みゆはん “人見知りシンガーソングライター”の創作の源とは?

SPICE

2020/2/11 15:00

相手の目をまっすぐに見つめながら、表情豊かに身振り手振りを交えて一所懸命に自身の想いを伝える。一見すると社交的に見えるその姿からは、“人見知りシンガーソングライター”といわれるキャラクターとは少し違った印象を受けたが、実は、人の気持ちを考え過ぎ、そして鋭い審美眼を持つがゆえに生じるちょっとした恐怖心から来るものなのかもしれないと、取材を進めるうちに感じた。そんな、みゆはんの繊細な心模様が映し出されたニューアルバム『ぷ。』を軸に、彼女の創作の源について話を訊いた。


──前作の『闇鍋』は、様々なアーティストから楽曲提供を受けたこともあって、かなりキャラの濃い楽曲が揃っていましたが、3rdアルバム『ぷ。』も、一曲一曲のキャラ立ちがはっきりしているし、その振り切りっぷりも凄まじいことになっていますね。制作するにあたって、どういうものにしようと考えていましたか?

1曲目のタイトルにもなっている「ゲシュタルト崩壊」が、今回のテーマになっていて。全曲通して、自分じゃない誰かになりきったり、誰かのために歌ったりしている曲がほとんどなんですけど、いろんな人になって歌っているうちに、“自分って誰なんだ?”と思ってしまって。それがゲシュタルト崩壊に繋がっていきました。

──“自分って誰なんだ?”と思ったときの感情ってどんなものがありましたか?

結構いろんな感情が混ざっていて。前作の『闇鍋』で楽曲提供をしていただいたときに、いろんなキャラを演じたんですけど、そのときから結構いろんな引き出しがあるんだなっていうのは感じていて。今まで自分では作れなかったような曲をたくさん歌うことができたので、新しい自分じゃないけど、見たことのない自分に出会えたのは楽しかったし、すごく勉強になったんです。でも、本当の自分はどういう人なんだろう?っていうところで不安になったりすることがあったり。いろんな感情がありました。

──改めて自分はどういう人なんだろうと思いました?

まだそこはちょっとはっきりしていなくて、これからの課題かなと思っております(笑)。

──確かに、自分のことって一番わからないなってよく思うんですよ。そういう感覚ってありますか?

あります。私は、プライベートのとき、仕事のとき、家族でいるとき、友達といるときで、人によって自分がころころ変わるタイプなので、普段の生活からもどれが本当の自分なんだろう?ってよく思います。

──その中でも一番居心地のいい自分ってどれですか?

やっぱり、ひとりで独り言を言ってるとき(笑)。私、本当に人見知りで、誰かといると気を遣っちゃったり、こう言わなきゃ嫌われちゃう、というのが先に来て、自分が思っている本当のことを言えなかったりするので。やっぱりひとりが一番ラクですね。

──人に言えないことが創作に繋がることもあります?

そうですね。普段から携帯のメモ帳に思ったことを書き綴っていて、その中から歌詞を書いてます。

──ちなみに、みゆはんさんが曲を作ってみようと思ったのはいつ頃でしたか?

いつだったかなぁ……大学生のときですかね。音楽サークルに所属していて、その中でユニットを組んでいて、ボーカルギターだったんですけど、そのときからだと思います。

──その当時に作った曲って覚えてます?

覚えてますけど、全然ダメなんで、恥ずかしくて表に出せない(笑)。

──世には出ていないんですね。どういう音楽が好きだったんですか? それこそ音楽サークルでカバーとかもやられていたりしました?

カバーもしてました。いろんな曲をやっていたんですけど、よくやっていたのは東京事変さんとか、YUIさんとかでしたね。音楽はこういうジャンルが好きというものが特になくて、自分が聴いて、そのときに気に入った曲をひたすら聴く感じだったので、いろんなものを聴いてました。

──その中でも特にツボだったものというと?

なんだろうなぁ……中学生のときにアヴリル・ラヴィーンさんをよく聴いていたんですよ。14歳の頃に聴いていた音楽が、その人の人生に残るっていうのをよく聞くんですけど、やっぱりその通りで、アヴリルさんは好きですね。

──小さい頃から音楽は好きだったんですか?

