『100日後に死ぬワニ』騒動でもわかった、いきものがかりの優等生的スゴさ

女子SPA!

2020/4/7 08:46

 Twitterでじわじわと人気を呼び、多くの人に見守られながら3月20日に最終回を迎えた漫画『100日後に死ぬワニ』(きくちゆうき作)。4月8日にはそれをまとめた書籍も発売されました。

しかし、最終回後の余韻が冷めやらぬ中でのグッズ展開など怒涛のPRが“電通案件(広告代理店・電通が本作の仕掛けに関わっている)でないか?”と多くの批判を浴びました。

その展開の中で、多くの人々が注目したのは数々のヒット曲を持つアーティスト・いきものがかりとのコラボムービーです。テーマソング『生きる』も彼らの書き下ろしで製作。

しかし、なぜここにきていきものがかりなのでしょうか。そこには“ワニ=いきもの繋がりだから”という単純な理由だけではない、『いきものがかり』というグループのすごさが改めて見えてきました。

◆急ピッチで制作されたコラボ楽曲『生きる』

作品と彼らの関りについて、いきものががりの公式サイトではこのように発表されています。

“『100日後に死ぬワニ』のテーマに深く共感したいきものがかりのメンバーが、対談相手としてきくちゆうき氏に声を掛けたことがきっかけとなり、今回のコラボムービーの企画がスタート。近しい死生観を持つ4人の想いが重なり、異例の急ピッチで制作が進行され、作品がラストを迎える3月20日(金)の公開が実現しました。”(いきものががり公式サイトより引用)

この一文で注目すべきなのが、異例の急ピッチで制作が進行されたという点です。

最初から仕組まれてないことが本当ならば、話題になりはじめてから企画が立ち上がり、ブッキング、楽曲制作、録音、ムービー制作、そして公開を迎えるまで、あっても3カ月、最短1カ月の準備期間で進められたことでしょう。楽曲制作に与えられた時間は非常に短かったと考えられます。

関わりのきっかけの信憑性は本人たちのみぞ知ることですが、急ピッチで進められたことは誰もが推測できる事実です。

たとえ彼らの曲のストックの中からだとしても、これほどまでにテーマに即し、誰もが納得できるレベル以上の楽曲をすぐに用意できるのは多くのテレビ番組やCMのテーマソングを担当してきた、いきものがかりにしかできないことではないでしょうか。

◆全方位への配慮ができる、いきものがかりのスタンス

いきものがかりは、言わずと知れた水野良樹・吉岡聖恵・山下穂尊からなる3人組ユニットです。彼らの出身地は少々複雑。

水野と山下が神奈川県海老名市出身の厚木高校出身、吉岡が神奈川県厚木市出身の海老名高校出身で、いずれのメンバーも海老名と厚木にゆかりがあるため、地元ではしばしば“いきものがかり地元論争”が起こります。

しかし、彼らはデビュー10周年ライブを両市でそれぞれ開催し、海老名の観光大使の打診やイベントへの出席も厚木との兼ね合いから断るなど、両市への配慮も怠りませんでした。神奈川県の県央エリアで比較されがちなのが海老名と厚木ですが、その配慮のお陰で「両市ともに地元」と決着がつき、ファンの中ではもはや争うことこそタブーと言われるほどになっています。

また、メインソングライターであるリーダーの水野良樹は、東日本大震災で多くのアーティストが関連したメッセージソングを作る中、「そもそも僕は音楽に政治的な主張、姿勢(中略)を直接的に乗せることについて、とても懐疑的な人間です。」とSNSで主張するなど「ポップミュージックをひたすら信じてる」という意志から自身の楽曲制作のスタンスを表明。

どこにも偏らず、全方位的に配慮できるそんな彼らのスタンスは、誰からも愛される所以なのでしょう。

◆プロの仕事に徹するアーティスト

いきものがかりで一番の特筆すべきことはタイアップの多さです。

NHK朝の連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』主題歌『ありがとう』や、NHKロンドンオリンピック・パラリンピック放送テーマソング『風が吹いている』、江崎グリコ『ポッキーチョコレート』CMソング『じょいふる』やアニメ『NARUTO』のOPテーマ『ブルーバード』、TBSドラマ『私結婚できないんじゃなくてしないんです』の主題歌『Sweet! Sweet! Music!』など、数多く手がけています。

アップテンポからバラードまで様々な楽曲の幅があり、実際どの楽曲もそれぞれの企画に浮かず、テーマソングや主題歌としての機能を存分に果たしています。

コンペの場合もあるでしょうが、それさえも勝ち抜く安定性と、指名の場合でも企画にあった一定レベル以上の楽曲を確実に生み出してくれる信頼感、そして先述の全方位的に配慮できるスタンスが、多くのタイアップ依頼がある理由ではないでしょうか。

息切れしても、各所に段取りしたうえでの放牧宣言(活動休止宣言)を行い、その後きっちり集牧宣言をして活動再開したところも安心感があり、それゆえに多くの媒体やクライアントからの重宝されるのは必然のことです。

『100日後に死ぬワニ』がそのPR展開でどんなに炎上しても、批判がいきものがかりに向けられることはほとんどありませんでした。楽曲が素晴らしかったという理由もありますが、それだけ彼らがどんな案件であっても“プロの仕事”に徹することができるアーティストだということが周知の事実だったからでしょう。

10年以上に渡り多くのヒット曲をとばしながらも、今もなおその勢いは衰えることないいきものがかり。その一番の理由は間違いなく彼らの優等生さなのかもしれません。

<文/小政りょう>

【小政りょう】

映画・テレビの制作会社等に出入りもするライター。趣味は陸上競技観戦

当記事は女子SPA!の提供記事です。

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