第18回 「元ビッチ人妻の“美人すぎるという疎外感”」



どうも、「世の中の様々な事象を下半身に絡めて語る」がテーマのこのコラム、十八回目です。ここ最近は、お悩み相談となっていますね。今回の相談者は、上戸彩から可愛さを50%減させた代わりに美しさを200%増しにしたような28才の女性・吉山さん(仮名)。いつもの新宿の某喫茶店にて。隣りの席に座っていた有名芸人さんの態度の悪さが気になりつつのお話でした。

■幸せに生きたい



―先に、メールでもお悩みの内容を聞いてはいるんですが、改めて話してもらってもいいですか?

吉山さん「はい。どうしたら幸せに生きられるのかを知りたいんです」



―えー……、だいぶ端折りましたね。もっと細かく書いてあった気がするんですが。

吉山さん「あ、順を追って話すとですね。私、元々いろんな男の人とセックスするのがすごい楽しくて。セックスばっかりしている時期があって。で、今はそんなビッチ生活を卒業して、結婚して子供もいるんですが、なんかビッチをやってた頃に比べて毎日が楽しくないと言いますか……」



―ビッチに戻りたい?

吉山さん「いえ、戻りたいわけじゃないんです。家族を裏切りたくないし。ただ、今はそこそこ幸せだけど、前ほど高揚するような出来事がなくなっていて。セックス以外の楽しみを見つけたいなぁとか思っているうちに、どうしたら幸せに生きられるのか、とか考えるようになって……」



―幸せな生き方なんてないと思っています。

吉山さん「……そうですか。そうですよね」



―あ、嘘です。すいません。いや、嘘じゃないか。ないとは思ってますけど、ただ、そんな風に諦めちゃうのも面白くないと思ってるので。ダサく、もがく方が楽しいとは思ってます。

吉山さん「はぁ(ため息)」



―(美しいため息だな……)えっと、そのビッチ時代の高揚感というのを、もう少し言葉を足して話すとどういう感じですか?

吉山さん「うーん……」



―とにかく享楽的なものなのか、青春の刹那みたいなものなのか、あとセックスを悪として捉えてて、でもそれを犯してしまう罪悪感にはまっていたとか……。

吉山さん「……うまく言えないですけど、なんか壊れかけのまま突っ走ってる高揚感です」



―まぁわかります。

吉山さん「で、妊娠して本当に壊れたという感じ。いや、子供は愛してるんですよ?、ただ今は落ち着いてしまって、死後の世界というか……。生活に〝激動の波〟みたいのが押し寄せてきてくれないんです」

■セックスという言葉



―えっと、言葉の意味を共有したいんです。というのは、いろんな人に話を聞いていると、同じ〝セックス〟という言葉でも、それが意味する内容が人によって違うんですね。

吉山さん「どういうことですか?」



―〝セックス〟と言った時に、肉体的な快楽だけを指しているのか、精神的な快楽なのか、その両方なのか、特別な行為なのか、ありふれたことなのか、背徳的なことなのか神聖なのかとか……、童貞を引きずってる人に話を聞くと、〝みんながやってるから自分もやっとかないと恥ずかしいもの〟みたいな意味としてセックスという言葉を捉えている人もいましたし。

吉山さん「……うーん、肉体的なことではないですかね……。セックスにドはまりしてた時期も、気持いいかどうかより、男の人にその一点で勝ったみたいな感覚になるのが楽しかったんです。それが私のセックスかもしれません」



―勝つというのは?

吉山さん「どんなに偉い人も結局、性欲が絡むと私に負けていくというか、私のペースになるんですよ。男の人を手の平で転がしている感覚が楽しくて」



―なるほど。

吉山さん「好みのタイプの男とセックスするより、いろんな男を手玉にとりたいと思っていましたし、そのことが自己肯定感をあげていたと思います」



―それって、ビッチな人の中には……、

吉山さん「はい。やればやるほど、自己肯定感が下がる人も多いですよね。でも、私はあがっていたと思います」



―今、セックスをしなくなって、自分を肯定する機会が激減しているってことですかね?

吉山さん「そうだと思います」



―またセックスをしまくればすぐに解決しそうですけど、それは家族のこともあってナシだと…。ここで話が戻りましたね。

■夕陽の気持ち



―そもそもなんで、そんなに男性を手玉に取りたかったんですか?なにかトラウマがあるとか?