好きでした。父がアコースティックギターの職人をしていたので、小さい頃から身の周りにギターがあったんですけど、本格的に始めたのは中学校……いや、あれは本格的じゃない。一回挫折したんですよ(苦笑)。1週間でやめちゃって、高校に上がったときに合唱部に入ったんですけど、自己紹介のときに、ちょっと触っただけなのに「ギター弾けます」って言っちゃったんです。その後に女の子達が集まってきて、「一緒にバンド組まない?」って言われて、やらざるを得なくなってしまったっていう(笑)。

──(笑)。でも、そこからかなり大変ですよね?

必死でした。学園祭で披露することになっちゃって、本番が3ヶ月後だったんですよ。そこまでにちゃんと弾けるようにならなきゃいけないっていう追い詰められた状態だったんですけど、逆にそれで上達しました(笑)。

──その学園祭が人生初ライブですか?

そうです。カラオケとかは好きだったんですけど、バンドとしてギターを持って人前で弾くのが初めてだったので、頭が真っ白になっちゃって、あんまり覚えてないですね。

──人見知りではあるけど、人前に立つのは好きではあったんですか?

しゃべるのは苦手なんですけど、目立ちたい気持ちはずっとあって。歌うこともずっと好きだったから、歌手になりたいというのは小学生の頃からの夢でした。

──なるほど。ジレンマですね。目立ちたいけど人見知りというのは。

今は人前で歌うときもあまり緊張しなくなったし、楽しいっていう感情が前に出るようになったんですけど、ライブって、MCをしなきゃいけないじゃないですか。その苦手意識はまだありますね。だから、あらかじめしゃべることを考えておいて、完全に丸暗記して、そのまま言う、みたいな(笑)。MCのほうが緊張します。


寝ていて、起きたときに、記憶喪失みたいな感じに一瞬なっちゃったことがあって、そのときのことを思い出しつつ歌詞を書きました。


──また後ほどライブについてお聞きしていこうと思っていますが、アルバム『ぷ』に話を戻しまして、1曲目の「ゲシュタルト崩壊」ではポエトリーリーディングをされていて。

ポエトリーリーディングはずっとやってみたかったんです。で、この曲が一番乗せやすかったので、ここで初挑戦してみました。

──内容としてはタイトルの通り、鏡に向かって「お前は誰だ」と言い続けると、精神が崩壊してしまうという都市伝説がベースになっていますね。

都市伝説のゲシュタルト崩壊もずっと興味があって、いろんな記事を読んでいたんですけど、本当に精神崩壊しちゃったらどうしようと思って、自分で挑戦するのはちょっと怖くてできなくて。でも、似たような現象になったことがあったんです。

──似たような現象……?

寝ていて、起きたときに、記憶喪失みたいな感じに一瞬なっちゃったことがあったんです。ここがどこで、自分が誰かなのか全然わからないっていう。そのときのことを思い出しつつ歌詞を書きました。

──となると、この歌詞は半分実体験?

そうです(笑)。

──めちゃくちゃ怖いですね。パニックになりそう。

パニックになるし、絶望感がすごかったんですよ。なんか、鳥肌じゃないけど、ゾワゾワゾワ……!っていうのがすごくて。あれは他では体験できない感覚でした。

──都市伝説とかお好きなんですか?

好きなんですけど、そこまで詳しくなくて。でも、結構変なものを好きになることが多いかもしれないです。たとえば、YouTubeでよく観てるんですけど、耳の垢掃除をするやつとか、ヒゲを抜くところを拡大したやつとか、鼻の角栓を取るやつとか(笑)。そういうのが好きです。

──確かにちょっとした気持ちよさがありますよね(笑)。1曲目の「ゲシュタルト崩壊」はホラーで、2曲目の「Poison mortal」は、かなりダークな雰囲気だし、いきなり聴こえてくるのがフランス語という、オープニング2曲からすごいことになっているなと思ったんですが、この曲はどういうところから作り出したんですか?

曲の雰囲気からテーマを決めたんですけど、インターネット掲示板にいる、結構毒のある人をテーマにして書いてみました。なんか、愛されずに育ってきた人、みたいな。

──歌詞の登場人物って、ディテールをかなり詰めたりします?

具体的には決めないですけど、歌っているときにこういう人なんだろうなっていう想像はしますね。

──「Poison mortal」の場合だと?

