実行委員長・綾小路 翔に訊く『家フェス』を通して見た今僕らがすべきこと

SPICE

2020/5/22 19:00

コロナ禍真っ只中のこの状況だからこそ伝えることを止めてはいけない、そんな熱い志と男気の元に開催された家フェス『STAY HOME,STAY STRONG ~音楽で日本を元気に!~』。一緒に背負わせて欲しいと志願したという実行委員長・綾小路 翔に、『家フェス』放送を振り返りつつ、着想から実施への行動、放送を終えての手応え、それを受けてのこの先の展望を訊いた。


ーー綾小路 翔さんが実行委員長を務めた「STAY HOME,STAY STRONG」についての振り返りインタビューですが。まず、放送を終えてみての感想はいかがですか?

逆にどうでした?(笑)

ーー素晴らしかったと思います! マブダチから先輩、大御所まで、世代もジャンルも超えた豪華35アーティストを見事に繋いで。翔さんにしか出来ない仕事だと思いました。

いやぁ、ありがたいですね。

ーーAMラジオノリのMCも変にシリアスな空気にさせず、長時間楽しく見れました。

僕は「尺が無いって言ってるのに、こんなに喋ってて大丈夫?」って、冒頭からハラハラしながら放送を見てましたけどね(笑)。本当は「徹子の部屋」スタイルの完パケ収録で、オープニングからエンディングまでフル尺で撮って、撮って出しする予定だったんですけど。僕が熱くなって話し出しちゃって、収録は倍くらい撮ってて……。

ーーえ、あの勢いで6時間撮ってたんですか!?

そうなんです(笑)。だからトークも相当切ってるし、かなりタイトなスケジュールだったんで、編集大変だったでしょうね(笑)。

ーーでは改めて、番組が生まれた経緯について聞かせていただけますか?

番組の企画自体は4月の頭くらいにあって。氣志團がデビューの頃からお世話になっているフジテレビの各音楽班の方々が、社長に直談判して枠を取ってきてくれたんですね。とても熱い方々で、自分もそれぞれ好きな方たちばかりで。そんな彼らから熱心に誘っていただいたのがはじまりです。実は元々、自分はただMCとしての参加でオファーを頂いたのですが、ただそれだけだと自分の気持ちをどこに置いていいのか中途半端になる気がして、「僕も一緒に背負わせて下さい」とお答えしたんです。なので、最初は“応援団長”という立ち位置だったんですが、「制作から関わらせて欲しい」とお願いを聞き入れていただき、“実行委員長”に就任させてもらいました。そんな経緯があり、ご出演いただいたミュージシャンのみなさんの中には、制作スタッフ陣との固い信頼関係から、早い段階でご快諾くださった方もいれば、自分がしゃしゃり出たことを知って「翔やんがやるなら」と急遽ご参加くださった方もいらっしゃいました。なにしろ自分は、この企画を伺った時点でものすごく感銘を受けたんです。今みんなのために何かをしたいのに、今一番それをすることが許されないのが我々ミュージシャンで。そんな我々に居場所を作ろうと駆けずり回ってくれている方々がいること、そしてその気持ちに全力で応えるであろう素晴らしい歌うたいたちが大集結すること。最高の番組になると確信して。ただ、自分は司会のプロではないわけで、本来ならもっと優れた方が幾らでもいる。それなのに自分を選んでもらえたのであれば、責任を持ってとことんやりたい、そういう想いで動き出しました。……とは言え、リモート会議に参加しては無茶なことばかり言って騒ぎちらしていただけだけ、というのが実態なのですが(笑)。そんなこんなでみんなの心が一つになって、あとは即本番という慌ただしい感じでした。

ーーテレビ局に通って企画会議とか、出演者に直談判ってわけにいかないですからね。

そうなんです。でも、男気祭りでしたね。出演者もスタッフも。今回プロデューサーもディレクターも放送作家もみんな長い付き合いの方だったので、良くも悪くもお互いを理解してるってところで迷いなく進めて。僕がどういうスタンスで出演するか?ってところもギリギリまで話し合ったんですけど、出揃ったこのメンツを見て「おこがましくも、出来るなら一人でやらせて欲しい」と自分からお願いしました。放送当日は己に終始ダメ出しをしながらオンエアを見ましたけどね(笑)。ご出演者はもちろんのこと、制作チームも、当然僕もですが、参加したすべての方たちの想いが熱烈にこもった物を作れたなという達成感みたいなものはありましたね。

