「完全自殺マニュアル」鶴見済×プロ奢ラレヤーが語る、“贈与経済の今後”

日刊SPA!

2020/3/25 15:50

 著書『嫌なこと、全部やめても生きられる』(扶桑社)が、発売から3か月足らずでアマゾンレビュー数200以上と大好評のプロ奢ラレヤー。

対するは1993年、著書『完全自殺マニュアル』(太田出版)が100万部のベストセラーとなり、『0円で生きる』の最新刊があるフリーライターの鶴見済氏。

世代は異なれど、生きづらい世の中に一石を投じる2人に「なぜ人は嫌なことをやめられないのか?」を語ってもらった。

◆「プロ奢ラレヤー」は贈与経済?

鶴見 僕らの共通点はフォロワーがやや被っているところじゃないかな。僕がやっている居場所にはプロ奢さんに影響を受けた人やプロ奢さんのような活動をしたいっていう人も来るんですよ。ニート界隈とかね。

プロ奢 ニート界隈(笑)。曖昧な人類はいっぱいいますからねー。お金がなくてもある程度エンタメは享受できるし、活発なニートは僕の周りにも多いですね。

鶴見 そもそも僕が最初にプロ奢さんの活動に興味を持ったのは、これは「贈与経済」じゃないかって思ったから。

今ってお金の経済が基本ではあるけど、昔はモノを貰ったりお返ししたり、手伝う代わりにご飯を食わしてあげるとかで経済がまわっていたわけじゃないですか。

プロ奢さんの活動も「なにもしてない」と批判されるけど、お金が介在していないだけで実は相手にすごく価値を与えていると思う。そのお返しとして食べ物をもらってるだけのことで、本質は「働いてる」のと変わらない。プロ奢さん自体が贈与経済そのものだと思うんです。

プロ奢 お金が介在しないからこそ「ちゃんと働け」とか怒られますけどね。結局、みんなお金大好きなんですよ。

鶴見 お金に換算されないものの価値ってよくわからなくなるんだろうね。

プロ奢 数字で測れるかどうかっていうのが大事なんですよ。わかりやすい指標がないと結局なんの価値があったんだろうって話になりやすい。他人から見た時も数字があったほうが理解されやすいし、自分で振り返った時にも不安になる。そういう意味で「お金」は便利ですよ。

鶴見 結局、「何か」を成し遂げた人の「すごさ」って、どれだけ稼いでいるか、どれだけ売り上げたかとか金額で見られることが多いでしょう。いっぱい稼ぐ=すごいことをしたんだ、っていう。その人が何をしたか、よりも数字が並んでる方が人は納得するんだよね。

プロ奢  「プロ奢ラレヤー」が理解されないのも仕方ないっすね、まあ別にどうでもいいけど。僕のことは何で知ってくれたんですか?

鶴見 やっぱり俺は0円研究家なので、こういう活動している人は早い段階から注目してましたよ。最初は奇妙な存在だったと思うけど、その後に「レンタルなんもしない人」さんとか出てきて、だいぶ一般化されてきたよね。

プロ奢 今も十分奇妙ですよ。僕は怒られがちなんでアレですけど、レンタルなんもしない人はドラマ化しますから。しかもジャニーズ主演で。すごい。

鶴見 プロ奢さんが怒られがちなのはね、態度が全然優等生的じゃないからだと思う(笑)。でもそういう態度に俺はすごくホッとする。たぶんプロ奢さんが怒られるのって「奢られて生きてる」ということより、世の中の「ちゃんとしよう」という雰囲気を全然持っていないから。

だけど「ちゃんとしよう」ばっかりだと世の中きつくなっちゃうんですよ。『嫌なこと、全部やめても生きられる』の本もまさにそうだけど、「嫌なことやめちゃおうぜ」ってどこかで誰かが言わなきゃ世の中って何も楽になっていかないんだけどね。

プロ奢 ヤフコメで僕を批判してくる人は、僕の「嫌なこと」をすごく普遍的なものとして解釈するんですよね。「嫌なこと」で想起するものって、本当は人によってすごく分かれると思うんですよ。

たとえば僕は個人的な理由で「靴下履きたくないなー」と思うし、同じように「満員電車乗りたくないなー」って思うんだけど、それって別に僕のパーソナリティに基づいてるものじゃないですか。だから「嫌だからやめた」と言っているだけなのに、「満員電車は嫌だから乗らない」と言うと、まるで自分の人生を否定されたかのように感じてしまう。

鶴見 僕も例えば「フリーランスいいよ」って言うと、「でも全員はできないじゃん」「食えないじゃん」と言われてしまう。僕だって「みんながうまくいく」なんて思ってないし、言ってもいないんだけど。最初、僕はサラリーマンだったけどすごく苦しかったんですよ。会社勤めや人間関係が本当に苦手で。だから同じように苦しんでる人に向けて「こういう生き方もあるよ」と言いたいんだけどね。「みんながみんなそうじゃない」「人生そんなに甘くない」と必ず否定する人が現れる。

