映画「悪人」法で裁ける人だけが悪人?本当に見つめるべきメッセージ

UtaTen

2020/6/25 18:00

自身の中にある悪を問われるヒューマンドラマ


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2010年公開の映画『悪人』は、1つの殺人事件を題材にしたミステリー・サスペンス映画です。

原作は吉田修一の同名小説で、毎日出版文化賞と大佛次郎賞のダブル受賞を果たした長編作品。

映画『フラガール』で知られる李相日が監督を務め、原作者の吉田修一も脚本に参加しています。

音楽には作曲家の久石譲が加わり、豪華タッグが話題となりました。

小説の卓越した表現力を引き継ぎながら、視覚効果の高い映画ならではの魅力がある作品になっています。

あらすじや見どころから、観る人を引き込む理由を紹介します。

不器用な男女二人の逃亡劇


▲悪人(プレビュー)

博多の保険外交員、石橋佳乃は同僚との飲み会を楽しむ中で、これから交際相手の大学生・増尾圭吾に会うのだと話していました。

大学生とは、湯布院にある老舗旅館の御曹司のこと。

しかし、実際に彼とは付き合ってはおらず、彼女が一方的に連絡しているだけの相手。

本当に会おうとしていたのは、出会い系サイトで出会った清水祐一。

彼女は長崎からはるばるやって来る彼のことを、体の関係を持つためだけの相手と見下しています。

待ち合わせ場所まで愛車でやって来た祐一でしたが、そこに偶然増尾の車が通りかかります。

彼女は増尾の方を選び、祐一を置いて半ば強引に増尾の車に乗り込んでしまいました。

翌日、彼女は遺体となって発見されます。

最初に容疑をかけられたのは、彼女が付いていった増尾でした。しかし、彼の話から警察の目は祐一に向きます。


一方、祐一の元には、以前出会い系サイトでメールのやりとりをしていた馬込光代という女性から、連絡が来ていました。

会うことにした二人は、互いに寂しい思いを抱えていたこともあって、急速に惹かれ合います。

そんな中、祖母からの連絡で自身に容疑が向いたことを知った祐一は、状況を呑み込めていない光代を車に乗せて走り出します。

そして彼女に、人を殺したことを打ち明けるのでした。

突然始まる逃亡劇の行方に、胸が苦しくなるヒューマンドラマです。

実力派俳優陣のリアルな演技が秀逸



本作は、映画界を支える実力ある俳優陣がキャストに名を連ね、臨場感ある巧みな演技に引き込まれます。

祐一役を演じたのは、これまで好青年役が多かった妻夫木聡。

暗いバックボーンや、つらい心情に苦労したそうですが、その甲斐あって演技力が認められ、アカデミー賞主演男優賞を受賞しました。

光代役を演じたのは、飾らない美しさと確かな演技力で人気の深津絵里。

地味な女性が愛によって徐々に変化していく様子を繊細に演じ、アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞しています。

他にも、満島ひかりや岡田将生から、柄本明や樹木希林などの大物俳優まで、そうそうたるキャストが集結。

事件よりも人の心を中心に描いた作品であるため、俳優陣のリアルな演技によって観る人に現実感を与え、見応えのある内容に仕上げています。

悪と愛の本質に触れる美しいストーリー



本作を観る上で重要なポイントは、タイトルの「悪人」が誰を指しているのかという点です。

もちろん、殺人を犯した人間の罪は、どんな理由があったとしても重いものです。

しかし、殺人などの法で裁ける罪を犯した人だけが「悪人」なのかと考えると、簡単に答えが出せないことも事実。

本作には、様々な人物が登場します。それぞれが起こした行動や味わった経験を1つ1つ見つめると、人の心に潜むダークな部分に気付かされるでしょう

そして、罪を犯した人間が抱えている孤独感や苦しみが、胸に迫ります。

決して許されることではありませんが、どんな瞬間に自分も一線を越えるか分からないということを真剣に考えさせられます。


加えて、事件の裏で育まれていく刹那的な愛にも注目です。

その愛が長く続くはずがないと理解しながらも、互いを必要としてしまう2人の関係性には、切なくも温かい印象を受けます。

愛が人にとってどれほど大切なものかを、じっくり考える時間ともなるでしょう。

また、劇中の雄大な景色もストーリーを支える大きな見どころです。

作品の舞台設定通り、九州でロケが進められました。

観光名所を使うのではなく、基本的に人気のない峠や殺伐とした郊外が映し出され、その風景には登場人物たちの思いが重なります。

常に暗い雰囲気が付きまとうのに、美しささえ感じられるストーリーの魅力を景色が底上げし、映画でしか味わえないドラマを見せてくれるでしょう。

主題歌「Your Story」の切ない愛に心が揺さぶられる



映画主題歌は、久石譲と福原美穂のコラボ曲『Your Story』です。

映画音楽に欠かせない存在である世界的作曲家の久石譲は、本作の劇中音楽を手がけると共に、主題歌の作曲も担当しました。

ピアノとストリングスによる壮大で美しい演奏が、聴く人の心を包み込んでくれるようなミディアムバラードです。

原作者の吉田修一と李相日がコンセプトを出して書き上げられた全編英語詞の歌詞には、初めて愛を知った相手と一緒にいられない切ない想いがつづられています。

まさに映画の中で描かれている主人公たちの心情が表されていて、短い逃亡生活の間に結ばれた愛の強さと脆さを感じさせるでしょう。

楽曲が完成した際、誰に歌ってもらうかを世界中のアーティストから検討したところ、繊細さと芯の強さを感じる福原美穂の歌声に白羽の矢が立ったそうです。

豊かなメロディーに寄り添いながらも、心の奥から込み上げるような歌い方で、切実に相手を想う気持ちの深さが伝わってきます。

映画のエンディングでこの主題歌が流れる時、感じていた苦しさやもどかしさをふっと軽くしてくれるでしょう。

映画「悪人」で生き方を見つめ直そう


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映画『悪人』は、殺人犯と彼を愛した女性の逃避行を中心に、人の悪と愛をリアルに描いています。

近年、様々な種類の犯罪が増えている一方で、フェイクニュースや過剰なバッシングなどで他人に大きな影響を与えることに喜びを感じる人も少なくありません。

しかし、その行為が法では裁かれないからと言って、それが悪ではないということにはならないのです。

自身がしている小さなことによって「悪人」となってしまう可能性があることを、誰もが心に留めておくべきであることを、本作は教えてくれます。

重厚なストーリーで人を描く映画『悪人』を観れば、今の自分の生き方とこれからの行動を見つめ直すきっかけになるでしょう。

TEXT MarSali

当記事はUtaTenの提供記事です。

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