佐倉綾音が語る! 平尾アウリの楽しみ方! 佐倉&平尾 対談 前編

声優・佐倉綾音が、実は、現在放送中のアニメ『推しが武道館いってくれたら死ぬ』の原作者・平尾アウリの大ファンだった! ということで実現した対談をお届け。佐倉さんの平尾先生愛が止まらなくなってしまったので、2回に分けてアップします。その第1回は、平尾作品との出会いからのお話。平尾先生の漫画製作の意外な一面がわかっちゃいます!

私今でもアナログなんです

――平尾先生の作品との出会いは?

佐倉 初めて読んだのが『まんがの作り方』で、中学生くらいだったと思います。もう10年くらい前ですね。

平尾 10年前のことは最近だと思っています(笑)。

佐倉 お若いですよね?

平尾 いやいや(笑)

佐倉 当時の高校生の描写がリアルだったので、私勝手に、先生は高校生だと思っていて、今でもそのイメージが強いんです。昔の自分が重なっているとか、そんな感覚ですか?

▲『まんがの作り方』より

平尾 あまりそういうこともないんです。勢いで描いていたような気がする(笑)。

佐倉 そうなんですね(笑)。私中学生の頃、あき先生の作品が好きで、あき先生のような作風の作品を探していたんです。水彩っぽいタッチで、線の数が多くて、目の描き込みや髪の毛の描き込みがすごいのに違和感がないというか、変に増やしている、無理やり増やしている線じゃない。そういう感覚をアウリ先生の絵に感じて、「この人の作品とても好きだ」と思い、1巻を買って読んだら面白かったので、その時に出ていた全巻を買いました。まだ2~3巻くらいしか出ていなかった頃だと思います。

平尾 すごい! 古参です。ありがとうございます。

――こういうファンの声を実際に目の前で聞いてどうですか。

平尾 アニメも併せて『推し武道』を見ていますっていう方の方が多くて、『まんがの作り方』を読んでいましたっていう古参の方は、できましたら記憶を消去していただければ……。

佐倉 何でですか?(笑)

平尾 私自身、読み直してないんです。振り返ったりすることが、あまり好きではなくて。

佐倉 そうなんですか? 私、今回対談できることになって、もう1回最初から読み直しましたよ。

平尾 きっと私より詳しいです。

佐倉 昔のほうがキャラクターの目に光がないですよね? それもすごく好きだったし、それが魅力的だと思って読み始めた当時の自分を思い出して、すごく懐かしい気持ちになりました。でも圧倒的に絵は当時から、今見ても、プロの方に言うのは失礼なのですが、とてもお上手でした。大好きだったので、昔ラジオで紹介させていただいたこともあります。

平尾 ええぇ……(照)。本当に嬉しいです。ありがとうございます。トーンが懐かしいって、ラジオでお話ししていましたよね。私、今もアナログな手描き原稿なんです。

佐倉 デジタルではないんですね! 珍しいですね。『まんがの作り方』でトーンを貼ったりするシーンが出てくるじゃないですか。ああいうのを見ていると、いいなぁって思うんです。私も昔、絵を描くのが好きで、お遊びでスクリーントーンを切ったり貼ったりしていたこともあったので、懐かしい気持ちで読んでいました。

平尾 トーンと言っても、多分もう今の子たちには通じないと思います。貼るって、何を? って思うんじゃないですかね。

佐倉 そうか…そういう時代が来るんですかね。デジタルにしないのは、何かこだわりがあるんですか?

平尾 全然ないです。実はパソコンのファンの音が苦手なんです。でも今って、依頼が全部デジタルで来るんです。デジタルの仕様でサイズとかが書かれてくるから、アナログなんだけどどうしたらいいですか? って聞き直さないといけないんです。

佐倉 今どきの人! っていうのが私の中の平尾アウリ先生のイメージなんです。いつまでも新進気鋭の女子高生作家なんですよ。だからデジタルに強くて、インターネットの文化もよくご存知なのかなと、勝手に思っていました。

平尾 全然です。一生アナログですから。

佐倉 意外ですね。作品の雰囲気と本人の違い。ご本人にお会いしても、今どきのお綺麗な方だしデジタルのイメージなんですけれどね。不思議だなぁ。

平尾 『まんがの作り方』の表紙は、カラーインクじゃなくて。完全に水彩で描いてるんです。中学生の時の絵の具セットあるじゃないですか。あれです。

▲『まんがの作り方』1巻

佐倉 嘘!? 弘法筆を選ばずとはこういうことなんだなと思いますね…。買い足ししながらですか?

