家入レオ「自分がなんだか空っぽな気がしてしまって」ーー初のEP『Answer』完成までに何を思い、何と向き合ったのか

SPICE

2020/5/13 18:00

初のEPとなる『Answer』を5月13日にリリースする家入レオ。同作にはNHK Eテレ『メジャーセカンド』第2シリーズ オープニングテーマとなる最新曲「Answer」に加え、昨年12月から募集していた“家入レオに歌ってほしい・聴いてみたい”楽曲のリクエスト企画で集まった楽曲を元に自らが厳選したカバー5曲を収録。
25歳という節目を迎えた彼女が何を思い制作したのか、EP完成に至るまでを語ってくれた。


――家入さんにとって、初のEPとなる『Answer』。タイトル曲であり、アニメ『メジャーセカンド』第2シリーズのオープニングテーマでもある新曲「Answer」は、デジタリックな要素とアコースティックギターの音色との混ざり合いが高揚感を生む、ドラマティックなナンバーですね。

“EPをリリースする”というプランありきで制作を進めていたときに、タイアップのお話をいただきまして。『メジャー』は私が小学生のときに観ていたアニメだったし、ぜひ携わらせていただきたいということでお受けして、自分の中にあった“カケラ”に水と肥料と光をあげていったんです。昨年リリースしたアルバム『DUO』では、「Spark」と「サザンカ」以外はほかの作家さんやアーティストさんから楽曲や歌詞を提供していただいて。たくさんの刺激も得たし学びもあったわけですけど、今回は前シングル「未完成」でもご一緒した岡嶋かな多さん、シングル「もし君を許せたら」からご一緒している久保田真悟さんに力を借りながら、あらためて自ら作詞・作曲をすることで、次のアルバムに向けてのいいワンクッションになったらいいなということも考えていました。

――そんな「Answer」は、歌声の響き方が新鮮だなとも感じました。

自分のボーカルを重ねる“ダブル”の分量をここまで多くしたのが初めての試みだったから、そう感じてもらえるのかもしれないです。10代からこの仕事を始めて、「オトナっぽいね」と言われることも多かったんですけど、ここ最近は等身大の25歳になれている気もしているし、『メジャーセカンド』に登場する野球少年少女たちのフレッシュさを表現できたんじゃないかなと思います。

――歌詞には、“変わろうとしてる 僕”の葛藤が描かれてもいますが、『メジャーセカンド』の物語に寄り添いつつ、家入さん自身の経験や想いが導いた言葉たちなのでしょうか。

まさに、ですね。「未完成」を書き終わってすぐに「Answer」の制作に入ったんですけど……20代に入ってからちょうど昨年まで、私はクオーターライフ・クライシスに直面しまして。

――20代後半から30代前半の多くが直面する、自分の人生に焦りや悩みを悶々と抱える精神状態ですよね。家入さんも陥っていたのですか。

20代半ば~後半って、社会や仕事にはだいぶ慣れてくるいっぽうで、女性だったら結婚する人、子どもを産む人も出てくるじゃないですか。私は人より少し早く仕事を始めたからか、20代前半で自分がなんだか空っぽな気がしてしまって、知り合いは増えていっても孤独感はむしろ強くなっていったし……なにをしたいのかわからなくなってしまったというか。でも、それは自分と向き合えていなかったからで、抜け出すにはひとりぼっちの時間を自分にプレゼントするしかないな、と思って「Answer」を書いたんです。

家入レオ
家入レオ

――「Answer」の歌詞にもありますが、“ひとりぼっちになる”には強さが必要ですよね。

すごく時間もかかるし、簡単なことではないなって本当に思います。

――ただ、先ほどのクオーターライフ・クライシスの件は意外にも思いました。家入さんの場合、自らを表現して、それが多くの人に認められて、求められ続けているわけですから。

もちろん、たくさんのいい出会いがあって、いろんな方に支えてもらっているということは、本当にありがたいと思っています。でも、生きていく上でも、表現する上でも、満足するっていうことはないんでしょうね。この3年間正直に言うと本当にキツかったし、その悪あがきはすべて作品に刻まれているっていう(苦笑)。

