H-el-ical//初のオンラインインタビューで語った「すべての人と一緒に観たい」新しい世界とは

SPICE

2020/5/19 18:00


KalafinaのHikaru//によるソロプロジェクト『H-el-ical//(ヘリカル)』。既に公式youtube上では多数の楽曲を発表しているが、5月20日にNBCユニバーサルからメジャーデビューシングル「Altern-ate-」を発売する。TVアニメ『グレイプニル』オープニングテーマにもなっているこの曲を引っさげて新たな音楽の道を歩みだした彼女に話を聞いた。今Hikaru//が思う「音楽との関わり」とは。

好きなものと一緒に仕事ができるっていう幸せをもう知ってしまっている

――SPICEでは生配信でけっこうご一緒してますが、改めてインタビューはけっこう久々な感じがします。まず、この状況なので近況をお伺いできれば。

ずっと家にいます。今までは仕事で外に出ていたんですけど、それもほぼなくなって本当にずっと家にいますね(笑)。

――家にいるのが好きとはおっしゃってましたもんね。

はい。もともと引きこもり気味なんですけど、仕事とコラボカフェと本屋には外出していたんです、でもそれすら今はなくなっちゃったので。下手したら一週間家を出ないこともあります。

――そういう状況ですが、H-el-ical//としては改めて今回「Altern-ate-」でメジャーデビューとなりました。所属となったNBCユニバーサルさんからメジャーデビューのお話が来たときどういうお気持ちでしたか。

そうですね……何よりうれしかったです!もちろん今までKalafinaでやってきたことはすごく大事だし、それが経験となって今の自分があるということはわかっているんです。でもソロとしてやっていく上で、手を挙げてくださるのはすごく光栄なことだなと思ったので本当に嬉しかったです、ただただ嬉しかった。ちゃんと自分もできる限りのことを精一杯やっていこうという気持ちを改めて強く持ちましたね。

――今回の「Altern-ate-」は聴いた印象として『グレイプニル』という“作品に寄り添った楽曲”になっていると思います。Hikaru//さんは“アニメにかかわっていたい”という気持ちをずっと強く出していたじゃないですか。

アニメが好きだからこそですね。それだけがやりたいというわけじゃないですけど、やっぱり好きなものと一緒に仕事ができる幸せをもう知ってしまっているので(笑)。

――知ってしまっていますか(笑)。

アニメの楽曲を担当させてもらうことで、自分のなかで芽生える気持ちがあるんです。自分の中でもより作品を愛せるというか。もともと好きなものだけど、もっと好きになれるし。アニメが好きだからこそ歌えるアニソンってあると思っているんですけど、その枠の中の人間でいたいと思っています。

――「Altern-ate-」はけっこうしっかりとアニソンだなと思っているんです。なんていうか、オープニングで流れたときの画と曲のハマり方がいいんですよね。今作は曲が先に上がったんですか?

そうですね、お話をいただいて、資料もいただいたところで先に曲をグシミヤギ(ヒデユキ)さんに書いて貰いました。もちろん作品、製作側の方の意見もうかがいつつ制作してもらって、そのうえで自分が歌詞をつけました。それを一度先方に確認してもらって。OKが出てあの形になって、それからオープニングの画をつけていただいているんです。曲と画がマッチしていると感じてもらえたとしたら、それはもうアニメ制作の方々のおかげです。

――曲に関してはHikaru//さんからの注文というのはあまり無く?

曲に関してはHikaru//は特にこうしてくださいって自分からは言っていなくて。ただ、「アップテンポな曲になると思う」というふうには聞いていたので、その心構えだけはしてました(笑)。曲をいただいて、耳に残る曲だなと感じました。

――最初の印象はそういう、キャッチ―な部分だったんですか。

はい、ファーストシングルでもあるので、そういうキャッチ―さは自分のなかでもありがたいと思いましたし。Hikaru//は歌詞をしっかり聴くタイプではありますけど、H-el-ical//を知らない人が聴いたときに、一番最初に心に残るものはメロディだと思うので、そういう意味でもすごくいい曲をいただいたなと。

