発達障害の息子が見せてくれる世界は、いつも自由で楽しいことだらけ

女子SPA!

2020/2/26 15:46

【ぽんちゃんはおしゃべりができない Vol.14】

小学6年生の娘と小学3年生の息子を持つシングルマザーの筆者が、発達障がいの息子・ぽんちゃんとのドタバタな日々を綴ったこの連載。(連載をまとめた書籍『うちの子、へん? 発達障害・知的障害の子と生きる』が3月6日(金)に発売予定)。奮闘するママと、いつも元気なぽんちゃんの毎日とは――。

<前回までのあらすじ>

ぽんちゃんはまだおしゃべりができません。発達障害、そして知的障害(表出性言語障害)があると診断を受けました。それでも保育園で毎日をニコニコ過ごし、いよいよ小学校にあたる特別支援学校に入ることに。

◆初めての書き初めイベントで大活躍

ぽんちゃんが通う特別支援学校には、様々なイベントがたくさんある。実際に財布を持たせて、近所のスーパーに欲しいものを買いに行ったり、愛の手帳を持ち、バスに乗ったりと、障害を持つ子どもたちが、将来一人でも買い物ができたり、移動ができたりと“自立”ができるように何度も繰り返して練習させてくれるのだ。障害児を持つ親にとって、これは本当にとてもありがたいこと。お買い物などに行っても、つい母親であるわたしがすべてをやってしまうことが続けば、ぽんちゃんがちゃんと覚えることはできないのだ。

そんなぽんちゃんが楽しみにしているイベントのひとつとして、“書き初め”がある。

新年が明け、3学期になると、毎年書き初め用の半紙に向かい、筆を走らす。が、ぽんちゃんは文字を読めなければ、書くこともできない。だからこそ、ここは心のゆくままに筆を走らせるのだ。それはそれはエモーショナルで、我々健常者が思っていることをぴゅんと飛び越えて筆を走らせるぽんちゃん、その勢いが認められ、なんと1年生の時は奨励賞を頂いてきた。

嬉しそうに奨励賞の表彰状をぐしゃぐしゃとまるめるぽんちゃん。(ま、丸めないで…)と戸惑いながら、その作品を見てみると、力強く筆が、こう、なんというか、ちょっとわからないけどすごい圧巻なのだ。これは私の芸術能力が足りないからだと理解しよう。

◆翌年もぽんちゃんの書き初めはすごかった!

続く2年生の時に書いた書き初めは、これも…なんというか、音符記号の♮(ナチュラル)のような、勢いで、いや、これは勢いなのか…? ちょっとわからないけど、とにかくなんだかすごい気がしてくる。

しかも、学校の先生たちは、本当に褒めることが上手なので、書き初めに先生がつけたタイトルも、「パッション!」となっていた。そうだ、これはすべてパッション! 人生、余計なことばかり考えるから大変になるんだということさえ伝わってくる…ことにしよう。

この2年生の書き初めは家の壁に貼ると、なんだかたいそうなものが我が家にあるような気がしてきた。絵もそうだが、得体のしれない抽象的なものほど、どこかミステリアスで、魅力がある気がしてくる。

◆先生がつけたタイトルは「舟出」

そして、待望の2020年。ぽん画伯、いや、ぽん巨匠は何を書いてくるのだろうとワクワクしながら書き初めの持ち帰りを待ち、見てみると、タイトルに「舟出」という文字が。船出…? 頭の中に“?”をたっぷり散らしながら書き初めを広げてみると、確かに偶然が偶然を呼び、舟出という文字に見えるではないか! 先生ナイス!

なんだかもうぽんちゃんが天才に思えて、「ぽんちゃん、最高の“舟出”だよ!」と褒めると、ニコニコしながら筆を走らせるポーズをしてくれた。去年の「パッション」の隣に、この書き初めは並べて張ると、これもまたありがたい気がしてくるのが不思議である。人間、楽しいほうに思い込んだ方が勝ちなのだ。

ぽんちゃんはできないことがたくさんあるけれど、そこから生まれる楽しいことはたくさんある。現に毎年、書き初めひとつでこんなにも楽しませてくれるのだから、素晴らしい。そして、ただの走り書きに、素晴らしいタイトルをつけてくれる先生方にも感謝しかない。2021年、ぽんちゃんは一体どんな書き初めを書いてくるのか、今から楽しみだ。

<文/吉田可奈 イラスト/ワタナベチヒロ>

【登場人物の紹介】

息子・ぽんちゃん(2007年生まれ):天使の微笑みを武器に持つ天然の人たらし。表出性言語障がいのハンデをもろともせず小学校では人気者

娘・みいちゃん(2010年生まれ):しっかり者でおませな中学1年生。イケメンの判断が非常に厳しい。

ママ:80年生まれの松坂世代。フリーライターのシングルマザー。逆境にやたらと強い一家の大黒柱。

【吉田可奈】

80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、音楽ライターを目指し出版社に入社。その後独立しフリーライターへ。現在は西野カナなどのオフィシャルライターを務め、音楽雑誌やファッション雑誌、育児雑誌や健康雑誌などの執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。著書『シングルマザー、家を買う』『うちの子、へん? 発達障害・知的障害の子と生きる』Twitter(@knysd1980)

当記事は女子SPA!の提供記事です。

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