2019秋ドラマ19作、専門家が採点&最優秀俳優発表! 秀作から浮かぶ課題


●『G線上』『俺の話は長い』高評価の理由
12月29日放送の『グランメゾン東京』(TBS系)を最後に、令和元年の連ドラがついに終了。

視聴率では、シリーズ作の『ドクターX~外科医・大門未知子~』『相棒』『科捜研の女』(すべてテレビ朝日系)が相変わらずの強さを見せた一方、新作ドラマで2桁を超えたのは『グランメゾン東京』と『同期のサクラ』(日本テレビ系)のみと厳しい結果に終わった。

ただ、『シャーロック』(フジテレビ系)、『まだ結婚できない男』(カンテレ・フジ系)のようにタイムシフト(録画視聴率)が2桁を超えたものや、『俺の話は長い』(日テレ系)のように若年層の個人視聴率を獲得した作品もあり、決して「不作」だったわけではない。

ここでは、「“再会”できた幸せと不安」「バイオリンの音色とアートな映像」という2つのポイントから秋ドラマを検証し、主要19作を振り返っていく。今回も「視聴率や俳優の人気は無視」「テレビ局や芸能事務所への忖度ゼロ」のドラマ解説者・木村隆志がガチ解説する。

○■ポイント1 “再会”できた幸せと不安

今秋は過去作の続きや、似た世界観を楽しむような“再会”を思わせる作品がそろった。

続編では、定番の『ドクターX』、『相棒』、『孤独のグルメ』(テレビ東京系)のほか、13年ぶりの『まだ結婚できない男』、12年ぶりの『時効警察はじめました』(テレ朝系)、舞台を航空業界に移した『おっさんずラブ―in the sky―』(テレ朝系)。さらに、コナン・ドイルの名作を現代日本版として復活させた『シャーロック』、映画『男はつらいよ』の前日譚となる『少年寅次郎』(NHK)が放送された。

その他でも、『ニッポンノワール ―刑事Yの反乱―』には『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(ともに日テレ系)と同一人物が次々に登場。また、『同期のサクラ』(日テレ系)の主人公を演じた高畑充希は同じ遊川和彦脚本の『過保護のカホコ』を彷彿させる役作りを見せ、『グランメゾン東京』の木村拓哉は過去の主演作を思い出す「これぞキムタク」という熱い男を演じるなど、“再会”という印象が強かった。

しかし、その“再会”は必ずしも幸せなものではなく、少なからず不安も伴う。慣れ親しんだ物語やキャラクターとの再会は「安心して楽しめる」というメリットがあり、上記に挙げた作品はおおむね好評だったし、『シャーロック』『同期のサクラ』らも続編が有力視されている。テレビ局にとっても計算できるコンテンツであり、ホッと胸をなでおろしているはずだ。

ただ、各局が今秋のように同じ「安全策」を選んでいたら近い将来飽きられかねない上に、何より視聴者を未知の作品でワクワク、ドキドキ、ハラハラさせることができない。最終回こそ否定的な声も多かったが、「今年最もバズったドラマ」である『あなたの番です』(日テレ系)への熱狂を見ればそれがわかるだろう。

今秋で言えば、穏やかな世界観ながら実はリスク覚悟の勝負に挑み、低視聴率ながら視聴者の熱い支持を集めた『G線上のあなたと私』(TBS系)と『俺の話は長い』(日テレ系)のような「意欲作をどう増やしていくのか」が問われている。

来年1月スタートの次クールは、刑事と医師の物語だけで10作を超えるなど「安全策」が目立つだけに、「どこかで見たような……」と再会を思わせる作品ばかりにならないことを祈りたい。