黒髪のミディアムで、口紅が赤くて、ワインレッドのワンピースか何かを着ていて、ちょっと暗くて、どよんとしているんだけど、綺麗な人。

──その人になりきって歌うと。

そうですね。この曲は半目でレコーディングしてました(笑)。セクシーになるのかなと思って。

──でも、なぜまたフランス語にしようと思ったんですか?

フランス語って世界で一番綺麗な言葉って言われているじゃないですか。フランス語のところは、人間の汚い部分を書いているので、逆にフランス語にするとそんなに汚くなくなるのかなって(笑)。

──綺麗な言葉で汚いことを書くというギャップもいいですね。そこから3曲目の「キスは無理」で、また雰囲気がガラリと変わります。この曲はTHE BACK HORNの菅波栄純さんが手がけられていて、これまで何度かタッグを組んでいらっしゃいますけども、「キスは無理」はどういうところから作り始めたんですか?

『闇鍋』のときに、どういう曲にするかというので一度お会いして話したんですけど、会ったのはそれきりで。それからも定期的に菅波さんからデモが来ていて、「キスは無理」は、その中の一曲だったんですよ。だから、こういうものにしたいというお話は特にしていないんですけど、すごくよかったので今回歌わせていただきました。

──特にどんなところがいいなと思いました?

やっぱり女性では書けないような女の子像というか、男の人ならではの目線がおもしろいなと思って。

──それこそ自分じゃない誰かになりきる感覚でした?

そうですね(笑)。素の私とはまったく違うキャラクターだったので、どうしようかなとも思ったんですけど。でも、男の人が描く理想の女の子じゃないけど、そういうものをどこまで自分が演じきれるのかやってみるのもおもしろいなと思って、挑戦しました。


最初は人間の儚さをテーマにしようと思ってたんですけど、ディスカバリーチャンネルのサバイバル動画を観たら、儚いどころか強いじゃん!って。


──みゆはんさんが作詞作曲された曲の中ですごく気になったのが「貴重なタンパク源です」でした。

ははははは(笑)。はい。

──すごくポップでキャッチーで、かなり明るく突き抜けている曲ですけども、どういうところから作り出したんですか?

この曲は、元々こういう曲を作ろうと思って作ったわけではなくて、最初は人間の儚さをテーマにした曲を作ろうと思ってたんです。人の死をテーマにしようと思っていたんですけど、なかなか浮かばなくて、休憩している間にYouTubeでディスカバリーチャンネルのサバイバル動画を観てしまったんですよ。そこから、儚いどころか人間って強いじゃん!って思って作りました(笑)。

──いつも曲を作るときって、メロディーから作ることが多いですか?

そうですね。いつもはメロディーラインから作ることが多いんですけど、「貴重なタンパク源です」は歌詞が先にできました。今回のアルバムは歌詞先行で作った曲が2曲入ってるんですよ。

──ちなみにどの曲ですか?

4曲目の「綺麗になったよ」です。私、Twitterでファンとやりとりすることが多いんですけど、ファン同士で付き合ったという報告をくれた子がいて、「今日はどこどこに行ったよ」とか「今日は電話したよ」とか、いろいろ話を聞いていたんですけど、最近2人が恋愛に終止符を打ってしまったという話を聞いて。そのことを基にして作りました。

──実際にどういうやり取りをされたんですか?

リプを送ってくるのは女の子のほうが多かったんですけど、たまに男の子のほうからも「うまくいってるよ」とか教えてくれていて。で、ある日、女の子のほうから別れちゃったっていう報告が来て、そこから詳しい話をダイレクトメールで聞いたんですけど、このことを曲にしてもいい?って聞いたら、「是非是非」と言ってくれて。その後に男の子のほうからも「応援してくれていたのに別れちゃってごめんなさい」っていう長文の報告が来たので、そのことも曲にしたんですよ。それが「1年半の僕ら」です。

──なるほど。ただ、みゆはんさんとしてはなかなか複雑な立ち位置ですね。両方の気持ちを知っているという。

そうですね。私にとってはどっちも大事で。どっちが悪いとか、責めるつもりは全然なくて。私をキッカケに2人が出会ってくれて、それを2人のいい思い出にしたいなと思って曲にしました。

──「綺麗になったよ」は、その女の子の心情を基にしていると。

別れたばかりだったから、深く聞いちゃうのもよくないなと思っていたんですけど、すごく引きずっていたというか。まだ好きなんだろうなと思いつつ、でも前を向こうとしている感じがあって。そういうやりとりの中から読み取った気持ちを、この歌詞にしました。

