大倉忠義&成田凌が演じる男性同士の恋。『窮鼠はチーズの夢を見る』原作者が語る

女子SPA!

2020/6/28 15:45

 先月、ピクサーが初めてゲイの男性を主人公にした短編アニメ『Out』をリリース、世界的な話題となった。近年、日本でも『おっさんずラブ』や『きのう何食べた?』といったドラマがヒットするなど、エンタメ界におけるセクシュアルマイノリティの描き方に変化が生じている。そんななか、男性同士の魂の交感を描いた漫画『窮鼠はチーズの夢を見る』が実写映画化を迎える(6月公開予定だったが、新型コロナウイルスの影響により9月に延期)。

本作の連載がスタートしたのは16年も昔のこと。LGBTという用語もまだ一般的ではなかった当時と今とでは、同性愛を描く環境に変化はあるのか。同作を手がけ、『失恋ショコラティエ』や『脳内ポイズンベリー』など独自のアプローチで切実な愛を描き続けてきた水城せとな氏に心境を聞いた――。

◆男と男のリアルで切ない恋模様を、作家は何を思い、描くのか?

「LGBTに対する世間の理解は広まったかもしれませんが、男性同士の恋愛を描くことについてはむしろ難しい時代になったなという思いがあります。私が小中学生の頃は『なかよし』『りぼん』『ちゃお』といった少女漫画誌がとても自由で、社会問題を扱ったドラマに歴史、SF、ホラー、ファンタジーと、なんでもありだったんです。もちろんラブストーリーもあって、大半は異性愛なんですけど、なかには同性愛を扱ったものも載っていました。とはいえ、特別“同性愛モノ”と謳われることもなかったし、BLという言葉もまだありませんでした。ところが、枠ができたことで、『BLとはこういうもの』『これはBLらしからぬ』みたいな話が聞こえてくるようになって。私自身は同性愛が出てくるどんな話があってもいいと思っています」

本作は、妻のいるサラリーマンの大伴が、大学時代の後輩・今ヶ瀬と7年ぶりに再会するところから始まる。

「エロスをテーマした『NIGHTYJudy』という雑誌の編集部から『男性の同性愛者を扱った読み切りを』という依頼があったのがこの作品のきっかけでした。編集さんとしては、とにかく作中でセックスをさせてほしいということで、私も最初はその方向で考えてみたんですけど、すぐにセックスする話ってエロくないなと思って。一度ヤっちゃったら、もう二度とそこに至る過程は描けないわけじゃないですか。『むしろその過程を深く追求し続けるほうがエロスなのでは?』という考えから、なかなか結ばれない男性同士の恋愛話が生まれました」

◆結局、女性はイケメンのゲイにとことん甘い

読み切りが評判を呼び、その後、不定期連載ながらも熱狂的ファンに支えられた本シリーズ。最終的には『窮鼠はチーズの夢を見る』『俎上の鯉は二度跳ねる』の2冊にまとまり、10年以上にわたり増刷を続けてきた。

「長く愛してもらえるのは本当にありがたいことです。この作品って、大きな展開があるというより、ほぼ二人のやりとりで進行していく話。私自身もそうなんですが、ストーリーって一回読んでしまうと、わりとそれでもうよくなってしまう。一方、人と人とのやりとりや会話って何度見ても飽きない。読者の皆さんもこの二人の関係性をずっと愛してくれているのかなという気がしています」

流されるままに生きてきた異性愛者の大伴と、彼を思い続けてきたゲイの今ヶ瀬。異なる道を歩みながらも求め合うことになる二人のキャラクターは、そもそもどうやって生まれたのか。

「漫画家の仕事を説明するときはよく『イタコのような仕事』と言うんですが、キャラクターを現実にそこにいる人として捉えて、その人の言葉や行動を忠実に漫画に写し取っていくという感覚ですね。この二人に限らない話なんですが、この人はこういう人、というのをそのまま写し取る作業を重ねていき、キャラクターが生まれていきます」

映画では大伴を大倉忠義が、今ヶ瀬を成田凌が熱演。水城も「おふたりの表情やちょっとした仕草を見ているだけでも飽きない」と太鼓判を押す。実は今回の映像化以前にも、過去には何度か映画化のオファーがあったという。

「それまでにいただいていたお話は、キャラクターを過剰に美化しそうな雰囲気が企画書から伝わってきたんです。なんというか……結局、女性ってイケメンのゲイに甘い(笑)。同じことを女性がやったら『この女ありえない!』だし、男性が女性に対して同じことをしたら『何この男!』となるのに、なぜかイケメンのゲイのことは許してしまう。ですから、女性の監督より男性の監督のほうが、よりリアルに撮っていただけるかな、と以前から思っていました。5、6年前に行定勲監督から最初に届いた企画書は視点がフラットで、生身の男性が描かれていたので、やっと安心してこの作品を預けることができたんです」

愛と恋を長きにわたって描き続けてきた水城氏。恋愛作品に向かうスタンスは「男と男のラブストーリー」であっても変わることはない。

「恋愛って最もパーソナルなものじゃないですか。仲のいい友達でさえ『恋愛したらこんなふうになるんだ』とドン引きすることがありますし、本人でさえ知らない面が引き出されることもある。どんなに非人道的であっても、フェティッシュであっても、その生々しさが恋愛の本質であり、それこそがラブストーリーの面白さ。深く突き詰めたラブストーリーは、極上のヒューマンドラマだと思います」

【水城せとな】

’71年、神奈川県生まれ。’93年、『プチコミック』にて「冬が、終わろうとしていた。」で漫画家としてデビュー。代表作に『失恋ショコラティエ』『脳内ポイズンベリー』『世界で一番、俺が○○』などがある

<取材・文/山脇麻生>

当記事は女子SPA!の提供記事です。

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