○■ポイント2 バイオリンの音色とアートな映像】

今秋は「芸術の秋」にフィットする美しさを感じさせる作品が多かった。

とりわけ視聴者の耳を刺激したのは、バイオリンの音色。『シャーロック』では、誉獅子雄(ディーン・フジオカ)が「バイオリンを演奏しながら事件の推理をする」というシーンが毎話用意され、ヒントとなるカットをフラッシュで見せるという印象的な演出が採用された。さらに別バージョンのバイオリン演奏曲もあり、最後は失踪した獅子雄と若宮潤一(岩田剛典)をつなぐアイテムにバイオリンを選んだ。

『G線上のあなたと私』は、そもそも物語の舞台が大人のバイオリン教室。アラサーOLの小暮也映子(波瑠)、現役大学生の加瀬理人(中川大志)、40代主婦の北河幸恵(松下由樹)、年齢の異なる初心者3人が奏でるバイオリンが徐々にうまくなっていく……というシーンで視聴者の耳を癒した。講師の久住眞於(桜井ユキ)が奏でる美しい音色も含めて、ここまでバイオリンにフィーチャーしたドラマは見たことがない。

『ニッポンノワール』のオープニングや盛り上がるシーンで流れていたのは、扇情的なバイオリンの音色が魅力のヴィバルディ「四季 冬・第1楽章」。「誰が味方で誰が敵なのかわからない」、不穏な世界観を表現する曲であり、もろさや繊細さを芸術的に表現していた。

美しさを感じさせるだけでなく、切なさや激しさも表現できるバイオリンの音色は、ピアノとともに日本人の琴線にふれるものとして、ドラマには欠かせない劇伴パーツとなっている。近年はスマホやタブレットなどを片手に持った“ながら視聴”が増えているだけに、音の重要性がアップ。今後もバイオリンの音色を採り入れた劇伴が頻繁に聴けるだろう。

上記を踏まえた上で、夏ドラマの最優秀作品に挙げたいのは、『G線上のあなたと私』。年齢も性格も悩みも異なる3人が徐々に絆を深め、人生と向き合う姿をじっくり描写。人生のもどかしさと、「音を合わせるだけでも数年かかる」というバイオリンをシンクロさせるなど脚本の妙が光り、それにキャストたちも応えた。

「60分2話」「ホームドラマ回帰」という難題にチャレンジした『俺の話は長い』も文句なしの高品質。どこにでもいる家族の何気ない日常会話を淡々と描き、ニート問題の扱い方も深刻にならず、説教くささもなく、時流に合う作品だった。

主演俳優では、ハマリ役であり、バイオリン演奏もこなしたディーン・フジオカと波瑠。助演俳優では、若さに似合わぬ熟練した技術を見せた中川大志と清原果耶の存在感が際立っていた。

【最優秀作品】『G線上のあなたと私』 次点-『俺の話は長い』『シャーロック』
【最優秀脚本】『俺の話は長い』 次点-『G線上のあなたと私』
【最優秀演出】『シャーロック』 次点-『グランメゾン東京』
【最優秀主演男優】ディーン・フジオカ(『シャーロック』) 次点-阿部寛(『まだ結婚できない男』)
【最優秀主演女優】波瑠(『G線上のあなたと私』) 次点-高畑充希(『同期のサクラ』)
【最優秀助演男優】中川大志(G線上のあなたと私) 次点-沢村一樹(『グランメゾン東京』)
【最優秀助演女優】清原果耶(『俺の話は長い』) 次点-松下由樹(『G線上のあなたと私』)
【優秀若手俳優】 寛一郎(『グランメゾン東京』) 鈴木ゆうか(『4分間のマリーゴールド』)

●19作のひと言コメントと目安の採点(3点満点)
※以下はドラマの結末などネタバレを含んだ内容もあります。これから視聴予定の方はご注意ください。
○■『シャーロック』 月曜21時~ フジ系

出演者:ディーン・フジオカ、岩田剛典、佐々木蔵之介ほか
寸評:魅力を知り尽くしたプロデューサーと監督の手でディーンが躍動。各話のゲストが豪華な分、倒叙の形になり、謎解きの楽しみは半減されたが、美しい映像で気にならない。特別編のラストで続編は確実に。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 視聴率☆☆ 総合☆☆☆】
○■『ハル~総合商社の女~』 月曜22時~ テレ東系

