「スカーレット」前半終了78話。ずっと自分の気持ちを抑え込んできた喜美子の18年を振り返ってみた

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(これまでの木俣冬の朝ドラレビューはこちらから)

連続テレビ小説「スカーレット」 
NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~


『連続テレビ小説 スカーレット Part1 (1)』 (NHKドラマ・ガイド)

第13週「愛いっぱいの器」78回(12月28日・土 放送 演出・鈴木航)
「こうせなあかんという決まり事は一個もないんやで」(ジョージ)

子供が熱を出したため楽しみにしていたジョージ富士川(西川貴教)の実演会に行けなかった喜美子(戸田恵梨香)のために、八郎(松下洸平)と照子(大島優子)がジョージに頼んで特別に自宅で実演会を開いてもらうことになった。
さすが、自由なアーティスト、気が向けば、見知らぬ人のために足を運ぶこともいとわない。

喜美子、第三週以来のでんぐり返し
最初は身も心も固くなって大きな白い紙の前で何も浮かばない喜美子だったが、ジョージによってほぐれて、最後は絵の具まみれででんぐり返し。
少女のとき、はじめて大阪でひとりの部屋をもらって、大喜びででんぐり返ししたとき(13回)のように喜美子に素直な笑顔が戻った。

八郎もジョージに会って刺激を受けたのか、ついに作品で金賞を獲得。
喜美子も「はじめて自由に」作品を作る。

全身で粘土をこねると封じ込めていた、亡くなった父・常治(北村一輝)への涙も溢れ出る。その涙と一緒に、喜美子のあらゆる感情が粘土に注がれ、それは緑色の器になった。

小さな丸いつぶは喜美子がこれまで溜めてきたいろんな諦めの涙なのかも。
前半の終了としてとても美しいまとめ方だった。

ちなみに近過去の朝ドラ年末で面白かったのは「わろてんか」で、恋愛喜劇的な流れで、「続きは年明け! あしからず。」というナレーションで締めたことが話題を呼んだ。

前半のあらすじ振り返り
思えば、大阪ででんぐり返しして蹴破った戸の先に、先進的な女性・ちや子(水野美紀)がいた。彼女に導かれて、女性が抑圧されない世界に羽ばたくはずだったが、世間はそう甘くなく、再び自分の欲望に気づくまでに12年の時が必要だった。