――そしてそのメロディに乗る歌詞ですが、H-el-ical//として活動してからはHikaru//さんは全楽曲の作詞をされています、今回の曲に関してはどういう部分こだわりがありますか?かなり『グレイプニル』の原作を読み込んできたなという印象がありましたが。

めっちゃ読みました(笑)。やっぱり作品の楽曲ということで、絶対に作品に寄り添いたいなという気持ちもありました。でも作品を知らない方が聞く場合もあると思うので、そういう方にも自分の日常とちょっと重ねてもらえる部分もあったほうがいいなと思ったんです。

――作品ファンに対してだけの曲ではないですしね。

作品のなかから自分が印象的だったシーンとか、言葉とか、そういうものを連想できるような歌詞にはしました。日常の中で皆さんが感じる葛藤や、もどかしさ。「もっと強くなりたい」と思う瞬間が絶対にあると思うんですけけど、そういう人の背中を押せるような言葉をいくつか入れているつもりです。強くなってもらえる曲になったらいいなと思って。
「Altern-ate-」初回盤ジャケット
「Altern-ate-」初回盤ジャケット

ソロだからこその自己責任

――歌詞の中で、「この物語の主役じゃない」って2回繰り返しているじゃないですか、そこがすごく印象的でした。そこから「でも逃げない」って言葉につながるじゃないですか、それはすごく『グレイプニル』だなと。

めちゃめちゃ『グレイプニル』ですね(笑)。

――作品の主人公である修一君の気持ちなんだろうなっておもったんですが、でもどこかでHikaru//さんにフィードバックされている言葉なのかなっていう気もしたんです。

自分でもマンガ原作を読んで共感できるところを抜粋しているんですけど、なんだろうな……マンガってファンタジーだけど、Hikaru//のなかではリアルに感じる部分もあるんです。

――ファンタジーだけどリアル、ですか。

はい、自分と重ねる部分って絶対にあって。Hikaru//がマンガとかアニメが好きなのは、現実逃避できるという部分と、作品を観る・読むことによって、日常で自分が感じていることの解決策を探すことも同時にやっていたりいるんですよね。

――そこからフィードバックするものがたくさんあるんですね。

たとえばこの「主役じゃない」という歌詞は、自分の人生だから自分が主役だというのはあると思うんですけど、誰かを尊重して何かをするときとかは、やっぱり自分をメインに考えるわけではなくて、人のことを考えて動いたりするじゃないですか。ただ、その人のことを考えて行動するんだけど、そのための覚悟はもちろん必要だとか、自分の言動に責任を持つという意味では一緒だとか……そういうことを考えながらマンガを読んだりしているんですよね(笑)。

――すごく深い話ですねこれ……。

そういうところを皆さんと共有できたらいいな!と思いながら歌詞をつけていますね(笑)。

――なんか、今のお話をうかがっていたり、日々の活動を拝見したり生放送でお話させてもらって感じるのは、これだけファンの思いや意見を取り入れるアーティストは、なかなかいないんじゃないかって思うんです。それってご自身もアニメ・コミックのファンであるからっていうのもあるんでしょうか。

たとえばHikaru//が「この作品のこの部分めっちゃ好き!」と思っている気持ちと、応援してくださっている方が「Hikaru//のこの部分が好き、もっとここを出してほしい」と言ってくれるのが同じような気持ちなんだろうなって思うと、すごく大切にしたいなと思うんです。「何かを好きっていう気持ちから生まれる言葉を大切にしたい」と思うのは、そういうところからかもしれないですね。

――それがソロになってから顕著になっていますよね。思いを出すとか伝えるっていうのは、SNSを始められたっていうのもあると思うんですけど。

自分が発することや、やることがすべて一人だからこそ、それに責任を持てるっていうのもありますね。何か発言してしまって「あっ!」となっても、それは全部自分の責任になるからあとで自分で訂正できる。

――ソロだからこその自己責任ですね。

そうですね、Kalafinaの時はユニットだったから、自分が発することによってKalafinaのイメージを損なってしまう可能性も危惧しなけばならなかったので。だけど今は自分がやることは全部自分の責任だし、それがすごく大変なこともあるけど、でもそのぶんやりがいもあります。

