“世界でいちばん貧しい大統領”ムヒカがいまの世界に伝えたい思い

ananweb

2020/3/25 21:00

新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界が未曽有の状況に追い込まれるなか、政治家や国のリーダーとしてあるべき姿など、あらゆることを考えさせられている人も多いはず。そこで、風変わりながらもさまざまな功績と感動を残し、全世界から注目を集めたある人物の真実に迫ったドキュメンタリーをご紹介します。それは……。
■ 『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』

【映画、ときどき私】 vol. 300

人よりも牛が多いとされる南米の小国ウルグアイ。第40代の大統領に選ばれたホセ・ムヒカは、貧しい人のために自身の給料の大半を寄付し、職務の合間にはトラクターに乗って農業に勤しんでいた。

2012年にブラジルのリオデジャネイロで行ったムヒカのスピーチが話題となり、その翌年から2年続けてノーベル平和賞にノミネート。日本でも多くの本が出版され、大きな反響を呼んだ。いま、波乱に満ちたムヒカの人生が明らかとなる……。

2014年から大統領として任期を満了するまでのムヒカに密着している本作では、衝撃の半生から妻であり同志でもあるルシアとの絆、さらにムヒカが抱えている思いが余すことなく映し出されています。そこで、さらなる裏側についてこちらの方にお話いただきました。

■ エミール・クリストリッツァ監督!

世界三大映画祭で絶賛されている名匠としても知られているクリストリッツァ監督ですが、本作では自身も聞き手として登場しながらのドキュメンタリー作品となっています。今回は、監督から見たムヒカの印象や彼から学んだことなどについて語っていただきました。

―まずは、ムヒカさんのドキュメンタリーを撮ることになった経緯から教えてください。

監督
 ある日、僕のバンドのマネジャーのところに連絡があり、「ムヒカのドキュメンタリーを作りませんか?」と声をかけられました。彼らはムヒカと同じような意見を持っている人を探していたそうですが、彼の妻であるルシアが僕の短編と自伝を通して僕のことを知っており、監督に選んでくれたようです。それは、ワクワクする出来事でしたよ。

―では、本作を撮るうえで、どのような準備をされたのでしょうか?

監督
 まず始めたのは、彼の写真を見て、伝記を読むことでした。そのうちに、「自分で家を修理したり、トラクターに乗って農作業したりしながら、同時に大統領としても成功している人物とはどんな人なんだろうか?」と興味を持つようになったのです。

実際に飛行機に乗って会いに行ったのは8年前ですが、そのときに「彼のような大統領はほかにはいない!」と感じました。お金のために政治家になる人が多いなか、彼は国を愛し、正義のために立ち上がっている政治家。目の前に“理想の人物”が立っていると幸せな気持ちになるものですが、彼はひとりの人としてもパワフルで魅力的でした。そして、初めて会ったときに人間同士のふれあいが起きたのです。

■ 歴史上においてもこんな政治家はいない

―ムヒカさんからは数々の名言が出てきますが、監督が一番感銘を受けた言葉はありましたか?

監督
 作品の最後に彼が「私は去りません。これからです」と言って始まるスピーチをしていますが、それらの言葉が印象に残っています。そこには「いま権力を持っている我々が大切なのではなく、これから世の中を引っ張っていく人たちが大切なんだ」という思いが込められており、彼が抱く別の政治的概念にもつながっているからです。

また、彼のなかには、もっと文化を向上させていかなければいけないという考え方がありますが、それが実現すれば、文化のなかにあるコミュニケーション方法や平等を基本とした人間の関係をよりよくすることできるのだろうとも思いました。

―残念ながら政治の世界には、自己保身ばかりを考えている政治家もいますが、いまの政治家たちがムヒカさんから受け継ぐべき精神があるとすれば、何だと思いますか?

