そうだったのか! FX大相場の真実 第18回 円安幕引きで見せた最後の「黒田マジック」


FXの大相場の数々を目撃してきたマネックス証券、マネックス・ユニバーシティ FX学長の吉田恒氏がお届けする「そうだったのか! FX大相場の真実」。為替相場分析の専門家がFXの歴史を分かりやすく謎解きます。今回は「アベノミクス円安が終わった日」について紹介します。

お得意の「サプライズ」にも、手かせをはめられたようになり、アベノミクスのキー・プレーヤー、黒田総裁はどうしたか?

ちょっと思わせぶりでしたが、それが前回の末尾で書いたことでした。ただ私は、そもそも黒田総裁自身、2015年に入ったところで、2015年1月のスイスフラン・ショックのあるなしにかかわらず(日本経済を良くしてもっと株高にできればということはあったかもしれませんが)、もっと円安に、といった考えはなかったのではないかと思っています。冷静になると、円安というのは、したいと思ったからできるというものでもないのだから。それはもちろん、元「国民的スター」の黒田総裁でも。

そもそも、これまでも述べてきたように、結果的には歴史的な円安大相場のクライマックスを演出した形となったあの2014年10月の「黒田バズーカ2」も、円安、株高を目的としたというより、「消費税再増税よろしく!」が本音でした。それすらも、今や日本史上屈指のポリティシャン(ステーツマン、どっち!?)のようになってきた安倍総理に軽くいなされたということなら、それを受けた円安、株高は、実をつけない花、あだ花でしかないという思いもあったかもしれません。

円安にしたい、円高にしたいと思ったからできるというものでもない。といいながら、実は例外もありますよ、ということをもうすぐ紹介します。それはともかく、この2015年に入ったところでは、むしろ黒田総裁の頭の中、そしてそれを取り巻く環境では、もっと円安とは反対に、行き過ぎた円安への対応が必要となっていたのかもしれません。

それが、「クロダは油断できない男」と世界のマーケットがリスペクトした「黒田神話」の3回目で、かつ最後の「黒田サプライズ」だったのではないでしょうか。
○アベノミクス円安が終わった日

黒田総裁は2015年6月10日、現在の円安水準は行き過ぎと発言しました。日銀総裁が相場の水準に言及するのは異例、というより円安仕掛け人との見方が強かった黒田総裁の円安行き過ぎとの見解は意外、「サプライズ」だったためでしょう、為替市場は一気に約2円もの米ドル/円急落(円高)となったのです。

黒田総裁の実際の発言は、「(実質実効為替レートについて)ここからさらに円安に振れるということは、普通に考えればありそうにない」というものでした。実効レートとは、米ドルに対してやユーロに対してといった円の個別の評価ではなく、より多くの通貨を対象とした円の総合力といった意味のものです。

米ドル/円はこの発言の少し前に125円を記録していましたが、この発言で円高に動き出すと、結果的にはその125円が米ドル高・円安のピークとなったのです。こうして歴史的円安の演出で主役を演じた男、黒田総裁は、その幕引き役も果たした形となりました。

それにしてもなぜ、円安仕掛け人との見方も多かった黒田総裁は、円安幕引きに動いたようになったのか。その「謎解き」を次回行ってみたいと思います。

○執筆者プロフィール : 吉田恒(よしだ・ひさし)

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ FX学長

大手の投資情報ベンダーの編集長、社長などを歴任するとともに、著名な国際金融アナリストとしても活躍。2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊、2016年トランプ・ラリーなどマーケットの大相場予測をことごとく的中させ、話題となる。

機関投資家に対するアナリストレポートを通じた情報発信はもとより、近年は一般投資家および金融機関行員向けに、金融リテラシーの向上を図るべく、「解りやすく役に立つ」事をコンセプトに精力的に講演、教育活動を行なう。2011年からマネースクエアが主催する投資教育プロジェクト「マネースクエア アカデミア」の学長を務める。2019年11月より現職。書籍執筆、テレビ出演、講演等の実績も多数。マネックス証券

当記事はマイナビニュースの提供記事です。

あなたにおすすめ

ランキング

ランキングをもっとよむ

注目ニュース

注目記事をもっとよむ

あなたにおすすめ