米米CLUBの多層的かつ多面的な世界観を『KOMEGUNY』に見る

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2月12日に、石井竜也がニューアルバム『TOUCHABLE』をリリースするということで、今週は米米CLUBをピックアップしてみた。本文にも書いたように、バンドというよりはエンターテインメントグループ、あるいは総合芸術集団といった様相も呈している彼らなので、一時期やひと時代でその全貌を見極めるのは困難。それは承知の上で、1987年の3rdアルバム『KOMEGUNY』を引っ張り出してみた。

■米米CLUBはひと口に語れない

米米CLUBというバンドを語ろうとする時、その作品のどれかをひとつ抜き出してそれをサラッと解説するだけでは、決してその本質に迫ることは出来ない。そう断言していいと思う。いきなり匙を投げたと思われるかもしれないが、リアルタイムで彼らを追いかけてきたファンであるならば同意してもらえるのではないだろうか。

米米CLUBは多層的で多面的である。その形態だけ見てもやや複雑で、多くの人がバンドと聞いて思い浮かべるスタイルとはおそらく趣を異にしている。カールスモーキー石井(Vo)とジェームス小野田(Vo)というふたりのヴォーカリストのルックスが極端に異なることもその特徴ではあろうが、ツインヴォーカルのバンドは他にないわけではないので、その辺はまだいい。

米米CLUBはSUE CREAM SUEというダンサーチームを擁している。Dragon Ashにも正式メンバーにダンサーがいるし、Gacharic Spinにもパフォーマーがいた時期があるようで、今はその他に事例がないわけではないけれども、日本のバンドで1980年代にそれをやっていたという点で米米CLUBに一日の長がある。

フラッシュ金子(Sax)率いるBIG HORNS BEEというブラスバンドをホーンセクションに迎えているのも、米米CLUBの特徴のひとつである。米米CLUB以前にもRCサクセションがライヴに参加するホーンセクションをほぼ固定させていたが、それはバンドの正式メンバーではなかった。また、RATS & STARには桑野信義(Trp)、チェッカーズには藤井尚之(Sax)がいたし、バンドメンバーに管楽器奏者がいることは別に珍しいというわけではなかったはずだが、メンバーが主宰するブラスバンドが常に行動をともにするのはほとんど他に例がなかったと思う。

SUE CREAM SUEとBIG HORNS BEE。仮にそれらをそれぞれに抱えていたとしても、少なくともその当時においては目新しいスタイルであったであろうが、サポートからの正式加入、脱退などメンバーの入れ替わりが相当にあったにせよ、その両方をバンドに内包していたというのは米米CLUBの比類のなさであったと言えると思う。

さらには、その音楽性をなかなかひと口に語れないこともこのバンドの特徴であろう。Wikipediaに[音楽的なバリエーションは豊富で、ソウル音楽、ニュー・ロマンティック、ポップ•ロック、ブラス・ロック、ムード歌謡、ファンク等]とあるように([]はWikipediaからの引用)、その多彩さがひと口に語れないと言わざるを得ない要因ではあるのだが、じゃあ、それをひとつひとつ検証していくと米米CLUBの音楽性を解明できるかと言うと、どうやらそういうことでもなさそうだ。ファンならばよくご存知のことかと思うが、米米CLUBはライヴバンドだ。それも、よくありがちな“ライヴに力を入れてます!”といったスタンスではなく、ほとんどライヴが活動のメインであったと言っていい。コンサートツアーにおいても各地2デイズ公演で、それぞれの日で内容がまったく異なるなんてことも普通だった。ライヴステージでしか披露されていない楽曲もあるそうだし、そう考えるとほぼ完成していながら音源化されなかった楽曲はひとつやふたつではなかろう。つまり、音源のみをガイドにその音楽性を語るのは若干危険だということだ。

もっと言えば、純粋に音楽だけを追求していたバンドなのかというと──これは筆者の邪推も混じった見解ではあろうが──コスチューム、ステージセット、ライティングの他、演出装置も含めて、それらは音楽をよく聴かせるためのものではなく、その全てが作品であって、それが合わさったものが米米CLUBであるといった節もある。映像、音楽、演出、脚本が一体となった映画が時に総合芸術と言われることに近いのだろう。ひと口に語れないと言ったのにはそんな側面もある。まぁ、そうだからとは言っても、当コラムは邦楽名盤紹介であるからして、本当に匙を投げられるわけもなく、下記のアルバム『KOMEGUNY』の解説も、ここまで書いたことを踏まえていただければ幸いに思う。

■大衆的なメロディーをバンドで料理

本作『KOMEGUNY』は、まずM3「浪漫飛行」が収録されているのが目を引く。「浪漫飛行」は米米CLUB初のミリオンヒットシングルであり、彼らがシングルチャートで初めて1位を記録した楽曲である。「浪漫飛行」は東日本版と西日本版の2種類が同時発売されており、その合算でミリオンなので、厳密には「浪漫飛行」は初のミリオンではないかもしれないが、それはともかくとして──。何も知らない人なら「浪漫飛行」のヒット後に『KOMEGUNY』がリリースされたと思われるかもしれないけれども、「浪漫飛行」は『KOMEGUNY』からのシングルカットである。しかも、『KOMEGUNY』は1987年10月発売で、シングル「浪漫飛行」は1990年4月発売と、その間は実に2年半。これは今も昔もあまり例のあることではない。ベタな言い方をすれば、時代が彼らに追い付いた結果ということだろうが、[製作当時から「航空会社のCMソングとしてオファーが来ないか」と狙って作った作品]であったというから([]はWikipediaからの引用)、そもそも彼らは大衆的指向が明確にあったことが十分にうかがえる。