吉山さん「いや、スクスク育ちました。でも意図しない時に男性的なものに侵害されることはありましたけど。痴漢とかストーカーとか、小さい時に誘拐されかけたりとか。〝男性とは突然自分を侵害してくるもの〟という認識はあります」



―美人だから、というのはあるんですかね。……こういうことを言うとセクハラになると思うんですが、あえて言わせてください。吉山さんは、普通の会社にいたら違和感あると思うんです。……美人すぎて浮いてしまうというか。

吉山さん「……えっと、否定しないと嫌味に取られるかもしれませんが、自覚がないといえば嘘になります」



―それでちやほやされるのも面倒でしょうし、勝手に嫉妬されたりするのも面倒でしょうし、そもそもこうやって外見の話を持ち出されるのが面倒ですよね。

吉山さん「面倒って言葉が適切かはわかりませんが、まぁはい」



―ただ、そこにお悩みの解決のヒントがあるかもと思って、もう少し〝美人〟であることについてどう思っているか聞きたいんですが。

吉山さん「……これも嫌味に聞こえたら嫌なんですが、保育園のママ友と集まると、浮いてるなとは思います。みなさん、いい人で、いじめられたりとか全くないですけど、でもやっぱり、私だけ特別枠というか……」



―理由がなんであれ、一般社会に馴染めない、馴染まさせてもらえないってことは、生きづらいと思います。…僕は美しいという言葉を容姿についてだけ使っているつもりはないんですが、でも勝手に気後れしてしまうことは多々あります。醜い自分が、その美しいなにかを、汚してしまうんじゃないかって。それは自分の中の問題なんですが、勝手に気後れされた側…、ここでは〝美人〟になりますが、美人の人は疎外された気持ちになるんでしょうか。

吉山さん「うーん、そう思う人もいるでしょうね。……いや、でも私は普通の美人なので、もっと美人すぎて苦労してる人は沢山いると思います」



―……今、こうして話してて、窓の向こうの夕陽がキレイじゃないですか。「お、キレイ」って条件反射的に思っちゃうんです。それ以上でもそれ以下でもない感情です。

吉山さん「はい」



―同じように、吉山さんと道ですれ違ったら「お、美人」って思うとおもいます。次の瞬間には忘れるくらいの感情で、そこに下心とかなにもないんですけど、やっぱりストレスになりますか?

吉山さん「『お、美人』って思うだけで済まない危ない人達に遭ってきたので……。福原さんがどういう人かわからない間は、ストレスになる可能性はあります。信頼できる関係になってから豹変した人もいましたし……」



―そうか、そうですね。僕は今まで夕陽の気持ちを考えずに「お、キレイ」って思ってました。

吉山さん「……夕陽は、ストーカーとかされないと思うので、キレイって思っていていいんじゃないですか」



―でも、夕陽は他の惑星のことを、「私の周りを常にぐるぐる回ってつきまとってくる!怖い!」って思っているかもしれません。

吉山さん「……」



―黙ってしまいましたね、すいません、

■役者~政治家~教祖



―手玉の話に戻しますが、セックスをしなくても、男を手玉に取れれば満たされる感情だったりはしないんですか?

吉山さん「どうでしょう。そうかもしれません」



―だとしたらセックスの代用品を見つけて、それに没頭すれば、以前の高揚感を得られるんじゃないですかね?

吉山さん「例えば?」



―セックスしないけど、相手の精神を支配することはSMの世界とかでは普通にありますよね?

吉山さん「奴隷を見つければいいってことですか?」



―奴隷に興味はないですか?

吉山さん「なんとなくSMと言われるとエロの匂いがして、セックスしなくても、家族を裏切ってる気がしますね……。好きな人が、誰かの奴隷だったら嫌じゃないですか?セックスしてなくても」



―そうですね。嫌ですね。三割くらいは芝居のネタになるな、とは思ってしまいますが。



―……じゃあ、……あ、役者はどうですか?

吉山さん「役者を奴隷にするんですか?」



―違います。僕は演出家なので傍観する立場ですが、ある役者とある役者の演技が真に噛み合ってる瞬間って、オープンな心のぶつけ合いというか、素っ裸で絡み合うみたいな状態で、セックスよりエロいなって思いながら見てるんですね。「こりゃ共演者と付き合う役者が多いわけだ」とか思ったり。いい役者はみんな床上手だと思ってます。

吉山さん「役者ですか……」



―演技のぶつかり合いを、セックスの代用品にするのはどうでしょう?

吉山さん「ちょっと想像がつきません」



―あ、でもお互いにオープンな関係を望んでいるわけじゃないんですよね。手玉に取りたいわけですから。

吉山さん「そうですね。相手をオープンにさせるのは楽しんでましたが、自分の心は閉じてました」



―え、そのセックス、楽しいんですか?