プロ奢 そもそも「みんなができること」なんてクソつまんないですからね。うまくいくはずもないし。

鶴見 そうだよね。でも全員に当てはまらなくても、選択肢は増やしたほうがいい。

◆銀行口座の残高以外の豊かさを見つけられた人間は無敵

プロ奢 「フリーになって食えるかどうか」の損得で考えた時に「食える」と答えた人は、めちゃくちゃ能力が高いか「食える」の基準が低いかのどっちかじゃないですか。後者だったら自給自足すればよくね?とか、家なんてなんでもよくね?と思ってるかもしれない。

鶴見 僕は0円で色々やることを推奨してるので、そもそも「食える」の基準は下がるよね。すごく高いところを想定してる限りは嫌なことってやめられない。

プロ奢 「そんなうまくいくはずない」とか言ってくる人って、前提として人生に求めてるものが多いんですよ。僕とか別にいい家に住みたい願望もないし池袋西口らへんでテキトーに寝てたって豊かだなーって思うから、嫌なことやる必要がないんです。毎日うまい焼き肉食べたいわけでもないし、100円の納豆巻き一本食べられればいい。

鶴見 プロ奢さんにとっての豊かな生活はどんなものなの?

プロ奢 「面白い人にあって話を聞く」ことですね。これは、僕にとっての銀行口座みたいなもの。それさえできれば別にいいっすね。

鶴見 「銀行口座」以外の豊かさを見つけられたら、それは無敵だよ。たとえば戦後はみんなお金がなくてモノもなくて「お金って大事だね必要だね」ってなるのは当然だと思う。今も必要な分が足りてないなら、それは大事。

でも十分足りていてる場合でも、未だに新しい価値観がアップデートされてない。お金やモノをたくさん持ってる人が偉いっていうのはバブルまでの基準だから。もちろん否定はしないけど、60年代70年代ぐらいから価値観が更新されてない気がする。

プロ奢 まあ個人的にタワマンに価値を感じるのなら別にいいんじゃんって感じだけど、自分の所属するコミュニティのランキングのためにタワマンに住むのは馬鹿げてますよね。「嫌なことも続けろ」っていう考え方にしてもそうだけど、欠乏してた時代に採用された価値観を持ち続けていても豊かさからは遠のいていくんじゃないかなー。

鶴見 実際「嫌なこと」をして経済成長を遂げたという時代もあるし「嫌なことに耐えよう」の文化を抜けきれないっていうのもわかる。僕が育った時代は我慢を強いられることが当たり前だったし、嫌なことをやらならなきゃダメだ、っていう「がんばれ文化」だった。「巨人の星」をみんなで見て「がんばれがんばれ」って。でもそれだけじゃ幸せになれねーよって、みんなどこかでわかってるような状態。

プロ奢 しんどそうだなあ。鶴見さんはフリーになって、どれぐらいなんすか?

鶴見 もう30年ぐらい。たぶん僕らの世代が一番最初ぐらいじゃないかな。

プロ奢 へー、すげー。先駆者だ。

鶴見 80年代後半あたりからフリーのライター、編集者とかがどんどん出てきて、自分もしばらくは稼げなかったけど、その頃から「フラフラして」とか「そんなんじゃ将来食いっぱぐれるぞ」とか散々言われたよ。当時から僕は「がんばって生きろ!」って風潮にすごく反抗してたから「いざとなったら死ぬこともできるんだから楽に生きよう」っていうメッセージを込めて『完全自殺マニュアル』を書いた。

プロ奢 出口が見えるのって大切ですからね~。僕の本を買ってくれた人も、「この本を読んだその日に退職する決意をして退職届けを出した」とか感想書いてて、ウケましたね。そういう意味ではなんか僕の本と鶴見さんの「完全自殺マニュアル」は近いのかもしれない。

鶴見 僕の場合は「こんなきつい世の中生きてられるか、くそったれ」的な怒りもあったけどね(笑)。プロ奢さんはこういう生き方を選びながらも全然生きづらさを感じていないのがすごいよ。なんならリア充だよね。僕らの世代だったら「プロ奢ラレヤー」っていう職業は絶対に成り立たなかったのに。

プロ奢 ツイッターの力は大きいっすね。今はいくらでもマッチングできるんで。特にツイッターってすごいですよ。インスタグラムとかフェイスブックとも違う、スラムです。だから面白い。

鶴見 僕らが「フリー」で生きる第一世代だとしたら、プロ奢さんは「奢られ」の第一世代なのかもしれない(笑)。いずれにしても今後の“お金じゃない経済”の象徴のような存在になると思うよ。

【鶴見済(つるみ・わたる)】

フリーライター。東京大学文学部卒業。つながり作りの居場所や0円ショップ、共同の畑などを実践し、社会不適応者たちが生きやすいオルタナティブや共有経済の拡大を目指して活動している。『脱資本主義宣言』『完全自殺マニュアル』など著書多数。

【プロ奢ラレヤー】

本名、中島太一。23歳。「他人のカネで生きていく」をモットーにツイッターを介して出会ったさまざまな人に「奢られる」という活動をし、現在フォロワー約9.5万人。奢ってくれた人々との邂逅を綴った「奢ログ」を含む日々の考察を有料note「プロ奢ラレヤーのツイッターでは言えない話。」として配信中。

<取材・構成/片岡あけの 安英玉(本誌)>

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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