ヒッチコック監督没後40年 ティッピ・ヘドレンを見る楽しみ

 【牧 元一の孤人焦点】「サスペンス映画の神様」と称されるアルフレッド・ヒッチコック監督の没後40年。今月はNHK・BSプレミアムで、映画「サイコ」「知りすぎていた男」「めまい」「引き裂かれたカーテン」が相次いで放送され、その面白さを再確認することができた。

 ヒッチコック作品の楽しみの一つに、出演する女優たちの美しさを見ることがある。「サイコ」のジャネット・リー、「知りすぎていた男」のドリス・デイ、「めまい」のキム・ノヴァク、「引き裂かれたカーテン」のジュリー・アンドリュース。もちろん、「汚名」のイングリッド・バーグマン、「裏窓」のグレース・ケリーも素晴らしい。

 個人的に最も好きなのは「鳥」のティッピ・へドレンだ。1950年代から60年代にかけてモデルとして活躍していたが、テレビのCMに出演していたところをヒッチコック監督に見いだされ、63年公開の「鳥」で女優デビューした。

 あざやかなブロンドヘア、小さな顔、クールな表情、スレンダーなボディー、美脚…。この映画は人間が鳥の大群に襲撃される物語だが、襲われるターゲットとしてこれ以上ないと思わせるような女性だ。

 強烈なのは、ラスト間近の家屋内のシーン。ティッピ・へドレンが懐中電灯を手に部屋のドアを開けると、そこに鳥の大群がいて、襲いかかってくる。腕や指をかまれ、顔をつつかれ、振り払っても振り払っても攻撃がやまない。悲鳴を上げ、おえつを漏らし、もん絶し、やがて力尽きて床に崩れ落ち、最後は失神してしまう。

 この場面はとても執拗に撮影されており、およそ2分に及ぶ。ヒッチコック監督は映画論として「ブロンドは最高の犠牲者。彼女たちは血に染まった足跡をあざやかに見せる新雪のようだ」と語っていたとされるが、それが究極の形で具現化されている。

 のちにティッピ・へドレンはヒッチコック監督からセクハラを受けていたことを明かし、その内容が2012年公開の映画「ザ・ガール ヒッチコックに囚われた女」で描かれている。この世にいないヒッチコック監督が反論できない今、セクハラ問題はともかくとして、ティッピの美しさによって「鳥」の面白さが増したことは間違いなく、そして、ティッピの代表作が「鳥」であることも確かだ。

 ティッピを知らない人、ティッピをまた見てみたい人は映画「マーニー」(7月8日後1・00、NHK・BSプレミアム)で。彼女の2作目にして最後のヒッチコック作品だ。

 ◆牧 元一(まき・もとかず)1963年、東京生まれ。編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴約30年。現在は主にテレビやラジオを担当。

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