手の届かない花火の光に君を想う、Mr.Childrenが描く儚さ。「HANABI」

UtaTen

2020/2/9 17:00

ふとした表現で一気に引き込まれる作詞術




こんな一節で始まるのがMr.Children『HANABI』。

ドラマ『コード・ブルー』の主題歌に起用され一躍ヒット曲となりました。

その後も幅広い層から圧倒的な支持を集め、現在でも歌い継がれる名曲の一つとなっています。

歌い出しの歌詞で描かれるのは、ちょっぴり憂鬱な主人公の気持ち。

なんだか今生きている世界に意味を見いだせない、というネガティブな感情は多くの人が納得できるのではないでしょうか。

退屈な毎日の繰り返しで輝きを失ってしまい、物思いにふける主人公。

そこで突然つぶやくような口語表現で「ちょっと疲れてんのかなぁ」と潔いカジュアルさを表してみせるボーカル・桜井和寿の作詞術には驚きです。

こうした言語表現の転換で一気に聴き手に感じさせる親近感と日常感。

あくまでポップミュージックとして聴いていた状況から、カジュアルな表現でグイっと歌詞の世界に引き込まれる感覚がありますね。

憂鬱な気分を吹き飛ばしてくれる存在




悩んでいる「僕」が求めているのは「君」の存在。

暗い感情で塞ぎ込んでしまう自分を茶化して笑ってくれる明るさは、きっとネガティブな気持ちを拭い去ってくれるはずです。

憂鬱な気持ちを抱えている時こそ、恋人の存在は大きいもの。

いつでも笑顔で接してくれるような明るい恋人であればなおさらでしょう。

日々の忙しさに疲れてしまっても、そのスマイルをひと目見るだけで心が癒される。

そんな素敵なパートナーがいれば辛い毎日も頑張れそうです。

花火のように儚く、手の届かない存在




静かな盛り上がりを見せる美しいアレンジとともに迎えるサビで歌われるのが、こちらの一節。

そして曲のタイトルでもある「花火」ですが、実はこの曲の中ではひとつの比喩表現としての使われ方しかしていない点にも驚きです。

花火大会での出来事や、花火を見上げながらのデートといった恋人らしいシチュエーションを描くのではなく、あくまでも「手の届かない美しい光」の表現として花火を用いています。

桜井和寿らしい余裕と驚きを感じさせる潔い作詞術がここでも炸裂しています。

決して届かないと分かっていても、花火に向けて何度も手を伸ばす「僕」。

確実にそこにいるように感じるのに遠くに行ってしまった「君」の笑顔に触れようと思いを馳せている姿が連想されます。

そしてその健気さに、思わず共感を覚えます。

大きな光を放ち、色とりどりの表情を見せて人々を楽しませる花火。

頭上すぐのところに広がっているのに、手を伸ばしても届かず、すぐに消えていってしまいます。

そんな儚い美しさや切なさを恋愛感情に閉じ込めた、胸を締め付けるような歌詞。

『HANABI』がラブソングとして多くの人に聴かれ続ける理由は、そんなところにあるのかもしれません。

TEXT ヨギ イチロウ

当記事はUtaTenの提供記事です。

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