KAAT神奈川芸術劇場、2020年度ラインナップ発表 谷賢一の新作舞台、野村萬斎『子午線の祀り』再演など「充実」と白井晃

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KAAT神奈川芸術劇場(以下、KAAT)が2020年2月4日(火)、神奈川の同劇場で『2020年度ラインナップ』発表会を行い、小野寺修二桐山知也清水恒輔多田淳之介谷賢一冨安由真松原俊太郎森山開次長塚圭史、そして同劇場の芸術監督を務める白井晃が出席した。
白井晃
白井晃

KAATは今年で開館10周年を迎える。この記念すべき年のラインナップについて白井は「東日本大震災の年にオープンしたのですが、それから10年の間に日本の状況も劇場を取り巻く環境も随分変わりました。KAAT任期満了となる本年度のラインナップは、力を込めて考えたプログラムになっており、2019年と同じくらい充実したラインナップを作れたと自負しています」と自信をみなぎらせる。そして「日本は監視社会になってきて個人的には嫌な流れだな、と感じています。7月の東京オリンピックに向けて皆が熱狂的になる一方で見逃しがちなことに目を向けられたら」とラインナップに込めた想いを語った。

ラインナップは美術・ダンス作品部門と演劇作品部門に分けて発表された。美術・ダンス作品部門では冨安と、森山、小野寺が登壇した。
冨安由真
冨安由真

6月に開催される冨安の『漂泊する幻影』について、冨安は「科学では解明されていないような、また心霊現象だったり、超常現象といった事柄に関心があり、普段はそういったものを作品化してきた。そのなかでも現実と非現実の境目があいまいなものを鑑賞者に体験していただきたい」と述べた。
森山開次
森山開次

11月のダンス・プログラム『星の王子さま -サン=テグジュペリからの手紙-』を手掛ける森山は「実は白井さんと初めてお仕事をしたのが『星の王子さま』で、僕はヘビの役でした」と微笑みを浮かべつつ「単に『星の王子さま』という作品をなぞるのではなく、サン=テグジュペリの生涯や想いを重ね合わせながら、もう一度『星の王子さま』を構築していく物になると思います」とコメント。森山は熱を帯びながら作品への想いだけにとどまらず、スタッフそしてキャストの紹介を続けていくが、その結果話が長くなり、その次に控えていた小野寺から「持ち時間一人3分って聴いていたんだけど……」と突っ込まれ、ガクッと肩を落としつつ笑っていた。
小野寺さんに突っ込まれ沈没する森山さん(笑)
小野寺さんに突っ込まれ沈没する森山さん(笑)
小野寺修二
小野寺修二

そして11月に新作を上演する小野寺は「元々僕はパントマイムをやっていて、そこが出自。今回白井さんと『作品を作ってみない?』と相談されたんですが、白井さんは『何でもいいから小野寺修二の好きなことをやって』と言うんですが、とはいっても大きな事業の中の一つのプログラムですからお客様を呼ばなくてもいいのか、とかこれはまずいんじゃないか、と思いながら提案すると『それは小野寺くんぽくないなぁ。自分がやりたいことをしっかり考えて』って」と“演出家”としてダメ出しされた思い出を振り返っていた。今年の演目は「アジアに向けて自分が何をやれるのか」をテーマに作っていきたいと語っていた。

演劇部門の発表では、清水、桐山、松原、谷、多田、長塚が登壇した。

4月の『アーリントン』について、白井は18年に上演した『バリーターク』に触れ、「不思議な作品だったのでまたやりたいと思った。ある部屋の中にいる若い女とモニター越しで観ている若い男との不思議でおもしろいラブストーリーを南沢奈央と先日アミューズを退所した平埜生成、そしてダンサーの入手杏奈が務めると発表した。
清水恒輔
清水恒輔