おりしも、12月30日にはこれまでの総集編が放送される。
喜美子の初創作の余韻に浸りながら、前半のあらすじを振り返ってみよう。

第一週 昭和22年 喜美子9歳  家族で大阪から信楽に引っ越してくる。信楽焼と出会う。ファーストキス。相手は照子。

第二週 昭和28年 喜美子15歳 中学を卒業し、大阪に就職する。

第三週 昭和28年 喜美子15歳 大阪の荒木荘で女中見習い。初任給1000円を仕送りする。←ここで最初の「でんぐり返し」

第四週 昭和30年 喜美子18歳 女中として一人前になり荒木荘を切り盛りする。

第五週 昭和30年秋から暮にかけて。喜美子、初恋と失恋。美術学校に行くことを決める。草間さんの奥さんが再婚していた衝撃。

第六週 昭和31年 喜美子、信楽に戻り、丸熊陶業で働きはじめる。

第七週 昭和31年 喜美子、火鉢の絵付けに魅入られ、深野心仙の弟子になる。

第八週 昭和34年 喜美子21歳 「信楽初の女性絵付け師ミッコー」として新聞に載る。

第九週 昭和34年夏、丸熊陶業の社長が亡くなり深野組解散。秋、喜美子の絵付け火鉢が完成する。

第十週 昭和34年秋、喜美子、十代田八郎に陶芸を習いはじめ、彼に恋をする。

第十一週 喜美子と八郎、結婚を誓う。昭和34年年末、陶芸展出品作づくりに八郎は励む。
名場面:「抱き寄せてもいいですか」「あかん」「泣くわ!」「好きやから」

第十二週 昭和40年、喜美子と八郎、独立し、男の子も生まれた。川原家は離れを作ったせいで未だ貧乏。
回跨ぎのキスシーン。名セリフ:「キスはいつするんやろ」

第十三週 昭和40年、常治が亡くなる。喜美子はじめて自由に作品を作る。

前半、喜美子はどう描かれてきたか
「スカーレット」が放送されるとき、主人公は陶芸家として活躍するというアナウンスがされていたのと、予告で燃える火の前で目を輝かせている戸田恵梨香の姿もあったので、勝手に夢をどんどん叶えていく気丈な女性を想像していた。
実際、子供時代はやんちゃで生き生きしていたが、気づけば、主人公・喜美子は自分らしさを閉じ込めるようになっていた。それは長女の責任で、家のためにやりたいこいとを我慢しないとならなかったから。

朝ドラのヒロインは夢に向かってまっしぐらのイメージがあるが、近年のヒロインは、夢が嫌いだった「まれ」、地道に働くことで十分な「ひよっこ」、夫の夢に寄り添う「わろてんか」や「まんぷく」など、先入観を崩してくるヒロインが増えていた。「なつぞら」も広瀬すずが見るからに強そうなので誤解されがちだが、みなしごということで周囲に遠慮しながら生きている人物だった。

「スカーレット」も前半はそういうおとなしめのヒロインの流れにあった。学校に行けず大阪で働き、ようやく美術大学に行こうと思ったら実家に戻され就職、絵付けの道をみつけたら絵付け火鉢が下火に。持て余された若いエネルギーは恋に燃え、結婚し母になり、夫を支えて陶工として奮闘する。
だが、家長として絶対的に君臨していた父の死をきっかけに、喜美子のなかでタガが外れ、旺盛なエネルギーの使い所が変わってきそう。後半の喜美子は、世の中の、自分を抑え込んで諦めてしまっている女性の前を走るような役になるのではないだろうか。

戸田恵梨香はやっぱり追い詰められ俳優
溜めて、溜めて、本音を爆発させる喜美子。
追い詰められて力を爆発させる、そのパワーがすごい俳優のひとりに、「まんぷく」の萬平さん役、そして2020年大河ドラマ「麒麟がくる」に主演する長谷川博己がいるが、喜美子を演じる戸田恵梨香も「SPEC」シリーズの熱演からそれと思っていた。彼女が演じた主人公・当麻紗綾はSPECという特別な力をもっていて、その絶大な力のコントロールに苦しむ。同じく特殊な力を持つ者たちとの闘いで世界の破滅を防ぐために己の力を最大限に使うときの壮絶さ。戸田恵梨香は渾身で演じていた。そんな当麻を傍らで冷静に見つめていたのが、大島優子演じる「白い少女」だったという面白さ。さらに北村一輝も当麻と共闘することになる、剽軽な刑事役であったので、「スカーレット」のファンで「SPEC」を未見の方はぜひ見てほしい。
ただし、最初のTVシリーズには大島優子も北村一輝も出ていないのでお気をつけください。途中のスペシャルドラマや映画に出てきます。
(木俣冬 タイトルイラスト/まつもとりえこ)

登場人物(週の終わりに更新していきます)
●川原家
川原喜美子…戸田恵梨香 幼少期 川島夕空  主人公。中学卒業後、大阪の荒木荘に女中として就職。三年働いた後、信楽に戻り、丸熊陶業初の女性絵付け師となるが、絵付け火鉢が下火になり、陶芸の勉強をはじめる。陶芸の先輩・八郎と結婚。主婦と陶工を両立させていたが、創作に目覚める。

十代田八郎 → 川原八郎…松下洸平 8人きょうだいの末っ子。父母は亡くなっている、京都の美術大学出身。丸熊陶業の新商品開発の仕事に携わり、喜美子と結婚(婿入り)。陶芸家として独立。昭和40年、金賞を受賞。

川原武志…又野暁仁 喜美子と八郎の長男。

川原常治…北村一輝 戦争や商売の失敗で何もかも失い、大阪から信楽にやってきた。気のいい家長だが、酒好きで、借金もある。口は悪いが、娘たちを溺愛し、喜美子の結婚に猛反対するも、体を壊すほど働いて離れを建てるという愛情を見せるも、そのまま弱って膵臓と肝臓癌を患い、昭和40年死亡。