吉山さん「楽しかったですよ」



―自分をオープンにしないままのセックスを、セックスと呼んではいけない気もしますが……。

吉山さん「旦那にはオープンにしてますから」



―あ、でもそういえば以前、バンドをやってたんですよね?演奏がはまった時の高揚感も、セックスに負けじと劣らずって感じがするんですが……。

吉山さん「バンドはやってましたが、私を取り合って崩壊したので」



―あ、美人だから……。

吉山さん「はい」



―想像できないです。自分がいるだけで、所属する集団が崩壊していくっていうことは。美人ってつらいですね。

吉山さん「はい。信頼していた人達同士で、こじれていくのは本当に面倒くさいし、誰を信じていいんだろうって気分になります」



―政治家になるのはどうですか?

吉山さん「……立候補するんですか?」



―はい。権力握って、庶民を手玉に取るっていう。麻生太郎とか、そこにエクスタシーを感じているように見えるんですよね。官僚の人にもいると思います。チンコ、ガッチガチにしながら増税してる人とか。

吉山さん「増税反対です」



―私もです。あとは……、宗教とかも手玉感ありますよね?

吉山さん「それは考えました。手玉に取るってことを拡げていくと、教祖様になるのはありだなって」



―考えたことあるんですね……。

吉山さん「ただ、やっぱり現実味が……」



―いろんな教団が現に存在してるから、現実的な話ではあると思うけど、労力はすごいかかると思うので、そこまで本気で手玉に取る高揚を求めるかどうかですね。

吉山さん「……まぁそう言われると、そこまで欲求が強いわけじゃないので、なんか自分の悩みがちっぽけに思えてきました」



―あ、ダメダメ。小さな悩みなんてないです。よく「広い宇宙に比べたら、お前の悩みなんてちっぽけだ」とか言う人いるけど、その理屈、大嫌い。どんな悩みも宇宙よりでかいと思います。

吉山さん「……今、自己解決できそうな感じだったんですが」



―ダメですよ、ちゃんと悩みきらないと。

吉山さん「でも全然、解決しないんで……」



―……はい。それはすいません。

吉山さん「私、満たされないとか言いながら、一般にみたら幸せだと思うんです。結婚して、子供いて、そこそこ美人で。今日の相談もわがままなこと言ってる気もして……」



―これを言うと見も蓋もないんですけど、なんか人生って、満たされないらしいですよ。釈迦が言ってました。

吉山さん「……お釈迦様がいうならそうなんでしょうね」



―うん、はい。満たされたいって煩悩だし。

吉山さん「悟ることで解決できるわけですか……。でも私、悟りたくはないです」



―あ、僕もです。……なにかね、悟るつもりないって前提があるなら、僕はもう、吉山さんは、今の悩んでいる状態を愛でるしかないと思います。

吉山さん「悩んでる自分も含めて好きになるってことですか?」



―いや、好きにはなれないでしょう?吉山さん、自分のこと嫌いそうだから。そんな自己愛はいらないので、愛でる。自分を愛さないけど、愛でる。

吉山さん「……その違いは?」



―愛するほど主観じゃなくていいので、客観性をもって、人ごとのように自分を愛すると、愛でるになると思ってます。

吉山さん「すいません、わかるようでわからないです」



―煩悩にまみれた自分を、外から見るんですよ。釈迦の視点から眺めるというか。それはまさに〝慈悲〟というやつです。憐れむとも言えます。

吉山さん「自分を憐れむ……?」



―煩悩を捨てるんじゃなくて、煩悩を持ったまま悟りで包むんです。親鸞が言うところの「煩悩断ぜずして涅槃を得るなり」です。

吉山さん「本当にわかりません」



―はい、デタラメに言いました。

吉山さん「え?」



―以前、仏教に関する芝居をやったことがあって、その時、読んだ資料からうっすら覚えていることを、デタラメに並べただけです。……でも、これ、本腰入れて考えたら、説得力のある説法みたいの作れそうじゃないですか?

吉山さん「……もしかして、私に教祖を薦めてますか?」



―はい。いや、あの、今回、それくらいしか解決方法を思いつけなくて。要はギブアップってことです。すいません。あ、でももうちょっと考えてみます。後日、お伝えします。

吉山さん「……いえいえ、なんか話すことで、少し解消された気もします。って月並みなこと言ってますけど」



―そんな。ありがとうございました。

最後の、私に気を使って言った「解消された気もします」の笑顔が印象的でした。というわけで、〝セックスの代用品〟〝手玉の取り方〟については宿題にしたいと思います。あと、人の相談をいろいろ聞いているうちに、私も誰かに相談したいことが沢山出来てきてしまったので、私の相談を聞いてくれる人も募集します。今回はこの辺で……。(文:福原充則)
(イラスト:ゆきち先生)

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当記事はソーシャルトレンドニュースの提供記事です。

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