老親にすすめたいキャッシュレス決済は「Suicaがベスト」のワケ

日刊SPA!

2020/1/11 08:50

「あのね、私もキャッシュレス決済というものを使ってみようかと思ってるんだけど」

実家の両親からそんなことを切り出されたら、あなたはどう返答するか? 政府の主導する『キャッシュレス・消費者還元事業』のロゴマークは、地方都市でもよく見かけるようになった。しかもこの還元事業は、今年の6月まで続く。加盟店舗はまだまだ増えていくはずだ。

これに触発され、自分もキャッシュレス決済を始めてみようと考える人が続出するのは当然の成り行きとも言える。では、もしも実家の両親がその気になったとしたら、子供としてはどのサービス銘柄をすすめるべきだろうか?

◆結局、何を使えばいいの?

一口に「キャッシュレス決済」といっても、サービス銘柄は多種多様だ。交通系ICカード、クレジットカード、デビットカード、モバイル決済、そしてQRコード決済。とくにQRコード決済の「○○Pay」は乱立状態で、詳しい事情を知らない人から見れば「銘柄が多過ぎて訳分からん!」ということになってしまっている。

高齢者である実家の父と母が、何かしらのきっかけでキャッシュレス決済に興味を持った。そこで、こんな質問をされてしまう。

「“ぺいぺい”とか“らいんぺい”とか“でーばらい”とか、いろいろあるそうだけど結局どれを使ったらいいのかしら?」

それに対して即答できる都会暮らしの働き蜂は、決して多くないのではないか。それどころか、自身の利用するキャッシュレス決済ですらも「何を使えばいいのか」と悩んでいたりする。

だが、いまだスマホに慣れない両親がせっかく最先端テクノロジーに興味を持ってくれたのだ。ここは邪険にするわけにもいくまい。また、これが実の両親ではなく配偶者の両親、即ちお義父さんお義母さんだったら、口が裂けても「分かりません」とは言えないはずだ。

さあ、困った。

◆地方でも交通系ICカードが便利

まずは「実家周辺の交通インフラ」を確認してみよう。たとえば、実家のすぐ近くにバス停があり、そこから数十分でJRの駅に移動できるとしたら、JR発行の交通系ICカードが大いに役立つ可能性がある。

これは「JR路線でICカードが使える」という意味だけでなく、地元の路線バスもJRに同調しているかもしれないということだ。今や路線バスも、SuicaやTOICA、ICOCA等の「JR銘柄」で乗車できるよう整備されつつある。

また、地方の路線バス会社は大抵の場合、その土地有数の大資本だ。駅の近くの土地などに商業施設を構えていることもある。無論、その施設ではバスに合わせ、交通系ICカードで決済できる可能性が高い。

これは即ち、地元の路線バス会社が交通系ICカードによる経済圏を構築している例だ。となれば、実家の両親にはJR発行の交通系ICカードを持たせたほうが最も手っ取り早い。

◆1000円から始めるQRコード決済

ただ、巷のキャッシュレス決済に関する話題は交通系ICカードよりも「○○Pay」が注目を集めている。

QRコード決済サービスの利点は、事業者側が特殊な機器を用意する必要がないということだ。交通系ICカードでの決済には読み取り端末が欠かせないが、QRコード決済であればそれが印刷された紙1枚で済む。消費者がそのQRコードを、スマホのカメラで読み取る仕組みだ。

現に、今まで現金決済のみの対応だった地域密着型のスーパーマーケットが、非接触型決済ではなくPayPayやLINE Payを導入する例が全国で相次いでいる。レジを刷新することなくキャッシュレス決済を取り入れようと考えたら、その選択肢はおのずと絞られる。

スマホは持っているけれどまだ操作が慣れない両親に○○Payをすすめる行為は、決して愚策ではない。むしろ、QRコードの読み取りや価格入力で少しずつスマホ操作に慣れてくれれば一石二鳥とも言える。

ただし、問題はチャージ金額だ。QRコード決済初心者であれば、一度のチャージで5000円ないし1万円というのはいささか荷が重い。そもそも、QRコード決済は数百円程度の買い物にこそ本領を発揮する。その人にとっての「初めての○○Pay利用」であれば、まずは1000円のチャージを筆者はおすすめする。

「とりあえず、残高にある1000円を自力で使い切ってみよう」

子供はスマホの前で首を捻る親に、そう助言するべきだ。

「たったの1000円? そんなんじゃたいしてポイントもらえないよ」

とは、決して言ってはいけない。QRコード決済の本格的な利用は、「たったの1000円」をしっかり使い切ったあとでも決して遅くはない。

◆ポイントのことは忘れよう!

キャッシュレス・消費者還元事業は、今までキャッシュレスとは無縁だった人々にも「一度利用してみようかな」という意識を持たせている。そういう意味では、この事業は大成功を収めているのかもしれない。が、だからといって還元ポイントを意識し過ぎるのも問題だ。

ポイントを追い求めるがあまり、ついつい衝動買いをしてしまったというのはよくある話。キャッシュレス初心者であれば尚更で、自分は賢く買い物をしているつもりでも結果として無駄遣いをしていたり……ということもあり得る。

従って、ここでは一度ポイントのことは忘れてしまおう。それよりも、「Suicaって、本当に便利でしょ? 小銭をゴチャゴチャ取り出すこともないし、バスにも電車にも乗れるし、失くしても再発行できるし」といった感じの会話を、親と交わしていくのがベスト。ここではあくまでも「キャッシュレス決済の便利さ」だけを話題に出し、ポイントのことは敢えて話さない。それはオマケ程度に考えれば十分である。

無理せず、焦らず、マイペースに。これが「キャッシュレス化」を目指す人たちへの、筆者からのアドバイスである。<文/澤田真一>

【澤田真一】

ノンフィクション作家、Webライター。1984年10月11日生。東南アジア経済情報、最新テクノロジー、ガジェット関連記事を各メディアで執筆。ブログ『たまには澤田もエンターテイナー』

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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