出演者:中谷美紀、藤木直人、白洲迅ほか
寸評:中谷のキャリアウーマン姿はカッコよく、年齢的にもフィット。それだけに元夫や子育てのパートを描くのではなく、総合商社らしい多岐に渡る活躍が見たかった。助演と各話ゲストの顔ぶれに安定感あり。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆】
○■『まだ結婚できない男』 火曜21時~ カンテレ・フジ系

出演者:阿部寛、吉田羊、稲森いずみほか
寸評:13年の経過を感じさせる細部の工夫はさすがだった反面、3人の女性新キャストは消化不良。恋心が芽生えず、絆も育まれないまま最終話を迎えてしまった。ただ、阿部の演じる桑野は毎年でも見たいところ。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆☆ 総合☆☆】
○■『G線上のあなたと私』 火曜22時~ TBS系

出演者:波瑠、中川大志、松下由樹ほか
寸評:「大人のバイオリン教室」でなければ出会わなかった3人がジワジワと関係を深めていく脚本・演出で静かな感動を誘った。バイオリンの音色に加えて、各話終盤にグサッと突き刺さるセリフもあり変幻自在。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆☆】
○■『同期のサクラ』 水曜22時~ 日テレ系

出演者:高畑充希、橋本愛、椎名桔平ほか
寸評:基本設定のうまさやタイトルは、「さすが遊川和彦」と思わせた反面、「1話1年」「思い脳挫傷」の意味合いは最後まで感じられず。終盤に向けて桜のキャラも友情の形も作為的になり、感動を削いでしまった。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆☆☆ 総合☆☆】
○■『死役所』 水曜24時12分~ テレ東系

出演者:松岡昌宏、黒島結菜、松本まりかほか
寸評:主要キャストが役にハマり、各話の物語もハートフル。それでもどこか感動しづらいムードが漂っていたのは、シ役所の設定にところどころ無理が見えたから。ファンタジーの割に大人向きの内容だった。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆】
○■『ドクターX ~外科医・大門未知子』 木曜21時~ テレ朝系

出演者:米倉涼子、岸部一徳、西田敏行ほか
寸評:中園ミホの脚本復帰で物語に生気が宿り、過去との絡み、時事、異端ゲストで楽しませる抜け目なさも健在。ラストの「ONE TEAM」ノリはしらじらしいが、何気に医療監修は「さすが」と思わせるところも。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆☆ 総合☆☆】
○■『モトカレマニア』 木曜22時~ フジ系

出演者:新木優子、高良健吾、山口紗弥加ほか
寸評:恋愛ドラマ、しかも「モトカレ」に特化、若い新木の抜てき、イケメン不足…不安視されていたことがすべて裏目に出てしまった。中盤以降、ぶっ飛んだ演出で攻めるか、ヒューマン路線か、迷いがチラリ。
採点:【脚本☆ 演出☆ キャスト☆ 視聴率☆ 総合☆】
○■『チート~詐欺師の皆さん、ご注意ください~』 木曜23時59分~ 読売テレビ・日テレ系

出演者:本田翼、風間俊介、金子大地ほか
寸評:深夜ドラマには軽さが必要だが、詐欺師たちの間抜けさが主人公の魅力をそぐ形に。本田のアイドルシーンも見た目だけでなく、もう少し活用できたのでは。男性キャストたちの演技もノリ切れなかった印象。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆ 視聴率☆ 総合☆】
○■『ミス・ジコチョー~天才・天ノ教授の調査ファイル』 金曜22時~ NHK

出演者:松雪泰子、堀井新太、須藤理彩ほか
寸評:「失敗学」はいかにも現代に求められそうなものだが、各話の事件がステレオタイプで謎というほどのものはなかった。それ以上にまったく話題にならないのは深刻で、意欲作の多い『ドラマ10』だけに残念。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆】
○■『4分間のマリーゴールド』 金曜22時~ TBS系