――自分がやらかしたら自分のせいっていう。

そう、全部Hikaru//のせいですから。いいことも全部100%Hikaru//に帰ってくるし、逆に何かしてしまったら全部Hikaru//の責任。メリット・デメリットばかりを考えるのも良くないですけど、でもそうやって自覚が芽生えているというのは大きいかもしれないです。

――もう一歩進めた話を聞くとしたら、自分で全部の責任を取りたかったっていうのはあるんですか? 自分でやって自分で責任を取る。さっきおっしゃっていたメリット・デメリットってあると思うんですけど、例えばKalafinaをやっていたときからそういう自分になりたかったのかな、と言うのが聞いてみたくて。

なんだろう……「そうなりたいな」と思ったことはなかったけど、バランスってすごくユニットにとって大事だと思うんです。やっぱりグループでやっていることの意義みたいなものも感じてもらわなければいけないので。個性を出すのは良いことだけど、ある程度バランスを見ながらっていうのはありましたね。



一人で立つんじゃなくてみんなの力を借りたい

――今回はMVも撮られてますね。

いやあ、映像に写ってるの全部Hikaru//ですからね(笑)。ビックリですよ。「画、もつのか!?」って思ってました。今までは3人いたから……(笑)。

――林のなかに立つのも、崖の上に立つのもHikaru//さんオンリーですからね。

そうなんですよ。曲も全部Hikaru//の声なわけじゃないですか。どうやって緩急をつけようかな? とか、すごく迷いましたね。今回はドローンを使って撮影していただいたんですけど、1種類じゃなくて何種類も使用してもらっていて。そのぶん撮影の回数もすごく多かったんです。全部同じ動きとかにするとつまらなくなっちゃうから、少しづつ変えていたりしたんですけど、だんだんバリエーションとか無くなっていくんです、一人だから(笑)。
MV撮影風景
MV撮影風景

――絵面が変わらないんじゃないかという不安ですかね(笑)。

そうそう(笑)。どんなMVになるんだろうと思っていたんですけど、すごくいい感じにしていただいて。ありがたいなと思いながら「これがファーストシングルのMVかあ……」って改めてしみじみしましたね。最終チェックを観ても1カ所しか直すところなかったです。

――改めてタイトルですけど、これはHikaru//さんがつけたんですか?

実はこのタイトルはスタッフ募集したんです。その中でマネージャーさんが考えてくれたものを採用したんです。

――マネージャーさんが!

はい。自分で考えたものも最初に提案させていただいたんですけど、「別の案も見てみたい」というふうにご相談いただきまして。「みんな知恵を僕に貸してくれ」という形で、いくつかみんなで考えて、そのなかで「Altern-ate-」になったんです。

――マネージャーさんもインタビュー同席頂いているので聞きましょうか、なぜ「Altern-ate-」というタイトルに?

マネージャー:そうですね、主人公が二人でひとつという話だったのでいろいろ調べたんですが、“オルタネイト”っていう言葉自体は、“交互の”という意味合いがあります。更に調べたらちょうどこの文字の後ろが「eat」の過去形「ate」で。アニメの世界のなかでは、主人公の2人が出合い、だけどそれぞれ違うところもあります。何より周りの敵を倒して「生き抜いていく」という部分に沿って、アニメの世界感がハマる言葉だなと思って、敢えて「Altern-ate-」という感じに考えました。

――なるほど。ちゃんとここも合わせていっている。

さすがH-el-ical//チーム!何度か言ってますが、H-el-ical//は一人で作るものじゃないので。

――それはけっこうおっしゃってますね。

自分でもちろんやるのもすごく大事ですけど、Hikaru//はこの世界にはいって10年間Kalafinaという場所で、自分に足りないところはできる人に頼るということを学んでいるので(笑)。

――含蓄のあるお言葉ですね。

無理って絶対に続かないんですよ。無理をしなきゃいけないことももちろんありますけど、でも無理せずに自分が納得できる形でみんなと協力してベストなものができるんだったら、Hikaru//は一人で立つんじゃなくてみんなの力を借りたいなと思うんです。そう考えられるように成長したので(笑)。