平尾 そうです。絵の具は無くなったら買い足してます。

佐倉 それでこの表紙ができてるんだ! ますます不思議だなぁ。新作の『推しが武道館いってくれたら死ぬ』は、ChamJamのメンバーのカラフルな表紙を見た時、今まで白が基調で、パステルで、という雰囲気だったのに、急に鮮やかな彩度が高い絵になっている…と思って、いちファンとしてすごくびっくりしたんです。あの、ちょっとはかないのに、どこか主張の強い感じがなくなっていたらどうしようと思って。

――そこも好きなポイントでもあったんですか。

佐倉 そうですね。でも心配は全然杞憂に終わったというか、むしろ何だったらもっと好きになってしまいました。私、自分が出演していないアニメのDVDを買いたくなったのって、『よんでますよ、アザゼルさん』っていう作品以来なんですよ。

平尾 買ってくれるんですか。

佐倉 買おうと思っています。ラジオでもその話をしていて。ラジオの相方と一緒に買いに行こうと話していました(笑)。『アザゼルさん』は少年誌で連載されているド下ネタ作品だったんですが、それがなぜか妙に刺さってしまって。「私ってこういう人間だったんだ」と思っていたのが、「いや、私ってこういう人間だったよな」って戻してくれた作品が『推し武道』なんです(笑)。

平尾 『アザゼルさん』面白いですよね。私も全部見ました。

佐倉 本当ですか!うれしい! そう、アニメも漫画も面白くて。でもこの業界に入って、自分がアニメや漫画に携わっていくと、作品をちゃんとした目で見られなくなっていってしまうんですよね。例えば現場をご一緒している人のアフレコをしている後ろ姿が思い浮かんでしまったりとか、アニメーションというものにハマりにくくなっている自分がいるんです。なので、『推し武道』は私未だにキャストを見ないで観ているんですよ。一人だけラジオで答え合わせをしたのですが、それ以外のキャストはひとりも名前を見ていないんです。OPとEDも、CV表記が来そうなところは目をつぶったり、目をそらして見えないようにして(笑)。だからこそ、すごくシンプルにファン目線で、本気で楽しませていただいています。

平尾 ありがとうございます。

『推し武道』のキャラクターは魅力的

――原作も読まれていたんですよね。

佐倉 原作も読んでいました。相変わらずのアウリ先生っぽい雰囲気プラス、今までのアウリ先生の作品にはなかったアイドルの現場というテーマが入ることで、とても読みやすいなと思いました。素敵なコラボレーションだなって。私もアイドルが好きなので、推しはこういう地下アイドルではなかったのですが、今は心の何処かでChamJamを探しています。それくらいハマっていますね。

平尾 ありがとうございます。

佐倉 モデルになっているアイドルグループはいるんですか?

平尾 グループはいないんです。メンバー個別に、顔のビジュアルで参考にしている人はいます。アイドルの方というわけではなく、いろいろな界隈の女子の顔を参考に作ってるんです。別の取材でお話したことありますが、実際にいる女の子をモデルにしてるっていうのが特徴のひとつというか。モデルがいたほうが描きやすいですからね。

佐倉 今までの作品にもモデルがいたんですか?

平尾 いないんです。今回は何人もの女の子を描きわけなきゃいけないので。

佐倉 確かに。女の子がたくさん出てきますもんね。

平尾 そうなんです。


佐倉 短編集の私がとても好きな設定なんですけれど、いろいろな登場人物が出てきて、でもそれぞれがどこかでつながっている。誰々のお兄ちゃんとか、誰々のお姉ちゃんとか、町で会った人とか。それが1冊の中で展開するんです。私、登場人物を覚えるのが苦手で、たくさんのキャラクターが出てくると「この人だれだったっけ」とページを遡ることがよくあるのですが、アウリ先生の作品だと、パッと名前が出てきて、パッとつながるんです。

平尾 え~よかったです。すごくうれしい。ありがとうございます。

佐倉 どのキャラクターもとても魅力的です。くまささんも、参考にした方がいるんですか?

平尾 くまささんはいないんです。描きやすい感じのキャラクターにしています。

佐倉 こういう人、いそうだなと思います。

平尾 そうそうそう。

佐倉 ChamJamの子たちって、基本悪い面が見えないところが、私はすごく安心して読めるんです。一般的にアイドルとか女の子がたくさん集まると、大変なことが起こることが想定されるじゃないですか。そういうところを排除するというのは、決めていたんですか?

