ガガガSP新アルバム「ストレンジピッチャー」リリースに寄せて想いを語る~ライブハウスがライブハウスらしさを取り戻す日まで~

SPICE

2020/3/25 12:00

デビュー20周年目、まだまだ進んでいくガガガSP。彼らの最新アルバム『ストレンジピッチャー』は確かなバンドの成長と、改めての初期衝動を内包した素晴らしい作品となっていた。様々なことを乗り越え、そして突き進んでいく彼らの今を直撃した。


――最新アルバム『ストレンジピッチャー』をリリースした、ガガガSP。デビュー20周年目、素晴らしい作品が完成しました!

前田:ありがとうございます。「イメージの詩」と「スイートフォークミュージック」は、去年からライブでやっていて。これまでとちょっと違うテイストのアルバムになるだろうなと想像していたんですけど、そこから上手く出来たなって気持ちはあります。

山本:アルバムを作る前、バンドの先輩に「どうしたら良いですかね?」って相談したら、「ガガガはトップギアの曲がいっぱいあるから、そうじゃないアプローチはどう?」と言われて、「イメージの唄」や「スイートフォークミュージック」を作って。そこからアルバムに行こうってなった時、松原さん(太陽と虎)やイノマーさん(オナニーマシーン)のことがあって。この気持ちをどう表現しようか? というのが強くなったことで、いままでのガガガみたいに無理してカラッとした感じにするんじゃなくて、しっとり感のあるイメージに持っていけたところもありました。

――うん。そこで今作はガガガSPの現在をしっかり鳴らせてると思うし。最後、「夢にさえ消えない君よ」で気持ちを消化して、次に向かうギアも入れられています。

前田:いままでのウチらやったら、ああいうハイテンポな曲を前の方に持ってきたりして、それだけでもアルバムのイメージが違ったと思うんですけど。前半にあえてミドルやスロウな曲を持ってきて。

――去年は初期楽曲のみのツアーをやってきましたが。「トップギアの曲はいっぱいあるから」という確認作業も出来たから、こういう作品作りが出来たのかも知れないですね。

前田:そうですね。初期楽曲ツアーをやるって話は何年か前もあったんですけど。回顧的なものにしたくないと思って、あまりやりたくなかったんです。でも、いまやったらええかってところで、30箇所弱のツアーをやって、新曲もやって。新曲もやるうちに馴染んでいったというか。最初、初期楽曲を望んで来た人に、新曲をどう見せていくか?ってところで悩んだんですけど。だんだんといい感じになっていって、それと同時にアルバムのイメージも出来てきて。
ガガガSP
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――山本くんは初期楽曲ツアーをやって、思ったことはあります?

山本:ガガガの初期って、自分らのやり方を模索してた時期やったと思うんです。それまでのバンドのフォーマットになかったことを無理やりハメ込んで、必死でその時々に出来ることをやってただけで、ジャンルもなにも考えてなかった。それがいつからか、「ガガガはこうだから、こうした方がいい」って、本来は無かったフォーマットにハメ込んでいくことが多くなっていて。僕の中でそこを一回見直して、いまの自分たちに出来ることを考えてみてもいいんじゃないか?って気持ちになってたし。ツアーがあったからこそ、凝り固まったイメージを取っ払うことが出来たと思っています。20年以上もやってきているんで、何をやっても自分の型は残ると思うし。

前田:そうやね。結果、逸脱しすぎず自分たちの色は残しながら、冒険はある程度出来たんじゃないか?と思います。

――あと、アルバム聴いて改めて思ったんですが、前田くんのボーカルが変わりましたよね。力強さは残しながら、綺麗に丁寧にというか。歌がすごく聴きやすくなった気がします。

前田:お酒を飲まなくなった影響かも知れないけど、声は出るようになりましたね。40歳くらいになると声質が変わってくる人も多いみたいやけどキーも保ててるし、少し丁寧に歌うようには意識していて。前やったら勢いまかせにガツッと歌うしかなかったけど、一曲一曲を歌うことに楽しさを感じるようになりました。
ガガガSP
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――「かえる公園」のボーカルとか、すごい良かったですよ。

前田:あの曲はやまもっちゃんが「OASISにしたい」って言って。最初はもっとやりすぎてたんですけど。

山本:「ギターが泥臭すぎる」って、何度か差し替えました(笑)。今回、色々と無理難題をふっかけてやろうと思って曲を作ったんですけど、前田さんの歌い手としてのこだわりや判断基準がちゃんとあって、「前田さんが歌うとこうなるんや」と思って聴いたり。今までそんなことなかったんで、作品作りの変化もすごい感じました。

前田:ちなみに「かえる公園」の歌詞は、大きなかえるの滑り台がある公園のかえるが撤去されてしまって、寂しいなと思って書いたんですが。先日設置された新しくかえるのあまりのチャチさに、この歌詞を書かなければ良かったなと思ってるんです(笑)。

――何かの例えじゃなくて、本当にかえる公園を歌ってたんだ(笑)。アルバム制作って、いつくらいのタイミングでやってたんですか?

