市原隼人らが体現する、目まぐるしい恋の思考回路 舞台『脳内ポイズンベリー』観劇レポート

SPICE

2020/3/23 14:00



舞台『脳内ポイズンベリー』が2020年3月21日(土)、新国立劇場 中劇場にて開幕した。一人の人間の頭の中で擬人化された5つの思考が“脳内会議”を繰り広げるラブコメディ。議長・吉田役を務める主演の市原隼人らの熱演と本作の見どころをレポートする。

原作は水城せとなによる同名漫画。当初、14日(土)に予定されていた初日が新型コロナウイルスの影響により延期され、一部公演が中止となっていた。

恋する女性の頭の中は忙しい。相手の意図を探り、翻弄され、自分がどうするべきだったのか反省を繰り返すもの。恋愛=キラキラで楽しいものというイメージに反し、物語の冒頭は暗闇で一人何かに苦悩する吉田(市原)の姿が浮かび上がる。

不穏な幕開けから一転、飲み会で出会った年下男子・早乙女(渡辺碧斗)と再会を果たした櫻井いちこ(蓮佛美沙子)。彼女らについて、男女5人による激しい議論が行われている場面が繰り広げられる。議題は「声をかけるか否か」。吉田の呼びかけにより多数決が行われ、いちこの行動が決定される。ラウンドテーブルを囲む面々は、いちこの“脳内”にいる思考たちだった。

擬人化された思考は5つ。“ネガティブ思考”の池田(早霧せいな)は問題提起、ブレーキ、時にはツッコミを担うクールな女性。対して、“ポジティブ思考”の石橋(本髙克樹)がもたらすのは強烈な明るさ。舞台上を軽やかに動き回る身のこなしも、見ているだけでハッピーな気持ちにさせてくれる。

他のメンバーがフォーマルな衣裳のなか、ゴシックロリータ風に装うハトコ(斉藤優里)。“瞬間の感情”である彼女から出る素直さとチャーミングな振る舞いは純粋そのもの。“記憶”の岸(グァンス)からは隙のなさすら感じる知的さが醸し出され、怒涛に畳みかけられる議論に疾走感を与える。

まとまりのない思考で紛糾する会議をまとめ上げようと奮闘する吉田。“議長”という役割から、いちことシンクロする場面も多い。乙女モードに入った時のコミカルさと、決議の力強さの緩急も見どころだ。脳内と現実世界を行き来する展開から振り落とされずに物語へのめり込めるのも、演じる市原の存在が大きい。

奔放でつれない早乙女に振り回されながらも、恋心を止められないいちこ。担当編集者として携帯小説家の仕事を支えてくれる越智(白石隼也)とのあいだで揺れ動く乙女心を、蓮佛がリアルに演じ上げていく。

早乙女の元彼女である、あずみ(河西智美)とのプチバトルや、過去の恋愛が書かれているらしい“暗黒付箋”の記憶、たびたび登場する“本能”なる黒い女の存在など議題は尽きない。舞台ならではの表現や、盆(回転する円形の舞台装置)を最大限に活用し展開されていくスピーディーな場面転換など、原作を知っていても知らなくても、作品の世界を存分に堪能できるひとときだった。

いちこにとって、どう行動することが一番の幸せになるのか。脳内会議の結末は、どんな境遇であっても考えさせられる内容だろう。舞台オリジナルの展開も描かれており、『脳内ポイズンベリー』の新たな魅力を発見できるはずだ。

取材・文=潮田茗

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