雪山を猛スピードで駆け下りる“最狂競技”「アイスクロス」が今年もやってくる

日刊SPA!

2020/2/13 15:49

 昨シーズン、日本に初上陸したアイスクロス世界選手権が、今年も帰ってくる。以前のコラムでも紹介したように、夜景の美しい街中で巨大な白蛇のような氷のレーストラックが再び出現する。

横浜ベイエリアで開催される同大会は、同競技の最高峰でもあるATSX1000シリーズ(優勝者の獲得ポイントが1000。続いて500と100の3クラスに分かれる)。冬季オリンピックの正式種目を目指し、イベント名も「Red Bull Crashed Ice」というキャッチーなタイトルから、よりシンプルに競技を示す「Red Bull Ice Cross World Championship(アイスクロス世界選手権)」と改名。2月2日はATSX100シリーズの長野大会も初開催された。

アイスクロスの会場は、横浜大会のような「都会型」と長野大会のような「自然型」がある。欧米の人気スポーツとして発展してきた同競技では、キャメロン・ナーズとアマンダ・トルンゾら、男女の世界チャンピオンが拠点にしているミネソタ州の近郊で、毎年のように大会が開催される。

今シーズンは、1月18日に近郊のスキーリゾートのモン・デュ・ラックでATSX500クラスの大会が開催。北米のトップ選手が集結した同大会では、日本人のパイオニア山本純子がシーズン初参戦で、見事6位入賞を果たした。横浜大会では悲願の表彰台を目指す。

アイスクロスといえば、芸術的な氷のコースが特徴的だ。今回は、そのモン・デュ・ラック大会で、インパクト抜群の「都会型」とは別次元の驚きの「自然型」舞台裏に密着したので、お伝えしたい。

◆コースの積雪1m……焚き火にあたり、愛犬を走らせ、バーガーを食べて寒さを凌ぐ

日本では、近年の暖冬の影響で次々とスキー場が閉鎖されるなど、ウインタースポーツを取り巻く環境は厳しい。だが、寒さも雪にも“恵まれた”モン・デュ・ラックでは、逆に大雪と極寒で開催危機に見舞われていた。

ウインターストームが襲った現地の気温はマイナス26度。地元の人もさすがに「こんなのは久しぶり。クレイジーだった。死んでしまう!」と明かしたように、うかつに外気を吸いつづけると肺が凍って破裂する恐れもある寒さだ。幸いにして、ストームは過ぎ去り、レース当日は例年通りのマイナス7度ほどに回復したが、大雪の影響で1mもの積雪が氷のコースを覆ってしまった。

そこで選手やスタッフが朝から総出で、雪かきを行った。使えるものは何でも使う。芝刈り機にブロワーも総動員。選手たちはシャベルを手に汗だくになった。山本も当たり前とばかりに、黙々とシャベルを動かす。みるみると埋もれていた氷のコースがあらわになった。

驚かされるのは、修復作業の早さだけでなく、選手たちのメンタリティ。選手たちは、すぐ後に出場レースが控えているにも関わらず、協力するのが当然というスタンスでバリバリと働くのだ。現地スタッフだけでは、レース開催予定時間には間に合わなかっただろうが、選手たちは作業をも楽しんでもいるようだった。

「いいウォーミングアップになるんだよ」と選手たちは、氷点下で爽やかに汗をぬぐいながら、声を揃える。

スキーリゾート地での開催ということもあって、その後も選手たちは焚き火にあたったり、バーベキューコンロで焼きたてのハンバーガーをほおばったり、連れてきた愛犬を走らせたりと思い思いに楽しんでいるようだった。

◆絶叫のクラッシュは“ヒーロー”に、マイナス10度以下に冷え込むも拍手喝采

モン・デュ・ラック大会では、仮設のテントが選手たちの控室となっていた。今回は特別に許可をもらって、そのライダーズルームに潜入。選手たちがどんな表情で、レースを見守っているのかを目撃した。

最後まで何が起こるかわからないアイスクロス。この大会でも、ライダーズルームが興奮の熱気に包まれた、衝撃の好プレーと珍プレーが見られた。

その好プレーとは、ダニエル・グオラ(カナダ・世界ランキング23位)が、レース中に目の前で転倒した選手を、とっさにジャンプして飛び越えた場面。障害物の多いコースを猛スピードで滑るなかでのハイレベルなテクニックに、見守る選手たちも「ワオ!」「見たか、今の」と拍手喝采。グオラがライダーズルームに戻ってくると、選手らは「お前、すげえな」と肩を叩いて賛辞の言葉を贈った。

一方の衝撃の珍プレーは、シェーン・ルノー(カナダ・世界ランキング9位)。ゴール寸前、バランスを崩すとフェンスをぶち抜いてコースアウトしたのだ。ライダーズルームが一瞬、静まり返るも、ルノーはすぐに起き上がって、なんとかゴール。すると、ライダーズルームは優勝者が決まったかのような(?)狂気的な歓喜モードに包まれた。

「フェンスがぶっ飛んだ!」「突き抜けちゃった!」と大盛りあがりなのだ。ルノーもライダーズルームに戻るやいなや、拍手喝采で迎えられた。そして、「いやあ…気がついたら雪の上に寝てたんだよね」と武勇伝を披露。これにも選手たちはどっかん爆笑する。「よくやった」「大したやつだぜ」とルノーもまた、肩を叩かれまくっていた。

実はこのフェンス撃破のため、コースは修復作業が入り、続くレース再開まで40分ほど時間が押すことに。日も傾きかけ、にわかにマイナス10度を下回ったが、ライダーズルームの盛り上がりが冷めることはなかった。

自然の影響をもろに受ける氷のコースを舞台に、滑って飛んで転んでスピードを競うアイスクロスの選手たちは、クレイジーなまでに逞しい。そんな氷上の最狂スポーツを、今年も横浜でぜひとも目撃したい。

取材・文・撮影/松山ようこ

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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