「街にあふれるクリスマスソングがウザい」の声。最もイラつく曲は?

日刊SPA!

2019/12/18 15:52

 12月に入り、世間はクリスマスソング一色だ。マライア・キャリーやワム!にはじまり、山下達郎やB’zなどの大量オンエアに耐える季節である。なんと、発売から25年経ったマライアの「恋人たちのクリスマス」が、「ビルボード・ホット100」で1位を獲得する事態まで発生し、音楽業界のクリスマス商戦は激化する一方だ。

◆「1960年代以降のクリスマスソングを流さない」店が話題に

もちろん、楽曲に罪はない。冷静に聴けば、どれも魅力的なポップソングだ。しかし、その再生頻度が常軌を逸している。特に日本の街は不要な音楽から逃げられない構造なので、事態は深刻だ。コンビニ、ドラッグストア、スーパー、カフェ、居酒屋、どこへ行っても何かしらの音楽を耳にすることを強要されるからだ。

この環境下で迎えるクリスマスは、知らず知らずのうちに人々の精神をすり減らしているのではないだろうか? 家に帰ったところでテレビやCMなどで繰り返し聞かされるのだから、血圧も上がりっぱなしだろう。

そんな悩みは日本だけではない。このたび、イギリス北部のヨークにあるジン専門店「York Gin」の取り組みが話題になっている。それは、店内で1960年代以降のクリスマスソングを流さないこと。店員が毎日8時間マライア・キャリーの無限ループに耐えなければならない状況を回避すべく、流す曲に制限を加えたのだ。

どういう曲なら安っぽくならないかをテストした結果、昔ながらのキャロルや「くるみ割り人形」などのバレエ曲の他には、フランク・シナトラやエラ・フィッツジェラルドのようなスタンダードにとどめておく判断に至ったのだ。「York Gin」のエマ・ゴディヴァラ共同ディレクターは、「クリスマスが大好きだからこそ、私たちのお店を俗っぽくしたくなかった」と、その理由を語っている。(『The York Press』 11月11日掲載記事より 筆者訳)

◆英新聞の「最もいらつくクリスマスソング20曲」とは

このニュースはイギリス国内でバズり、大手新聞「ガーディアン」の電子版には「歴代で最もいらつくクリスマスソング20曲」という記事まで掲載された。マライア・キャリー「恋人たちのクリスマス」(20位)やワム!「Last Christmas」(17位)をはじめ、ジョン・レノンの「Happy Xmas(War Is Over!)」(5位)や、80年代のチャリティームーブメントから生まれた「Do They Know It’s Christmas?」(2位)なども選ばれている。

「Happy Xmas(War Is Over!)」は、<ヨーコ・オノと子供合唱団のコーラスが神経を逆なでする>と、さんざんな言われよう。「Do They Know It’s Christmas?」に至っては、作者のボブ・ゲルドフ自身の「僕は歴史上最悪の2曲に対して責任を負わなきゃならない」との言葉とともに酷評される始末だった。ちなみに、ゲルドフの関わった「最悪の2曲」のもうひとつは「We Are The World」だ。

「最もいらつく曲」1位に選ばれたのは、デヴィット・ボウイとビング・クロスビーのデュエット「Little Drummer Boy/Peace on Earth」。ボウイ自身が「大嫌いな曲だ」と言っている。

いずれにせよ、何十年もの間、延々と同じ曲を聞かされるクリスマスには、欧米諸国も辟易(へきえき)しているのだろう。

◆日本一歌われているのはback numberの「クリスマスソング」

一方、日本ではいまどのようなクリスマスソングが流行っているのだろう?

2018年12月1日から2019年11月30日までの「DAMカラオケランキング」(第一興商通信カラオケDAM調べ)によると、3人組バンド「back number」の「クリスマスソング」が1位だという。

知らない曲だったので聞いてみると、オルゴールっぽいイントロから、付け焼刃のストリングスにザクザクとギターのコードストロークが絡む、ミスチルの「終わりなき旅」風のバラードだった。歌詞は、少なくとも5分の1程度に圧縮できる内容だ。

恐らく男子が歌うのだろうが、<できれば横にいて欲しくて どこにも行って欲しくなくて 僕の事だけをずっと考えていて欲しい>とは、少々欲張り過ぎなのではないか。イブのカラオケボックスで熱唱する絵を浮かべると、けっこうな世も末感が漂う。

このような取るに足らないラブソングの他には、CMでおなじみの「すてきなホリデイ」(竹内まりや)が思い浮かぶ。

<心に住むサンタに呼びかけて 幼い頃の夢を思い出してごらんよ>と言われては、その純粋さに心打たれずにはいられない。だが、アメリカンスタンダードへの無批判な憧れに満ちたサウンドと、クリスマスの絶対的な善を肯定する歌詞には、いくらかの恐怖を感じる。希望の濃度が高すぎて、排他的に聞こえると言ったらよいだろうか…。

◆曲に罪はないのだが…

イギリスでは、「1960年代以降のクリスマスソングを流さない」という「York Gin」の“英断”を支持する声がほとんどだったという。ゴディヴァラ氏はこう言う。「決して現代のポップソングが嫌いなわけではなく、私たちが店を構える建物にふさわしい伝統のある曲が流れるべきだと考えたのです」(『i』11月10日掲載記事より 筆者訳)

音楽に罪はない。しかし、環境とのコーディネートが崩れると、たちまち不快なノイズになってしまう。クリスマスほど、それを痛感させられる季節もないのである。

<文/音楽批評・石黒隆之>

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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