ーーやはり、翔さんが「背負わせて下さい」と覚悟を見せたことで、制作側や出演者、そして本人にもグッと気持ちが入ったんでしょうね。こういう時期ですし、“家フェス”なんて試みも初めてで。誰もやったことないことを背負って出る勇気は凄いと思います。

いまやロケはおろか、集団でのスタジオ収録もなかなか出来ないし、それでも各局が趣向を凝らして様々ことにトライしていて。SNSでも“歌つなぎ”みたいなものがあったり、「音楽のバトンを繋ごう」と、リモートでも出来ることが少しずつ始まっています。おそらくこういうスタイルの番組も増えてくると思うんですよね。昨今、地上波の音楽番組というのは、あくまでそれぞれの新曲を発表するプロモーションの場になりつつあって、完全なる生演奏をする機会は確実に減っているのは確かだし、しっかりと音楽をやれる場所は少なくとも地上波じゃない、みたいな風潮もある。そこで離れた音楽ファンがいることも否めないと思うんです。そんな中で、「数字だけではない、真っ直ぐな音楽番組がやりたい!」「音楽こそが人々の心を救うんだ」という気概を持った、今時ガチでピュアに音楽を信じている、ある意味奇特なギョーカイ人たちが集まった所に声をかけてもらったことが何より大きかったし、そういう人たちだからこそ僕も安心してやれたというのはありましたね。出演してくれた方々も皆ストリート側の人ばかりで、とにかく説得力が違った。これは誤解を恐れずに言えばですが、普通だったら「もう少し一般層を巻き込める人選を」とか、何かしらテコ入れ?横槍?みたいなのがあってもおかしくないと思うんです。

ーー「もっとお茶の間にわかりやすい番組にしよう」みたいなことになったりして。

もしかしたらね。でも今回は在宅パフォーマンスで、みんなにしっかり声を届けられるアーティストというのが大前提としてあった。いまは正しければ良いという状況でないというか、この不安しかない毎日を過ごしている中、正しいことにさえイラついてしまう人だっている。そんな状況下だからこそ、もっと根本のところで視聴者の胸をダイレクトにノックする人たちじゃなきゃって思ったんです。そこで歌一発で先入観や偏見も乗り越えていく人が必要だと思ったし、実際にそういう人たちが集まった。全員優勝だった。だからこそ、深夜にあれだけのたくさんの視聴者の胸に届けることが出来たって実感はあります。

ーー観る前はどんな番組になるかあまり想像付かなかったんですが、フジテレビONE・FOD放送が少し早く始まって、一発目に出演したのがナオト・インティライミが弾き語りで「翼をください」を歌うのを見て、「いまの想いをカバー曲で伝えるのもアリなんだ」と思って。本放送の一発目の森山良子は「星に願いを」をオルゴールに乗せて歌ってるのを見て「オルゴール!? そんなのもアリなんだ!」と思ったら、すごく楽しくなってきて。あの2人が番組冒頭から、番組の方向性と可能性を大きく開いてくれた感がありました。

やはり並じゃない人しかいなかったですよね。あと自分のヒット曲を持ってくる人があまりいなくて。いま最も届けたいことであったりとか、この状況でやったら面白いかなという遊び心とか、撮り方も含めて十人十色、千差万別で、僕も見ていてすごく面白かったです。しっかりした映像機器を使って撮る人もいれば、自宅のリビングでiPhoneで撮ってる人もいれば、「エコーが効くから」って風呂場で撮ったノリさん(木梨憲武)もいて(笑)。そんなところにもそれぞれのスタイルや性格が出ていて、僕らの知らない一面を肌で感じられるってところに臨場感があったと思うし、グッと来たんですよね。収録前日、届いていた映像を家でチェックしてたんですけど、楽しくてつい呑みすぎちゃいましたもん(笑)。

ーーこの番組のために新曲「タタカエブリバディ」をバンド演奏で撮影してくれたウルフルズの映像の後、「これ見て呑んじゃった」って話してましたね。

ウルフルズ、カッコ良かったですね! かりゆし58とかTHE BAWDIESとかもそうですけど、遠隔で合奏する姿にめちゃくちゃ痺れた。かと思えば、TOSHI-LOW(BRAHMAN/OAU)さんやTAKUMA(10-FEET)くんやKj(Dragon Ash)みたいに、パンクスがギター一本で弾き語りするのも超絶カッコ良かったし。ZEEBRAさんやKREVAくんとかHIP HOPの人は、新たなリリックで演ってくれたり。それぞれのスキルが物凄かったですよね。オンエア中、色んなミュージシャンが僕に連絡くれたんですけど、「この番組最高!だけど力無いと出れないな!」って(笑)。アリーナクラスで出来る人たちが、みかん箱の上でも闘えるっていうのをみんなが証明してくれたし、みんながただただハッピーになることだけを考えてやってくれたことが本当に嬉しかったですね。
綾小路 翔
綾小路 翔

■これがキッカケになって色々広がればいい


ーー翔さんもそうだと思いますけど、ミュージシャンのみなさんは活動が制限される中でフラストレーションも溜まっているはずで。TAKUMAさんが「こういうことを誰かやってくれないかと思っていた」と語っていましたが、「いま出来ることは何だろう?」と考える中、ああいった表現の場が与えられたことに喜びもあったと思うんですが?