――それはご自身の中では成長なんですね。

これは確実に成長ですね。人に頼るとか、あんまりKalafinaになるまではしてこなかったので。今ももちろんそういう部分はあるんですけど、自分のなかで許容できる範囲はすごく広がったと思うんです。だから、これはKalafinaで学んだことです。
MV撮影風景
MV撮影風景

――では、2曲目の話も聞かせてください。タイトルが「Clea-rly-」。これもすごく『グレイプニル』というか、僕は聴いたときに、ヒロインの紅愛ちゃんの曲だなという印象があったんですが。

この曲を作るときに、「カップリングどうする?」という話になって。「Altern-ate-」と真逆のバラードにするっていう案もあったんですけど、でも今回はメジャーデビューシングルということもあって、勢いを大切にしようということになったんです。カップリングもアップテンポの曲にしようと決まったときに、「歌詞をどうしようか」という話にもなって。

――そうですよね。

プロデューサーの冨田(明宏)さんから、作品リスペクトで「Altern-ate-」は修一君っぽい感じの部分が多かったけど、別のキャラの視点の歌詞でもいいんじゃない?みたいな話が出たんです。それでちょっと挑戦してみようかなと思って、紅愛っぽい感じの女性像をイメージして書きました。

――面白いなと思ったのは、両方ともアップテンポですが、カップリングの「Clea-rly-」のほうが、パッキリした8ビートなんですよね。だから、作品を観ている人間からすると、「ビートから紅愛っぽい」とか感じるかもしれないと思ったんです。

なるほど。

――主人公とヒロインの性格がビートに表れている気がしたんですよね。このふたつの楽曲で。

そこは意図してグシミヤギさんが作っているかどうかは、ちょっとHikaru//も聞いてないからわからないですね。でもシングルとして2曲収録して出すということで、そのバランスというのは考えてくれていると思います。

――ここまでのパッキリとしたロック調の曲ってKalafinaのときはあまりなかったじゃないですか。レコーディング苦労されたとかあるんでしょうか。

「Clea-rly-」のレコーディングはめちゃめちゃ早かったです。

――あ、早かったんですね。

早く終わりましたね(笑)。もともとそういう楽曲を好きっていうのもあるからかな、好きなものは早い(笑)。 だから、苦労という苦労はなかった気がします。

――そんなにですか。

いつもだいたいブロックごとに3回ずつ録るんですけど、そのなかで良かったテイクを抜粋して使っていくという形でレコーディングさせてもらっているんです。今回はとくにHikaru//のなかで迷いもなかったのですぐ終わりましたね。でもどの曲も今の所1時間半から2時間くらいで終わるので。

――そこはやっぱり培ってきたシンガーとしての実力がモノを言うというか。

あとはあれです。冨田さんとかグシミヤギさんとかが、いちおうブースの外で聴いてくれて判断はしてくれているんですけど、基本的にHikaru//に全部任せてくださっているので。それが早い理由かもですね。

――それもさっきおっしゃっていた“責任”というか。全部Hikaru//さんというところにつながっているのかもしれませんね。

レコーディングまでに自分の中で何パターンか歌い方を組み立てていくんです。そのなかで選んでもらうという形ですね。歌詞と歌っていうのはHikaru//のポジションなので、そこは自分にとっても譲れないところもあるし、アレンジとかミックスの時点で「ちょっとここをこうしてもらえませんか」というところもありますけど、でもHikaru//の大事にしている部分はすごく尊重して制作してくれるチームなので、すごくスムーズな形で毎回進んでいますね。

国外からの応援しようという思いも、もらった分だけ返したい

――今現在、H-el-ical//としては最初のライブで販売したインディーズとしてのファーストアルバムの『H-el-ical//』、ミニアルバム『elements』という2つの盤があります、そして今回の「Altern-ate-」。メジャーデビューしたタイアップというものって、前の2枚と意識って違うんでしょうか。

うーん。自由度は違います。やっぱり作品のために曲を書く、歌詞を書くってなると、その責任もプラスされるので、やっぱり作品を愛している方や、作っている方に対してのリスペクトは絶対に忘れないように制作しなきゃいけない、という気持ちはプラスされるので、スタンスはちょっと変わってきますね。

――今までのYouTubeで配信していたようなものは並行してやっていくつもりではあるんですか?