──「1年半の僕ら」は、男の子のことがベースになっているだけあって、歌声もかなり男性っぽい感じですね。

結構喉を下げて歌いました。でも、私は地声が結構低くて、普段は「1年半の僕ら」のようなトーンでしゃべっているので、あまり大変ではなかったかなと思います。逆に「貴重なタンパク源」のほうですよ(苦笑)。つぶれたような声で歌うのがすごくしんどかったです。


テレビで明石家さんまさんを観ていると、いいなと思います(笑)。なりたいです。人をイジれるようになりたい。


──そして、この音源がリリースされた1ヶ月後、2月22日にEX THEATER ROPPONGIで2ndワンマンライブを開催されますが、タイトルがまたいいですよね。『ざんぱんまみれ』という(笑)。

私、料理の写真をときどきTwitterにあげているんですけど、フォロワーさんに料理下手だと思われていて。それを見返してやろうと思って、MC中に料理をすることにしたんです。ステージ上にキッチンを設置して、私が作った料理をお客さんに食べさせようと思っています。

──すごいことしますね!?(笑) 普段から料理はよくされるんですか?

まったくしないし、そもそも家にキッチンがないので、ほぼぶっつけ本番ですね。

──めちゃめちゃチャレンジャーじゃないですか(笑)。何を作るか決めてます?

まだ決めていないんですけど、生ものはやめとこうかなって(笑)。

──そこは避けたほうがよさそうですね(笑)。前回のワンマン以降、アルバムを3枚リリースされているので、曲もかなり増えているんですよね。その中からどれやろうか考えるのも、なかなか悩みどころというか。

時間も限られていますし、そこまでライブをやってきているわけでもないから、どういう曲をやればいいのかわかっていないところもあるんですよ。だから、各アルバムからバランスよく持って行こうかなと思ってます。どの曲をやるかは楽しみにしていてほしいですね。

──これからどういう活動をしていきたいですか?

楽曲提供をしてみたいです。自分が受けたときに、自分もしてみたいなと思ったし、自分の作った曲を誰かに歌っていただいて、表現にどういう変化があるのかも気になるので、すごくやってみたいです。

──みゆはんさんが作られる曲って、「貴重なタンパク源です」みたいな振り切った曲もあれば、「綺麗になったよ」や「1年半の僕ら」みたいな、めちゃくちゃシンプルにいい曲もあるじゃないですか。

ありがとうございます。

──かなり幅広い作風なわけですけど、どういう人に曲を書いてみたいですか?

具体的な人はまだ浮かんでいないんですけど、とにかくかわいい女の子がいいです(笑)。普段から自分がかわいい女の子を見るのが好きなので、歌ってもらいたいなって。

──でも、人見知りとなると、楽曲提供をするときに大変なところもありそうな気が……。

あっ……そこまで考えたことなかった(苦笑)。

──今までみゆはんさんが楽曲提供を受けてきたときにしてもらったことを、今度はしなきゃいけないわけですし。

確かにそうですよね……。そこは頑張らないとなぁ……。

──頑張りましょう! 人見知りを克服したい気持ちはあるんですか?

すごくあります。克服したいなと思って始めたのがTwitterのリプライ返しなんですよ。そこはスムーズにできるようになったんですけど、やっぱり人と対面すると全然違うので、そこは課題だなと思っていて。ただ、話さなきゃいけない機会って、普段はこういう(取材の)ときしかないので、まだいいのかなって甘えてしまっている部分もあるんです。でもやっぱり、テレビで明石家さんまさんを観ていると、いいなと思います(笑)。

──挙げられた方がかなり特殊と呼ばれる方ではありますけど(笑)、めちゃくちゃその気持ちわかります。いわゆる根明になりたい?

なりたいです。人をイジれるようになりたい。

──確かに難しいですよね。距離感というか、どこまで踏み込んでいいんだろうと考えてしまうというか。

そうなんですよ。難しい……。

──しばらくの目標としては人をイジれる人になりたい、という感じでしょうか。

はい。そのために、まずは自虐からいきたいと思います(笑)。人をイジる前に自分をボコボコにして、自分の立場をわきまえた上でイジれるようになりたいですね。

取材・文=山口哲生


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