ハナレグミ 音楽を通じた感動の“瞬間”を共有するツアー『THE MOMENT』について今語れるすべてのコト

SPICE

2020/1/10 14:27

2020年2月、ハナレグミこと永積 崇による東阪ホールツアー『THE MOMENT』の開催が決定。ワンマンツアーとしては『2018 ツアー ど真ん中』以来、約1年半ぶりとなるこのツアーは、東京が2月7、8日にNHKホール、大阪が2月23日にオリックス劇場にて行われるが、その内容は通常のワンマンライブとは趣向が大きく異なっている。2月7日は“HORN NIGHT”と題し、東京スカパラダイスオーケストラをバンドにフィーチャー。そして、2月8日、23日は“STRINGS NIGHT”と題し、LITTLE CREATURESの鈴木正人率いるバンドに未央ストリングスを迎えた特別編成のもと、永積がシンガーに徹したライブを行う。
これまで様々な活動を通じて、キャリアを積み重ねてきたハナレグミだが、このツアーでは、その時々に“音楽からもらった感動の瞬間”を思い起こし、オーディエンスと音楽を通じた感動の“瞬間”を共有するべく、ツアータイトルを『THE MOMENT』と命名。並々ならぬ思いを抱いてツアーに臨む彼に、大いに期待が高まるその内容について話を訊いた。


──来年2月に東京・大阪で行われるハナレグミのワンマンホールツアー『THE MOMENT』は、今までにない試みのライブをお考えということで、まずはその概要についてご説明いただけますか?

『THE MOMENT』は、東京がNHKホール2デイズ、大阪がオリックス劇場という3本のみのツアーで、東京1日目は東京スカパラダイスオーケストラをバンドに迎えた『THE MOMENT ~HORN NIGHT~』。東京2日目と大阪はLITTLE CREATURESの鈴木正人さん率いるバンドに美央ストリングスを迎えた『THE MOMENT ~STRINGS NIGHT~』という構成ですね。この数年、バンド編成のライブをほぼ同じメンバーでやらせてもらってきて、ここから先もまだまだ積み上げていくものはいっぱいあると思うんですけど、今まで何となく頭に描いてはいたものの実現できていないことをやるなら、このタイミングしかないんじゃないか、と。そういう話をスタッフとしていくなかで、近年何度もライブに誘っていただいているスカパラとなら、スペシャルなパフォーマンスができるんじゃないかと思って。彼らのライブはいい意味で目の前のオーディエンスのためだけに奏でていないというか、地球の裏側まで視野に入った音だと思うんですよね。

──世界各地をライブで回ってきたバンドのみが持ち得るタフさや音のスケール感というか。

そう。音を奏でる人、その表現には、これまでどういうものを見てきたのか、どこに目標をおいてやってきたのかということが如実に表れる気がするんですよ。例えば、玉置浩二さんだったら、生まれ育った北海道の環境がおおらかで大きく、ふくよかな歌に影響を与えていると思いますし、スカパラの場合は、世界の大きさを実感している人たちの音だなって。そういうスケールの大きい演奏で歌わせてもらう時の僕はいつもハッピーだし、ハッピーな僕を見て、彼らはそれをさらに後押ししてくれる。だから、スカパラとの共演は自分にとって至福の体験だったりするんですけど、これまで一緒にライブをやったのは、小規模な会場が多かったので、より多くの方に観てもらえるように、NHKホールでライブがやりたいなって。

──鈴木正人さん率いるバンドに美央ストリングスを迎えた『THE MOMENT ~STRINGS NIGHT~』はいかがですか?

近年、ジュリー・ロンドンやナット・キング・コール、サミー・デイヴィスJr.、フランク・シナトラのような昔のスタンダードナンバーをよく聴いていて。彼らのようなボーカリストの佇まいは美しいなと思うし、憧れでもあるんですけど、彼らがかつてやっていたようなストリングスを交えた編成でのライブはそうそうできなかったりする。だから、自分の作品はもちろん、これまで参加した客演曲も含めて、ストリングスが入っている曲を中心に、そうじゃないハナレグミの曲にも新たにストリングスアレンジを施したりしつつ、リッチな編成をバックに、自分はスタンドマイクで歌に集中するようなライブをそろそろやってみようかなって。