「あのヤロー、またしゃしゃりやがって」と思う人もいたかも知れないですけど、むしろそれしか出来ないのでどうかお許しを…(笑)。TAKUMAくんからはオンエア後、「マジでありがとう」みたいなメッセージを貰って本当に嬉しかったし。フジテレビの制作チームのところにたくさんのミュージシャンやマネージメントさんからお礼のメールが来て、こんなことってなかなか無いから本当に嬉しかったし。おかしな話なんですけど、出演者のみなさんとは直接会ってないのに、今まで以上に近づけた気がしたんです。だから、色んな奇跡が起こったと思うし、これがキッカケになって色々広がればいいなと思うし、音楽の力が届くべき人に届いたことがすごく大きなことだと思うし。なにより自分自身が「俺、音楽無いとダメだ。音楽が無ければ生きていけない」とすごく思えたんです。それを再認識出来たことが大きくて、終わった後は「ここから何か発展出来ることは無いかな?」と考えたりして。こうなると欲も出てきますから、「次はあの人も出てくれないかな?」とか想像してワクワクしています。

ーーこれっきりで終わるには勿体ない企画ですよね。

ま、それよりこの状況が早く終息するに越したことはないですけどね。現実問題、先が全く見えてないですし、僕たちのような職業の人間がいままで通りに復帰出来るのは、世の中の職業の中でもよっぽど最後だと思っていて。今まで通りの活動が出来るようになるまで、果たしてどれくらいの時間がかかるのか? という状況の中、僕らを支えてくれているスタッフだったり、ライブハウスだったりはどんどんヤバい感じになっていく。そこをどう支援できるのか?ってところで深刻な焦りも当然あるし、実際のところ、自分たちの生活すら当然ヤバいですからね。だけどこの「家フェス」で仲間であるミュージシャンたちの勇姿に勇気をもらったし、音楽の素晴らしさをみんなに啓蒙出来るチャンスだったとも思うし。あの形だからこそ、伝わったこともあると思うんです。

ーー暗い雰囲気の中に「家フェス」が仄かな光を射したと思いますし、音楽が力になることをひとつ実証出来たと思います。

あと、本当のフェスだとしたらタイムテーブルというものがあって、「この時間はこれを見て、この時間に食事をして」とか考えるのも楽しみだと思うんですけど。今回はあくまで全てがサプライズでやれたらいいなと思って、あえてタイムテーブルを発表しなかったんです。だから「好きなアーティストだけ見たい。それさえ見れれば寝れる」と思ってた人もいると思うんですけど。ああいう形だからこそ目当てじゃない人を見て、新たな発見もあったと思うし、そこに新しい感情が芽生えたとしたらミュージシャンにとっては本当に嬉しいことだし。“三国一のお節介野郎”を自認している身としては、みなさんの人生をまたひとつ豊かに出来たんじゃないか?だなんて、ほくそ笑んでみたり。

ーー「ギターウルフ セイジって、何者!?」みたいな驚きもあったと思いますし。

そうですね。「ひきわり納豆がコロナに効く。アメリカツアーもひきわり納豆で乗り切ったから、翔やんに伝えてくれ!」という熱い長文メールも貰ってたのに、添付されたビデオには、ギターを一発掻き鳴らして「ロックンロール!」の一言のみ、時間にしてわずか17秒(笑)。セイジさんらしい、何も裏切らない素晴らしい画でした。