作品があるから曲を作るわけではなく、H-el-ical//としてどんな曲を作っていけるか、歌を歌っていけるかという個人の追求のためにも音楽をやっているつもりなので、それを皆さんに聴いてもらって、一緒に共有して。そういう場所はなくさないようにしたいなと思っているので、YouTube公式チャンネルでの楽曲配信も続けていくつもりです。

――YouTubeを見ていると、外国のファンの方がすごく喜んでいる印象があります。歌詞も多言語化で明記されていたり、Twitterを見ていても、必ず英語を載せているじゃないですか。

そうですね。応援してくださっている方がいるとわかっているのに、それを無視はできないので。もちろん日本語を勉強して日本語のツイートとか、歌詞とかを一生懸命理解しようとして、それもしたうえで応援してくださっている方がたくさんいらっしゃることも知っているんですけど。

――海外のファンはその心遣いがとても嬉しいと思います。

メロディが好きとか、なんて言っているかはわからないけど、響きが好きだから、声が好きだから、と言って音楽を聴いてくださる方にも、少しでも自分が思っていることを共有して曲を聴いてもらえたら嬉しいと思っているんです。人となりを知っているのと知っていないのじゃちょっと印象って変わってくるじゃないですか。

――それはそうだと思います。

Hikaru//がこういう人だから、ああいう歌を歌うんだね、面白いねと思ってもらえるのがいちばんいいと思っているので。だから、自分ができる範囲でですけど、日本だけじゃなくて国外の応援しようと思ってくださっている方への気持ちも、もらった分だけ返せたらいいなという気持ちです。どれだけできているかわからないですけど、でも自分のできる範囲で返したいですね。

――もはやファン思いというより、ファン目線に近いですよね。そういうところはさすがだなと思います。

確かにファン目線なのかも(笑)。


Kalafina3人のソロはただただ楽しみ

――では、せっかくのインタビューなので、過去のこと未来のこともちょっと聞いていきたいなと思っています。先ほどから何度も話に出ていますが、改めてKalafinaという存在はHikaru//さんのなかで今でも大事にされているものじゃないですか。

はい。

――Wakanaさんに続いてHikaru//さん。そしてKeikoさんもソロデビューが決定しまして、3人ともソロシンガーとして活動していくということが発表されました。Kalafinaの3分の1だったHikaru//さんからどういう思いがあるというのは聞いておきたいなというのはあるんですけど。

端的に嬉しいです。もちろんKalafinaとして3人で歌うことに対する意義とか、そういうものは10年間で培えたものだし、得たもの、とても幸せだったんです。でもやっぱり歌い手として、1曲をひとりで表現することに対する熱量も持っている3人だと思うんですね。

――それぞれのシンガーとしての矜持みたいなものでしょうか。

そうですね、過去にたくさんしていただいたインタビューのなかで、「Kalafinaとしてだけではなく、ソロとしての将来も捨てていません、まだ持っています」とお話をさせてもらったりしていて、当時その言葉を出していたのはHikaru//だけだったけど、もしかしたら当時から、そうじゃなくても今はそれぞれがソロで歌う意志を持っている、っていうのが嬉しいですね。

――Hikaru//さんはずっと「ソロとしていつかやってみたい」ということはおっしゃっていましたもんね。

当時は(Kalafinaの活動と)並行してできるのが一番いいなとは思っていたんですけど。今は、それぞれが自分のやりたい音楽だったり歌だったり、そういうものを追求できる場所があるというのはすごく幸せなことだなって。二人の声もすごく好きだし、これから二人がどんな音楽の道を歩いていくのかも楽しみです。いちばんそばで見てきたメンバーだからこそ、すごく楽しみだなって。いちファンとして純粋に好きだから(笑)。

――一緒に歌っていた人の曲を外から聴くという状況に3人ともなっているわけじゃないですか。

Yuki Kajiura LIVEで2人がKalafina以外の楽曲を歌っているところは何度も拝見しています。でも、ソロとしてそれぞれの場所でというのはなかったことなので。応援しているし、ただただ楽しみ。

