荘厳で美しい魔術師たちの世界に魅了される 音楽劇「ロード・エルメロイII世の事件簿 -case.剥離城アドラ-」ゲネプロレポート

SPICE

2019/12/20 18:26



三田誠による小説「ロード・エルメロイII世の事件簿」を原作とする音楽劇が、2019年12月15日(日)、市川文化会館大ホールで行われたプレビュー公演にてついに開幕した。

本作は、魔術にまつわる不思議な事件を、ロード・エルメロイII世とその内弟子・グレイが解き明かしていく魔術ミステリー作品だ。脚本に斎藤栄作、演出に元吉庸泰、総合演出にウォーリー木下という豪華スタッフ陣に加え、キャストには松下優也、青野紗穂、納谷健、百名ヒロキ、木戸邑弥、玉置成実、花王おさむ、壮一帆ら実力派が勢揃いしている。

プレビュー公演を迎えるにあたり、キャストを代表して松下優也、青野紗穂、壮一帆よりコメントが寄せられた。

ロード・エルメロイII世/松下優也


毎日ずっとこの作品に向き合って稽古場で稽古していたので、ようやくという感じです。 僕の演じるロード・エルメロイII世は、過去に起こった出来事で、色んな重圧を背負っていて、実はすごく人間味あふれたキャラクターというところが魅力だと思います。 そして、説明好きなII世なだけあって、僕のセリフ量もちゃんと膨大です(笑)。 作品としては音楽劇なので、和田俊輔さんの素晴らしい音楽達が皆さんを「ロード・エルメロイII世」の世界に連れて行ってくれます。 あと、舞台では様々な仕掛けや映像、イリュージョンなど演出がたくさんあるので、そのあたりも楽しみにして いただきたいです。

グレイ/青野紗穂


今回初の2.5 次元作品に挑戦させていただけてとても嬉しいです。 物語にそれぞれの背負っているものや、願いが入り組んでとても面白くなっているので、一度では無く二度三度、違う登場人物の視点に立ってみていただければ幸いです。 私達も魔術の世界に皆様をお連れできるよう精一杯頑張ります!お待ちしてます!

化野菱理/壮一帆


この作品の大きな魅力の一つが、それぞれのキャラクターのバックボーンがきちんと描かれているところにあり、そのバックボーンを物語の主軸に絡めつつ、語られてゆく事がとても面白いです。また、個性豊かなキャ ラクターの中で、「普通の輝かしい主役」というのではなく一人浮いているかのように見えるロード・エルメロイ II世という“孤高の存在”が、彼の持つ心の傷や背負っているものを内に秘め、それ故にさらに魅力的に映し出されている作品だと感じています。
お客様には、この奥深いストーリーとその世界に身を委ね、一緒に事件を解決してゆく気持ちでご覧いただければ、よりお楽しみいただけるのではないでしょうか。
私が演じる化野菱理は謎めいた女性であり、ロード・エルメロイII世とは別の意味で浮いている存在の化野を、限られた出番の中でどれだけ印象に残るように演じることが出来るかが課題ですので、そこをきちんとお見せしたいと思っています。

