俺はもう、他人と自分を比べない

TABILABO

2020/2/27 17:00


NYに来るまでの生活といえば、週に3日はマイクを握り、 ライブやレコーディング、MCなどをして、音楽の仕事で生活する日々だった。毎週末いろんなイベントへと呼んでもらって、新しい仲間と出会って、美味しいものを食べて、ライブ後は朝まで呑みあかして、そして次の街へ。今振り返るとギラギラでイケイケな生活だった。

「自分のしたいことが見つからない」と嘆く周囲の人たちと比べて、自分のやりたいことだけで生活できる俺は幸せで特別だと感じてた。

あの頃はまだ周囲と比べることで、自分の幸せをはかってたな。

しかし、ある日状況は一変。恋に落ちて、子を授かり、そしてNYへと移住することになった。パートナーに出会って数ヶ月で、すべてが映画のような急転直下の展開だった。それまでノホホンと自分のやりたいことだけやってればよかった生活から、 当たり前だけど、すべてが大変になった。

NYにきた当初は、言葉も話せなかった。底辺からの出発だった。引き留めてくれる仲間を振り切って渡米したもんだから、弱音を吐く相手も見つからない。強がっているうちにストレスが溜まりまくって気持ちの余裕がなくなっていった。そして、自分と周囲を比べるようになってた。

「どうして、彼はうまくやれるんだろう?」

「なぜ、自分はできないんだろう?」

俺はこの街で一番底辺だ……そんな気分になった。毎日無意識にファック!ファック!とつぶやく日々。今思うとほんと恥ずかしい。その時は自分のことしか見えていなかったんだ。

だけど、ちょっとずつ自分が変わってきた。二度と戻れないかもしれない母国に残してきた家族のために一生懸命に働く不法移民の友達ができたりして、自分の状況や環境がいかに恵まれているかを思い知らされた。

自分の不甲斐なさや、情けなさを受け入れられるようになってきた。不思議と力が抜けて、後ろ向きな考え方を捨てることができた。 前を向いてやるしかないし、せっかくだからこの状況を楽しもう!とまで思えるようになった。

まあ、マインドが変わっただけで、すぐに自分の置かれている状況がよくなったわけじゃないけれど、少なくとも「ファック!」という口癖は「ヨシっ!」に変わった。少し英語が話せるようになって、 NYには本当に本当にいろんな人がいるのだということを知るようになった。皆、表には出さないけど、大変な過去をくぐり抜けて、それぞれの厳しい現実を背負って生きている。 皆、自分にないものを追い求め、戦いながら、自分にしかないものに気付き、生き方を学んでいく。

そして、世界一多様性のある街で、他人と自分を比べるのは本当に無意味なことだって俺は理解した。他人の成功や失敗、過ぎた日々から学ぶには大切だけど、結局自分は自分だ。

比べるなら、昨日の自分と今日の自分だ。


DAG FORCE/ラッパー

1985年生まれ。NYブルックリン在住のラッパー。一児の父。飛騨高山出身。趣味は、音楽、旅、食べること、森林浴。NYでの日常生活で感じたこと。そこからポジティブなメッセージを伝えていきたい。

当記事はTABILABOの提供記事です。

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