ーーまた、地上波で放送されたというのも大きかったですね。これがYouTubeや音楽チャンネルだったりすると、観る人を選んでしまうというか。

確かにいま、メディアとしてYouTubeって、テレビを凌駕する強さと素晴らしさを持っていると思うのですが、こういう地上波ならではの良さがあるよなと実感したし。元々自分の音楽との出会いもそんなことからだったなって。簡単にはいかない事情もあるんでしょうけど、今みたいな状況下であらゆるメディアが手を取り合って、それぞれの良さを活かせればいいのになと思いましたね。「地球から戦争が無くなるにはどうしたらいいか?」と考えた時、たぶん宇宙人が攻めてくる以外ないだろうと思ってて、こういうことでもないと仲良く出来ない人たちもいて。こうして全人類の敵と戦ってる現在、仲良くならなくてどうするんだよ!? と思うんです。僕らみたいにフェスをやってても、垣根ってどうしてもあって。僕はフェスも今回ばかりは垣根を崩して、手と手を取り合うタイミングだと思ってるんです。だからジャンルだったり、メディアだったり、いままで自分が持ってたルールだったり含めて、今は互いに敷居を下げて手を繋げたら…まぁご時世的に直接は無理なタイミングだから、まずはエアーで手を繋げたらいいなと思ってて(笑)。そういう意識に伝わっていくアクションの第一歩でもあったのかな?と思います。

■自分の出来ることを精一杯やることが世界のためになる


ーー「こんな時だからこそ、音楽を通じてみんなで繋がっていこう」という想いって、今回参加してくれたミュージシャンや視聴者には、少なからず伝わっていると思います。

だといいですね。でももしかしたら、観てくれた方々の中には、音楽というものに対しての意識はが変わった人もいるかも知れませんね。それはリスナーの中にも演者の中にも。自分自身も“板の上に立つ人間”としての真価が問われる時が来たのかな?と思っています。きっと「このスタイルなら、俺も出来る」と思った人もいたと思うし、逆に「俺には出来ない」って思った人もいるかも知れないですが、そこからみんながより高みに行けたらいいなと思いますね。毎日、イヤなニュースばかり垂れ流されているように思うこともあるかもしれないけど、「テレビというメディアはこういう良い兆しも作れるものなんだ」という充実感が今はあります。「暗いと不平をいうよりもすすんであかりをつけましょう」的な気持ちで過ごせて行けたらなと。なんたってD.I.Y。なんだってDo it yourselfの精神で。ニュースやワイドショーには情報を伝えるという役割があり、音楽しか出来ないから音楽やってる俺たちには、俺たちの役割があるんで。

ーー翔さん自身はみなさんの映像から受けた刺激や思うことはありました?

山盛り受けすぎて困ってます。でもやはりバンドマンですから、ウルフルズやTHE BAWDIESを見て、「合奏したいな」と思ったのが一番かな。昨日、氣志團でリモート会議をしたんですけど、「何でもいいから、みんなで音を鳴らそう!」って話になりました。「会えなくても、一緒に音を鳴らそう」ってところで、すぐにでも動き出そうという話になって。ひとつキッカケになりました。

ーー翔さんも力強い言葉をかけてもらいたい側だと思うんですが、いま不安やフラストレーションを溜めているミュージシャンや音楽ファンに言葉を贈るなら?

誰が悪い、何が悪いって考えにどうしてもなっちゃうけど、もともと誰も悪くないんで。少なくともこれを読んでくれてる人は誰も悪くないんで、まずは背負い込まないこと、そして平常心でいることが重要だと思います。言ったら、自分の顔がブサイクで悩んでるのと同じで、ブサイクなのは自分が悪いんじゃないんです。

ーー母親のせいにしたくもなりますけど、母親だって悪くないし。

そうそう。落ち着いたらわかるから(笑)。根本言うと、生物が存在してるから問題が起きるわけで、それを言い出したらきりがない。自分の責任じゃないことで苦しむのはやめて、他人のことは置いといて、自分の出来ることを精一杯やることが世界のためになるんじゃないか? と思います。いま一番の敵はクサクサする気持ち。しょげようが荒れようがウィルスは無くならないし、おそらく社会も政治も月給も変わらない。だけど、自分の心が平常心であれば新たな発想も生まれるし、行動する心も芽生えるし、声も大きくなるんで。その時、俺たちが必要だと自負してるし、そんな時に背中を押してあげたり、肩を貸してやれるのが音楽なんじゃないかと思ってて。みんなの心が少しでも癒やされたり、強くなれたり、豊かになれたりというのを支えられるのが僕らの音楽だと思うし、音楽だけはみんなのすぐそばで濃厚接触出来るものだから。今はまだ直接会えないけど、音楽はみんなのそばに飛ばし続けていきたいと思ってて。「家フェス」だったり、これから生まれる新たな曲だったりで届けていきたいなと思っています。我々のアクションが健やかな未来を作るのに、少しでも協力出来れば良いですね。

取材・文=フジジュン
『STAY HOME, STAY STRONG~音楽で日本を元気に!~』
『STAY HOME, STAY STRONG~音楽で日本を元気に!~』

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