――そうやって嘘がないからこそ、家入さんの楽曲には自分を重ねてしまうし救われるんだなとあらためて思います。「Answer」にしても、“答え”が出ないとしても毎日をちゃんと生きていこう、と前向きになれますから。

Dメロで“答えはいらない 今日ここにいる 僕が全てだから”っていう歌詞を書いたんですけど、人との出会い、読んだ本、観た映画に影響を受けて、人間はどんどん変わっていくじゃないですか。そうやって今を生きていきたいし、この先も“笑って また泣いて 繰り返してゆく”ことは決定してるわけで、“答え”は要らないんですよね。

――ささやかな人生の中で堂々巡りだ、と虚しくなってしまう瞬間もありますけど、そう考えると希望を見出せます。

同じことをしているようで、ちゃんとステージは移行していって、その都度得るものが自分の人生を豊かにしていくわけですから。そして、“ささやかな人生”って私の中でのテーマというか、表現する上で絶対忘れちゃいけない感覚な気がします。

――だから、いつだって家入さんの楽曲は私たちの人生にそっと寄り添ってくれます。

そうであるならすごく嬉しいし、よりそういう発信ができるように、2020年はさらに仲間を増やしていきたいなと思っていて。この8年間、楽曲制作だけじゃなくアートワークやMVなど、年上の方々とタッグを組ませていただくことが多かったんですけど、同世代のクリエイターの方とも一緒に作品を生み出してみたいな。

――ゆくゆくは、家入さんより下の世代とコラボレーションしてみても、新たな化学反応を起こしそうですし。この先も楽しみは尽きませんね。そして、『Answer』には5曲のカバー曲も収録されていまして……2019年12月13日、家入さん25歳の誕生日を記念して生配信したLINE LIVE『祝!25才!家入レオBirthday特番!』にて“家入レオに歌ってほしい、聴いてみたいカバー曲”を募集したところ、実に約1万通にも及ぶリクエストメールが届いたそうで。

名曲を担う一員になりたいというおこがましい願いから始まった企画なんですけど、みなさんからの愛、とてもありがたく受け止めさせていただきました。本当にいろいろなリクエストをしてくださって、だいぶ意外性ある選曲にもなったんじゃないかなと思います!

家入レオ
家入レオ

――下田逸郎さんの「泣くかもしれない」とか。

昔の曲なので、スタッフにも知っている人はいなかったんですけど……19歳のときに観た、市川由衣さんと池松壮亮さん主演の映画『海を感じる時』のエンディングに、ホームレスハートさんがカバーされているこの曲が流れて。当時、中古屋やインターネットで必死にCDを探したものの見つけられず、YouTubeに上がっている音源を何度も何度も繰り返し聴きながら、いつか歌いたい!と思っていたんですよ。

――そうだったんですね。女として生まれたやるせなさが色濃くにじんで、余韻がいつまでも残ります。

そういう曲だけに、ギター1本だけでアレンジはストイックにして。人生経験が1周するまでは歌っちゃいけないと決めていたんですけど、やっと念願叶いました。

――また、YEN TOWN BANDの「Swallowtail Butterfly~あいのうた~」は、柔らかな家入さんの歌声に透明感とイノセンスが際立つなと。

私は岩井俊二監督の作品が大好きで、「Swallowtail Butterfly~あいのうた~」が主題歌の映画『スワロウテイル』も数え切れないくらい観ているんです。で、以前1か月くらい海外を旅して、イギリス・ロンドンの美術館、ナショナル・ギャラリーでウィリアム・ターナーが丘から眺める海を描いた絵を観たときに、完成しているのか完成していないのかわからない絵だと思うのと同時に、Charaさんの歌う「Swallowtail Butterfly~あいのうた~」が頭の中に流れたんです。直接的に言葉で「愛してる」とは言わなくても、歌声から愛が伝わってくるというのが、Charaさんのすごいところ。みなさんに「ストレートな歌声だね」と言われることが多い私ですけど、自分なりにほわっと包み込むような感じで歌いつつ……どうやって自分らしさを滲ませるか、編曲を担当してくださった武部聡志さんと相談の上、テンポを速めて、ストリングスとピアノだけのアレンジにしてみました。