川原マツ…富田靖子 地主の娘だったが常治と駆け落ちして結婚。体が弱く家事を喜美子の手伝いに頼っている。ぼんやりして何をしているのかよくわからないながら、なぜかなくてはならない存在感を放っている。

川原直子…桜庭ななみ 幼少期 やくわなつみ→安原琉那 川原家次女 空襲でこわい目にあってPTSDに苦しんでいる。それを理由にわがまま放題。東京の熨斗谷電機の工場に就職。父の葬式にも出ず、大阪で商売をはじめると宣言する。

川原百合子…福田麻由子 幼少期 稲垣来泉→住田萌乃 末っ子でおとなしかったが、料理もするようになり、直子が東京に行くと気丈になっていく。家庭科の先生になるため短大進学を目指すが、結局就職する。

●熊谷家
熊谷照子…大島優子 幼少期 横溝菜帆 喜美子の幼馴染で親友。喜美子とは幼いときキスした仲。信楽の大きな窯元・丸熊陶業のひとり娘。学徒動員で戦死した兄に代わって家業を継ぐため、京都の短大を卒業後、婿をとる。四人の子供の母となる。

熊谷秀男…阪田マサノブ  信楽で最も大きな「丸熊陶業」の社長。娘には甘い。昭和34年、突然死。
熊谷和歌子… 未知やすえ 照子の母。敏春を戦死した息子の身代わりのように思っている。
熊谷敏春…照子の婿。 京都の老舗旅館の息子。新商品開発に意欲を燃やす。先代の突然の死により
社長となり、八郎に期待を賭ける。照子には優しい夫。

●大野家
大野信作…林遣都 幼少期 中村謙心 喜美子の幼馴染。子供の頃は心身共に虚弱だったが、祖母の死以降、キャラ変しモテるように。高校卒業後、役所に就職する。早く結婚したかったが、来る者拒まず交際しても、毎回うまくいかない。

大野忠信…マギー 大野雑貨店の店主。信作の父。戦争時、常治に助けられてその恩返しに、信楽に川原一家を呼んでなにかと世話する。大手雑貨店の影響で雑貨店からカフェに商売替えする。

大野陽子…財前直見 信作の母。川原一家に目をかける。マツの貯金箱を預かったことで離婚の危機に直面するが一件落着。カフェサニーをきりもりしている。

●信楽の人たち 
慶乃川善…村上ショージ 丸熊陶業の陶工。陶芸家を目指していたが諦めて引退し草津へ引っ越す。喜美子に作品を「ゴミ」扱いされる。

工藤…福田転球  大阪から来た借金取り。  幼い子どもがいる。
本木…武蔵 大阪から来た借金取り。
保…中川元喜  常治に雇われていたが、突然いなくなる。川原家のお金を盗んだ疑惑。
博之…請園裕太 常治に雇われていたが、突然いなくなる。川原家のお金を盗んだ疑惑。

所沢…牛丸裕司 信作の上司
黒岩次郎…上野俊介 幼少期 溝上空良  信作の幼馴染 お見合い大作戦に参加する。

田畑よし子…辻本みず希 お見合い大作戦に参加、信作に好意を寄せるが、9対1で嫌いと振られる。

佐久間 …飯田基祐 美術商。信楽にジョージ富士川を呼ぶ。

●信楽 丸熊陶業の人々
城崎剛造…渋谷天外 丸熊陶業に呼ばれて来た絵付け師。気難しく、社長と反りが合わず辞める。
加山…田中章 丸熊陶業社員。
原下…杉森大祐 城崎の弟子。
八重子…宮川サキ 丸熊陶業で陶工の食事やお茶の世話をする。
緑…西村亜矢子 丸熊陶業で陶工の食事やお茶の世話をする。
西牟田…八田浩司 丸熊陶業の中堅社員。

深野心仙…イッセー尾形  元日本画で戦後、火鉢の絵付け師となる。喜美子を9番目の弟子にする。
若社長の代になり、長崎の若手陶芸家・森田隼人に弟子入りすることにする。
池ノ内富三郎…夙川アトム 深野の一番弟子。深野組解散にあたり、京都に就職。
磯貝忠彦…三谷昌登 深野の二番弟子。深野組解散にあたり、大阪に就職。