──ストリングスの、ふくよかでレンジのあるサウンドは、音響の整ったホールに映えますもんね。

そういう豊かな音の響きを味わう機会は年々減ってきている気がするし、ライブをやる側の自分にしてもそう。だから、自分が影響を受けた音楽からチョイスした曲のカバーを交えたりしながら、メモリアルなライブに挑戦してみたいなって。そのカバーのアレンジに関して、僕は自分なりにスパイスを加えて、原曲のアレンジから大きく変えるのが好きだったりするんですけど、一方で“シンガーに徹して、ストレートにカバーした曲も聴いてみたい”という周りの声もあったりする。ただ、演者としては、ストレートなカバーって、かなり勇気が必要だったりするんですよ。

──野球で例えるなら、ど真ん中ストレートを投げるピッチャーの心境に近いといいますか。

そういう勝負球を思い切って投げるためには、ここまでの時間が必要だったというか、今回は楽曲とひとつになるようなストレートなカバーに挑戦してみたいですね。美央ストリングスは、僕の作品だったり、(星野)源ちゃんと一緒にやっているストリングスアンサンブルなんですけど、今回のアレンジは鈴木正人さんを交えて、ああしたい、こうしたい、というひらめきをギリギリまでトライしたいと思っています。その際には共通言語で話せることがすごく大事だし、限られた時間のなかで一つのバンドになれたらいいなと思っているので。気持ちを通わせた場を作るにあたって、僕のなかで美央さんしか考えられなかった。ここ最近、YouTubeでジャクソン・ブラウン with ストリングスやノラ・ジョーンズのアコースティックのライブ動画を見てみたら、誰もお仕事で演奏していないというか、普段から気持ちが通じ合っているような関係性のハッピーなステージングで、自分のライブもそうありたいなって。

──鈴木正人さんも、それこそハナレグミのセカンドアルバム『日々のあわ』(2004年)のプロデューサーですし。

そう。2016年公開の映画『海よりもまだ深く』の劇中でカバーしたテレサ・テンさんの「別れの予感」(シングル「深呼吸」(2016)に収録)でも正人さんにお願いしていますし、アレンジがめちゃくちゃ格好いいですからね。こないだもNHK BSプレミアムの番組『The Covers』の井上陽水ナイトで正人さんがアレンジした「いっそセレナーデ」を歌ったんですけど、歌いながら“正人さんのアレンジがあれば、当日、声が出なくなっちゃっても大丈夫なんじゃないか”って思ったくらい、2月のライブがワクワクしちゃって(笑)。なんていうんだろう、正人さんのアレンジはどこか色気があるというか、LITTLE CREATURESの一員だけあって、冒険心のあるアレンジを施しながら、それをさらっと聴かせてしまう塩梅が絶妙なんですよね。だから、こっちは漠然としたヒントだけを投げて、それを正人さんがどんな風に調理するのか、ただただ楽しみですね。


僕にとってのライブは、完成された歌を観てもらう、聴いてもらう場ではなく、何かが起ころうとしている“その瞬間”をみんなと共有する場なんです。


──歌い手としての永積さんの意識が急速に研ぎ澄まされていったのは、アルバム『だれそかれそ』(2013)や『What are you looking for』(2015)をリリースした頃だったと記憶しているんですけど、その後は通常のバンド編成や弾き語り、あるいはフジファブリックとのハナレフジやU-zhaanとのタカシタブラタカシなど、色んな角度から歌を探求し続けていますよね。

まさに『What are you looking for』前後の時期に玉置浩二さんにお会いしたり、リリー・フランキーさんのイベント『ザンジバルナイト』でご一緒した研ナオコさんだったり、いわゆるシンガーのレジェンドたちからものすごいエネルギーを感じたというか。僕はそこまで到達できるとは思っていませんけど、昨今、シンガーソングライターが増えているなかで、音楽の歴史においてはボーカリストという道筋も大事にしないとなって思うんですよ。そのうえで、ハナレグミでは形態にとらわれず、これまでにも色んな形でライブをやってきて、僕にとっては初期衝動が全てというか、昔の曲であっても初めてのことのように歌いたいし、活き活きと歌を響かせるために、常に動き続けて、色んな人とライブをやった経験が一人でやる弾き語りやバンドでのライブにフィードバックされたり、自分のなかでは全てが循環しているし、一つのフォーマットに収められない自由なものであるための旅を続けているような、そんな感覚なんです。だから、僕にとってのライブは完成された歌を観てもらう、聴いてもらう場ではなく、今まさに何かが起ころうとしている、“その瞬間”をみんなと共有する場なんですよね。