実際、「浪漫飛行」に限らず、『KOMEGUNY』収録曲は概ねキャッチーなメロディーラインを持っている。さわやかなアイドルソングっぽい雰囲気のM5「Primitive Love」、どこか大陸的な大らかさを感じさせるM6「Make Up」など、歌の旋律はいろいろなタイプがあるけれども、いわゆるJ-POP的と言っても語弊はないだろう。フラッシュ金子の作詞作曲で彼がヴォーカルも務めているM10「Twilight Heart」が唯一所謂キャッチーさ薄めのナンバーと言えるだろうが、アルバムのフィナーレに置いていることと歌い手が明らかに異なることもあってか、歌の雰囲気の違いが過度に目立たないというか、いい意味で変に印象に残らないというか、絶妙なバランスとなっている。この辺は一アルバム作品と上手い作りではあると思う。

そんな概ねキャッチーで、ポップと言えるメロディーラインを、前述したホーンセクションを擁した分厚いバンドサウンドで様々に料理しているのが『KOMEGUNY』であると言えるとは思う。楽器を演奏するメンバーが多いという米米CLUBのアドバンテージのようなものもそこにはあるような気がする。ジャンル的には、大雑把に言うとニューロマとファンクとに分類されるだろうか。M1「Only As A Friend」、M3「浪漫飛行」、M4「Collection」、M5「Primitive Love」、M9「Hustle Blood」、M10「Twilight Heart」が前者で、それ以外が後者と見ることができるが(かなり強引な分け方ではあるが)、8ビートだからといってジャストに迫るわけでもなく、ファンキーだからといってもブラックフィーリングが多めではなく、その辺もいい塩梅ではある。M1「Only As A Friend」からして1980年代らしいシンセ感を聴かせ、ギターやスネアの音色はいかにも…といった感じだが、間奏ではややラテンっぽさを見せるなど、単純なニューロマで終わってない印象。M3「浪漫飛行」も同期のリズムが全体を引っ張っているので冒頭はどこか無機質な印象はあるものの、サビに重なるストリングスがまさに浮遊感を醸し出している。ピアノから始まり、次第にベース、ギターが重なっていき、終盤はビッグバンド風に展開していくM8「Hollywood Smile」は、大所帯の面目躍如たるところかもしれない。

■ひと筋縄ではいかないごった煮感

サウンド面で個人的に最も注目したのはM2「sûre danse」である。4thシングルとして先行発売されたナンバーではあるものの、のちに『K2C』(1991年)でリメイクされ、『DECADE』(1995年)でも「元祖 sure danse」としてさらに再リメイクされた曰く付きの楽曲。これもまたファンならばご存知のことと思うが、レコード会社から「これでは売れない」との指摘を受けて大幅に改変したものがシングルと『KOMEGUNY』収録版になったという。バンドにとっては大いに不本意な楽曲であり、だからこそ、のちに“元祖”を付けてリメイクしたのであろうが、改めて聴き比べてみると“1987年版”も決して悪い出来ではない。ソウルフルな“元祖”の質実剛健さは歌詞の世界観にもマッチしていると思うのだが、個人的な好みで言えば“1987年版”に軍配を上げたいほどだ。揺れのなさは否めないけれども、ブラスのシャープさであったり、サウンドのドンシャリ感が生むアーバンさであったり、あの時代でしか生まれ得なかったであろう空気感がしっかりとそこにある。メンバーは納得してなかったのだからそう言われても困惑するだろうが、こちらのほうが米米CLUBらしい印象ではある。個人的には…ともう一度前置きするが、どこか混じり気があるというか、ストレートすぎないところに米米CLUBの面白さがあると思うからである。

その辺に関連して最後に歌詞の話を少し。米米CLUBがそののちに「君がいるだけで」(1992年)という特大ヒット曲を生みだしたことは説明を待たないと思うし、それが所謂ラブソングに分類されるものであることもみなさんご存知かと思う。それゆえに「君がいるだけで」のヒット後は一般層に素敵なポップスを歌うバンドと思われた節もあるようだが、『KOMEGUNY』にはこんな歌詞の楽曲もある。

《夕暮れが近づく 君の涙が乾く/「帰して」とさけばれても Love You/大切な 宝物さ/これからは Forever 二人きり》《しばりつけてるのは 愛があるからだよ/ここで君が 逃げてしまえば/すばらしい夢はもう二度と見られない No Way/あきらめて》(M4「Collection」)。

米米CLUB版の「ミザリー」や「蝋人形の館」といったところだろうか。ひと通り歌詞を見てから楽曲のタイトルを見ると少しゾッとする感じである。これ以外にも、M8「Hollywood Smile」やM9「Hustle Blood」辺りはちょっと下世話な感じもあるし、M5「Primitive Love」やM6「Make Up」などはどんなふうに受け取っていいか判断を迷うものもある。このひと筋縄でいかない感じ──熱心なリスナーとは言えない筆者のような者でも、ここに米米CLUBらしさはあるように思う。サウンドも含めて、どこかごった煮な感じと言ったらいいだろうか。『KOMEGUNY』はその意味でも米米CLUBの本質が詰まった作品ではあると思う。

TEXT:帆苅智之

アルバム『KOMEGUNY』

1987年発表作品

\n<収録曲>
1.Only As A Friend
2.sûre danse
3.浪漫飛行
4.Collection
5.Primitive Love
6.Make Up
7.Misty Night
8.Hollywood Smile
9.Hustle Blood
10.Twilight Heart

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