「MIU404」2話 松下洸平を信じたい綾野剛と疑うことが仕事だと言い切る星野源の対立

エキレビ!



綾野剛と星野源がMOBILE INVESTIGATIVE UNIT (機動捜査隊)のバディを組む「MIU404」(TBS系 金曜よる10時~)の第2回「切なる願い」(7月3日放送)は、志摩(星野)と伊吹(綾野)がほとんど車(“まるごとメロンパン”の販売車)の中で会話しているというなかなか実験的な回だった。

ほぼ車中でのふたりの会話で物語が進行する実験回志摩と伊吹の所属する機動捜査隊は「初動捜査」や逃走している容疑者の「追跡調査」で、複数の警察署や都道府県の管轄地域にまたがる広域事件や重大事件の捜査に当たることもできる。その特性を生かし、都内をパトロール中に偶然発見した殺人事件にかかわっていそうな車を富士山の麓まで追跡することに。

ドラマが開始して4分頃から伊吹と志摩は車に乗っている。開始から17分後、志摩が1回車を下りたが、あとはずっと運転席に伊吹、助手席に志摩が並んでいるだけ。ふたりそろって車を下りるのは31分過ぎてから。それでも伊吹と志摩の軽妙な会話で十分楽しめる。理屈っぽい志摩は長台詞を早口でしゃべり、単純野生ばかの伊吹は短い単語をゆるめのトーンで発する。「女の子のきゅるっとした顔を思い浮かべながら寝たいだろう」の「きゅる」の言い方。

ほわんっとして見えて伊吹の野生の勘はすごい。たまたま隣を走っていた車の中の女性(池津祥子)のすがるような視線に気づくと、女性の襟を背後から乱暴に引っ張る黄緑の袖を見つけ、不審に思う。運転している男(鶴見辰吾)の様子も奇妙。

軽妙なセリフと軽やかかつ怪しげな劇伴が絡み合うそのときちょうど、殺人事件が発生し、容疑者が黄緑のジャンパーを着ているという無線が入った。隣の車に容疑者が乗っているに違いないと主張する伊吹に「袖だけだろ」と志摩は懐疑的。だが、「走る…人質監禁 立てこもり?」の可能性をもあると感じ、桔梗(麻生久美子)に追尾許可を得る。

志摩「容疑者が乗ってるかしれない車両を見つけたかもしれないって言ってるやつが隣にいます」
伊吹「かもかもかよ」
桔梗「ふんわりしてんな」

軽妙なセリフと軽やかかつ怪しげな劇伴が絡み合う。劇伴は「アンナチュラル」でも印象的な劇伴を作っていた得田真裕。音楽に乗って状況が加速していく。でもメロンパンの車は速度が出ない。

走る速度は遅いながら、存在感あり過ぎる黄緑色のまるごとメロンパンのワンボックスカー(中に世界の国旗が飾ってある)が追跡シーンのアクセントになっている。これがふつーの車だと第1話のカーアクションをしないと保たなかっただろう。かといって毎回車を壊していたら大変だ。初回と第2回、メリハリのついた構成である。

志摩と伊吹のゆるふわな服装(おされ)といい、「こんなにラフでいいんですか」と九重(岡田健史)が疑問視する第4機捜の分駐所の間接照明のおされさといい、この刑事ものは一見、カジュアル(ややフジテレビの刑事ものふう)。だが、第4機捜のメンバーの捜査に対する態度は各々真摯である。

陣馬(橋本じゅん)と九重は、黄緑のジャンパーの容疑者の事件の現場まわりを調べる。「俺たちの仕事は99%無駄だ」と陣馬は言う。でも1%の可能性があるなら調べないといけない。伊吹の野生の勘を信じたのかと思わせた志摩も「可能性が0になるまで確認はする」だけだった。

信じたい伊吹と疑うことが仕事だと言う志摩の対立、夫婦の想いもあいまって

第1話で、自分も他人も信じないと言っていた志摩に、伊吹はかつて自分を唯一信じてくれた人の話をする。その間、九重が陣馬に、以前はエリート集団の捜査一課にいた志摩の隠された過去の話をしている。1話で何かありそうな雰囲気を漂わせた志摩は、本当に何かを抱えていそうで、彼が自分も他人も信じない頑なさはその過去と関係しているのだろうか。

「信じる」というコトバが、追跡車の中でも語られている。黄緑色のジャンパーの青年・加々見(松下洸平)にナイフで脅されビクビクしていた夫婦(池津祥子と鶴見辰吾)は彼の事情を聞き、ストックホルム症候群のごとくいつの間にか彼を信じてかばいはじめる。そこには夫婦のある想いがあって……。

志摩は淡々と、単なる後続車のふりをして追跡車にうまいこと盗聴器を仕掛ける。盗聴は場合によっては違法ではないということを早口で伊吹が説明するだけでなく、志摩にパンツのなかのケータイをまさぐられた伊吹がへんな反応をするユーモアも交えつつ、ふたりがBluetoothによって加々見の身の上話を聞く流れに。加賀見は殺人犯ではないかもしれない。信じたい伊吹と疑うことが仕事だと言う志摩の対立。

加々見は本当に殺人を犯したのか。そして、メロンパン車と容疑者の黄緑ジャンパーの色かぶりは狙いなのか。「袖だけだろ」は「それだけだろ」と掛けているのだろうか。

松下洸平の手と瞳による秀逸な演技容疑者・加々見を演じた松下洸平は、朝ドラ「スカーレット」(19年後期)で戸田恵梨香演じる主人公の夫役で注目された俳優。妻を愛しながらも、陶芸家として自分を越えていくことに苦悶する震えを鮮やかに演じていた。

今回も、登場カットから、ナイフを持った手の甲から浮き上がる節の鋭利さだけで漲(みなぎ)る危うさを感じさせ、その一方で表情が世の中におびえた小動物のようで、黒目がちな瞳のナイーブさ。

さらに、身の上話を語るウィスパーボイスが詩人のようで、こんな人が人を殺すわけがないとも思わせる。真っ白な富士山を見つめる表情も、あるシーンでバックにかかる米津玄師「感電」が似合う全身もやばい(「アンナチュラル」でも発揮された塚原あゆ子の音楽を抒情的に使う名演出! 間のあと「たった一瞬の♪」という米津の声と画のタイミングがじつに巧い)。

余韻がある、泣かせる話ながら過剰にベタつかないところがいい。信じない志摩と信じたい伊吹の相棒関係は少しずつ良好になっていく。星野源と池津祥子、大人計画劇団員の共演も嬉しかった。一瞬ではあるが、息があったところを見せてくれた。

第3話には、「MIU404」と同じ野木亜紀子脚本、塚原あゆ子演出×新井順子プロデュースの人気ドラマ「アンナチュラル」に登場した毛利(大倉孝二)と向島(吉田ウーロン太)刑事が登場するとわかって、世界線が同じなのかと祭り状態に。

ドラマのあと放送されたトーク番組「A-studio」では九重役の岡田健史がゲスト。今の人気に甘んじない硬派な態度に好感度はバク上がり。
(木俣冬)

番組情報
TBS 金曜ドラマ『MIU404』
毎週金曜よる10:00~10:54

番組サイト:https://www.tbs.co.jp/MIU404_TBS/

当記事はエキレビ!の提供記事です。

ランキング

ランキングをもっとよむ

注目ニュース

注目記事をもっとよむ