カツ丼をタクシー会社が届ける…コロナ禍で“本業以外”に見出した活路

日刊SPA!

2020/5/22 15:51

 新型コロナウイルスは世の中に深刻な影響を与えた。飲食店は休業や閉店に追い込まれ、大小を問わず会社が倒産する事例も珍しくない。しかしながら、生き残る道を模索するなかで、本業とは別の、全く新しい仕事に挑戦する企業も現れた。

◆タクシー会社が食料品のデリバリーを開始

これまでタクシーやハイヤー事業を行ってきた兵庫県神戸市の「スターハイヤー株式会社」では、タクシーを使った買い物代行サービス、そして『ハイヤーイーツ』という食料品を運ぶサービスを開始した。

タクシーは“3密”空間となることから利用者が激減。国土交通省は4月、特例措置としてタクシーでの食料品の配送を認めた。そこでスターハイヤー株式会社は許認可を受けたという。まずはカツ丼店とコラボレーションし、神戸市全区域でサービスをスタートさせた。

「弊社にとって過去に例のない取り組みだったので、初めて注文を頂いた時は素直に嬉しかったです」(広報担当者、以下同)

タクシー業務の売り上げは前年度に比べて今年3月が26%減、4月は55%減。そこで臨時休車などでコストカットする方針を固めた。その一方、この状況でも出来ることはないものかと思案した。

「タクシーでの“移動”という形で、少しでも皆様のお役に立てればと考えました。先日、国交省特例措置の延長が告げられました。今後はもっと提携飲食店さんを増やしたいと思っています」

ハイヤーイーツには、なんと警察署からもカツ丼の注文があったそうだ。取り調べ室で容疑者に提供されたのだろうか、などと余計な想像をしてしまう。

コロナ禍は終わりが見えず、今後もしばらく続いていきそうだが「移動の新たな可能性を考える時間にしていきたい」と意気込んだ。

◆大正5年創業の染物店が、布マスク専用洗剤を開発

以前とは異なるものに活路を見出したのは歴史ある企業も例外ではない。

大正5年創業の「岩瀬商店」。普段は企業向けの染料販売や、個人向けのネット販売、そのほかにも染物体験ができる「ソメラボ」という店を運営してきた。

今回の新型コロナでは巣ごもり特需か、ネットで販売している商品の売り上げが好調だった。前年比230%を達したが、一方で企業向けの売り上げは減少。ソメラボは完全クローズに追い込まれ、会社全体の売り上げは落ち込んだ。

しかし、緊急事態宣言後もソメラボにはしばしば客がやってきた。閉店中のため、残念ながら対応ができなかった。せっかく来てくれた客を手ぶらで帰すことが心苦しかったという。

そこで岩瀬商店は少しでも感謝の気持ちを伝えようと、ノベルティとして布マスクウォッシュ(布マスク専用洗剤)を製作しプレゼントすることにした。洗剤メーカーと共同で開発し、ラベルは知り合いのデザイナーが特別にデザインをした。

「まずは身近な方に配布したのですが、SNSでの反響が大きくて。1回しか会ったことがない人たちも『くれ~』とやって来るんです。そこで、地元では今後、会社の屋外で“無人の野菜直売所”みたいに販売する予定です」(広報担当者)

現在は地元の織物工場とプリーツ加工場・縫製工場、洗剤メーカーの協力を得るなど、繊維業界の力を結集し、ゴムが入っていないプリーツマスクを開発中とのこと。

しかし、品質にこだわるあまり、原価が跳ね上がっているのだとか。ともあれ、知恵を絞り合い、危機を乗り越えようとしていた。

◆オープン間もないラーメン屋が弁当販売に挑戦

弁当の中には、分厚いチャーシューに餃子。そして黄金に輝く煮卵。どこかで見覚えのある具材のラインナップ。販売するのは、東京都北区のラーメン店「ラーメン 成り上がれ」だ。

「チャーシューが肉厚で食べ応えあるお肉なので、ランチのお弁当で安くてボリュームあるお弁当をワンコインで食べていただきたいと思いまして」(広報担当者、以下同)

今年2月オープンしたばかりだが、その1か月後には弁当販売を開始。新型コロナの中でも働く人や、子育てで大変な人の役に立ちたい一心で始めた。老若男女が買い求めにくる弁当だが、日々の苦労は絶えないという。

「オープンしたばかりで認知度も低いのに、いきなり自粛の流れから時短営業。毎月の固定費などは支払いがあるのに、収入は激減です」

1日で8個~16個ほど売れているが、毎月の固定費の支払い分である約60万円弱程度しか売り上げはない。

「ある程度、補償が明確になり、速やかに休業できるのであればいいが、そうではないですよね。補償対象になるのかならないのか。家庭や生活もあるのに、不安しかないです」

また、多くの飲食店がほぼ同じタイミングでテイクアウトやお弁当などを始めたことで、競争は激化。店の付近には350円で弁当を販売する店があり、「お弁当を販売しても本当に買ってもらえるのか? いくつ売れるのか? 価格は?」など悩みも尽きなかったそうだ。

そんな中でも客からの声が大きな励みになっている。

「お店にいらっしゃったお客様からは、『今は大変な時期ですが、成り上がれさん好きなんで頑張ってくださいね』とか、Twitterなどでも『チャーシュー弁当はボリューム満点で、コスパ最高で大好きです!』と温かいお言葉をいただき本当に嬉しく思っています」

多くの飲食店が新型コロナの荒波に揉まれている最中だ。しかしこの危機のおかげで、当初取り組んでいなかったテイクアウトやお弁当販売などに挑戦することができた。同店は、この状況を前向きに捉えていた。

「我々は新しいメニューの開発や、味の改良、どうしたらお客様に喜んでもらえるかなど日々考え取り組んでいきます。もう少しだと思います。皆で協力して頑張って乗り切りましょう。やはり止まない雨はないと思います、必ず終息は来ると思います」

止まない雨はなく、明けない夜もない。前向きに、普通の日々が送れる日をじっと待とう。<取材・文/星谷なな>

【星谷なな】

5歳の頃からサスペンスドラマを嗜むフリーライター。餃子大好き26歳。 たまに写真も撮ります。Twitter:@nanancypears

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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