【映画コラム】事実を基にした物語『リチャード・ジュエル』と『イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり』

テレビファン

2020/1/16 19:33


 今回は、1月17日から公開される、事実を基にした映画を2本紹介しよう。どちらも、ドキュメンタリーとは違う、劇映画ならではの工夫や面白さが感じられる。まずはクリント・イーストウッド通算40作目の監督作品『リチャード・ジュエル』から。

1996年、アトランタオリンピック開催時に、爆発物を発見して多くの人命を救った英雄であるにもかかわらず、FBIやメディアに爆破テロの容疑者と見なされた実在の警備員リチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)と弁護士のワトソン・ブライアント(サム・ロックウェル)の闘いを描く。

本作は、イーストウッド監督作品としては、最近の『アメリカン・スナイパー』(14)『ハドソン川の奇跡』(16)『15時17分、パリ行き』(17)『運び屋』(18)といった、事実を基にした物語の系譜に属する。

無名の人物が主人公ということで、素人が本人役を演じた『15時17分、パリ行き』の失敗が頭をよぎったが、今回はウォルター・ハウザー、ロックウェルをはじめ、ジュエルの母親役のキャシー・ベイツ、記者役のオリビア・ワイルド、FBI捜査官役のジョン・ハムなどがきっちりと演じて、映画に説得力を与えている。改めて俳優の力は大きいと感じさせられた。

さて、ジュエルが犯人でないことは最初から分かっているので、何を見どころとして2時間余をもたせるのかが勝負どころとなる。その点、イーストウッドは、事の経緯を淡々と描きながら、それぞれの人物像や事件の深部に迫っていく、という正攻法で勝負している。これこそが熟練の技だ。

悪人探しと、それに続く断罪は、魔女狩りの昔からあるが、今の世の中は、姿なき誹謗(ひぼう)中傷がまん延し、ジュエルのように、いつ被害者、あるいは加害者になってもおかしくはない。また、「結婚もせず母親と同居している太った男」「英雄願望のある男」などと、ジュエル(=他人)に勝手にレッテルを貼ったり、見た目で人を判断してしまったりする恐ろしさも、自戒の意味も含めて痛感させられた。89歳のイーストウッドに脱帽だ。

続いては、19世紀のロンドンを舞台にした『イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり』。

1862年の英ロンドン。気象学者のジェームズ(エディ・レッドメイン)と気球操縦士のアメリア(フェリシティ・ジョーンズ)は、酸素ボンベなしで気球に乗って高度1万メートル余まで上昇するが…。

本作は、実話を基にしたアドベンチャーロマン。最新の映像技術を駆使して、19世紀のロンドンの風景と、空中、雲上の世界を見せるのだが、筆者のような高所恐怖症の者には少々刺激が強過ぎるほどリアルだ。

『博士と彼女のセオリー』(14)で夫婦役を演じた2人が再共演している。気球操縦士という役柄上、ジョーンズの方が危険なアクションに挑み、その間レッドメインは気絶しているなど面目が立たないのだが、これが現代の男女関係にも通じるようで面白い。その意味では、描かれた時代は異なるが、宇宙船を舞台にした『ゼロ・グラビティ』(13)と重なるところもあると感じた。

ところで、本作は、昔々の『罠』(49)や『真昼の決闘』(52)、あるいは和田誠監督の『真夜中まで』(99)が用いた、劇中の時間(本作の場合は主に飛行時間)と上映時間とを同じにするリアルタイム形式を取り入れていた点がユニークだった。

また、昨年公開された『イエスタデイ』で好演を見せたヒメーシュ・パテルが、ジョーンズの親友役を演じた本作でも、なかなかいい味を出しているのも見どころの一つだ。(田中雄二)

当記事はテレビファンの提供記事です。

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