山本:レコーディングは今年に入ってからですね。1月いっぱい使って録った感じで。曲も結構ギリギリで、1月3日に「曲作りしようや」って、前田さんがウチに来たり。クリスマスも4人でスタジオに入って曲を作ってたり、かなりカツカツでしたね。

前田:最初、やまもっちゃんが前々から作ってた曲でどれをチョイスしていくか?って作業をして、あとはどういうタイプの曲がいるかってところで、僕が出来る範囲の曲を書かせもらって。

――後半に4人が書いた曲が並びますが、「ガスライト」から「夢にさえ消えない君よ」の終わり方とかすごい好きです。

山本:「ガスライト」を作ったのは結構前で、僕の叔父が亡くなった時に作った曲やったんですけど。前田さんが「夢にさえ消えない君よ」は松原さんやイノマーさんのことを歌ってるし。アルバム全体通して、今はこのモードしか無いんやろうなと思って。

前田:イノマーさんが闘病中とかのタイミングやったら、歌詞も違ってきたと思うんですけど。ようやく心に置けるようになった時期やったというのもあって。親父や松原も亡くなった後に思うことというのをちょっとだけ俯瞰に見れた歌詞になったと思います。
ガガガSP
ガガガSP

――そこは今作を語る上で触れざるを得ないところだと思いますが。「卒業」とは違った“さよなら”が続いて、作品全体に切なさが散りばめられていて。それを隠すことなく、しっかり表現出来ているところもいまのガガガを表していると思います。

前田:めちゃくちゃ感情的になってるわけでもないんですが、歌詞を書く時にどうしても気持ちが行ってしまうところはあって。どの言葉で書くのが正解というのも無いから、思ったことをとにかく言葉にしていったというのが近いかも知れないですね。

――「ハロー40代」も40代を迎えたいま感じること、思うことを正直に歌詞に出来ています。

前田:この曲は結構な量の歌詞を書いた中から、そんなに重くない言葉を中心に引っ張ってきて書いた感じでしたね。40代になって、物の見え方や視点が変わってきてるんだなというのは実感していて。衰えていく部分もあるんですが、意外と悪くない景色が広がっているなと思って。この間、BRAHMANのTOSHI-LOWさんと、「40代になると、自分の勝手な考えで腹を立てたり怒ったりすることが少なくなる」って話をして、「40代って悪くないよ」と言われたんですが。これまで自分の主張ばかりを押し付けて、それがひとつの表現やと思っていたのが、自然に人と接することが出来るようにもなったし、自己肯定感がすごく上がったんです。いままでは自分を逆張りするために、エゴをどんどん投入していくしか生きていく方法はないと思っていたんですけど。そうでない自己肯定感が上がってきて、人に対しての当たりも柔らかくなってきたんです。

――<全てを人のせいにし 自分を正当化してた30代>なんて歌詞もありますが、自然と自分を肯定出来るようになった?

前田:そうですね。そしたら、ある意味生きやすくもなってきたし、図々しくもなってきて。音楽も自分のエゴばかりでなく、ある程度色んなところを見ながら向き合えるようになってきてるし。ここから面白くなっていくことが多くなっていくような気がします。20歳そこそこでデビューした時は40歳代の自分なんて想像しなかったし、パンクバンドなんて5年がええとこやろって感覚があったんですけど。いまは先輩でもバンド活動をしっかりしてる人がいっぱいいて、仕事しながらでも土日だけでしっかりツアー回って、CD出してって姿がすごくカッコ良く見えて。

山本:あんなん見てたら、「もう、ええ年なんで辞めますわ」なんて理由ではやめられないですよね。
ガガガSP
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――今回のアルバムを聴くと、ガガガがここから5年10年やり続けていく音楽っていうのも指し示した感はありますよね。

前田:そうなんです。いままでのやり方を無理やり踏襲することもなく、お客さんにも無理やり暴れなくてもいいって提示も出来たと思ってて。もちろん暴れてくれても全然いいんですけど、上がってる拳やダイブの数でライブの良し悪しを決める感じじゃ無くなってきてるし、突っ立って見てる人が一番静かな情熱を燃やしてることも全然あるし。ここ半年くらい、それをリアルに感じながらステージに立つことが出来ているのがすごく良いなと。

――それも去年のツアーの成果ですよね。そして今年は、新曲たちを掲げて行うアルバムツアーを控えてますが。デビュー20年を迎えたガガガSPがいまやるべきことって、どんなことだと思う?

前田:「ガガガSPって名前は聞いたことあるけど」みたいな、ゼロの状態で見てくれる若い子もいると思って、それを自分たちの伸びしろとして考えるようになってます。去年は「昔のお客さんを繋ぎ止めよう」みたいな気持ちを精算出来るツアーをやれて、「ゼロになってもいい」という気持ちで新しいアルバムが作れて、ひとつ区切りの時期やと思うんで。ガガガを始めて知ってくれる人にもゼロから知ってもらって、「昔、宜保愛子って人がおって」とか、忘れてはいけないカルチャーを少しずつ教えていこうと思ってます。

山本:コザック前田を作り上げた、あの時代のカルチャーをね。
ガガガSP
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――そんなこと教えなくていいです!(笑) 山本くんは?

山本:いままでと違ったテンション感のアルバムが出来て、ライブでやってみないと見えない部分が自分の中でもあるので。ライブでやってみてどう感じるかが楽しみだし、そこで感じたものを次の作品に繋げていきたいと思っています。

前田:あとは昨日もやまもっちゃんと喋ってたんですけど、いまライブハウスは大変な時期ですけど、事態が終息して復活した時、ロックやパンクの価値観もまた変わってくるんやないか?と思うんです。「ライブハウスを悪く言わないで!」って人もいますけど、世間から見たら、ライブハウスってもともと悪者やったんですから。

山本:ここ数年でちょっとだけ市民権を得ただけでね?

前田:そうそう。だからちゃんと悪者で、少数派の人たちが居場所を求めて来る場所に戻るのも悪くはないかな?って。この大変な時期を乗り越えて、ライブハウスがライブハウスらしさを取り戻す日も楽しみにしてるし、僕らも面白くしていこうと思ってます。

当記事はSPICEの提供記事です。

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