ゲネプロの様子もレポートしよう。


ーーSTORY 『時計塔』。 それは魔術世界の中心。貴い神秘を蔵する魔術協会の総本山。 この『時計塔』において現代魔術科の君主(ロード)であるエルメロイII世は、 とある事情から剥離城アドラでの遺産相続に巻き込まれる。 城中に鏤められた数多の天使、そして招待者たちそれぞれに与えられた 〈天使名〉の謎を解いた者だけが、剥離城アドラの『遺産』を引き継げるというのだ。 だが、それはけして単なる謎解きではなく、『時計塔』に所属する高位の魔術師たちにとってすら、 あまりにも幻想的で悲愴な事件のはじまりであった──。 ーーINTRODUCTION とある極東の地方都市にて行われた魔術儀式・聖杯戦争。 あらゆる願いを叶えると言われる万能の願望機・聖杯を巡って行われたその戦いを、 征服王イスカンダルとともに駆け抜けた少年がいた。その名はウェイバー・ベルベット。 時を経て少年は青年となり、かつての師が冠したロード・エルメロイの名を受け継ぐこととなる。 魔術師たちの総本山・時計塔で、「ロード・エルメロイII世」として教鞭を執る彼の元に舞い込む様々 な事件。 現代の常識でははかり知れない、魔術の世界で引き起こされる出来事に、 内弟子の「グレイ」とともに立ち向かっていく――。
物語は、ロード・エルメロイII世(松下優也)による授業が急に休講になったことを心配した生徒のフラット・エスカルドス(納谷健)とスヴィン・グラシュエート(伊崎龍次郎)が、彼の家を訪ねてくるところから始まる。本作の大きな見所のひとつが、魔術師たちが操る魔術の数々だ。冒頭から出し惜しみすることなく不思議な現象が繰り広げられ、神秘の世界に誘い込まれる。

また、宝石魔術を使用するルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト(玉置成実)、ナイフを用いるフリューガー(松田慎也)、蝶魔術(パピリオマギア)を操るオルロック・シザームンド(花王おさむ)など、それぞれが行使する魔術に合わせて演出をガラリと変えているのが楽しい。

リアルマジシャンRYOTAの監修による本格的なマジックと映像や照明、音楽、アンサンブルキャストによる演出が組み合わさることで、まるで本物の魔術を目の当たりにしているようなワクワクした気持ちになる。

和田俊輔による音楽も、世界観にマッチしており素晴らしい。神秘的で怪しい剥離城アドラの様子や魔術師たちが操る魔術が美しいメロディによって鮮やかに目の前に浮かんできて、ストーリーにより没頭することができる。






そして、ロード・エルメロイII世を演じる松下優也は、冷静さやカリスマ性、人間臭い愛らしさ、内に抱く孤独や苦悩といった多面性を見事に演じると共に、伸びやかで美しい歌声で主人公らしい貫禄と存在感を見せている。

青野紗穂は、控えめで臆病なグレイを物静かな佇まいと表情のちょっとした変化で繊細に好演。澄んだ中に寂しさを感じさせる歌声により、複雑な事情を抱える彼女を魅力的に描き出した。

他にも、ライネス・エルメロイ・アーチゾルテ(浜崎香帆)の力強く深みがある歌声など、キャラクターのイメージにぴったりあった歌唱により、物語や曲の魅力がぐっと引き出されている。








また、小説では描ききれない細かな動きや表情についても、各々の心情や事情を深く考えて理解したうえで丁寧に演じていることが感じられた。

蠱惑的で冷たさを感じさせる立ち居振る舞いの化野、少年従者(木村風太)を従えた厳格で禍々しい雰囲気のオルロックといった面々は、荘厳な世界観に相応しい威厳と魔術師たちの底知れなさ、恐ろしさをしっかりと表現。

一方、フラットとスヴィンの息のあったやりとり、時任次郎坊清玄(木戸邑弥)の明るく人懐っこい笑顔やフリューガーの飄々とした様子、ロザリンド・イスタリ(種村梨白花・ソニア/Wキャスト)の愛らしさと彼女を慈しむハイネ・イスタリ(百名ヒロキ)の優しさなどが、シリアスでダークな世界観の中でホッと和ませてくれる。

その中で、ロード・エルメロイII世や、グレイ、ウェイバー・ベルベット(植田慎一郎)など、登場人物たちの後悔や苦悩、人間ドラマが繊細に描かれ、実に見応えのある作品となっていた。

原作ファンの方も、作品やキャラクターへの愛着をより深めながら楽しむことができるのではないだろうか。

本作は、プレビュー公演に引き続き2019年12月19日(木)よりなかのZERO大ホールにて東京公演が開幕した。その後、2020年1月19日(日)まで大阪、福岡、そして東京凱旋公演が行われる。

取材・文・撮影=吉田沙奈

当記事はSPICEの提供記事です。

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