――ある意味シンガーとしてはライバルにもなっているわけじゃないですか。

でも、それはこの仕事に就いた時点でみんなそうだと思います。

――ああ、なるほど。

ライバルって好敵手なので。高め合える存在という意味で、言葉としては“ライバル”ですけど、そんな蹴落としたいみたいなブラックな気持ちは100%ないです。それはどの歌い手さんに対しても同じように思っていますね。「この人になりたい」と思ったこともあまりないです。

――単純に意識して、自分を高めあえる存在。

結局音楽の好みとして、それぞれが自分の表現したいものを表現したうえで、聴いてくださった方がそれを「好き」って言ってくれるのがいちばん嬉しいですが、自分の好みじゃなかったら、好みの音楽を聴けばいいと思うんです。KalafinaのときもHikaruの歌はそんなに好みじゃなかったけど、KeikoさんやWakanaさんの歌や表現が好き。という方は沢山いたと思います。だから、3人がそれぞれのフィールドで活躍して、沢山の人に精一杯音楽を届けられる場所があるというのは、Hikaru//にとっては幸せなことですね。


音楽は昔から人々の生活のなかに根付いているものだと思う

――今、このインタビューは5月のゴールデンウィーク明けにオンラインでやらせてもらっています。僕は世界の在り方がちょっと変わってきているのかなという印象があって。自粛期間が解けたから、今まどおりに何万人のライブを普通にやりますってなるのは、結構時間がかかると思っているんです。同時に、音楽を含めた芸術の立ち位置や在り方や表現のっていうのも、みんないろいろなことをすごく模索している数カ月なのかなという気がしているんです。

そうですね。

――そのなかで、Hikaru//さんはどう思っているのかなっていうのは聞いてみたいです。

なんだろう。音楽って、別になくても生きていけるものだとは思うんですけど、でも、昔から音楽って人々の生活のなかに根付いているものだとは思うんですよ。たとえば雨乞いで太鼓をたたくとか、歌うとか。そういうことも人ってしてきているわけじゃないですか。

――はい、舞と唄は神への捧げものだったりもしますね。

そう。何かを称えたり、癒されたいときに昔から音楽が人の中にあったわけじゃないですか。そう考えると、音楽はきっとなくならないと思うんです。求めてくれる人はきっといると思うし、そうなったときに、ちゃんと自分のものとして、音楽を提供できる状態でありたいです。

――音楽を選んだ人間として、求められるものは提供したいと。

はい、Hikaru//はこの仕事を職業に選んで、やれることを精一杯やろうとは思っているけど、聴いてくれる人がいないとできない職業ではあるので。なので求めてくれる人がいる限り歌い続けたいし、皆さんの前に立ちたいと思っています。たとえ聞いてくれる人がいなくても、たぶん一生歌っているとは思うけど(笑)。

――予定されていたアコースティックライブが残念ながら中止になりましたが、人前で歌える世界にまたなればいいですもんね。

画面を通して配信とかの形でも皆さんのそばに寄り添うっていうのも大事なことだし、今できることだと思うんですけど……Hikaru//はライブを”会話”っていつも言っていますけど、そうやって直接会うのって、すごく温かみが増すし、思いを届け合うことができると思っているので、それもちゃんとできるようになるといいなと思います。

――では最後に、ファンの方にメッセージを頂ければ。

この記事を最後まで読んでくださってありがとうございます。自分にとって歌う場所がどういう場所なのか、独りになって考えることもたくさんあります。でもそのなかで自分ができる最善のことをやっていこうと決めてH-el-ical//を作りました。今はいろんな方の力を借りて、ソロでメジャーデビューシングルも出せることになりましたし、『グレイプニル』一話を観た日は泣きそうでした。それくらい、幸せなことをさせてもらっているということを、ずっと忘れないでいきたいです。そしてH-el-ical//は皆さんと作っていく場所です。もちろんソロプロジェクトではありますけど、こうやって記事を読んでくださっている方、H-el-ical//に関わってくださる方、作品、全部。すべての人と一緒に新しい景色と、新しい場所、世界を観ていけたらいいなと思っております。なので、ぜひこれからも、H-el-ical//をよろしくお願いいたします。

インタビュー・文:加東岳史

当記事はSPICEの提供記事です。

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