──それが今回のツアータイトルである『THE MOMENT』の意味するところなんですね。

そうなんですよ。ライブは全てそういうものだと思うんですけど、特に自分はオーディエンスの反応とかその日の会場の空気を感じ取って演奏するのが好きだし、決まりきったものではなく、何かが起こるかもしれない余白を残しながら、その瞬間にものすごいエネルギーを注ぎ込んでいて。つまり、その日、ステージに立ってみないと分からないのがハナレグミにとってのライブなんですよ。

──ちなみに、一人の聴衆として、永積さんが“THE MOMENT”を感じ取ったライブ体験を挙げていただけますか?

めちゃくちゃありますよ。ぱっと思い浮かぶのは、2年前にニューヨークで観たポール・サイモンの野外ライブかな。2日間続けて観に行ったんですけど、(アフリカンポップスに歩み寄った1986年の名作)『グレイスランド』の時に近い10人くらいのバンド編成で、まぁ、とにかく音がきれいだったんですよ。

──大所帯のバンドだと必然的に音数が多くなり、混沌とした場になりがちですけど、そうではなかったと?

そう。音が塊にならず、一音一音がきれいに聞こえて、どうしてそうなるのか、同じ演者として、その秘密が分からなかったんですよ。アレンジ力もスゴいんでしょうし、それに対応するミュージシャンの音選びも研ぎ澄まされていて、さらに70歳を超えても変わらないポール・サイモンの声や楽曲そのもののスゴさ。演奏しているのに、その感動を横から伝えてくるおばちゃんがいたり(笑)、オーディエンスの楽しみ方もまたスゴくて。ライブの楽しみ方というと、YOGEE NEW WAVESの角舘くんやnever young beachの安部ちゃんと話していても、今は若い子たちが海外に行って、そこで知ったライブの楽しみ方を持ち帰ってくることもあって、日本もどんどん自由なものになってきていますけど、海外でライブを観ると、向こうのオーディエンスは音楽と生活が密接な関係にあって、楽しみ方に無理がないなって。今年の夏もカリフォルニアでライオネル・リッチーやPファンクのライブを観てきたんですけど、みんな、自分の家のリビングで楽しむように、盛り上がりたい時に盛り上がって、お酒が飲みたくなったら演奏中でも構わず買いに行ったり、いい意味で緩く聴いているんです。日本と海外を比べて云々ということではなく、“こういうライブの楽しみ方もあるんだな”と身をもって知ることもライブの大きな醍醐味なんじゃないかなと思いますね。

──ライブは、音だけでなく、時間や空間をみんなで共有する場ですもんね。

作品を聴くのとライブは全く違う体験ですからね。その会場に辿り着くまでの道のりもライブに含まれると思うし、アメリカで観たPファンクのライブなんて、ジェンダーや年齢、国籍も関係なく、会場そのものがPファンクでしたからね(笑)。そこにはゲイやレズビアンのカップルがいたり、若者からお年寄りまで色んな人がいて、そのなかには杖をついたおばあさんがいたんですけど、その人はブロンドのでっかいアフロでギラギラのサングラスやジュエリーをつけていて。そこに若者たちがバーッとやってきて、「すごい格好いいね!」って言ったら、その人は「私がPファンクだから!」って答えていたり(笑)、そういう人たちだらけの会場はストリートそのものだったんですよ。それは、まぁ、極端な例ではありますけど、そういう時間や空間を含めて、音楽に触れあう『THE MOMENT』になったらいいなって。今はなにより自分がワクワクしていて、“どういうライブにしようかな”って、毎日考えていますからね。

──果たして『THE MOMENT』では何が起こるのか。それは当日のお楽しみということで。

すみません、今はそれしか言えなくて(笑)。まぁ、でも、この興奮具合をご理解いただき、2月のライブに足を運んでもらえたらうれしいです。

取材・文=小野田 雄

当記事はSPICEの提供記事です。

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