――山口百恵さんの「秋桜」は、元の曲と比べてガラっと印象の異なるオシャレなアレンジで。

山口百恵さんの自伝も読ませていただきましたし、写真集も持っているんですけど、その“好き”のまま歌うのではダメだろうなと思いまして。SOIL&“PIMP”SESSIONSさんにアレンジしていただいたら、コードも変わって、本当にオシャレな仕上がりになりました。凜としたオトナの女性を感じさせる山口百恵さんの歌とはまた違った、“悪巧み感”のある曲に新しく生まれ変わらせてくれたSOIL&“PIMP”SESSIONSさん、魔法使いのような方たちです。

――かと思うと、エレファントカシマシの「悲しみの果て」は、荒削りでダイナミックな家入さんの歌声に、思わず鳥肌が立ちます。とんでもなく男前!

ありがとうございます!(笑) エンジニアさんに「マイクの容量が足りない!」って言われるくらい、声がガンガン出ちゃいまして。ツアーメンバーと一緒にせーので録ったので、ライブの臨場感みたいなものが出ているのではないかなと。あと、この取材前に聴いていただくことができなかったんですけど、平井堅さんの「POP STAR」はポップスの魔術師・冨田ラボ(冨田恵一)さんアレンジで、また新たな命を吹き込むことができたと思っています。

家入レオ
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――これまでもカバー曲を歌われてはいますけど、今回色彩さまざまな5曲をカバーしてみて、新たな発見や気づきもあったのでしょうか。

シングル「君がくれた夏」のカップリングでキャロル・キングの「I Feel the Earth Move」をカバーしたりだとか、ほかのアーティストさんの曲を歌う機会はこれまでもあったんですけど、ここまでたくさんの曲を歌わせてもらうのは初めてのことで。この言葉選びでいいかな、このてにをはで合っているかなっていう自問自答が尽きないオリジナル曲のレコーディングと違って、すでに完成された楽曲に向き合う時間は、純粋に音楽を楽しむことができた気がします。そして、歌うことが好きだなってあらためて思いました。

――そういう家入さんの歌を今やたくさんの人がカバーして、“歌ってみた”動画もたくさん投稿されていて。今回カバーした楽曲たちと同じように、家入さんの楽曲もまたたくさん歌い継がれて、愛されていくことでしょうね。

私も、自分の歌を歌ってくれている動画をちょくちょく観たりするんですよ。そのときそのときに全力で刻んだ想いが、誰かの心に残って、歌われていく……本当に嬉しいことです。

――さて、10月には全10公演の『家入レオ Live House Tour 2020』が開催されるわけですが、現時点ではどんなツアーにしたいと考えているのでしょうか。

久々のライブハウスツアー、私自身とても楽しみにしていまして。細かいところを積めるのはもうちょっと先のことになりますけど、ライブハウスに相応しいセットリストでまわりたいなとは思っています。

――期待しております! なお、デビュー10周年だったり、30歳というこの先の節目を見据えて、なにか未来図を描いていたりしますか?

デビューしたてのころって、未来のことをわりと具体的に考えていたんですね。でも、そのときそのときでやりたいことって違うし、自分の考え方や価値観だけじゃなく、社会もどんどん変わっていったりもするじゃないですか。だったら、未来のことを考えるパワーを今に注いでいきたい。新型コロナウイルスのもたらす影響に世界中が揺れる昨今、より強くそう思うんですよ。

――「Answer」の歌詞そのまま、“今日ここにいる 僕が全て”ということですよね。

今に全力を注いで、そういう毎日を積み重ねていけば、きっと辿り着くべき未来はあるはずなので。毎日をちゃんと耕していくことから、まずは始めようかなって思います。

取材・文=杉江優花 撮影=菊池貴裕
家入レオ
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