『スカーレット』離婚劇の波紋。歴代朝ドラは離婚・不倫をどう描いてきたか

女子SPA!

2020/2/26 08:46

 放映中の朝ドラ『スカーレット』で、陶芸家のヒロイン喜美子(戸田恵梨香)と夫(松下洸平)との離婚が、波紋を呼んでいます。2月7日放送回で、息子の切ない言葉によって離婚していたことが明かされ、ネット上には「泣いた」という声があふれました。別居して陶芸に打ち込んでいた喜美子は、夫に離婚届を送って別れていたのです。

ヒロインのモデルである実在の陶芸家は離婚しており、実は、夫と女性弟子との不倫が原因のひとつだったそう。ですが、ドラマでは離婚は描かれたものの、弟子との不倫は寸止めで、なかった設定にされています。

朝から、離婚とか不倫とかドロドロした話は見たくない…という視聴者もいるでしょう。ですが、明るく前向きなだけではコクがない。昨今の朝ドラにおいて、離婚や不倫はどう描かれてきたのでしょうか? ドラマウォッチャーで、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』などの著書があるライター・田幸和歌子さんに聞きました(以下、田幸さんの寄稿)。

◆朝ドラ史上最もえげつない離婚シーンは『半分、青い。

現実世界では離婚だらけ、シングルだらけでも、朝ドラは別。朝ドラにおいては、ヒロインの親が離婚したケースはときどきありますが、ヒロイン自身の離婚はまだまだ稀(まれ)なケースです。

近年で最も印象深いのは『半分、青い。』(2018年下半期)の鈴愛(永野芽郁)と、映画の助監督をする夢追い人の青年・涼次(間宮祥太朗)の離婚です。

ふわふわした夢追い人の彼は、恋愛するには良くとも、生活を共にするとなると、大変です。結婚・生活資金を映画のために使ってしまったり、子どもができると「仕事を頑張る」と言いつつ、映画の夢をあきらめきれず、挙句、「家族は邪魔になる」「(映画監督という)特別なものになるためには普通の幸せの場所にいたらだめ」と言い、離婚を切り出します。

それに対する鈴愛の興奮状態で発せられる怒りと涙の叫びは、朝ドラ史上最もえげつなく、生々しく、鬼気迫る別れのシーンでした。

「死んでくれ! そしたら許してあげるよ、別れてあげるよ」

「いつまで夢みてる! 目を覚ませ! 私たちはトシとったんだよ! 親なんだよ!! バカ!」

子どもまでいるのに夢追い人の夫に激怒する気持ちはよくわかります。しかし、その獣のようなすごい剣幕の怒り方と「死んでくれ」という強い表現には、ドン引きした視聴者が多数いました。

ただし、鈴愛の本当の運命の相手は、同じ日に同じ病院で生まれ、ずっと一緒に育ってきた律(佐藤健)。すれ違いつつ、互いに別の相手と一度は結婚し、離婚を経て再び原点に戻るためのステップの一つだったのでした。

◆朝ドラでシングルマザーを初めて描いた『私の青空』

朝ドラでシングルマザーを初めて描いた『私の青空』(2000年上半期、主演・田畑智子)の場合は、離婚ではなく、結婚式当日に新郎に逃げられ、そのときすでに妊娠していたため、親の反対を押し切って出産した、未婚の母でした。

彼を追って赤ん坊を抱えて上京し、周りに助けられつつ奮闘している中、彼に再会。アパートの向かいに部屋に住み、ほどほどの良い関係で夫婦ではなくとも、子どもの父と母として協力して生きていくことになります。

ちなみに、続編(2002年)においても最終的に再婚するわけではありません。優柔不断ながら、可愛く優しく魅力のある「逃げた新郎」が筒井道隆にハマりすぎていました。

『スカーレット』で描かれている、離婚してから築く新しい夫婦の関係は、『私の青空』に似たテイストではないかと思います。

◆『スカーレット』の先駆けともいえる離婚劇、『ふたりっ子』

また、離婚したヒロインでまず思い出すのは、『ふたりっ子』(1996年下半期)の棋士・香子(岩崎ひろみ)です。

香子がプロを目指すきっかけは、感じの悪いインテリ学生・森山史郎(内野聖陽)に負けたこと。しかし、後に奨励会で兄弟子となる彼に再会。徐々に恋心が芽生え、やがて結婚します。

ですが、妊娠・流産を経験し、そのショックから将棋を捨てて専業主婦になろうとする香子の姿を見ていられなくなった史郎は別居を決め、初心を思い出した香子は将棋に専念するために自ら離婚を申し出ます。

将棋によって結びついた二人ですが、別れさせたきっかけも、やはり将棋でした。離婚した2人は、タイトル争いで対決→再びプロポーズ&失敗→別々に暮らすほうが良いという結論に至ります。

結婚も離婚も、全てはヒロインの才能を開花させ、本当に大事なもの=将棋を再確認させるためのもの。才能&情熱と家庭が両立しなかった例として、『スカーレット』の先駆けといえるでしょう。

◆朝ドラ初の不倫、名作『カーネーション』の衝撃

ちなみに、朝ドラで不倫を初めて描いたのは『カーネーション』(2011年下半期)でしたが、綾野剛演じる不倫相手・周防さん(既婚の紳士服職人)が大人気を得た一方で、「朝ドラで不倫を描くこと」に対する批判も多数ありました。

しかし、ヒロイン(尾野真千子)の恋が熱く美しく描く一方で、ヒロインに向けられる周囲の冷ややかな目や、批判される母をかばう子どもたちの健気さも同時に描くことで、ヒロインの初恋であり「道ならぬ恋」の美しさとグロテスクさが際立っていました。

『カーネーション』自体は非常に人気のある作品ですが、多数の批判もあった「不倫を描いた」ことの衝撃は、後の朝ドラに大きな影響を与え、以来、朝ドラ視聴者は「不倫が描かれるんじゃないか」と恐れて、ちょっと色っぽいシーンで「不倫フラグ」を警戒するようになっている印象があります。

そのため、イケメン複数制が主流になっている近年の朝ドラでは、『あさが来た』(2015年下半期)で弱り切った五代様(ディーン・フジオカ)が、たったひととき、あさ(波瑠)を抱きしめるシーンがある程度。しかも「信頼関係」が土台にある寸止めで描くのが好まれています。

<文/田幸和歌子>

【田幸和歌子】

ライター。特にドラマに詳しく、著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』など

当記事は女子SPA!の提供記事です。

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