「エール」1話/原始時代から始まり主題歌は最後に。波乱含みの新朝ドラながら、そんな時こそ“エール”を

エキレビ!

2020/3/30 13:00



第1週「初めてのエール」1回〈3月30日 (月) 放送 演出・吉田照幸〉


窪田正孝、二階堂ふみが実力を見せつけた
朝ドラこと連続テレビ小説 102作目の「エール」は、日本が誇る大作曲家【古関裕而】をモデルにしたドラマ。全国高校野球の歌や、巨人や阪神のテーマ曲、映画「モスラ」の歌など誰もが一度は聞いたことのある曲をたくさん作ってきた偉人・古関裕而をモデルにした【古山裕一】を演じる俳優は、「ゲゲゲの女房」「花子とアン」で朝ドラを支えてきた【窪田正孝】。
裕一を支えた妻・【古山音】を演じるのは【二階堂ふみ】。
朝ドラの主人公は、フレッシュな新人の登竜門でもあったが、最近は認知度や実力が保障済みの俳優が演じることも増えて、窪田正孝、二階堂ふみは後者に当たる。

第1話は、窪田と二階堂がいかに芸達者か存分に示してくれるものだった。

冒頭、紀元前1万年。はじめて音楽に出会う古代人に扮した窪田と二階堂が、喜びを音楽で表現する。
それから時代はアメリカ開拓時代(多分)へ。音楽と共に嘆きを表現する窪田。
そして現代。ここぞ!という試合の前に音楽を聞いて己を鼓舞する二階堂。
ちょっと戻って70年代、吉田拓郎のフォークソング「ある雨の日の情景」を聞きながらたそがれる窪田。
再び、現代。一時期流行ったフラッシュモブでプロポーズする窪田のキレッキレのダンス。

見事なフラッシュモブに二階堂がオチをつける。そこに再びかかる「ある雨の日の情景」にピッタリな泣き笑いの終幕だった。
人類と音楽の関係性を3分で一気に振り返る、まるで、人間って悲しいけどおかしいという、コント番組「LIFE」のようなはじまりだった。
半分、青い。」は主人公が胎児のときからはじまった画期的なドラマだったが、「エール」はそれを抜き、大胆にも紀元前からはじまった。これ以上前にはもう遡れないであろうというところまで来たといえるだろう。
朝ドラにしてはなかなか攻めた構成になったわけは、たぶん、あの人の力――。

「あまちゃん」の楽しさが帰ってくるか
あの人とは、「エール」のチーフ演出家の吉田照幸である。映画にまでなったコント番組「サラリーマンNEO」の演出をやっていたし、忘れてはいけないのは「あまちゃん」。チーフの井上剛と両翼で「あまちゃん」を支えた功労者であり、物語の核を担う井上に対して、音楽と笑いを使ったポップな見せ方で盛り上げた。その後、実話をもとにした「洞窟おじさん」、長谷川博己や吉岡秀隆を主演にした金田一耕助シリーズ、同性婚を扱った秀作「弟の夫」、映画「疾風ロンド」「探偵はBARにいる 3」など注目作を多く手掛けている。

「あまちゃん」以来の朝ドラ、今度はチーフ演出家となった吉田が演技巧者の窪田と二階堂と組んだからこそ、いささか凝ったはじまり方でも滑らず鮮やかに決めた。アメリカ開拓時代の画格はスクリーンサイズ。70年代は画格が昔のテレビサイズ。フラッシュモブはミュージックビデオ風のカット割り多めの編集と、音楽の歴史のみならず、映像の歴史も楽しんでさらっている感じが、ドラマを活気づかせる。

時代は、現代から少し戻って1964年。東京オリンピックの年。
オリンピックの曲をつくった古山裕一が開会式を前に、緊張して地下トイレに隠れてしまう。
それを探し出し、引っ張り出す妻・音。たまたま現れた長崎出身の警備員(萩原聖人)が裕一の曲「長崎の鐘」にどれだけ励まされたか語る。
「先生の曲は、人を励まし、応援してくれます」

こうして裕一は開会式に出る決意をする。

拍手と歓声に湧く国立競技場の光のなかへ薄暗い通路を通って夫婦が出ていく……。
朝ドラ名物のひとつ“最終回かと思った”が初回から。もっとも朝ドラの初回は、主人公の未来の栄光から書いて、過去に戻るというのは定番である。そうすれば、あらかじめ、この物語はハッピーエンドだとわかって、その後、どんな大変なことがあっても安心して見続けることができるという優しさなのである。
そうはいっても、「エール」は古代、現代、昭和、現代、昭和64年、明治42年と時代が行ったり来たりにもほどがある。

大河ドラマ「いだてん」よりも激しく時代を行き来したのち、明治42年、福島の老舗呉服屋で古山裕一が生まれた瞬間へ。ここからが、本番。父親・三郎(唐沢寿明)が大喜びで商店街を駆け出したのが開始12分。この明るさ、さわやかさ、力強さはいつもの朝ドラ。
「エール はじまり はじまり~」と人気声優の津田健次郎がナレーションして、GReeeeNの主題歌がエンディングのようにかかるのが開始から14分。

こうして第一話はにぎやかに15分を駆け抜けた。



順分満帆な旅立ちではないけれど……
一級の実力派たちによる攻めの姿勢ではじまった「エール」だが、この朝、今後出演が予定されていた(撮影もしていた)志村けんがコロナウイルスによる肺炎で3月29日に亡くなったというニュースが……。

1964年以来、2度目の東京オリンピックも延期となり、「エール」の脚本家・林宏司は昨年、降板し、クレジットでは「原作」になっている。コロナウイルスは日本中いや世界中の様々な活動に影響を与えている……というように決して順風満帆な旅立ちではない。

そんなときだから“エール”。
どんな困難にも挫けず“エール”
「エール」が我々に力を与えてくれますように。

◇◇◇
エキレビ毎日朝ドラレビュー、11作め、6年目に突入です
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(文/木俣冬、タイトルイラスト/おうか)

当記事はエキレビ!の提供記事です。

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