平尾 そうですね。アイドルの悪いところは書かないでおこうと思っていました。大体のアイドル漫画って、なぜかアイドルを落としに行くじゃないですか。

佐倉 そうなんです。だから私、今までそんなにハマらなかったんですよね。

平尾 そうなんですね。アイドルを落としたくなんてないですよね。可愛いものは可愛いままで見せたいんですよね。

佐倉 本当はいいところだけを見ていたいなと思うのですが、フィクションでもノンフィクションでも、アイドルの闇みたいなところにつっこんでいく作品が多いんです。もしくは完全に男性に向けたもの。わりと今までその二択だったのが、『推し武道』では、中を覗いても可愛いし、外を見てもオタクたちが可愛いし。出てくる人間が、みんなすごく可愛いんですよね。平和なんです。だって空音ちゃんのファンの話、ガチ恋の話って、描くのが難しいと思うんですよ。

平尾 ちょっとドロッとした部分とか、見えてくるはずなんですよね。

佐倉 愛憎劇になってしまいがちですよね、アイドルの本質を突き詰めていくと。彼女たちはアイドルの衣装を身にまとっている間は、誰のものにもならないっていうのが、その世界での生き方なので、そう考えると、みんなが悪者にならないのに、ちゃんとアイドルの中に存在しているものをしっかり描かれているようで、いいなと思うんですよ。

平尾 そう言っていただいて、いい漫画描けてよかったです。ガチ恋勢を救ってあげたい気持ちもあったんです。

佐倉 おぉー。

平尾 そうなんです。ガチ恋勢はどこ行っても嫌われるっていうか、叩かれるじゃないですか。ガチ恋ってだけで叩かれるんですよ。

佐倉 ガチ恋なだけなら叩かれないはずなんですけど…やっぱりその先で、人としてよくないこと、アイドルが望んでいないことを起こしてしまうから非難を受けるわけで、本来片思いをするだけなら大丈夫なはずなんです。

――ガチ恋が必ずしも悪いわけではないですからね。

佐倉 『推し武道』に登場するオタクは、ちゃんとそこをわきまえながらオタ活をしているじゃないですか。すごくみんないい人だなって安心して追いかけていけます。


事実は小説より奇なり

佐倉 えりぴよさんには、アウリ先生が投影されているんですか?

▲『推しが武道館いってくれたら死ぬ』より

平尾 ではないかな。と、思いますが。

佐倉 アウリ先生はどこから作品を見ていらっしゃる作家さんなのでしょう。神の立場ですか?

平尾 そうですね。神の立場ですね。

佐倉 そうなんだ。神の立場パターンなんですね! それにしてはリアルだなと思ったのですが。すべての作品が。

――もちろん実際のオタ活の中から生まれてきているものはあるんですよね。

平尾 そうですね。友達だったり、周りの環境から生まれたものはあります。えりぴよが1話のライブ中に鼻血出して倒れるっていうのも、友達の実話なんです。

佐倉 そうなんですか! それは女性の友達ですか?

平尾 そうです。

佐倉 すごい。実在するんですね。一番嘘っぽいと言うか、完全にフィクションの掴みシーンだろうと思っていました。

――そんな漫画みたいなこと、という出来事ですよね。

佐倉 事実は小説より奇なりってやつですね。『推し武道』は比較的、漫画っぽいテンポだなと思うのですが、短編や『まんがの作り方』では、リアルな会話の言葉回しが多いなと思っていました。

平尾 多分、自分の中に自分とは違う女子高生がいて、その子がしゃべってくれるんです。

佐倉 それを書き起こしてるんですか?

平尾 そうですね。こうありたかったな、という感覚もありますね。

佐倉 アシスタントさんはいらっしゃるんですか?

平尾 います。主に入ってくれてるのがひとり、時間があれば来てくれるのがふたりくらい。

佐倉 アシスタントさんには、どのくらい任せているんですか?

平尾 カラーは全て自分で描いていますが、モノクロのページのキャラクター以外はほとんど任せています。

佐倉 そうなんだ、じゃあ背景とかもアシスタントさんなんですね。

平尾 はい。

佐倉 そうなんだ~。面白い、そういう裏側はなかなか聞ける機会がないですよね。ということは、アシスタントさんもみなさん先生に合わせて手描きなんですか。

平尾 そうなんです。頑張ってもらってます。「普段はデジタルなんですけれど」って言われながら。ここでしかペン持ちません、なんて言われています。

佐倉 すごいな。いろいろ衝撃ですね。アナログだからかなのかはわからないですけれど、アウリ先生の線の震えみたいな部分がすごく好きなんです。谷川史子さんの作品もすごく好きなんですけれど、谷川さんの作品も少し線が震えていて、それがキャラクターの表情にとてもいい味を加えていて。

平尾 谷川先生いいですよね。私も好きなんです。実は、モノローグの絵にかかる心情の文字があるじゃないですか。あの配置は谷川先生を意識しています。

佐倉 すごい、つながった。私の感覚は間違ってなかった。うれしいです。


と、今回はここまで!
次回はアニメ『推し武道』のお話に移ります! お楽しみに!

(C)平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

当記事はアニメージュプラスの提供記事です。

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