監督
 ムヒカはステレオタイプな政治家の特徴を何ひとつも持っていないどころか、むしろそれ以外のすべてを持っている人だといえます。アナログからデジタルに移行し、価値観のシステムや新しいコミュニケーション方法が誕生して、大きく変動する時代のなかでも、彼は変わったり、被害者のようになったりすることはありませんでした。

変化を柔軟に受け入れつつ、自然と対話することを続けている姿勢は素晴らしいことだと思います。ほとんどの政治家は権力を手にすると悪いことに使ってしまいますが、彼は強欲さがないだけでなく、心から他者を愛する僧侶のように、相手に物を与える人なのです。そういった人間的な本質は大統領になっても揺らぐことなく、彼は自分の一生を他人や国のために捧げています。

それゆえに、政治の実用的な部分にだけに目を向けており、物質的なことに足をすくわれることがないのです。歴史上においても、こんな政治家はほとんどいないんじゃないでしょうか。

■ ムヒカにはすべてのバリアを壊してしまう力がある

―映画のなかでは、ムヒカさんの熱烈な支持者が数多くいるいっぽうで、異議を唱える人も映し出されていましたね。

監督
 僕は撮影のエピソードなどについてはあまり話をしないほうなので詳細は控えますが、お金や時間の制限が多い昨今では、映画作りに費やすことができる時間が短くなっています。

そんななかでも、幸いなことに本作には3年半もの年月をかけることができました。しかも、僕はその期間中、ほとんどムヒカと一緒に時間を過ごすことができたのです。だからこそ、ムヒカを激しく批判する男性と本人が対面するシーンも撮影することができたんだと思います。

―監督は、初めてムヒカさんの写真を見たときに「世界で腐敗していない唯一の政治家だ」と感じたそうですが、実際に会われてみて、どのような印象を受けましたか?

監督
 僕から言わせると、彼は電磁波のようなものを発している人。もし彼が役者だったら世界でもっとも素晴らしい役者になったんじゃないかな(笑)。それほど自然な魅力を持ちながら、すべてのバリアを壊してしまう力を秘めた人なんですよね。

たとえギリシャ神話のヒーローやのボディビルダーのような肉体を持っていなくても、人間的な強さを内側に持っている人なんです。

■ 妻がいなければいまのムヒカにはならなかった

―そんなムヒカさんを語るうえで欠かせないのは、妻ルシアさんの存在が挙げられます。

監督
 彼女は、ムヒカにとって成功の最大の秘訣。映画を作り始めたときは、まさか彼らのラブストーリーについても語る作品になるとは思いませんでしたが、彼らはつねにお互いに対して献身的な気持ちを抱いています。彼女がいなければ、ムヒカはムヒカになることはなかったでしょうね。

―日本でもムヒカさんの人気は高いので、日本の観客へ向けてメッセージをお願いします。

監督
 僕はどの映画にも軸となる“背骨”があると思っていますが、この作品では彼のパーソナリティと深くつながることができる“背骨”を得ることができたと自負しています。

そのなかでも、彼が大統領として最後の日を迎えた瞬間をはじめ、彼の人間としての幅広い魅力や個性をすべて映し出すことができました。それがとてもロマンティックなアイディアとマッチすることができたので、ムヒカという唯一無二の存在をみなさんにもご覧いただけると思っています。

■ ムヒカ語録には人生の学びが詰まっている!

賛否を巻き起こしながらも、何よりも人々のことを思うムヒカ元大統領から放たれる言葉の数々は、誰の心にもまっすぐと届くものばかり。人生や“ほんとうの豊かさ”とはいったい何なのかということを考えずにはいられない時期だからこそ、さまざまな気付きを教えてくれる必見作です。

■ 感動の予告編はこちら!



■ 作品情報

『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』3月27日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開配給:アルバトロス・フィルム (C) 2018 CAPITAL INTELECTUAL S.A, RASTA INTERNATIONAL, MOE(C)CAPITAL INTELECTUAL S.A.

当記事はananwebの提供記事です。

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