藤永一徹…久保山知洋 陶器会社で企画開発をやっていて、敏春に雇われる。
津山秋安…遠藤雄弥 大阪の建築資材研究所にいて、敏春に雇われる。

森田隼人…長崎の陶芸家。深野が弟子入りを申し込む。

柴田寛治…中村育二 窯業研究所の所長
橘ひろ恵…紺野まひる 窯業研究所所員 喜美子の花の描かれたカップを気に入る。

●大阪 荒木荘の人々
荒木さだ…羽野晶紀 荒木荘の大家。下着デザイナーでもある。マツの遠縁。
大久保のぶ子…三林京子 荒木荘の女中を長らく務めていた。喜美子を雇うことに反対するが、辛抱して彼女を一人前に鍛え上げたすえ、引退し娘の住む地へ引っ越す。女中の月給が安いのでストッキングの繕い物の内職をさせる。
酒田圭介…溝端淳平 荒木荘の下宿人で、医学生。妹を原因不明の病で亡くしている。喜美子に密かに恋されるが、あき子に一目惚れして、交際のすえ、荒木荘を出る。
庵堂ちや子…水野美紀 荒木荘の下宿人。新聞記者だったが、不況で、尊敬する上司・平田が他紙に引き抜かれたため、退社。女性誌の記者となり、琵琶湖大橋の取材のおり、信楽の喜美子を訪ねる。
田中雄太郎…木本武宏 荒木荘の下宿人。市役所をやめて俳優を目指すが、デビュー作「大阪ここにあり」以降、出演作がない。

●大阪の人たち 
マスター…オール阪神 喫茶店のマスター。静を休業し、歌える喫茶「さえずり」を新装開店した。
平田昭三…辻本茂雄 デイリー大阪編集長 バツイチ 喜美子の働きを気に入って、引き抜こうとする。
不況になって大手新聞社に引き抜かれた。
石ノ原…松木賢三 デイリー大阪記者
タク坊…マエチャン デイリー大阪記者
二ノ宮京子…木全晶子 荒木商事社員 下着ファッションショーに参加
千賀子…小原華 下着ファッションショーに参加
麻子…井上安世 下着ファッションショーに参加
珠子…津川マミ 下着ファッションショーに参加 
アケミ…あだち理絵子 道頓堀のキャバレーのホステス お化粧のアドバイザーとしてさだに呼ばれる。

泉田工業の会長・泉田庄一郎…芦屋雁三郎 あき子の父。荒木荘の前を犬のゴンを散歩させていた。
泉田あき子 …佐津川愛美 圭介に一目惚れされて交際をはじめる。

ジョージ富士川…西川貴教 「自由は不自由だ」がキメ台詞の人気芸術家。喜美子が通おうと思っている美術学校の特別講師。昭和40年、信楽に実演会を行いにやって来る。

十代田いつ子…しゅはまはるみ 八郎の姉 大阪で髪結いをしている。

草間宗一郎…佐藤隆太 大阪の闇市で常治に拾われる謎の旅人。医者の見立てでは「心に栄養が足りない」。戦時中は満州にいて、帰国の際、離れ離れになってしまった妻・里子の行方を探している。喜美子に柔道(草間流柔道)を教える。大阪に通訳の仕事で来たとき喜美子と再会。大阪には妻が別の男と結婚し店を営んでおり、離婚届を渡す。東京に住んでいたが、台湾に貿易の仕事に行くことに。

草間里子…行平あい佳 草間と満州からの帰り生き別れ、別の男と大阪で飯屋を営んでいる。妊娠もしている。

脚本:水橋文美江
演出:中島由貴、佐藤譲、鈴木航ほか
音楽:冬野ユミ
キャスト: 戸田恵梨香、北村一輝、富田靖子、桜庭ななみ、福田麻由子、佐藤隆太、大島優子、林 遣都、財前直見、水野美紀、溝端淳平ほか
語り:中條誠子アナウンサー
主題歌:Superfly「フレア」
制作統括:内田ゆき

当記事はエキレビ!の提供記事です。

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