出演者:福士蒼汰、菜々緒、横浜流星ほか
寸評:「余命1年」「義姉との禁断愛」と刺激をベースにしたが、人気者をそろえすぎたか、最後までauのCMを見ているようだった。救命シーンで葛藤する主人公、清楚キャラなのに露出する菜々緒などの矛盾も。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆ 視聴率☆ 総合☆】
○■『時効警察はじめました』 金曜23時15分~ テレ朝系

出演者:オダギリジョー、麻生久美子、吉岡里帆ほか
寸評:新キャスト・吉岡への否定的な声は少なくなかったが、霧山と三日月の変わらぬ魅力でほぼ好意的に受け入れられたか。深夜には作り手の個性を生かした「ハマるかハマらないか」両極端の作品があっていい。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆】
○■『少年寅次郎』 土曜21時 NHK

出演者:井上真央、毎熊克哉、石丸幹二ほか
寸評:人物一人一人を優しい目線から描く、いかにも“山田洋次×岡田惠和”らしい世界観の物語だった。昭和の人情物に合わせたキャスティングも見事で、5話どころか、朝ドラで放送してほしいクオリティ。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆☆】
○■『俺の話は長い』 土曜22時~ 日テレ系

出演者:生田斗真、安田顕、小池栄子ほか
寸評:「チャレンジ」という意味では今年一番の作品だが、金子茂樹の脚本が冴え、キャストも生き生き。「キャストは少なく、セットもロケもシンプルでOK」「若年層にも響いた」となれば続編を作らない手はない。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆☆】
○■『おっさんずラブ ―in the sky―』 土曜23時15分~ テレ朝系

出演者:田中圭千葉雄大、吉田鋼太郎ほか
寸評:キャストを入れ替え、別世界にしたことで、前作のファンが猛反発。最後の選択も含めて、デリケートな作品であることを作り手が理解していなかったか。一人で笑わせてしまう吉田の力技で何度か救われた。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆】
○■『決してマネしないでください。』 土曜23時30分~ NHK

出演者:小瀧望、馬場ふみか、ラウールほか
寸評:漫画原作、科学というモチーフ、アイドルのキャスティング…傑作続きの『よるドラ』にしては保守的な姿勢が目立ち、いわゆるスベったコメディに。「映像を作り込みすぎて笑えない」はコメディあるある。
採点:【脚本☆☆ 演出☆ キャスト☆ 視聴率☆ 総合☆】
○■『リカ』 土曜23時40分~ フジ系

出演者:高岡早紀、小池徹平、大谷亮平ほか
寸評:B級ホラーを思わせるストレートな怖さと笑いに特化し、物語の深みはなし。それでも1つのジャンルを追求すれば、十分すぎる放送意義となる。リカに追い込まれる魅力的なキャストがいれば続編も可能。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆】
○■『グランメゾン東京』 日曜21時~ TBS系

出演者:木村拓哉、鈴木京香、沢村一樹ほか
寸評:料理を中心にした映像美は素晴らしく、演じる大人俳優の佇まいもフィット。ただ店の成功物語に徹することなく、悪事を繰り返すライバル店、異物混入ミステリーなどの「日曜劇場」的な要素が質を下げた。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆☆☆ 総合☆☆】
○■『ニッポンノワール ―刑事Yの反乱―』 日曜22時30分~ 日テレ系

出演者:賀来賢人、広末涼子、井浦新ほか
寸評:怒号と暴力が飛び交う狂気のテンションの先に待っていたのは、「人格矯正」「肉体改造」「アルティメットプログラム」という特撮風ストーリー。アクションへのこだわりも伝わらないほど見る人を選ぶ脚本だった。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆】

○著者:木村隆志(きむら たかし)

コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。

当記事はマイナビニュースの提供記事です。

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