4月に上映される『メトロポリス 伴奏付上映会』で映像に合わせて生演奏をするミュージシャンを代表して清水が口を開く。「1927年に作られたこの作品は今の時代にも通じる発展し過ぎた社会、富裕層と貧困層の極度に二分化した社会を描いており、今の時代にもフィットすると思う」と語った。
桐山知也
桐山知也

4月末のリーディング公演『ポルノグラフィ』は、つい先日まで東京で上演されていた『FORTUNE』のサイモン・スティーブンスの作品と白井が解説する。本作の演出を務める桐山は「ロンドンオリンピック開催が決定した翌日、ロンドンで起きた地下鉄・バス連続爆破テロ事件を題材に構成された作品で、2020年の東京オリンピックが開催されるなか、この作品が上演される意義にヒリヒリするようなものを感じます」と述べた。その一方で「この作品は白井さん本人がやりたかったんじゃないかなあ」と口にすると白井がニヤリと笑っていた。
松原俊太郎
松原俊太郎

10月に上演される地点の新作『君の庭』について、劇作の松原は「KAATと地点が組むといいことはタイトルが早く決まること」と笑いを誘う。「今回は法廷劇。ここに登場する“ファミリー”は世界的にも有名な“ファミリー”。作品を書く際、最初に設定した“型”は地点が絡むと最後には無残に壊されるので、その有様を楽しみにしてほしい」と期待を持たせた。
谷賢一
谷賢一

谷は10月に上演される新作舞台『人類史(仮)』について、白井は「谷さんからとんでもない提案をいただきました」と前振りをする。谷は「私の食指が動いたのは大ベストセラーになったユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』という1冊の人類史。これを演劇化したいと言ったら私もどうかしていますが、KAATもどうかしているようで(笑)受け入れてくださいました」というと会場からも笑い声が起きる。「国の垣根を超えて人類の起源を探っていく壮大なプロジェクトになると思います。この話を聴いて『(演劇化は)無理だろう』と思った方はぜひ観に来てください」と笑わせていた。
多田淳之介
多田淳之介

12月には多田が『外地の三人姉妹(仮)』という日韓共同製作となる作品を手掛ける。チェーホフの『三人姉妹』を題材にした本作について、多田は「モスクワヘ、と言われるのと、東京へ、と言われるのでは感じ方が違う。そこが面白いなと。日韓に関しては最悪な関係になっていますが、オリンピックが終わってどうなっているのか予断を許さない状態ですが、それも楽しんで、淡々粛々とやっていきたい。芸術は政治とは無関係ですから」と力を込めた。
長塚圭史
長塚圭史

年明けて2021年1月に上演される『セールスマンの死』はアーサー・ミラーが手掛けた現代演劇の金字塔。18年の初演に続き今回の再演でも演出を務める長塚は「僕は再演が大好きで、一本一本を見つめなおすことで深みが増すと思うんです」と持論を展開。「スピード感溢れる時代のなか、その時代から取り残された男の姿や家族の業を顧みていただきたい」と語る。「ちなみに息子役の山内圭哉くんと菅原永二くんですが、50歳を越えていますが、10代の役を演じます。最初彼らは出来ないって顔をしていましたが、10代の役を50代が出来るのが演劇の力だと思うんです。見どころです」と長塚は楽しそうに笑顔を見せていた。

最後に2017年に世田谷パブリックシアターにて野村萬斎が演出し、多数の演劇賞を受賞した木下順二の歴史絵巻『子午線の祀り』が2021年2月に上演されることが発表された。野村からは「本作は日本の演劇界を代表するスタッフとキャストによって今日まで受け継がれてきました。17年の上演での唯一の心残りは各地での上演がなされなかったこと。2021年はKAATに始まり各地の劇場でも上演していきます」とのコメントが寄せられた。
※2021年版には野村萬斎のほか、成河、河原崎國太郎、吉見一豊、村田雄浩、若村麻由美の出演が会見後に発表されている。

2020年、時代に一石を投じるKAATの演劇にますます期待したい。
KAAT10周年記念ロゴ
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取材・文・撮影=こむらさき

当記事はSPICEの提供記事です。

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