、良い意味でも悪い意味でも無欲と言うか。何よりも地元や仲間のことを大事にしている印象があります。勝さんも神戸から出ていくなんて考えたこと無いでしょ?

児島:一回も無いわ。確かに周りにもそういう人多いね。

川浪:うちの劇団も東京公演とかいろんなことしてたんですけど、そろそろ諸先輩方に習って、神戸に腰を据えて面白いことを発信するのがいいなと。今回、チキンジョージでお芝居をしたいと思ったのもそういう経緯なんです。

児島:そうやったんやね。ありがたいことですわ。
児島勝
児島勝

ーーちなみに、40年の歴史を振り返って、一番苦労したことはどのようなことですか?

児島:何回苦労したかわからないですけど、今が一番かもなと思います。

川浪:え! 阪神淡路大震災のときよりもですか?

児島:震災のときは建物が潰れてしまったけど、一生懸命やったら立て直せるというのがあった。でも今回はもう自分らでどうしようもない。先が見えへんかったし、ゴールがないからね。

川浪:……なんか色々思い出して泣きそうになってきました(笑)。実は僕のチキンジョージデビューは、震災後に更地でやっていた『新春歌絵巻』やったんです。

児島:震災後からチキンジョージはちょっとの間、更地でやってたからね。その年の年末には今の土地で仮の小屋建ててやり始めたけど。

川浪:チラシもコピー用紙で、それ握りしめて会場まで行ったの覚えてます。それからその同じ年に劇団赤鬼を作ったんですよ。だからこの新しいチキンジョージと赤鬼は同級生なんです。

児島:そうか、震災からも25年やもんな。ほんまや、同級生や。

ーー逆に40年の中で印象深い楽しかった出来事はございますか?

児島:震災の時も含めて、建て直し作業をしている時が意外と楽しかったかもしれないね。当時、本業で水道屋やったり電気屋、大工とか建て直しで必要な仕事をやってるミュージシャンが周りに居て。そのことが頭入ってたので手伝って貰ったり、そういうのを経験してるのはチキンジョージの強みかなと思いますね。

川浪:神戸を大事にするってそういうとこからでも伝わりますよね。今もしチキンに何かあったら、自分に出来ることは何かというのを真っ先に考えると思います。

ーー改めてこのタイミングに、ここで公演を行うということに意味が増しますね。

川浪:そうですね。本当に劇団赤鬼が25年記念でもあるこの年に、ここで公演をやらせてもらえるというのは光栄なことで。僕にとってのスター達が立ってきたチキンジョージってやっぱり特別な場所なんです。ライブ中でもミュージシャンに「〇〇やってー!」とお客さんが声かけたり、ミュージシャンもそれに「わかったー!」と答えたり「偉そうに言うから今日はやらん!」とか言ったり。そんなやり取りしてる会場って他にないでしょ?(笑)

児島:そうやね(笑)。良い時代に始めたというか、2,3年始めるのが遅れてたらこうなってなかったかもしれない。それくらい当時の流れは早かったしね。

ーー今の世の中も、今だからこそと新しい試みが増え、多くのことがどんどん更新されていく流れの早さを感じますよね。

川浪:ここ最近特に流れは早いですね。そういえば、新しい試みで言うと、今回大道具をチキンジョージにある物をガチャガチャ並べて作って行こうと思ってるんです。いつもと違うので、これまで以上に策を考えないといけないですけど、それすらも今しかできないことなので、この期間は大事に使っていきたいですね。
川浪ナミヲ
川浪ナミヲ

ーー前回のインタビューで川浪さんは「こんなときだからこそ、エンタメに漂う悪い流れ全部ひっくり返すチャンス」と仰っていました。

川浪:ライブハウスが「怖い場所」と思わそうな流れがすごい嫌だったんです。それで火が付いて、この公演企画したんですよ。

児島:それは本当に良いことやわ。だけどこんなに長引くとは思ってなかった。

川浪:一部で大変な事になってると思ってた次の瞬間、全国に広がりましたもんね。この公演の一番の目標は、ここで何も出さないことです。

児島:チキンジョージでも、消毒やら抗菌やら色んな対策はやってるしね。

川浪:稽古も密を避けるために、必要最低限の役者、スタッフ以外は同じ空間に居させないようにしていて。シーンも同時に4人以上出てこないようにしていますし、出演者全員揃うのは本番のときだけなんです。

児島:それは大変やわ。そういうことにも気を使わないとあかんのやね。

川浪:そこまで徹底的にやったほうが、「コロナの影響があっても面白いことが出来る」という今回の趣旨もわかりやすいかなと思っています。

ーー確かに、演じる側としても、観る側としてもその趣旨をより濃く感じることで、捉え方が変わってきますよね。

川浪:そうだと思います。配信だからこそ趣旨をしっかり伝える事は大事ですよね。オンラインという形も然り、受け入れることで観え方が広がるというか。そういえば勝さんは、オンラインで会議とかされてますか?

児島:それがまだ一回もやったことないねん。出来へんというか(笑)。

川浪:オンラインって、実際に対面でお話ししてる時より、他の事を考えてることが多くなって携帯見たりしてしまうんです。直接会うことで生まれる空気感から来る、人同士の気遣いとか思いやりが、ちょっとだけ薄まってる気がして寂しくなる時があったり。古臭い言葉かもしれないですけど、”血の通い”が無いというか。

児島:なるほど。僕なんかは世代的にも、その”血の通い”は重視してしまうしね。まあ時代なんやろなとは思うけど。

川浪:今回の公演は、配信やけどそういう”血の通い”も感じてほしいなと思っているんです。 ただのオンラインコンテンツじゃなくて、生の良さみたいなものを滲み出しつつ、オンラインでしかできないことも仕掛けます。公演を観るスタンスも生とは違った形で観てもらえればと思います。

ーー観るスタンスはどのように変えるのがオススメですか?

川浪:画面で見てるのに参加してるという感覚を楽しんでほしいなと。それこそ昔のチキンジョージのお客さんじゃないですけど、「〇〇やれー!」なんて劇場に居たら言えないじゃないですか。それが配信だと言えるんです。劇場でかしこまって観るのではなくて、家でリラックスして観てもらえると思います。

児島:なんならお酒の一つも飲みながら、タバコも吸いながら観れるしね。

川浪:そうなんです。お客さんがちょっと上の立場から観れる。そんな配信の良さを活かしてこそ、オンライン公演は面白くなる気がします。今回は演劇だけじゃなく、トークコーナーもライブコーナーもありますし。

児島:あまり演劇を観ない人でも気軽に観てもらえれば良いね。

川浪:ライブでも、演劇でも配信公演のライバルはプロ野球の中継とかなんです。あれぐらいの感覚で家族で「今チキンジョージでライブやってるからみんなで観ようぜ」と言ってもらえたら嬉しいですね。

児島:引きこもりながら楽しんでもらって、また生でライブ、演劇を観に来てもらえるのが理想やね。

ーーまた、これまでの日常が戻って来ることを祈りつつ、オンライン公演楽しみにしております。本日はありがとうございました!
児島勝、川浪ナミヲ
児島勝、川浪ナミヲ

取材・文=城本悠太 撮影=ハヤシマコ

あなたにおすすめ

ランキング

ランキングをもっとよむ

注目ニュース

注目記事をもっとよむ

あなたにおすすめ